某日、午前中、水澤紳吾さんと待ち合わせて、荒川良々さんのお宅へ。引っ越しを終えた新居で、配線にモールをかぶせる作業をする。良々さんちには、蛭子能収さんや漫☆画太郎さんの絵、そして水木しげる先生の原画が飾られていて、こういうモノにお金を使う良々さんのセンスがカッコイイなと感心してしまった。本やレコードもたくさんあって、幅広く勉強されている。渥美清さんの写真が祀られているのもカッコよかった。途中で奥野瑛太くんも合流。オッサン3人で「あーでもねえこーでもねえ」とモール切り出しに四苦八苦。良々さんが朝飯にチャンポンと五穀米を手作りで振舞ってくれる。美味かった。先に良々さんは劇場入りして、アタシらは時間ギリまで作業して、本多劇場へ。西本竜樹さんも合流し、4人で大人計画『もうがまんできない』(作・演出 宮藤官九郎)を観劇。めちゃいい席に小汚いオッサン4人が並んで座っていて、場違いな感じがした。やっぱ俳優陣が皆すごく達者。当たり前だが、さすがなのだ。全編笑いで包み込んでいるが、格差や差別・被差別、人間の業、欲望を描いていて、宮藤さんは辛辣で厳しいモノを書くんだと驚いた。観終わって色々考えてしまってしばらく話せなかった。じゃがたらの『もうがまんできない』が耳から離れない。自分は最後にのんちゃんがとった行動は自分の意思だと受け取った。終演後、土砂降り。傘を持ってなかったのだが、西本さんが「タウンホールにいらない傘がたくさんあるからもらいましょう」と言って、捨てられた傘をもらいに行く。びしょ濡れで小汚いオッサンたちが傘をもらう図こそ、劇的だ。良々さん、水澤さん、西本さん、奥野くんと「福島屋」で飲む。宮崎吐夢さんも合流し、映画の話、今作の話、色々する。会計は吐夢さんと良々さん、水澤さんが払ってくれた。ありがとうございます! 吐夢さんは帰られたが、皆でそのまま良々さんのうちになだれ込む。良々さんからTシャツとキャップをいただく。ミンナで良々さんの服をもらって、追い剥ぎみてえなヤロウだな。良々さんが秘蔵本の藤山寛美さんの写真集や中村勘三郎さんの写真集、若いタケシさんのインタビュー本など、どれも高くて手が出せない本を見せてくれる。いいなー。良々さん、すげえ勉強してるなあ。芸事が大好きなんだな。ビデオで立川談志さんの『日本の笑芸百選』を観ながらみんなで飲む。良々さんに「今までお会いした人の中で、すげえなあって一番感心した人って誰ですか?」と質問したら「勘三郎さんや柄本さん、タケシさんもすごいと思ったけど、一番想像を超えて来たのはキタロウさんだね」と言われて意外だった。西本さんが祀られている渥美さんの写真を見て「柄本さんも、渥美さんと勘三郎さんの写真を飾られているよ。あと相米さんのサンダル」と言っていた。アタシも部屋にショーケンさんと田中邦衛さんの写真(『アフリカの光』のスチル)を飾っているが、尊敬している方の写真を飾るって事がちょっと恥ずかしくもあった。でも柄本さんや良々さんも飾っているなら恥ずかしがる事ねえや。ちなみに柄本さんは渥美さんに誘われて、よく映画や演劇を観に行っていたそうだ。あの同業嫌いの渥美さんが! 更に談志さんが亡くなるまでの姿を写したドキュメンタリーを観て、皆、食らってしまって帰る。芸事を齧る者で、あの談志さんの死に様をみて平気なヤツはいないと思う。色々考えた。
某日、朝、下北へ。昨夜、西本竜樹さんに教えてもらったアトリエ乾電池『朝の朗読会』を観る。1年前から不定期で柄本さんが始めたそうで、最近は基本的に毎日、朝9時から9時半までやっている。3人の演者がそれぞれ10分、好きなものを朗読する(朗読じゃなくてもいいらしい)。もちろん柄本さんも出れる日は出る。しかも観劇無料。そんな面白そうな企画、絶対観に行くしかない。カミさんにブーブー言われたが、昨日談志さんの生き様を見たからそんなの気にしない。影響されやすいやっちゃなあ。観客はアトリエのご近所さんを中心に10人くらい。とても贅沢だ。あえて宣伝もしておらず、知る人ぞ知る会なんだな。劇場に入る前に、柄本明さんから話しかけられる。「某映画、観た?どうだった?」あの目で聞かれた。映画の感想は誰に対しても忖度しないので正直に「自分は正直、あんまでした」と言うと「そうだよなー。××は観た?」「観てません、どうでしたか?」「あんまりよくないよ」その後、片山慎三さんを褒めてくれる。『さがす』が面白かったらしい。柄本さん、もう75歳でしょ? 今だに若い監督の映画を追ってるんだ。もうビョーキだな。やっぱりこのヒトは尊敬する。朗読会はまず柴田鷹雄くんが別役実『風のセールスマン』を朗読。昔柄本さんが一人芝居を演じたそうで、出版はされていない作品らしい。柴田くんは柄本さんの芝居を映像で見てこの朗読に挑んだそうだ。アタシの知らない戯曲だったが、面白かった。柄本さんも客席で聴いている。お客さんも分かっているヒトで、笑いも起きる。2人目は西本竜樹さん。西本さんは大の東映マニア。朗読はまさかの『汐路章さんのインタビュー』。これが抜群に面白かった。そもそも汐路さんを選ぶセンスも凄いが、インタビューを朗読するなんて初めて観た。汐路さんの話す内容も面白いし、西本さんの語りも面白い。このインタビュー朗読は一つの芸になる予感がした。最後は柄本明さんが見川鯛山の短編を朗読。タイトルは忘れてしまった。75歳になっていまだに毎日芝居する柄本さんの姿を見て、尊敬すると同時に、チクショー!とも思う。毎日観客の前に立つ意味。なんかそこに答えがある気がする。アタシもそうありたい。そして、できる限り柄本さんを追ってやる。いい勉強をさせてもらった。終演後、柴田くんと西本さんと話す。その後、登戸に行ってセリフ練習。永江組の準備。府中に出て「シャガァル」で班長さん(山本浩司さん)、水澤紳吾さんとコーヒー。班長さんからお土産をいただく。夕方、帰って永江組のセリフをレコーダーに吹き込む。倅をお迎えに行き、飯。夜、実家に顔を出して両親とひとっぱなし。
某日、朝、下北沢へ。水澤紳吾さんと一緒にアトリエ乾電池で『朝の朗読会』を観る。開演前に柄本明さんから「なんで毎日来るんだよ」と冷やかされる。一人目は、柴田鷹雄くんが別役実『風のセールスマン』を朗読。すごく印象的なセリフで、この戯曲で芝居してみたいと思った。柴田くんの朗読を聴いていると、情景が浮かんで想像が膨らむ。同じ朗読という行為でも、ヒトによって全然違うから不思議だ。声の質や読むスピード、戯曲の内容に関係がありそうだな。2人目は川崎勇人くんが宮沢賢治の『いちょうの実』を朗読。三組目は、柄本さんと女性俳優が竹内銃一郎『氷の涯』(昔、乾電池で講演した)をやる。柄本さんの芝居を集中して観る。もう15年くらい前に井口昇組で、自分の出番がない時も柄本さんの芝居を観ていたら「なに睨んでんだよ?」と言われて「や、睨んでないっす」「芝居なんか観てもわかんねーよな」と言われたのを思い出した。終演後、水澤さんと「面白いし、勉強になるな」「ですよね」なんて話し合う。柄本さんも「しばらく現場で参加できないけど、劇団員がやってるから観てやってよ」と声をかけられる。西本さんや柴田くんと話して帰る。と思ったが、魔が差して、水澤さんと「カレイド」でスマスロ版北斗の拳を打ちに行ってしまう。「2千円だけな」なんてお互いに約束していたのに演出に引っ張られてズルズル追加投入。やっとビッグを引いて1000枚出す。昔の北斗が打てると聞いていたのだが、今回のは当時の演出と全く違っていた。1万プラス。水澤さんも最後になんとか引いてトントン。負けなくてよかった。そのまま府中で歩き念仏をするつもりだったが、一度うちに帰って1000円カットで6ミリの丸坊主にする。あったかくなると坊主にしたくなる。もちろん永江組のため。今日はうちでズルズルシナリオを読んで終わり。夕方、倅を学童に迎えに行って一緒にマイクラ。昨日からとうとうカミさんもやりだしてしまった。明日からは集中してセリフを入れる。
某日、朝、倅を小学校まで送って、「カフェ・ド・クリエ」で永江組『リゾートバイト』のシナリオを読む。10時から歩き、セリフ念仏。府中ー登戸の多摩川コースを往復。暑くて日に焼けるが、今回の役には合っている。両足の親指の腹にマメ。この歩きマメの感覚は懐かしい。『オノダ』の時にも、この多摩川沿いを歩いてセリフをやって、マメが潰れた。3時頃秋津に戻って、右肩が回らないので久しぶりに指圧に行く。これも先日の北斗のおかげ。担当の指圧師の女性が妙に色っぽくて、ボッキしないか心配だったが、無問題。帰ると、カミさんに「ゆでダコみたいに赤くなりやがって。お散歩してるだけじゃねえか」と励まされる。倅とマイクラ。夜、永江組の総スケと差込が届く。体重65・25キロ。連休で戻ってしまったので不安。落とさないと。
某日、朝、「カフェ・ド・クリエ」で永江組のセリフの確認。午前中、府中に出て多摩川を登戸まで往復。4時間セリフ念仏。今日で、後半部分のセリフも入った。どれだけ深くセリフを入れられたかと、セリフから解放されて自由に芝居ができるかは比例関係にある。だからやらなきゃだめなのよ。カミさんが「あんたはサボってるだけ。本気でやったら半日で覚えられる」と言うが、それは違う。いくら回数をやっても浸透する時間が必要だ。そもそもセリフって覚えたら終わりじゃなくて、そっから芝居がスタートするしな。歩きながらもたまに柄本明さんのことを考える。75歳になって毎日芝居をしたいという貪欲さ。すごいと思う。復路の京王多摩川駅近くを歩いていたら、土砂降りの雨。仕方ないので、京王多摩川から府中まで電車。雨が止まないので、駅ビルでカミさんへの母の日のプレゼントと、森達也さんの誕生日プレゼントに靴下を買う。一度帰宅し、倅をお迎えに行く。夜、新宿へ。「嵯峨野」でジャーナリストの綿井健陽さん、森達也監督、漫画家の石坂啓さんと飲む。石坂さんからチョコレートのプレゼントをいただく。始まりはもっぱら『福田村事件』の話。綿井さんと石坂さんは試写を観ていた。アタシはまだ未見。しかし色々あったことは漏れ伝わっている。石坂さんがアタシの似顔絵を描いてくれた。嬉しかった。綿井さんの話すウクライナの話もそこそこに、後半はバカ話になってキャッキャする。綿井さんが、昨日誕生日だった森さんのために、「6」と「7」のロウソクとハッピーバースデーサングラスを用意してくれていた。あの森達也が、浮かれパーチーピーポーサングラスをかけてロウソクを吹き消す。笑った。綿井さんも最近までウクライナで迫撃砲の元、取材していたヒトなのになあ。すごくカッコいいオトナだ。森さんはお袋と同い年かもしれない。驚いた。お会計はいつのまにか石坂さんが払ってくれたいた。ありがとうございます。石坂さんの気遣いには頭が下がりっぱなし。楽しい夜だった。帰って石坂さんの描いてくれた似顔絵を飾る。
某日、朝、所沢の「ドトール」で永江組セリフの確認。順調に入っている。午前中、聖地霊園ー東所沢コースを歩き、セリフ念仏。思いの外、セリフが定着していたのと、今作はホラー映画なので祖父母の墓参りをしたかったので、練習コースを所沢にした。ホラー映画に関わるから墓参りって自分でも意味がわからないが、でも行きたいと思ったら行くべき。久しぶりに墓参りもできて、墓前でタバコを吸いながらいい気分だった。帰って、パッキングの準備。夜、阿佐ヶ谷へ。片山慎三監督と撮影の俵健太くんと居酒屋「越川」で飲む。初めて行った店だったが、料理がいちいち美味くて驚いた。こりゃあ名店なり。ケンタも片山さんもすぐに打ち解けて、段々バカ話になってくる。「越川」の払いは巨匠がやってくれた。ご馳走さん! 2軒目は南阿佐ヶ谷駅近くの葉巻バー。ここで食べたチーズレーズンも絶品だった。今日も楽しい時間。ああ、終電を気にしないで飲みたいなあ。帰ってパッキングをするつもりだったが、かったるくなる。まあ、朝にやりゃあいいか。
某日、永江二朗組『リゾートバイト』撮影のため、岡山県は笠岡市まで移動。朝、バタバタパッキングして出る。長期ロケの準備は早めにやったほうがいいな。