某月某日、某組『●』の撮影。さすがに朝晩は冷えていて宿泊先の部屋のエアコンをつけて寝たのだが、乾燥がひどく喉がやられてしまった。この全館空調式のエアコンって、調整がきかないから難しいのだ。お風呂にお湯をためて湿気を出すべきでしたなあ。反省なり。本日は出番が16時からだったので、朝からOたんを誘って、松本シネマライツ8に映画を観に行く。劇場に行ったら映画サービスデーで嬉しかった。やっぱり映画1本観るのに2000円は高いよ。そもそも映画って、肩肘張らずに「お、時間が合うから観るか」って気楽に行ける娯楽であるべきじゃないでしょうか?「1800円も2000円も変わらんだろ」って言う人はわかってないよな。その200円がでかいんだよ。値段が高いから、観客は「ハズレたくない」って思うだろうし、映画館への敷居が高くなっちゃう。映画ってさ、ハズレをひいてもその体験すら尊いはずなんだけどなあ。とにかくチケット代を安くすべきだよ。できれば1000円。1本1000円ならもっと気楽に映画館に行けるよ!で、映画のほうは、楽しみにしていた塩田明彦監督の最新作『春画先生』を観る。さすが塩田さんの映画だよー、一筋縄じゃいかないわけです。全く予備知識なく観たのだが、話の筋が予想外に進んで驚く。なんなんだ?この自由さは! 春画先生宅の屋根にとまる鳥の演出から始まり、ラストシーンの2人のバックショットに至るまでキレキレの塩田節がパキパキにキマる。もちろん「男性的価値観に基づく女性像だ!」って怒っちゃう人もいるだろうけど、それも計算の上で塩田さんは脚本を書いただろう。すげえ攻めた映画でアタシは大好きだなあ。集合時間までまだあったので更に、吉野耕平監督『沈黙の艦隊』を観る。(ありがとうサービスデー!)吉野さんは前作『ハケンアニメ』が傑作だったので観たが、吉野監督のオリジナル作品が観たいなあ! そもそも『沈黙の艦隊』って何回映像化されてるんだろうか? 原作は基本的に会話・思考劇だし、潜水艦内という狭い空間で展開される物語は、映像作品には向いてないんじゃないか? 映画館を出て、ホテルまで歩きながら、先ほど観た映画を反芻する。この時間が好き。ホテルに戻って、集合時間までU-NEXTで最近ハマっている『ジ・オファー』を観る。『ゴッドファザー』を作った製作陣の話で、すこぶる面白いのだ。15時45分ホテル出発し、撮影。今日のシーンは居方が掴めず、何となくでやってしまったなあ。撮影後、ホテルの部屋でOたんと反省会。明け方までおしゃべり。そういえば、本日の帰りがけに久しぶりに怒っちゃた。アタシ、撮影現場では無用な「緊張感」って必要ないと思っているのでガス。や、「緊張感」が必要なシーンもあるけれど普段からピリピリするのは大嫌い。なので可能な限りヘラヘラして過ごすのですが、その姿を見て勘違いする奴もいるんですなあ。特に同業の俳優部。太え勘違いをして、アタシのことをナメ腐りまあ馴れ馴れしくしてくる奴。コレね、アタシも大人ですから撮影中は我慢しますよ。だってアタシがソイツを殴っちゃったら、現場に「緊張感」が走っちゃうもんね。それを良い事にまあ、大層なお口をきいてきたりするわけですなあ。それでもですよ、万が一でもソイツが面白い芝居をしているのなら一目置いてシャッポを脱ぎますわ。でも、そういうヤツに限って、全く面白くない芝居をして満足してるんです。堪らねえや! 本日も撮影終了後のバス待ちの時間に、クダラナイ事を仰ったヤツがいたので、アタシは怒っちゃったわけです。アタシが怒ろうが、ソイツの矜持でそういった態度を取っているならケンカすりゃあいい。だってお互いテメエのルールで生きてるんだから。こちとらもう42歳のロートルです。でも、ケンカすらしねえですぐに謝られちゃった。いやいや、速攻で謝るくらいなら最初からそんな事すんなよ! みっともねえ。テメエの名前掲げて商売してんだからさ、やっすい生き方すんなよ!
某日、朝6時起床。ホテルを出発し、松本から静岡へ。Aさんの面会へ行く。地図で見たら、直線的に南進したら近いけど実際はそうはいかねえ。甲府まで出て、甲府から特急に乗って静岡。静岡で赤堀雅秋さんと水澤紳吾さんと待ち合わせて、面会へ。待ち合わせまで時間があったので、駅前のコンコルドでマイジャグを打つ。2000円勝つ。今は本当に金がないので2000円でも助かった。アタシャ、贅沢な生活は望んでいません。「あ、映画観たいな」とか「○○さんが出てるから舞台行こう」って思った時に、ゼニが払える程度ありゃあそれでいいのです。でも、そのゼニすらねえんだもんな。参っちゃうよ。Aさんの差し入れに、本を3冊入れる。Aさんはちょうど散髪日だったそうで、スッキリしていた。面会後、隣町の「柚木の郷」でサウナに入る。熱風を扇がれて汗を出すロウリュってのを初体験。目が開けられないくらい汗が出る。水澤さんはI組の撮影中で減量をしていて、アバラどころか背骨まで浮き出ちゃって悲壮感漂う姿。「水澤さん、無理しないでくださいよ」と声をかけたら「これくらいはやんなきゃさあ」と笑っていた。奥野瑛太くんも水澤さんも、自分への追い込みが半端ない。アタシも減量したが、こんな病的な身体は作れなかった。新幹線で品川まで出て、下北沢の焼肉屋「城西苑」へ。赤堀さんが「舞台の手伝いをしてくれたからマツーラと水澤を労う」って言ってくれて、焼肉だったのだ。赤堀さんはサウナ代も新幹線代もタクシー代も出してくれた。遠慮したのだが「金がねえって言ってる奴から払わせられねえだろ」って全部出してくれた。本当にありがたかった。「お前らが、5年後には払ってくれる様になってくれよ」って言われたが、素直に「ハイ!」って言えない自分が悲しかったな。「赤堀さん、5年じゃ不安なんで10年後には払えるように頑張ります」って言ったら「バカヤロ! 3年でやりますって言えよ!」と笑われた。「城西苑」も久しぶりだ。よく新井さんに連れて行ってもらった。おばちゃんも覚えていてくれて嬉しい。荒川良々さんも合流し、4人で日本シリーズを見ながらワイワイやる。『ジョン・ウィック4』のドニー・イェンの素晴らしさを熱く語ったり、芸能ゴシップを笑ったり、日本シリーズを解説したり、純粋バカ話でゲラゲラ笑う。焼肉も美味かった。ここでも赤堀さんと良々さんが払ってくれた。何から何までお世話になりっぱなしだ。これだけお世話になっている良々さんの舞台を、アタシは観に行けなかった。本当に後悔しているし、反省した。盛り上がって2軒目の飲み屋に繰り出す。だいぶ酔った赤堀さんが「昨日やっと『岬の兄妹』を観たんだよ」と言う。良々さんが赤堀さんに何度も勧めてくれたのだが、観てくれたんだ。「さすが片山さんだと感心したよ。マツーラもよかったけどさ、でも俺が演出したらもっと良いマツーラが出せるんじゃねえかって思っちゃうんだよ」「水澤もそう。『ぼっちゃん』の水澤より、もっといい水澤が撮れるかもって思うんだよ」なんて言ってくれる。本当に嬉しかった。こんなポンコツなアタシの事を、そこまで思ってくれているなんて。なんて言うか、アタシは人に恵まれている。こんな良い先輩達と出会えて、可愛がってもらっている。ありがたいよな。良々さんは、アタシが現場で喰いついたり怒ったり怒られたりする事を笑い話にしてくれるし、最後には庇ってくれる。アタシの事を買ってくれている。敬愛する先輩に買ってもらえる事ほど、嬉しいことってない。赤堀さんや良々さんだけではなく、班長さんも、水澤さんも、川瀬さんも、新井さんも、大西さんも、こんなアタシを認めてくれている。頑張んなきゃなあ。そしていつかお世話になった方々に恩返ししなきゃなあ。ベロベロになった水澤さんと帰りの電車でそんな事を話した。
某日、朝、U-NEXTで『ジ・オファー』を最終話まで観る。いやー、面白かったなあ。こういう内幕モノっていいな。春日太一さんの『東映京都撮影所血風録 あかんやつら』なんか映画にしたら面白いだろう。や、映画より配信ドラマがいいかな。監督は足立紳さんがいいな! なんて考えていたらひとりでヘラヘラしてしまう。午後、門前仲町の工房に、館山から下げてもらった作業着や道具を取りに行く。シノブさんと今後の内装仕事のスケジュールを話す。池袋に出て、キナダの三好さんとお茶をする。今日は松井周さんの演劇『イエ系』のゲネプロに呼んでくれたのだ。アタシは松井さんの芝居のファンだけど、まさか公演しているなんて知らなかった。北九州で2年間ワークショップをやって作った芝居だそうで、東京公演も明日と明後日の3回公演だけらしい。あぶねえ、見逃すとこだった。三好さん、ありがとう! 芸術劇場のイーストで、松井周作・演『イエ系』ゲネ。金子岳憲さんや今話題の演出家、加藤拓也さんも来ていた。いやー、『イエ系』トンデモナイ作品でした。やっぱり松井さんってぶっ飛んでやがる! 日本の現代演劇の枠を超えちゃっている。アタシが想像している「演劇」に収まっていない。観ていて始終、ソワソワ不安になって、話がどう展開していくのかまったく分からないのだ。物語が積み重なったと思ったら簡単に解体され、いつの間にか別の場所で積まれていたりする。更にハネケ的な事をぶっ込んできたり、『母なる証明』を思わせる踊りを入れていたり。松井さんの脳内に渦巻くアレコレが、変態的構成で、現代日本の違和感に反映されている。凄い演劇だ。驚くのが、こんなトンデモナイ作品を松井さんは意識していなくて「お客さんがどう思うか不安だよ」なんて言っているのだ。驚いた。終演後、みんなで飲みに行く。松井さんと出演している日高啓介さんを交え、みなで感想を言い合う。先輩の日高さんにアタシはこの演劇の素晴らしさを力説してしまった。松井さん、本当におっかない演出家だな。アタシは全く演劇を観ていないのだが、松井さんの凄さはホンモノだ。こんな芸劇で2日間だけの公演とかやってるんじゃなくて、世界中で公演してほしい。ああ、またサンプルで公演してほしいな。あ、文学オタクの三好さんからオススメされた『小山さんノート』も読まなきゃだな。
某日、無職渡世。今週末は内装仕事がない。早起きして部屋の掃除と洗濯をする。カミさんと倅がカミさんの実家に行っているのを良い事に、朝から新所沢のレッツシネパークに繰り出す。ずっと評判を聞いていたがなかなか観れなかった冨永昌敬監督の最新作『白鍵と黒鍵の間に』をようやく観る。おいおい! 傑作も傑作、アタシの大好きな映画だった。久しぶりに映画を観て、自分のことを肯定された気がした。セリフにあったが「身体を壊すか頭がおかしくなるまで」映画をやろうと思った。素晴らしい映画。もう一度映画館で観ようと思う。アタシがそんな風に思うのって珍しいの。いやー、良い映画だった。帰る道中、弟の伸也と哲也に「必見だ!」とメールする。うちに帰るとお隣のKさんがいたので、Kさんにも『白鍵と黒鍵の間に』をオススメする。うーん、観たい邦画がまだ観れていないのに、今日から『二人静か』も公開するし、来週は『花腐し』や『正欲』『映画(窒息)』も公開。追いつかねえよー。カミさんが不在なので猫のトイレ掃除や、床拭き、2度目の洗濯等の家事をやって、ここ数日の日記を書く。『浪子回頭日記』の12月分の直し作業もやらなきゃいかん。奥野俊作監督と『冬物語』のコメントの件で連絡を取り合う。最近、倅がキッズケータイを使ってメールをくれるのだが「オチンチンのまわりがカサカサになった」「きょうはちんちんいじょうなし」とか「うんこしたらちがいっぱいでたから火曜おいしゃさんいく」「きれじがにくい(本文ママ)」と、なかなかにパンクで高尚な文学的メールで、アタシは嬉しくなる。ただ気になるのは、基本的に「ちんちんの状態」か「痔の事」という下半身事情に限ってメールを送ってくる。倅はマグロ漁師になりたいそうだが、松井周さんか赤堀雅秋さんに弟子入りして、書く方の仕事をしたらいいのになあ。夜、倅とカミさんが帰る。安心した。このままお里で暮らされなくてよかった。
某日、無職渡世。学生時代の同級生カオルが出産したので、赤ちゃんに会いに都内へ。カミさんの数少ない友人で、カミさんと倅と3人で伺う。赤ちゃん可愛かったし、カオルも元気そうだった。息災で何より! 帰りに倅と2人で「富士そば」でお蕎麦をすする。店員さんの女性が、妙齢でミョーに色っぽくてムムムとなる。アタシったら食器を返却する際に、「ごちそうさま。美味しかったです」なんて言っちゃってんの。「富士そば」食って美味しかったですはねえだろ。店員さんだって困っちゃうよな。夕方、倅の歯科検診。担当の歯科医さんが若い女性で、めちゃくちゃ意識してしまって普段より低い声で話す。向こうは1ミリも意識してないし、こっちは子連れでハゲたオッサンなのに、なんなんだろうなあこの自意識。つまり、倅の検診が終わるまでアタシは俳優にとっての「意識」「自意識」の問題について思考していて、やっぱり「意識」を超えたフラットさで芝居してえなあ、その為には「反射」と「即興性」が大事な気がするなあ、なんて哲学的顔で検討して、いつ若い女医さんが来ても激シブなひっくい声で対応できるように「意識」しておったわけでございます。ああ、日常こそ演技が必要なんだなあ。夜、『あるとしか言えない。かもしれない』の原稿を直して、U-NEXTで『ゴッドファザー1』を観ながら寝落ち。
某日、無職渡世。朝、倅と学校へ行って実家へ。祖父と両親が風邪をひいてしまったので、祖父の様子見で実家でパソコン作業。『回頭日記』の2022年12月分の直し。祖父は喉風邪らしく、痰が絡んで苦しそうに咳き込んだりしている。朝から何度かお漏らししてしまったそうで、両親もしんどそう。もう、92歳だしな。今日はさすがにアタシのことさえわかっていない時もあった。「すいませーん」なんて呼ばれちゃって、アタシの事を施設の職員さんみたいに接する。まあ、仕方ねえな。祖父にお昼ご飯を食べさせるが、「私ばっかり食べてしまってすみません」なんて何度も謝る。「これ、食べてください」なんて食べかけでグチャグチャになったプリンを渡された時には、さすがに笑ってしまって突っ込んだ。「じいちゃんさ、くれるのは嬉しいけどさ、こんな食いかけ渡さないでよ、犬じゃねえんだから」と言ったら祖父も笑っていた。案外、ボケたふりしてアタシを試しているのかもしれねえな。食後、しばらく動かず、思い出したように「今日はどこに行くんでしたっけ?」「今日は風邪気味だからどこも行かないよ」って会話を、6回くらいした。7回目を言いかけたので、「じいちゃん、寝たら? 目が開いてねえから」と言ったら「これは開いてるの! 私は目が細いからつむってるように見えるけど開いてます」ってキレられた。そのまま黙って立ち上がって、よろめきながらベッドへ歩くので介助する。上着を着替えようとするので「どこ行くの?」と質問したら「どこって、、、どこいくんでしたっけ?」なんてキョトンとしている。あまりにもセリフの間がいいから、また笑ってしまう。「今日は風邪っぴきだから、寝てていいよ」と言うと、今度は大人しくベッドへ入って寝てしまった。2時半くらいに倅が学校帰りに寄ったので、一緒に帰る。近所のげんちゃんも一緒に、「マイクラ」の話をしながら歩いた。倅をココトさんに送って、今度はカミさんと小学校へ向かい、先生と個人面談。面談が終わったら、倅をお迎えに行く。この辺を行ったり来たりしてんな。夜、倅がアニメ『鬼滅の刃』を観たがる。アタシは残酷描写が苦手だし、倅も怖いヤツをみるとトイレに行けなくなるから、観るのは嫌だったが、予告をみるとなかなかに面白そうだったので、倅と一緒に『鬼滅』デビューする。本日は3話まで観た。面白い『2nd』の上田編集長より「原稿がちょっと足らなかったので、90字くらい足して明日の午前中までに送ってちょ」ってメールが来たので、直しをして送る。