某日、午前中、倅を学校へ送って実家に顔を出す。そのまま歩いてN組のセリフ練習。井上さんから電話があり「N組の現場が巻いているので、入り時間を早めたい」と言われる。おお、今日も順調なのね。もちろんいつ呼ばれてもいいように新宿へ移動。移動読書は吉村昭著『長英逃亡』の下巻。予定よりも早めに呼ばれて、支度場へ。本日はサムギョプサルを食いながら、山下美月さんと芝居。段取り中にNさんから大きな演出が入る。脚本を読んでいたが、全く想像していなかった芝居を山下さんにつけていた。おお、そう来ましたか! Nさんが「ここで彼女の成長を見せたいんですよ」なるほどなあ。「マツーラさんはここでは○○だって意識をあまり持たなくていいです」と言われて安心する。そしてバタバタと芝居を撮影して行く。途中まで順調だったのだが、最後にアタシの寄りで一連を撮っていて、アタシがテイクを重ねてしまう。口に運ばれたサムギョプサルがあまりに熱くて吐き出してしまったり、痰が絡んで声が詰まってしまったり。Nさんから「力抜いてラクにいきましょ」って心配されてしまった。申し訳ありません。昨日の撮影で林くんがちょっとハマった時に、先輩風吹かして「何度でもやるから大丈夫だよ」なんて言っていたのに、今日はこのザマだ。みっともねえなあ。なんとかオッケーが出て、現場からパラパラ拍手が起きたが、逆に恥ずかしかった。まあ、仕方ねえや。本日もだいぶ予定より早く終わった。嶺豪一くんが本日は誕生日だったので、夕飯を食う約束をしていたのだが、Nさんを誘ってみる。するとプロデューサーの森井さんも参加してくれるという。アタシはこれからメイクの石邑さんに髪を切ってもらうので、「終わり次第向かいます」ってお伝えしてヘアーカット。終わりですぐにごーいちと合流して、韓国料理「モンシリ」へ。すでにNさん、プロデューサー森井さんとチーフ助監督の吉川祐太さんが待ってくれていた。どうもどうもで乾杯して、あっという間にワイワイやり出す。アタシはNさんも吉川さんも今回が初めましてだし、森井さんとは『アリス』で一緒だったが初めて飲む。でも、開始5分でバカ笑いして遠慮がなくなってしまった。Nさんと森井さんはお互い叩き上げの演出部と制作部で、若い頃からの関係らしい。吉川さんは森井さんのプロデュース作品の演出部として付いていて、付き合いも長いそうだ。Nさんと森井さんが駆け出しの頃にやった伝説の映画『MISTY ミスティ』の現場地獄話で盛り上がる。聞いていて思わず「そりゃ嘘でしょ!」って話が次々に出て来て、笑い転げた。森井さんの崔組の話や、Nさんのガイラ組の話、トンデモない映画屋バカ話が止まる事なく出てくる。アタシが憧れてきた映画界がここにもあった! いやー楽しかったなあ。森井さんが「監督は明日も早いから」って止めてくれなけりゃ朝まで笑っていたと思う。誕生日だったごーいちも「やー、やっぱ映画は面白いっすよねえ!」って満足そうで安心した。いい時間だったなあ。これだから映画はやめられねえや。
某日、内装仕事で工房。昨夜遅くまで飲んだが、キチンとお仕事に行くのだ。や、本心では「撮影翌日くれえは休みてえ」と、強く思うのだが、カミさんから「毎日毎日プラプラしやがって! テメエはクエートの石油王か? 違うだろ、秋津のドカタだろ!」なんて引っ叩かれるので、仕方なく仕事するのだ。通勤読書は吉村昭著『長英逃亡 上』。読み終える。幕末の蘭学者が捕物方を交わしながら、長期逃亡する話。アタシャ、逃亡ものも好きで、こういう映画をやってみたい。本日は伊藤くんと工房で什器制作。工房が材木で溢れかえっているので、片付けたりどかしたりしながらの作業で疲れる。昼はまいばすけっとであんぱん、コロッケパン、焼きそばパンを買って食う。夕方まで作業してキリのいいところで終える。工房も暑いけど、外に出たら湿気と熱波でうんざりする。まだ7月なのになあ。帰って最上川の小判探しの資料を集めたり、潜水作業の方法を考える。果たして最上川遠征予定の7月末から8月頭はどんな水深はどんなもんなのか? 冬季よりは水量が落ちているはずだから、捜索作業も楽だと思うのだが。
某日、内装仕事で工房。朝6時にうちを出るのだが、日が出て間もない時間でももう暑い。なんだかなあ。移動読書は吉村昭著『長英逃亡 下』。工房は効きが悪いがクーラーがあるので、現場作業よりはマシだけど。本日は大工の大吾さん、守屋文雄さん、伊藤くんと工房で什器造作。作業しながら大吾さんと最上川の小判捜索方法について検討する。大吾さんはシュノーケリングをやっているので、今回の川中の捜索に打ってつけの方なのだ。水位はわからないが、川底の砂利を掻き出し、バケツに入れて、岸まで運び、砂利を岸で広げて小判を探す。問題は砂利を水中で掻き出す方法と砂利の運搬方法だ。予算との兼ね合いもあり、なかなかいい方法が見つからない。昼飯は久しぶりにみんなで「富水」へ。アタシはダブル天丼大盛りを頼む。相変わらず絶品で言うことなし。美味かったなあ。夕方まで仕事して、大吾さんと再び最上川捜索の検討をする。砂利をバケツに入れて、バケツに浮き輪をつけ、岸からロープで引き上げる方法が一番良さそうだ。ただ、これって人海戦術の体力勝負になるなあ。
某日、家族旅行で初島へ。毎年、夏に長期ロケが入る事が多いので、倅が夏休みに入ったらすぐに旅行に行こうって計画していた。しかし、残念なことに今年は長期ロケの予定がない。カミさんからは「仕事ないならこの時期に焦っていかなくてもよかったじゃん」って嫌味を言われたが、こちとら受け仕事だから、いつ仕事が入るかなんてわからねえもんな。熱海まで踊り子号に乗ってビューンと行く。車内は旅行客であふれていた。熱海からはフェリーで初島まで。2年前にも初島に行ったが、海の透明度が高く、泳ぐ魚も南国系でとてもキレイ。倅が「今年は初島行きたい」というので、再度初島に旅行することが決まった。初島に着くと倅はすぐに泳ぎたがったが、まずは腹ごしらえ。「磯料理大西」で、海苔丼大盛りを食う。海苔丼が驚くほど美味かった。カミさんにおかわりをオネダリするが、予算の都合上却下される。「あーあ、ゴリの稼ぎがよかったらもっと贅沢できるのにねえ」なんて言われたが、旅行に来てまで金の事言わないでほちいなあ。店を出たらすぐに初島港の湾内で泳ぐ。倅がシュノーケルを使いたがったので、カミさんに「アタシもシュノーケリングしたいから買って」と、オネダリしたが、今度は引っ叩かれた。仕方ないので子供用の水中メガネでパチャパチャする。海中ではソラスズメダイの大群やでかいイシダイをはじめたくさんの魚が寄ってくる。わー、今年も来てよかったなあ。倅とずーっと海をウロウロして、海中の魚を観察する。カミさんも浮き輪に乗ってきて、魚を見て驚いていた。あっという間に時間は過ぎて、今回の宿「PICAアジアンリゾート」のコテージにチェックイン。三人泊まりのコンテナハウス。入った瞬間、足の臭いがしてムムムってなった。なんだこの臭い? アタシが不満そうな顔をするとカミさんが先に「この臭いもゴリのせいだ。安いコテージにしか泊まれないから」と言ったので、あたしゃ何も言えませんでした。でも、クーラーも効くしシャワーもある。ご飯セットも贅沢だったので言うことなしだ。夕方、再び初島内を散策。かき氷を食い、おやつを買う。夜はコテージでバーベキュー。明日は早朝から釣り予定なので早めに寝る。
某日、家族旅行で初島。朝、4時に起きて倅と釣りへ出る。初島湾の岸壁から外海にルアーで投げ釣り。今回は荷物も多かったので、釣りセットは最小セットだったが、フル装備で持ってくりゃよかったと後悔。次に来る時はちゃんと持ってこよう。倅にだけ竿を渡して、外海に投げさせる。アタリが取りにくい安竿だったので、ルアーを食われたのに気付けない。5、6本ワームの尻尾を食われた。でかい魚がいるが、上げられず。6時半までやって帰る。アタシも竿を出したかった。朝飯を食って、すぐに泳ぎに行く。今日も海がキレイで、カミさんと倅と3人でキャッキャはしゃぐ。日差しが強く暑かったが、海の中にいる分には関係ない。1時くらいまで泳いで、温泉でシャワーを浴びて初島を出る。熱海でお土産を買って、帰る。流石に疲れたのか倅は電車内でずっと寝ていた。いい旅行だったなあ。夜、カミさんが日焼けで全身が痛くて眠れず八つ当たりされた。
某日、午前中、旅行で使った海道具の掃除やメダカの水換えをする。午後、新宿へ。喫茶店「ピース」で、『セカンド』編集長の上田くん、生田目くんと最上川の小判捜索の打ち合わせ。大吾さんと話し合った捜索法を説明し、道具の予算を見積もる。多めに換算して約5万。それに移動のガソリンや宿泊費、飯代も入る。上田くんから道具代の削減を頼まれるが、どうしたらいいもんか? 宿をとらずに河原でキャンプ説も出たが、さすがに炎天下の肉体労働をして野宿だと反乱が起きるだろう。さてさて、お金問題いかがしたもんかねえ。打ち合わせを終えて、成城学園前まで移動。東宝スタジオで某組の衣小合わせに行く。Yさんが初監督する映画に霊媒師として呼んでいただく。プロデューサーはK2の高橋くん。共演の霊媒師が佐藤五郎さん。五郎さんと会場でお会いして、アジ用ワームのたくさん入った福袋をいただく。衣装を着込んで、祈祷の振りを稽古。斎藤工くんも合流してワイワイやる。監督のYさんが具体的に動いて指導してくれた。アタシャYさんのファンなので、すごく嬉しい。物腰が低くて面白い最高なヒト! 撮影が楽しみだ。衣装部屋を出ると、喫煙所に菊地健雄さんを発見。タバコを吸いながらおしゃべりする。大泉では知り合いによく会うが、東宝はなかなか縁がないので嬉しい。帰りに本屋へ寄って、冲方丁著『十一人の賊軍』のノベライズを買って読む。映画とは違ったアプローチで面白かった。
某日、内装仕事で蔵前。初めて乗り込む現場。移動読書は吉村昭著『長英逃亡 下』を読む。今日の現場では久しぶりに大工の山田さん、電気屋の堀川さん、設備屋の長田さん、酒井さんがいてワイワイする。お馴染みのメンツで、昔から散々な現場をこのメンツでなんとかしてきたのだ。面白いオジサン達で、アタシは大好き。尾篭な話をゲラゲラするから、どうしても一服時間が長くなる。引き渡し直前の現場なので、伊藤くんと各階の什器をバタバタ設置していく。現場での微妙な調整が必要なので細かくて難儀だ。昼飯はラーメン屋「上々」へ。鴨肉を使った上品な醤油ラーメンで美味かったし、山田さんが奢ってくれた。ありがとうございます! 夕方まで設置作業をして現場を引き上げ、工房で明日の仕込み。夜、表参道へ。嶺豪一くんと待ち合わせて、渋い居酒屋の「花ごころ」へ。本日は『2nd』編集長の上田くんと三浦由貴さんと飲む。三浦さんは『あるとしか言えない。かもしれない』を読んでくれてアタシに興味を持ってくれたそうで、初めましてだったが、気さくな面白い方ですぐにワイワイする。最上川の捜索や馬鹿話に花が咲く。なんだろうか? ウマが合うってやつなのかな? 「花ごころ」は料理もバカ美味くてタバコも吸えるし最高だった。三浦さんは共通の知人も多く、「また飲みましょう!」ってことで気持ちよく別れる。いい出会いだったなあ。