某日、内装仕事で工房作業。朝、伊藤くんの態度がよそよそしい。昨日のことを説明しようと「ちょっといい?」と言ったら、だいぶ物理的な距離を取られる。いやいや、そんないきなり殴ったりしねえよ! 昨日、何故怒ったのかを順を追って説明する。伊藤くんも理解してくれたようだ。やっぱり伝わっていなかったんだな。本日は伊藤くんと二人で床材の加工とエイジング塗装。材料がベニヤ材で、ヤスっているとバリが刺さって痛い。夕方、仕上げた材を台車で運んで現場搬入。腕と肩がパンパンになった。夕方、赤坂で嶺豪一くんと待ち合わせ、我が事務所へ。ごーいちは現在、事務所を辞めてフリーだったので井上さんに相談して会ってもらう。井上さんとチーフマネージャーの和磨さんと4者面談。まあ、結果はしばらくかかるだろうと思っていたが、その場でうちの事務所への所属が決まった。ごーいちも予想していなかったらしく驚いていた。まあ、彼の積み重ねてきた結果だろうし、よかったなあ。条件の話をしていた時に気付いたのだが、ウチの条件って他の事務所さんに比べたら恵まれている気がする。社長の佐伯さんの判断だそうだ。ありがてえなあ。「事務所に入ったからって俳優活動が劇的に変わるわけでもないだろうし、あとはテメエで頑張れ」と伝えてごーいちと別れる。
某日、内装仕事で清澄。疲れが抜けず、通勤読書もせずにウトウト。減量が原因だろう。確実に体力が落ちている気がする。伊藤くん、ごーいち(豪嶺一くん)、アタシのメンツで明日の引き渡しに向けて追い込み作業。取り付けや塗装・左官・コーキング、仕上げ加工に各自別れて作業に勤しむ。ごーいちから誕生日プレゼントに勝新太郎監督『顔役』のDVDをもらった。昨日の今日なので、「こりゃあ賄賂か?!」とも思ったが、然に非らず。しばらくアタシが地方撮影だったりで、渡すタイミングがなかったらしい。ありがたくいただく。作業内容的にも夕方には終われるかと思ったが、やっぱり問題って起こるよな。完成した壁面にマスキングで養生をしてクリアを塗り、マスキングを剥がすと、塗膜ごと剥がれてしまう。剥がした瞬間、声が出てしまった。皆の作業が止まって、惨状を見て呆然とする。しかし、ごーいちが切り替えてパテ埋めをしてくれる。これで明日も作業になった。仕方ねえ。夜、太田さんも応援に来てくれて20時までやって帰る。帰ると倅が起きていて、一緒にリングフィット。作業後のリングフィットは効くな。腹筋運動を中心に30分やるだけでヘナヘナになる。
某日、内装仕事で清澄。朝起きるのが辛かった。伊藤くんと二人で昨日の作業の続き。午後に引っ越しが始まるので、午前中までに終わらせなければいけない。屋根のコーキングや、昨日の塗膜剥がれの補修をする。なんとか正午までに掃除を終わらせて仕上げた。本日はそれで終了。工房で片付けをしなきゃならんが、流石にしんどいので来週に持ち越す。水天宮の紛失物預り所に行って、見つかったパスポートを受け取る。もう新しいパスポートを作ってあり、失効したパスポートだが、予防接種の証明書やカンボジア・コロンビアを始め各国のハンコが押された物だったので見つかって嬉しい。帰りに秋津の指圧によって60分施術を受ける。右肩が上がらなくなっていたがだいぶ楽になった。指圧師のおばさんから「お茶やコーヒーではなく常温の水を飲め」とお言葉をいただく。中国では内臓をいたわる飲食の文化があるらしい。帰って倅と話すうちに眠ってしまう。起こされたら夜8時だった。一緒にリングフィット。風呂に入る時に気付いたのだが、腹筋が割れてきている。凄いな、リングフィット。夜、ここ数日溜まっていた日記を書き、『浪子回頭日記』の直し作業をする。
某日、昨夜の作業が明け方までかかり眠かったが8時に起きる。肩が痛い。一日中雨。梅雨入りしたそうで、憂鬱な天気。倅をプールに誘うが断られる。午前中、日記の直し作業。普段書いている日記はごく個人的なことまで書いている。しかしインターネットで公開する『浪子回頭日記』は、不特定多数の目に触れる可能性があるので、その辺を考えながら、何を書いて何を書かないかという選定が必要になってくる。その線引きを決めるのに、井上さんの意見が参考になった。直しているうちに、ルールとか表記の法則性みたいなものも決まってきた。直したものを井上さんと伸也に送信する。午後、倅とリングフィットを持って実家へ。伸也とやろうと思ったのだが、伸也は昨日帰ったらしい。倅と二人でプレイする。腹筋中心のメニューで大汗をかく。親父が映画専門チャンネルで伊丹十三特集をやっていたのを発見。『たんぽぽ』を観る。映画に出てくる俳優の名前当てゲームを両親とする。伊丹組はいい俳優ばっかだなあ。夜、奥津裕也くんに作品へのコメントを頼まれて、ビメオで眞田康平監督『ピストルライターの撃ち方』を観る。眞田監督の『しんしんしん』は大好きな映画だった。今回も奥津くんがいい。さあ、どんなコメントを書くべきか。
某日、朝、倅を学校の近くまで送る。最近倅は給食が食えずに悩んでいる。嫌いなヨーグルトが出るストレスで、給食自体が食えなくなってしまったらしい。担任の先生やアタシたちも「残していいんだよ」と何度も伝えたが、それでもストレスを感じて給食の時間になると気持ち悪くなってしまうそうだ。学校を休ませた方がいいのか、カミさんとずっと相談しているが、結論が出せない。カミさんの仕事が出来なくなると収入的にもキツくなる。かと言って無理やり行かせるのも違う気がする。トボトボ学校に向かって歩く倅の姿を見て、胸が痛くなる。昼、渋谷の美学校試写室へ。森達也監督『福田村事件』を観る。試写室が満席で立ち見。アタシは階段に座って観た。本編は各シーンだいぶ刈り込まれていた。現場では雑味があって各俳優が蠢いていて、高い熱量が発散されていたが、それが編集でだいぶ見やすくなっていた。しかしこの映画に関しては雑味こそ必要だったんではないだろうか。森さん版の編集は「見難かった」との意見を聞いたが、森さんの狙いはその雑味にこそあったんじゃないかな?本人に聞いて見たい。正直、色恋絡みはいらない気がした。上映後、足立正生さんに感想を聞くと「大作です」とのこと。なぜか笑ってしまった。小林三四郎さんと井上純一さんには「雑味がなくて見やすくなりすぎたんじゃないですか?」と正直に伝える。柴田鷹雄くんがいたので「シャルマン」でコーヒーをすすりながらおしゃべり。国分寺に向かい、演出部の亀平さんと「多古屋」で飲む。亀平さんは日芸時代、冨永昌敬さんの生徒だったそうだ。冨永さんが先生をやっているなんて知らなかったので驚いた。亀のように現場で頑張っている子にこそ、監督として面白い作品を作って欲しい。
某日、内装仕事で工房作業。通勤読書で赤塚不二夫著『笑わずに生きるなんて』を読み終わる。午前中、工房で廃液処理。昼飯抜き。午後は浅草で是正工事。気温30度。蒸している上に暑くてたまらない。倅は学校を早退して蜂巣先生の診療を受けたそうだ。倅の好きな「富士そば」のたぬきそばを買って帰る。半分食べた。元気なのだが精神的なものだろう。アタシと違って繊細なんだな。夜、DVDを観る気にもならず、本を読む気にもならない。なぜだろうか? 減量はかどらず。64キロ。落ちない。このまま寝てしまうのも癪なので、リングフィットをやる。風呂に入ったのに、大汗をかいてしまった。寝る前に自分にとってどんな芝居が理想なのか考える。「扇のような形状の芝居なんかどうだろうか」と思い浮かぶ。言葉でどう言ったらいいのか? 要を軸に放射状に伸びていくような芝居。「レス イズ モア」とは違う、タップリやっていても、その放散された芝居の先を、観客が想像せざるを得ない芝居。うー、うまく説明できねえや。
某日、内装仕事で工房作業。通勤読書で邱永漢著『邱飯店交遊録』を読む。減量中だからこそ飯のことを意識してしまい、読んだら毒だとわかっているのに美味そうな料理の数々が出てくる本を読んでしまう。案の定、読んでいるうちに食えない自分の現状にイライラしてくる。それなのに寝る前も美味そうな料理を作っている動画を観てしまう。ニンゲンって矛盾した生き物なり。減量が終わったら「てんや」の天丼と西荻窪の「坂本屋」のカツ丼を食う。「餃子の満洲」のW餃子定食と「荒畑精肉店」のコロッケも大量に食う。「富水」の穴子丼、「龍の子」の担々麺、「七つ海堂」の田舎蕎麦とかき揚げ、もう全部吐くまで食ってやる。昼飯抜き。働いていても体力が落ちてるから思うように動けずストレス。集中力も続かない。定時に作業を終わらせて帰る。夜、リングフィット。腹筋がうっすら割れてきた。数字上の体重を落とすより、筋肉量を増やして「痩せているように見える身体」を作った方がいいのかも知れない。横になっても腹減って寝付けず。
某日、朝6時に弟の伸也が車で迎えに来てくれる。本日は久しぶりにAさんに会いに行く。府中でHさんと落ち合って、3人でドライブ。11時頃、面会。Aさん、元気。自分なんかよりも現在の上映作品を知っていて、「あれ観た?これ観た?」と聞かれるが、全然映画を観れていないアタシは全く答えられず。差し入れ本も、阿佐田哲也の本だけは送ってとのこと。Aさんは猫の飼育師? の資格をとったらしい。まさかそんな資格があるとはなあ。Aさんの姿と結びつかず笑ってしまう。「マツーラは他人をバカにしてるから絶対売れねえぞ」と5回くらい言われてしまう。こんなやり取りも久しぶりで嬉しい。面会時間はあっという間に終わってしまった。昼飯は、(伸也も減量中なのだが)「焼肉キング」の3000円の食べ放題をHさんが奢ってくれる。久しぶりのご馳走にタガが外れてしまい、バカみたいに食う。Hさんもあっけに取られていた。あんなに食ってしまうとは、自分の食欲が怖い。メチャクチャ美味かった。帰りの車中で、フリースクールや養護施設に映画の無料鑑賞券を送る相談をする。環境によってなかなか映画館に行く機会の少ない子供たちに映画を観てもらいたいなと、ずーっと考えていた。映画を観るのって楽しいし、色々な思考のキッカケにもなる。子供の頃から映画館に慣れ親しんでいると、大人になってからも行く機会が増えるだろうし、ひいては映画館の動員につながる。業界関係者から一口いくらで融資を募り、無料鑑賞券を購入して施設の子供たちに渡すのだ。夏休みと春休みの年2回くらい、継続的に無料鑑賞券を配布する。初めは大きな規模では出来ないだろうが、賛同者が増えたら渡せる施設も増えて行くだろう。継続的に続けることは大変だろうが、やり甲斐のある運動だと思う。まあ、アタシもたまにゃあマジメなことを考えているのでございます。伸也も賛同してくれる。さあ、これも動かしてみるか。夕方、東宝のポスプロセンターで保中良介監督『スキマのオヤジ』初号試写。自主映画ながらいいところまでいっている映画だと思った。もっと豊かになる可能性を秘めた映画だ。伸也と映画の感想を話しながら帰る。