某日、朝、倅を学校まで送って実家に顔を出す。倅が「日曜日に同級生がうちに遊びに来るから」って言っていて驚く。初めて友人をうちに連れて来るらしい。そのまま品川駅に移動して、赤堀雅秋さん、水澤紳吾さんと合流。新井浩文さんの面会へ。新幹線の自由席に三人並びで座ってプロ野球談義。我がライオンズは低迷中で最下位。赤堀さんは巨人ファンで同率1位なのでご機嫌。静岡に着くといつも通りに「清美そば」で昼食。アタシは悩んだ結果、ラーメン(絶品)と天丼をいただく。「清美そば」のラーメンは細麺の柔らかで、スープが美味いのだ。シンプルイズベストでレスイズモアなラーメンである。バスで刑務所の近くまで移動。道中、赤堀さんの彼女の話題でワイワイする。いつも通りに面会の手続きをして、待ち時間に班長さんの書いた脚本と井原忠政著『長篠忠義』を差し入れる。新井さんは1類に出世したので、面会時間も1時間に増えた。久しぶりに新井さんと面会。面会室に入ってきた時に新井さんのズボンがダブダブで無理やり紐で止めていて「ずいぶん痩せたな」という印象をもった。面会時はマスクの着用が義務だったのだが、5月からは任意になったそうで「じゃあマスクとっていいすか?」「なら、うちもとるわ」と、みんなでマスクを外したのだが、入所以来新井さんの素顔を見たのが初めてだった。久しぶりに素顔を見たが、その懐かしさよりやせ細った顔に心配になった。新井さんは「1類になったから、月一で外の弁当が食えるんだけど、味が濃くて美味いよ」とか「集会のお菓子も食ってるし、購入も値段は上がったけど、量が戻って嬉しい」とか「肉が減って大豆ミートが増えて残念」とか、飯は食っていると言う。しかし、なんでこんな痩せたんだ? 病気じゃないのかと、本当に心配になる。しかし、相変わらず会話では元気そうだし、きゃっきゃしながら話をする。1時間もあっという間だった。刑務所を出てしばらくは三人で「痩せたよね?」「病気とか大丈夫ですかね?」と新井さんの心配をする。そのまま静岡駅に戻って、再び自由席三人並びで品川へ。途中で寝てしまって起きたらボッキしていた。なんでオッサンに囲まれていてボッキするのだろうか? 品川からタクシーで「福島屋」へ。赤堀さん、水澤さん、ソウタローさんと四人で飲む。赤堀さんが全部支払ってくれた。ごちそうさまでした! 11時に水澤さんと店を出て、一緒に帰りながら新井さんの痩せ方について話す。これがストレスや心因性のものなのか、病気なのか。どちらにせよ心配。うちに帰って、カミさんに相談。ネットで痩せるのはどんな病気が原因か調べる。
某日、午前中、水澤さんから電話。やはり新井さんの事。昨日調べた事を報告する。心配なので村岡伸さんにも電話して事情を話す。伸さんも前回の面会時に「ずいぶん痩せたな」と思っていたらしい。弁護士さんに伝えてもらい、伸さんも刑務所に健康診断や検査について問い合わせてくれるとの事。アタシの思い過ごしならいいのだが。午後、倅と遊んでいるうちに寝てしまう。夕方、信濃町へ。某アニメ作品のセリフ収録。プロの声優さんと一緒にいわゆるガヤ入れをやる。初めての経験だったし、声優さんが監督の演出に声だけで応える技術に感心した。やー、俳優も声優も芝居が必要だけど、技術が全く違うな。そのまま「福島屋」へ向かう。荒川良々さん、赤堀雅秋さん、長岡佑くん、丸山隆平くん、ソウタローさんとワイワイやる。現場が終わった良々さんが元気で楽しそうで本当によかった。良々節は絶好調で、笑って過呼吸になりそうだった。途中、カミさんから「飲んでるんじゃありませんよね?」とおっかないメールが届いたが、見なかったことにしておく。なんでわかっちゃうんだろうなあ。帰ってから雷が落ちた。マネージャーの井上さんから連絡。『回頭日記』の映像化について。驚いたが、千三つの世界なので、期待せずに「企画者にお任せします」と答える。夜、吉村萬壱著『みんなのお墓』読み終える。やっぱり面白い。寝る前に芝居のことを考える。アタシは撮影が決まっていると、それに向けてセリフを覚えたりシナリオを読んだりするが、それは撮影に向けての準備作業。撮影日から逆算して、「この日までにはセリフを入れたほうがいいな」って考えるが、この目標がある準備作業ではなく、それ以外の時間をどう芝居と向き合うかが大切だと思っている。決まった撮影に向けての準備作業は仕事。それでゼニをもらってる。その仕事以外の時間で、「芝居ってなんだろうな?」とか「俳優ってなんだろうな?」「セリフってどういう状態で言ったらいいのかな?」って、芝居にまつわることを考え続ける。この、「思考を掘る」作業が大切なんだと思う。もちろん答えなんか出ないし、そもそも正解がないことだからテメエの自己満足に過ぎないかもしれない。でも、「答えがない」ことに試行錯誤して向き合い続ける作業が、絶対必要なのだ。なーんて偉そうに言ってるけど、その作業がどれだけ芝居に影響してるのかは、アタシもわからないのであった。
某日、朝、倅と一緒にコンビニへ買い物。藤井組の台本をコピーして、持ち歩けるようにする。台本コピーはB5サイズに縮小したもので、ポケットに突っ込んでおいていつでもセリフを確認できるようにしておく。これで通勤時や仕事中でも、セリフの確認ができる。ついでに「燕コーヒー」でケニアとマンデリンを買う。倅と遊んで、昼飯を食う。午後、倅が小学校で友人と待ち合わせていたので一緒についていく。しばらく待ってもこないので「忘れちゃったのかな?」と思っていたが、しばらくすると倅の友人のむっちゃんは一人でチャリンコできた。一緒にうちまで行って、倅と遊んでいる。アタシは日記作業。小学2年生同士、ギャーギャーやっていた。今の小学生って、友達の家に遊びに行ったり、招いたりすることって珍しいのだろうか? アタシなんか、友達の両親が寝てんのに遊びに行って怒られたりしてたけどなあ。夕方、水澤さんと電話。やはり新井さんの件。夜、日記作業を終わらせる。
某日、無職渡世。本当は内装仕事で大田原の予定だったが、週末に基礎打ちが出来なかったらしく、今週は必要なくなってしまった。まあ、仕方ねえ。何でもかんでも予定通り行くわけねえもんな。午前中、『2nd』の上田くんとグーグルミーツを使用しての遠隔会議。本当はお茶しながらの打ち合わせだったのだが、カミさんが「今時対面で打ち合わせもねえだろ、ズームでやれ。あ、アンタじゃ出来ねえか」と小馬鹿にするので、躍起になってネット打ち合わせにする。実際やってみてわかったが、ネットの接続状況で会話が途切れたり聞き取れなかったりするので、実際会った方が楽だ。まあ、今回はいい勉強になった。村岡伸さんから連絡。静岡刑務所に健康診断の状況を問い合わせてくれて、教えてくれる。午後、それも鑑みて新井さんに手紙を書く。「一度、検査を受けてください」って内容。学校から帰った倅をココトまで送って、昼寝。夕方、倅を迎えに行く。倅と「なぜ妖怪は怖くなくて幽霊は怖いのか」という議論になる。幽霊は恨みとか怨念とかそういうモノがあるから怖い。妖怪はずーっといるもので恨みとかを抱えて生きてないから怖くない、という結論に落ち着く。夜、織田作之助著『放浪・雪の夜』読み終わる。ああ、アタシが関西弁が得意だったら、織田作の原作で映画をやってみてえなあ。
某日、内装仕事で工房作業。久しぶりに工房へ顔を出した気がする。伊藤くんとごーいち(嶺豪一くん)と什器制作。通勤読書は佐々木敦著『ニッポンの思想』を読む。佐々木さんの観察者としての見方が面白くて、クイクイ読む。思想系の本って大概難読で、読み終える事なくバイバイしてしまうものが多い。佐々木さんの文章は読みやすい。仕事をしながら、ごーいちと映画話。最近ごーいちは、俳優としても仕事が途切れていないし、チョコチョコ忙しそうでよかった。こういう真面目な俳優に注目してもらえると嬉しい。昼頃、守屋文雄さんが工房に顔を出す。久しぶりにお会いした。ついつい、映画話。アタシが「(新シリーズの)『猿の惑星』を観ていない」と言ったら「あれはマツーラさんは観た方がいいよ。面白いから!」と珍しく力説される。そう言えば川瀬陽太のおじさんも『猿の惑星』を観ろって言っていた。ここまで守屋さんが言うなら、観なきゃなるめえ。昼飯は「まいばすけっと」でアンパンとレーズンバターロール。また買ってしまった。夕方まで下地塗装。うちに帰ると、カミさんと倅が「スイカゲーム」をしている。初めてみたゲームだが、なかなか面白そうなので挑戦する。テトリスみたいな落下ゲームなのだが、同じ果物を2つ揃えると成長する。とりあえずスイカの完成を目指すらしい。果物の大きさと反比例して重量の概念があって、それがミソっぽい。これはハマりそうな気がする。夜、倅が発熱。しかし37・4度だったので、インフルやコロナじゃなさそう。寝る前に咳き込んでいたが、心配だ。
某日、映画サービスデー。最近大田原遠征が続き、全く映画が観れてないので仕事を休んで鑑賞するつもりだった。しかし、倅の熱が引かず学校を休むことに。ムムム、予定外だぞ。カミさんには「映画を観るためにお仕事休みました」とは伝えておらず、「工房作業がないから休みだ」とお伝えしている。カミさんは暇そうなアタシに「アタシは1日中仕事だし、アンタ休みなんだから倅を病院連れてって」という。昨夜から本日の映画鑑賞タイムスケジュールを、綿密に計画していた(5本の鑑賞予定)アタシだったが、ここで「いや、映画の予定が、、、」なんて言おうモノなら、大惨事になる。アタシは「そうだな、じゃあなるべく午前中に予約入れて。お薬飲んで寝るのが大事だから」と答える。ここで「お薬飲んで寝る」というワードをちゃんと入れたのがアタシの技術。これで病院後は、倅に「お薬飲んで寝てなさい」と寝かせてしまって、午後は自由になるはずなのだ。いつものはちす先生に向かう。受付で「発熱ありますか?」と質問されたので、正直に「昨夜37・7度でした」とお伝えしたら、隔離部屋に通される。そうか、今も病院はコロナやインフルの感染を防ぐために、発熱患者は隔離してるのか。倅は待機中ずーっと「注射と喉にヘラを突っ込まれたくない」と鬱々している。「はちす先生なら知ってるから、はちす先生がいい」と呪文の様に何度もつぶやいていた。診察は倅の念願通りはちす先生で、倅と丁々発止を交わして無事に診察終了。お薬を待つ間、倅に「薬を飲んで寝ることが大切なんだぞ」と言い含めておく。昼飯を食って倅と横になるが、咳き込んでなかなか寝ない。内心焦っているが、これは仕方ない。鑑賞スケジュールを組み直し、倅が寝た瞬間うちを出る。カミさんが「おい! 映画じゃねえだろうな!」と怒鳴っていたが、うちを出ちゃえばコッチのモンだ。池袋に行ってヒューマックスでクリスチャン・タフドルップ監督『胸騒ぎ』を観る。荒川良々さんからオススメされたのだが、マジで不愉快に陥らされる映画だった。好みではないが、よく出来た映画だと思う。やっぱ、子供が犠牲になる映画ってキツイな。グランドシネマに移動して、白石和彌監督『碁盤斬り』を観る。おそらく落語を元にしているのだが、落語って庶民の視点から体制を嘲笑ったモノじゃないですか。視点を元武士にしているので、落語の笑いが消えてしまっている気がした。むしろ商人の側の視点にして、武士の行き方を笑っちゃう喜劇にしたら面白い気がしました。奥野瑛太くんが最後に、掛け軸を渡す芝居はサスガ! それに続いて、吉田恵輔監督『ミッシング』を観る。ここ数本、オリジナル脚本を公開していて今の日本映画監督では珍しいと思う。『ミッシング』は森優作くんの芝居が見事でした。つい感情に頼って直線的な芝居になりがちなのだか、そこを我慢して漏れ出るモノを信じている芝居がよかったなあ。小野花梨さんも細川岳くんも中村倫也くんもよかった。吉田さんってどんな演出をするのだろうか。一度体験してみたいなあ。満足してうちに帰ると、寝ていたはずのカミさんが起きてきて、激しい叱責を受ける。「アンタさ、稼ぎもないのにどのツラ下げて映画観に行こうって思考になんの?」「倅が風邪で寝込んでんのに、映画行く親がいるか?」いちいちゴモットモで耳が痛いのだが、映画が好きなんだから仕方ねえじゃねえですか。や、アタシがおかしいのかなあ?
某日、内装仕事で門仲。工房で什器制作。通勤読書は遠藤公男著『ニホンオオカミの最後』。本日は伊藤くんとミオさんと作業。ミオさんはチョクチョク手伝いに入ってくれていて、塗装仕事を任されている。なんだかこんな汚ねえオッサンばかりの仕事場で申し訳ないが、本人は楽しんでくれているようなので安心した。アタシは伊藤くんと切り出し加工とダボ処理なんかをこなす。昼は珍しくカミさんがお弁当を作ってくれた。おにぎり2個とポケモンの弁当箱に唐揚げ、ブロッコリー、ちくわ炒め。美味くて嬉しかったのでカミさんに電話すると「調子に乗んなハゲ。今月は倅の部屋にクーラー付けなきゃなんねえんだから死ぬ気で稼げ。ってか死ね」と、応援される。ありがたい。ちょっと残業してキリが良いトコまで終わらせる。仕事後に映画館に行きたかったのだが、流石に昨日の今日なので我慢する。夜、学校を休んだ倅とスイカゲーム。このゲームって数学的思考が必要なのかもしれない。倅は「ここでオレンジ作れば良いよ」とか「イチゴでモモを押して」とか教えてくれるが、アタシは理解できていない。出たとこ勝負で作って行くとやはりメロン止まりなのだ。倅は早くもスイカを作っていて数段上手。悔しいから「明日は学校いけよ」とか全く関係ないことを言って、勝負をうやむやにしておく。