某日、無職渡世。朝、倅は学校で「子供会」があって一緒に出かける。学校まで送って、アタシは実家で日記を書く。子供会は地域の小学1年から中学生までが任意で集まって、みなで遊ぶ会らしい。倅は珍しく率先して参加を表明した。送りがてらしばらく眺めていたら、みなで鬼ごっこをしていた。実家で昼飯もご馳走になり、夕方まで過ごす。倅と、残りの宿題をやっつけて、保育園の謝恩会にお招きされたので、倅と一緒に顔を出す。やっぱりこの保育園はとてもいい。ああ、ウッドデッキの工事をしてあげなければ。夜、明日の片山組『雨の中の慾情』アフレコの為に軍歌『抜刀隊の歌』を練習するも、アタシは生粋の音痴で音程が取れない。それはもう、致命的な音痴なのだ。練習していて自分でうんざりする。まるで音程が取れずに、坊主が読経しているようだ。ダメだ、歌はできねえ! 山本たけちゃん(山本剛史さん)から長田奈麻さんの訃報を聞く。長田さんの闘病は全く知らなかった。若すぎる。何度か飲ませていただいた。ありがとうございました。
某日、無職渡世。朝、倅を学校へ送って実家に顔を出す。実家ではいよいよ94歳のじいちゃんのボケが進んで大変。ベッドにションベンしちゃうし昨夜は裸で叫んでいたらしい。アタシや倅が行くとまともに会話をするのだが、波が激しい。両親も、マジで大変だ。帰って引き続き『抜刀隊の歌』をやるが、どうしても読経から上手くならない。どうしようもないので監督の片山さんに電話。すると「大丈夫です、元気にやってくれれば」と言う。アタシの音痴さがわかってるのかしら? まあ、監督が言うならもういいや。セリフ練習に切り替える。レコーダーにセリフを吹き込む。F組と森組、両方入れたが、森組はゴリゴリの岩手弁。これは回数やってニュアンスを覚えないといけない。方言って結局、口にした回数が大切で、イントネーションが口に馴染むまで何回もやるべき。アタシは北の方言は苦労しないが、西の方言は全くダメ。耳馴染みがないからだろうな。午後、学校帰りの倅と宿題。夕方、東映大泉で片山組『雨の中の欲情』の再アフレコ。今回は『軍艦行進曲』と『抜刀隊』の2曲を歌う。演出部の山口くんと近況を報告しあってスタジオへ。片山さんもロケハンから間に合ったらしく、参加。終わったばかりの中村映里子さんとヤーヤーして早速収録。軍歌をがなり立てる芝居なのですぐに喉が潰れた。苦労すると思っていた軍歌だったが、予想外で順調に進み予定時間に終わらせる。片山さんから飯を誘われたが、倅とポケモンをする約束をしていたので残念だったが断って帰る。倅とポケモンやってセリフをさらい、寝る。
某日、セリフ渡世。朝、倅を学校に送って実家に顔を出す。伸也が来ていて、今後の教科書販売の予定を相談。両親が「今日の朝ドラに水澤さん出てたよ!」と教えてくれる。NHKの番組予告を見ていたら、松澤匠くんが出ていて驚いた。みんなやってんなー。そのままセリフ念仏で東所沢コースを歩く。聖地霊園へ寄って、祖父母のお墓まいり。いつもはあまり人がいない霊園だが、今日は「お花見か!」ってくらい年寄りが墓参りしていて驚いた。墓参り記念日なのかな? 午後まで3時間歩いてF組のセリフ練習。帰って、映画『冗談じゃないよ』へのコメントを書いて送る。この映画は主演の海老沢くんがウダツの上がらない俳優役なのだが、若い頃の自分を思い出してしまい苦しいのよ。午後、横浜の石川町へ。電車内で植村直己著『極北に駆ける』を読む。利重剛さんと中村高寛さんの事務所にお邪魔する。事務所で四方山話をゲラゲラした後、近所の中華屋「天龍菜館」で夕飯をご馳走になる。席についた途端、利重さんから「マツーラくん、ごめんね」と謝られて驚く。「実はガンニバルの現場で話していた『助太刀屋助六』の企画をホントに動かしていたんだけど、一旦中止しようと思うんだ」利重さんが、岡本喜八監督が昔ドラマで作った『助太刀屋助六』(ジェリー藤尾主演)を、アタシと水澤紳吾さんで撮ろうと企画して、原作の許可を取って山形にロケハンまで行ってくれていたそうだ。岡本監督の『助太刀屋助六』は映画版の真田広之主演作が有名だが、それより全然前にドラマ版が制作されていて、それを元に動いてくれていたらしい。しかし、先日、利重さんの夢枕に岡本監督が現れて「次の映画企画はそれでいいのか?」と苦言を呈されたそうだ。そこで利重さんはずっと準備していたオリジナルの長編企画をやろうと決心した。中村さんが話すには、奇跡的にロケ場所も合宿場所もスタッフも揃って、あとは撮影だけって段階まで整っていたらしい。アタシはまず、利重さんが本当にアタシを主演で(しかも岡本監督の企画で)動いてくれた事に驚き、メチャクチャ嬉しかった。しかし、夢に岡本監督が現れたって事は、絶対になんかある。そこで中止を決断する利重さんも凄い。残念だがオリジナルの企画を先に動かす方がいいと思った。「嬉しい」と「残念」で心が乱高下して乱れまくったが、作品は縁だと思う。まずは利重さんにオリジナルの映画を撮ってもらって、それから機会があったら是非『助太刀屋助六』もやってほしい。しかし、やりたかったなあ。その後は映画話で盛り上がって、美味い飯をワサワサ食わせてもらった。会話の中で利重さんが「マツーラくんや水澤くんは、喜八さんがいたら絶対喜八一家になってたと思うよ」って言われて、本当に嬉しかった。だって、アタシが一番好きな邦画の監督ですものね。利重さんと中村さんの新作の企画が順調に進む事を願いつつサヨナラした。こうやって、人生って何があるかわからねえ。やっぱり、好きな映画をアタシなりに懸命に続けて来てよかったと思える夜だった。
某日、無職渡世。元々は某監督の新作アニメの収録日だったが、諸々のスケジュールが合わずにバラしになった。午前中から倅とポケモン。午後、倅とカミさんがメダルゲームでお出かけしたので、セリフ練習。近所を1時間歩く。途中で急に雨が降って来て慌てて帰る。お昼寝したが、昨夜の『助六』の企画が頭から離れず。ずっとグルグルして寝付けなかった。やっぱやりてえよ! だって主演の話なんてなかなかねえし、しかも利重さん監督で岡本喜八作品だよ? 諦めきれねえ! 必ずやりたいって思いを、利重さんと中村さんにメールしてしまう。夜、倅とテレビで流れていた「志村けんさんとドリフのコント番組」を観た。これだけ年齢差のある親子が観ていてもケラケラ笑えるコント番組ってすごいよな。途中で柄本明さんと志村さんの芸者コントが流れて背筋がビッとなる。すげえなあ。ガキの頃は気が付かなかったけど、達者な大人が、真剣に遊ぶってかっこいいな。芸事と笑いって根っこは同じだし、この二人が戯れている幸せな瞬間が映像で記録されていてよかった。
某日、朝、倅を学校まで送って実家に顔を出す。伸也と『浪子回頭日記』の自費出版の話。具体的な数字が出て来ていよいよ本腰を入れねばと思う。そのままセリフ念仏で2時間歩く。森組の方言も馴染んできた。F組の方はもうちょっと面白い芝居が探れるはず。帰って『ボイラーマン』の上演が終わった水澤紳吾さんと電話で話す。利重さんの企画の話もする。笑いながら「マツーラ、ホントありがたいな。俺たちも頑張んなきゃな」と励まされる。本当にそうだ。アタシらで少しでもお金が集められる俳優にならなきゃいけない。そのためには1本1本、当たり前だが全力で挑み結果を出し続けるしかないわな。午後、新宿へ。電車内で植村直己著『極北に駆ける』読み終わる。ケイズシネマで松林麗監督『ブルーイマジン』を観る。初号も試写も都合が合わず伺えなかったので、初見。新谷ゆづみさんと日高七海さんが印象に残る。しかし初見だとどうしてもテメエの芝居のアラが気になって、映画と向き合うのって難しい。いや、フザけた芝居してやがんなあ、あのハゲって思ったら自分だった。上映後、松林麗監督、竹内おとさん、品田誠くんと登壇。今回は作品の内容もあるので、不適切発言をしないようにメチャクチャ考えながら喋った。一応、もしものために「ストップ」をかけてもらえるように、マネージャーの井上さんにも客席から見ていてもらう。幸いなことに止められる事はなかったが、アタシはダメだなあ。みんなでパンフにサインして、水野さんからまたまた差し入れをいただく。ありがたいけど、アタシは何もお返しできてないし、映画を観てくれるだけで本当に十分なのにな。パチパチキャンディは倅が大好きなので本当にありがたい。なんだかアタシャ、どこに行っても施されてばかりなり。劇場前で松林さんらとおしゃべりしていたが止まらず、井上さん、松林さん、品田くんと「三平」に流れる。松林さんからアタシが先日、『刀を抜くなら抜く前に、収めどころを考えないといけないんじゃねえかな。考えずに抜いちゃうと、ワーってなって、本来斬るべきヒトじゃないヒトも斬っちゃったりするよ。収めどころがわからなくなって過剰にやっちゃう。『大菩薩峠』の机竜之助もそんな感じだったのかもしれないなー』とツイッターに書いたのを「共感しました」と言われてドキッとした。文外に潜ませた真意を見抜かれたか。品田くんからは「マツーラさんの日記、俳優部は読むべきですよ」なんて言われてさらにドキッとする。啓蒙する気はないし、そこから勝手に何かを受け取ってくれりゃいいのよ。そもそもこんなテキトーで不埒な人間を信じちゃいかん。渥美清さんに森繁久弥さんが書いた言葉がある。「一切くだらぬ骨折り損はよせ。ウエンな道には自由がない。良い声も悪い声も共に聞くな。己を大事にして、アッと言う間に過ぎる、お前さんの時を十分に満喫してくれ。」これだよなあ。みんな勝手にやってくれ。アタシも勝手にやるから。なんてカッコつけて書いてるけど、結局飲み代も払えず、井上さんが全部出してくれたのだ。ごちそうさまでした!
某日、朝、倅を学校に送る。今日は終業式で、今日が最後の小学校1年生か。なんだか感慨深い。実家に顔を出して伸也とおしゃべりし、セリフ念仏で東所沢コースを3時間。ようやくセリフが馴染んできた。やはり最低限この状態までは準備するべきだ。芝居のアイディアもいろいろ出てきて、呟きながら試すのが面白い。正直、このカメラ前でセリフを口にする準備をしておかないで臨んだ作品はダメだ。監督がどう思うかはわからないけど、自分はわかる。毎回これくらいの準備ができるといいが、それってギャラとの兼ね合いもあるし難しい問題なり。そりゃ毎日セリフを練習して、撮影に臨める環境があるなら理想ですよ。でも、それじゃあ生活が成り立たない。「今作はギャラがこれくらいだから、何日はセリフ練習で仕事を休める」とか「こんな安くちゃセリフ練習で休んでいたら割に合わん! けど練習は必要だし、ムムム!」って、毎度毎度苦しい葛藤をしながらセリフを練習しているのです。そんな切羽詰まった実情はみなさん知らないでございましょう? それもこれも根本的に俳優部のギャラが安い問題がありまして、まあ、主演クラスの方々はさておき、アタシのような脇でやってる俳優部はセツジツなのでございますわ。映画俳優って夢もチボーもねえ! 帰り道で保育園の園児たちと会う。ミモザの花をもらった。ホワホワしていてかわいい。昼過ぎに帰って、倅にチャーハンを作って一緒に食べる。午後、ポケモン。新井さんに差し入れ用の本(井原忠政さんの仁義・忠義シリーズ)と手紙を同封して送る。夕方、倅とベットでゴロゴロしていて、アタシだけ寝てしまう。夜、実家に倅と通信簿を見せに行く。
某日、無職渡世。朝から倅とポケモン。倅は戦闘だけはやりたがるが、ゲームの進行はアタシに任せる。「やらなくていいの?」「俺は戦い以外は見て楽しむタイプだから」ゲーム実況の影響なのかな? 役割分担をしてゲームをプレイするのも珍しい。最近、倅がいわゆるネット用語を使い出したのが気になっている。本人は面白いと思っているのだろうが、聞いているアタシは気になってしまう。「もう終わりヤン」とかユーチューバーの口癖を真似ているのもムムムと思う。や、アタシだってガキの頃は志村けんさんの真似してたし、大人になった今でさえ田中邦衛さんや神戸浩さんの喋り方を真似ることがある。だけど、倅の「ヤン」を聞くたびに、アンテナがバキッと立つ。「喋り方は大切なアイデンティティであるから、自分の言葉で喋りな」って言ってもイイのだが、倅がそれを理解するだろうか? なかなか考えさせられるテーマを見つけた。午前中、義兄が倅を迎えにきてくれて、本日から倅と義兄で小田原に旅行。倅は義兄が大好きなので、アタシらには1ミリの未練も見せずにウキウキで出て行った。カミさんは倅がいなくなった途端、無気力になってしまったらしい。アタシは午後、歩き念仏でセリフを3時間。倅がいないので、DVDで沖島勲監督『出張』を観る。立て続けに森崎東監督『ロケーション』も観てしまった。