某日、朝、倅を学校に送っていく。道中、倅がネットでポケモンカードを購入したが、商品が届かない事を嘆いて「詐欺にあった」とボヤいている。たかが600円の商品だが、小学生にとっては1ヶ月分の小遣いを使った大きな買い物だ。同情するが、いい勉強になったと思うしかない旨を伝える。「大人が子供を騙すなよな」と憤慨している。実家に顔を出すと親父から自動車のタイヤの積み込みを頼まれる。教科書販売も落ち着いたらしく、「ひと月ぶりに床屋行った」と言っていた。今日は「カフェドクリエ」で原稿直しと日記の修正作業。『2nd』連載中の『あるとしか言えない。かもしれない』の第7回の2稿目。今は3ページの掲載となって約4200字。初稿より読みやすくなったと思う。そして伸也と目論んでいる日記の自費出版のため、『浪子回頭日記』2022年の1年間を手直しし始める。当時出せなかった作品名や伏せ字、文章の改稿を行う。ウェブ版とは違って、本来の日記に近い本音を書いたモノにしようと思う。ただ、どこまで読み手を意識するかだ。日記なので一切手直しをしないで発表する方法もあると思うのだが、それをしてしまうと各方面にご迷惑をおかけしそうなので、その辺のさじ加減が必要なり。午後、『母の待つ里』のセリフ練習で東所沢まで歩き念仏。2時間半。歩いているともうすでに桜は散っていた。木々が新緑をまとい、若草色でとても良い。1年で1番好きな季節だ。所沢のブックオフで、中古安DVDを購入。アンジェイ・ワイダ監督『ワレサ 連帯の男』、ジェームス・マンゴールド監督『フォードvsフェラーリ』(公開時に観てよかったので)、そして加藤泰監督『瞼の母』を救い出す。『瞼の母』は、仁科貴さんが強烈に褒めていたのを思い出して購入した。ゲームコーナーを見るとPS4の『デス・ストランディング』が900円だったので購入。これはクリちゃんにオススメしてもらったゲーム。夕方、倅がゲンちゃんと遊んでいたので、お昼寝。夜、早速『デス・ストランディング』やる。デモ画面が多くなかなか操作できず。
某日、午前中、所沢までセリフ念仏。所沢の「ドトール」で『母の待つ里』を読み直す。やはり面白い脚本。面白い脚本って、何度読んでも飽きない。正直、そういう飽きない脚本ってなかなかないと思う。自分は森さんから言われた「そこにいるだけで成立してるから、やろうとしなくていい」という事を念頭に読み直す。1箇所、やりすぎたと思うシーンあり。まあ、これから気を付けよう。昼から東所沢まで往復のセリフ念仏を2時間。所沢のツタヤブックスで、本を物色。貴志祐介著『兎は薄氷に駆ける』購入。これとソローキンが、今回の遠野遠征のお供本になるな。午後、マネージャーの井上さんと電話。今後の仕事について検討し合う。撮影仕事はやりたいけど、今回の話は迷いがある。こんな事を言うのは烏滸がましいと100も承知だが、「この役アタシじゃなくていいでしょ?」と思ってしまう案件なのだ。監督は他の役も検討してくれていたそうだが、その役は共演者が苦手でアタシが嫌がってしまった。生意気なオッサンだ。迷うなあ。でも、もう迷ってる時点でダメだよな。やりたきゃ「やる!」って一つ返事だもんな。アタシが兼業で俳優をやるってのも、「断る」という決断が出来るからだ。カネは欲しいし、芝居はしたいけど、強制になっちゃツマラねえや。倅は今日もゲンちゃんと遊んでいる。二人で「マイクラ」をやっている。夕方、水澤紳吾さんから電話。山下敦弘監督の長編アニメ『あんずちゃん』がカンヌの監督週間に出るそうだ。驚いたなあ。まさか、山下さんがアニメ作品でカンヌ行くとは。『あんずちゃん』の原作漫画はいましろたかしさんで、脚本はいまおかしんじさん。3者とも昔からお世話になっている方々だ。3人に「おめでとうございます」とメールを送る。夜、ネットフリックスで『マインド・ハンター』を2話観た。
某日、本来は『母待つ里』の撮影日だったのだが、私の出演シーンがオミットとなり、遠野入りが明日に変更になった。午前中は歩き念仏で岩手弁を馴染ませる。方言はひたすら繰り返し声に出して言うことだ。それしか方法はないと思う。セリフの練習もそうだが、数をこなさなきゃダメだと思う。その苦行が出来なくなったら、俳優をやめるべきだろうな。午後、倅が学校から帰る前に『デス・ストランディング』。今日、操作をしていて重大な事に気がついた。なぜかバイクに乗るアクションが出来ずに困っていたのだが、単純にコントローラーの「R3」ボタンが壊れていて効いていなかったのだ。一応、コントローラーを分解して、検分するが、こりゃあ修理できねえ。買うしかねえかなあ。本日もゲンちゃんが遊びに来る。倅と宿題をやってゲンちゃんとポケモン交換をする。ゲンちゃんと倅はマイクラ。アタシは部屋で本を読んでいるうちに寝てしまう。カミさんから叩き起こされて「アタシが仕事してんのにふてえ野郎だ」と引っ叩かれた。夜、ネットフリックスでギャビン・オコナー監督『ザ・コンサルタント』観る。
某日、朝、倅を学校まで送って実家に顔を出す。じいちゃんがショートステイから帰っていた。朝飯を2時間かけて食っている。度々むせるので心配になるが、嚥下能力が落ちているので仕方ないらしい。「春だねえ」なんて言っているがアタシは半袖なのに、「寒いなあ」なんてストーブをつけていた。午前中、本日から『母の待つ里』の撮影で、遠野遠征10日間なので、パッキング。カミさんは相変わらずご機嫌ナナメだ。毎回、泊まりでの撮影になるとカミさんは機嫌が悪くなる。家事・育児の負担が全てかかる事に加え、カミさんの言い分だと「アンタが呑気に遊んでるのが腹立つ!」らしい。遊んでる様に見えるけど、アタシだってセリフ言ったり言わなかったりしてゼニもらってるのよ。泊まりになるならないは制作都合だし、いち俳優部がとやかく言える事じゃねえ。そこんとこヨロシク! って逃げる様にうちを出る。遠野遠征も3回目で移動にも慣れた。新幹線での移動読書は、織田作之助著『放浪・雪の夜』。今回の遠征にぴったりじゃねえか。本を読んでいると織田作の世界観にやられる。ああ、アタシが関西弁達者なら、織田作の小説を映画でやりてえもんだぜ。新花巻で降り、駅の立ち食い蕎麦屋で天ぷらそばをかっ込んでいると、五頭岳夫さんと中島ひろ子さんとお会いする。ご挨拶して一緒に遠野まで1両編成の釜石線に揺られる。ホテルに入る前に遠野唯一のスーパー「とぴあ」で買い物。夕方から『母の待つ里』のスタッフ・キャストで中打ちがあって、自家製ビールを出す「TAPROOM」に集まる。多くのキャストスタッフが集ってワイワイやる。中井貴一さんが差し入れてくれた上等な肉を鉄板で焼いてワシワシ食った。アタシは若いスタッフの方々と交流し、伊武雅人さんとタバコを吸いながらお話しする。夜9時ごろお開きとなり、撮影部の若手に「2軒目行くか!」と言ったら「マツーラさん、明日も早いし今から行ったら朝になるからダメっすよ」と諭されてしまう。そうだよな、ダメなオッサンだわ。
某日、森義隆・阿部修英監督『母の待つ里』の撮影で岩手県の遠野。7時に支度場入り。朝飯はケイタリングで樹さんが作ってくれたご飯。これがメチャクチャ美味かった。飼われている鶏の産みたて卵にご飯、お味噌汁なのだが、5杯くらいオカワリしたかった。撮影は五頭さんや菜葉菜さんと一緒のシーンで、阿部監督の演出回。初めて松嶋菜々子さんと芝居。現場に着いて「あら? お通夜の撮影じゃなかったけ?」と違和感。演出部の土肥さんに「このシーンって何でしたっけ?」と確認したら「とぼけちゃって!」と相手にされず。菜葉菜さんに聞いてようやく理解した。アタシャ、朝イチにこの撮影がある事を見落としていたのだ。あぶねえ! セリフもあったのだが練習しておいてよかった。昼からは森監督回のお通夜のシーンを撮影。近隣の皆さんがエキストラで参加してくれていて、隣のおばあちゃんとずっとお話しする。遠野情報をいろいろ聞けて楽しかった。待ち時間は伊武雅人さんと喫煙所でおしゃべり。伊武さんがポツポツと相米組の思い出を話してくれて勉強になる。インド旅行の話や菜食の話も面白かったな。夜まで撮影して本日は終了。撮影後、中島ひろ子さんと菜葉菜さんと飯。菜葉菜さんオススメのイタリアン料理屋「おのひずめ」で食事。オーナーさんがすごくいい人で、料理もメチャクチャ美味かった。地の物を中心に素材で勝負していて、あまり食事に時間をかけないアタシだが、食い切るのが勿体無く味わっていただく。いやー、めちゃいい店を知った。料理もうまいし、話も盛り上がって閉店まで居てしまう。しかも中島さんが奢ってくれたのだ。ごちそうさまでした! 1軒では収まらず、近くのスナック「紅緒」へ。ここはカラオケスナックなのだが、80歳のママが一人で切り盛りする店。ちょうどお客さんもいなくて歓迎してくれた。ママも一緒に飲みながら一代記を拝聴する。ほっておくとママがずっと喋ってしまうから、なかなかなのだった。1時過ぎまで飲んで解散。遠野、いい店があるなあ。
某日、森義隆・阿部修英監督『母の待つ里』の撮影で岩手県の遠野。本日出番なし。午前中は『あるとしか言えない。かもしれない』の原稿直し。白鷹町の役所から手直しの依頼があり、思い切って修正する。思ったより時間がかかってしまった。日記を書いてカミさんに電話。カミさんは「アンタが出ていって2日くらいすると、無性にハラたつから倅とは電話を替わらない。テメエばっかり好きな事しくさって」と意地悪される。参ったなあ。せめて倅と喋りてえよなあ。結局倅とお話しできず、午後までかかって原稿を送る。中島ひろ子さんから連絡があって、近所のおばあちゃんが営む手作り民芸店「マヨイガの郷」へ。モンペが売っていてアタシも欲しくなり、生地を選ばせていただいて注文する。和服が大量にあって「マヨイガ」のおばあちゃんが「ここにあってもしょうがないから持ってって」というので羽織をいただく。ありがとうございました。夕飯に中島さん、菜葉菜さんとスタッフの方々が絶賛する居酒屋「語りべ」へ行く。出てくる料理が全て美味く、みんなが絶賛する理由がわかった。ごちそうさまでした。夜、マネージャーの井上さんから電話。N組の映画出演のお話をいただく。ネットフリックスでヨナス・アカーランド監督『ボーラー』を観た。
某日、森義隆・阿部修英監督『母の待つ里』の撮影で岩手県の遠野。朝起きたのが8時過ぎだったので、今日は樹さんの朝食に間に合わなかったと残念だったのだが、下に降りたらわざわざ取って置いてくれてあった。ありがたくいただく。やはり卵かけご飯が絶品。樹さんが作った石鹸までいただいてしまった。ありがとうございました。10時に支度して現場へ。本日は森監督回の1シーンを撮影。あれだけ練習していたのにセリフが安定しなかったなあ。本番で森さんから「もうちょっとセリフに感情を込めてもいいです」と演出してもらう。セリフを聞いている3人の受けが大切なシーンなので、情感を抑えていたのだが、そこを見抜かれた。森さん、芝居見てるなあ。芝居していると相手役の空気感が色々あって面白い。佐々木蔵之介さんはスーッと包まれるような感じ。中井貴一さんはピリッと張り詰めた感じ。面白いな。あっという間に撮影が終わってホテルに戻る。日記を書いて、過去の日記の修正作業をする。しばらくすると飽きてしまったので、スーパー「とぴあ」に行きがてら散歩。夕食分の買い出しをして、駅前のお土産屋へ。アタシは各地の民芸品を買うのが趣味なのだが、遠野の民芸品を物色。色々あったのだが、心ざわめかせる出会いがない。諦めて帰ろうとした時に、出会ってしまったのだ、黒い招き猫様に。(アタシは招き猫収集をしており、おうちには何体もの招き猫様が鎮座されている)この黒猫様は佐々孝工房の附馬牛(つきもうし)人形。附馬牛人形とは、原料の和紙と土を練り合わせ型取りし、自然乾燥させたもので焼いていないのが特徴だそうだ。この黒猫様を即断で購入。満足して店を出る。帰りにパチンコ屋があって、ちょこっと覗いてみたら、いつの間にかマイジャグを打っていた。なけなしの5000円も飲まれて「ああ、金がない!」と焦っていたら、最後の最後にペカってそのまま連チャン。結局、2万円勝った。黒猫様のおかげだろう。ありがたやありがたや。部屋に戻ってホテルの大浴場で風呂。充実した気分で再び原稿の直し作業。自分の過去の文章を直していると、当時読んでいた作家の文体や言い回しの影響が見えて面白い。夜、菜葉菜さんと飲みに出る。駅前のスナック「渚」が営業していたので、そこに入る。ママさんと三人で話していたら演出部の岡本さんが来店。大地康雄さんの話で盛り上がる。