某日、昨夜は結局3時過ぎに帰ったので10時くらいまで寝てしまう。カミさんが気遣って起こさないでくれた。午前中、倅の歯の定期検診で歯医者へ。小学生に上がったので今まで無料だった歯科検診も有料に。検診後、倅と実家へ向かう。歩いていると2週間後の市長・市議会選挙のポスターが張り出されていた。候補者に女性が多く、良いことだと思う。今回の選挙、みんな行ってくれると良いなあ。昼は実家で倅とアタシの合同お誕生日会が開催された。祖父と両親、カミさん、アタシ、倅が参加。中華料理や食べたかったケンタッキーフライドチキンを食う。美味かったなあ。両親からウラジミール・ソローキン著『ブロの道』、『氷』、『23000』、『テルリア』の4冊、カミさんからはアピチャッポン監督『メモリア』のブルーレイをプレゼントされる。嬉しいなあ。ありがとうございます! 夕方、うちに帰ると昼寝してしまう。夜、森達也組『福田村事件』のメイキングで参加していた、ジャーナリストの綿井さんが取材したウクライナの映像が、BS朝日の日曜スクープで放送。実家で祖父と両親と一緒に見る。綿井さんも番組に出演されていた。ウクライナの東部戦線の最前線近くの村で、避難できない理由がある人々がいる現実に胸が痛んだ。身体や精神にハンデがあったり、高齢で残る判断をせざるを得ない方々がいる事を知らなかった。ニュースや報道で、戦地の状況はなんとなく知った気になっていた。でも知った気になっていただけで、ニュースなどではこぼれ落ちてしまうそこに暮らす人間の姿こそ現実だし、それを映す事にジャーナリズムの意味があると思った。帰って、日記。Aさんに差し入れで井原忠政著『百人組頭仁義』を送る。
某日、内装仕事で工房。深夜3時に肛門の痛みで目覚める。恐る恐る患部を触ってみるとカシューナッツ大にいぼ痔が膨れている。しかも熱い。ボラギノール軟膏を塗って寝る。5時頃、再び痛みで目覚める。患部を触ると梅干し大に腫れ上がっていた。梅干しといっても、ロケ弁のご飯の上にのっている着色料をたっぷり含んだちっちゃい梅干しじゃない。1粒1000円とかする超高級紀州梅干し大になっていた。もう、激痛。慌ててボラギノールの座薬を入れようとしたが、紀州梅がブロックしてうまく入らない。強く押し込むと激痛が走るので、紀州梅になるべく触れないようにしながら、ゆっくりと突入させる。うつ伏せで膝を抱え込んでケツを突き出し、慎重に座薬を入れていたら、タロとチョメが背中に乗ってくる。朝っぱらから猫2匹を背中に乗せて座薬を入れるオッサンの姿ほど間抜けなものはないと思う。10分かけて座薬を入れ込み、猫を乗せたままの姿勢でしばらく動けなくなる。電車での通勤時も階段を降りる時は、肛門が紀州梅ちゃんとなるだけ擦れないようにゆっくり降りなければいけない。ラッシュ時で駆け下りてくるお兄ちゃんとぶつかって、思わずバカでかい声で「気をつけろ!」と叫んでしまった。アタシの殺気立った顔にのまれたのか、お兄ちゃんが「すいません」と謝ってくれた。だけど正直それどこじゃなかった。紀州梅ちゃんが噴火しそうで、痛くてうずくまりそうだった。工房に着く頃には痛み止めが効いて、だいぶ楽になった。本日も箱根の什器製作。午前中はラジオでクラシック音楽を流しながら、紀州梅ちゃんを怒らせないように細心の注意を払って作業する。昼抜き。梱包シートにくるまって昼寝。座薬投入。なぜか午後になるとラジオからアニメソングが流れる時間帯があって、その頃痛みがぶり返してきたので、禁断の座薬3発目投入。夕方、什器の積み込みをしていてかがんだ瞬間、激痛。しばらく動けなくなる。かがむ姿勢はヤバイ。井上さんから連絡。東映ビデオの藤田さんから、誕生祝いのお花が届いたとのこと。ありがたいです。紀州梅ちゃんを気遣いながら慎重に帰って、倅とマイクラ。うちを建ててベッドを作った。夜、ごーいち(嶺豪一くん)から電話。今日は箱根の内装現場に行っていたらしいが、夕方、都内でアフレコだったらしい。気付いた時にはもちろん間に合わず、明日に変更。しょげていた。先輩風を吹かせて「やっちまったもんはしょうがねえんだから、明日のアフレコ頑張れ」と励ます。ごーいちも高級紀州梅大のいぼ痔を抱えて痛みにのたうつ禿げたオッサンに励まされるなんて、もっと良い先輩がいるだろうにな。
某日、紀州梅ちゃんの痛みが辛い。内装仕事で箱根。5時起きで門仲の工房に集合し、伊藤くん、ごーいちの同級生・たけさんと共に箱根へ。ハイエースでの移動が辛かった。クソ硬い座席が段差で突き上げられる度に、背骨に針を刺されたような激痛が走る。箱根の現場に着くまで紀州梅ちゃんが耐えられるか不安だったが、乗り切った。荷揚げは12・5ミリのボード、ケイカル140枚とベニヤ60枚、ツーバイ材60本、角材20本、垂木10束を荷揚げする。青木さんの若い衆2名、材料屋のバードさん、ごーいちも合流し、みんなで荷揚げ。坂や階段がきつい。あたしゃ、もう42歳だわ。いつまで荷揚げせんといかんのよお。紀州梅ちゃんは労働中はおとなしくしてくれた。13時に荷揚げが終わり、厚木の木材加工屋で材料を引き上げ、工房に搬入。昼抜き。仕事終わりで下高井戸へ。東龍之介くんと「コロラド」でコーヒーを飲みながらお喋り。夜、下高井戸シネマでサトウトシキ監督『さすらいのボンボンキャンディ』を観る。偶然にも岡部尚たんも来ていて、並んで観る。良い映画だった。主演の影山祐子さんとはもう長いこと知り合いだが、良い作品に巡り会えたなと嬉しくなった。俳優はいくら準備が出来ていても、役を引き当てられるかは縁や運だ。だから極論を言えば、アタシら俳優部にできることって、俳優業を続けることだけなんだ。周りが仕事に恵まれたり評価されたり色々あるけど、淡々と自分を見失わずに続けるだけ。影山さんがそうやって来たのを感じていたので、本当に喜ばしい。今作で影山祐子を知る人が増えるだろうし今後の仕事に繋がるはず。上映終了後にトシキさん、影山さん、谷岡何某のトークショー。谷岡さんの発言に腹がたつ。主演の影山さんの名前を一切呼ばず「お前」とか「女優」と吐き散らす。「あんた、俳優続ける気あるの?」「俳優そんなやってないでしょ? 見た事ないもん」等、影山さんへの敬意のない発言に思わず「影山、殴っちゃえ!」と客席から怒鳴ってしまう。その後も「あんた結婚してんの?」と芝居とは一切関係ない事を壇上で発言していて、このまま聴いてたらアタシが殴っちゃうなと思ったので、退席した。谷岡さんの本を数冊読んでいたし、著作に私の事を書いてくれていたので、余計に不愉快だった。アタシが壇上にいたら必ず鉄拳制裁しちゃうけど、相手を見て言ったりするんだろうなあ。電車の中で忘れていた紀州梅ちゃんが痛み出して、虚しくなる。
某日、重度の映画鑑賞発作が起きたので、本日は内装仕事を休んで映画を観る。朝から新宿のバルト9へ。本日はサービスデーで1本1200円。ありがてえなあ。まず、ナイト・シャマラン監督の新作『ノック 終末の訪問者』を観た。シャマラン監督は当たり外れがでかいと言われているが、今作は大好きな作品でした。始まりのシーンからデイヴ・バウティスタの恐るべき顔圧をこれでもかってくらいに寄って、不穏な感じや緊張感を作りだすさすがの演出。コレです!ナイスシャマラン!殺人シーンも意外とあっさりしていたり、直接映さなかったりでそこも上品。カット割りや演出も、これ見よがしな所がなくていい。観終わってから、川瀬陽太さんとメールで感想をやり取り。「こういう映画、なんで日本でできないんですかね?」「やっぱ、根底にアメリカの宗教観・終末観ってのがあるから日本じゃ難しいかもなあ」と川瀬おじさん。さすがだなあ。2本目はキム・ホンソン監督『オオカミ狩り』。釜山映画祭に行った時に、韓国で劇場公開されていて入っていたので観たのだが、ムムムだった。なんだろうな?ただ、若い女性客が多くて驚いた。昼過ぎに、班長さん(山本浩司さん)が新宿に来てくれたので合流。紀伊国屋のDVDが売っていた別館が改装になっていて驚いた。ああ、新宿のDVD売り場が無くなっていく。仕方ないので、ディスクユニオンシネマ館へ。班長さんとキャッキャしながらDVDをチェック。デヴィッド・フィンチャー監督『パニックルーム』、ジョエル・コーエン監督『未来は今』、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『メッセージ』のDVDが全て900円以下だったので救い出す。喫茶店「タイムズ」でお互いの近況報告とオシャベリ。そして新宿ピカデリーで、ベン・アフレック監督『AIR エア』を2人並んで鑑賞。大当たり!面白かったなあ。誰もがナイキのエアジョーダンは知っているので、結末なんかわかり切っているのだが、マット・デイモンの芝居で見せちゃうんですよ。爆破や銃撃なんかもちろんなくて、会話が多いのだけど、俳優がいい芝居するからグイグイ惹かれてしまう。出てくる俳優が皆いい。お互いに芝居していて楽しいだろうし、現場の雰囲気もよさそうだなあ。観終わった後に、クリス・メッシーナとマット・デイモンの電話の掛け合いのシーンをどうやって撮影・演出したのか、班長さんと真剣に話し合っちゃったもんな。監督の俳優の芝居を撮るってスタンスが好き。ヤツラの芝居に圧倒された。チクショー! それに比べて、我がジャパンにはこのレベルの俳優が何人いるだろうか? 残念だなあ。夜、倅と「マイクラ」をやる。アタシも正直プレイしてみたい。今日はかまどと松明を作っていた。倅は近視だったらしく、週末に眼鏡屋さんに行く。本やゲームが原因じゃなくて、アタシとカミさんが超近視なので、遺伝しちゃったんだろうなあ。
某日、内装仕事で工房。通勤読書は、ウラジミール・ソローキン著『ブロの道』。氷三部作の一部目。ソローキンはなかなか翻訳されておらず、初期の作品はまだ読めていない。ただ、訳者の松下隆志さんの翻訳が良いので(ソローキンの翻訳に関しては松下さんが第一人者っぽい)今後、初期作品も発売してほしい。本日も箱根に設置する什器の製作。昨日ごーいちがうったパテのやり直し作業で午前中が潰れる。もうちょい考えて作業してほしいぞ。何事も同じだと思うのだが、言われたことの意味を理解して作業を進めないと、二度手間になる。俳優も同じだと思う。監督の演出の意図を汲み取って、体現する。言葉の真意を探れないと、言われた事をやるだけの芝居になっちゃうぜ。昼飯抜き。夕方まで作業して帰る。帰ったら飯をかっ込んで、倅と「マイクラ」。今日は石の家を作っていた。マイクラも自分で作りたい物の原料を集め、加工して、道具や材料を作る。すごく深くて面白い。倅はパソコンの操作に慣れ始めて、アタシなんかより上手くなった。キーボードとマウスを駆使して動かすなんてすごい。倅は小学校で初の算数テストがあって、100点だった。「おい!すげえな!あんま100点取ると天才になっちゃうから程々にしとけ」と言ったら「じゃあ、次はわざと0点とる」「そうだな。100点も0点も経験しとくといいぞ」と言ったら、カミさんに引っ叩かれた。「フライングポストマンプレス」というフリーペーパーに向井康介さんからの手紙が掲載された。向井さんへの返信も載っている。向井さんはアタシの結婚届の保証人。もう長い付き合いだ。下北でクダ巻いていた先輩たちが、今やアカデミー賞を獲るんだもんな。不思議だ。夜、沢木耕太郎著『天路の旅人』読み終わる。ああ、放浪したい。金はなくていいから、時間を気にせず予定も立てず、アジアを彷徨きまわりたい。まとまった金が入ったら、中国を西進してキルギス・ウズベキスタンを通ってモスクワ目指すとか、中国を南に下って、ブータン・バングラディッシュ・ミャンマー・マレーシアと東南アジアを巡るとかやりたいよお。金くれ!金!
某日、内装仕事で工房。通勤読書はウラジミール・ソローキン著『ブロの道』面白い。だいたい帰りの電車では疲れてしまって、本を読まない事が多い。しかし疲れていても『ブロの道』の続きが読みたくなってしまう。『親衛隊士の日』もそうだったが、ソローキン作品は現在のアタシと合っている。本日も箱根用の什器製作。昼飯抜き。休憩時、みよさんと「男の見極め方」の話になる。「結婚したい」という女性に対して、どうやっていい男を見極めるか?というお題だった。みよさんは「金にならなくてもいいから、毎日働きに出る習慣がある男がいい」と言っていて、なるほどと思う。アタシは「言葉や行動は、短い時間じゃ判断できないと思うから、手を見るといい」とアドバイスした。振る舞いって演じることができる。それは俳優に限ったことではなく、ヒトって状況に応じて演じている。だからそこで判断するのって難しい。しかし、手は嘘をつかない。働いているヒトの手ってわかる。手を動かす事で筋肉や血管が発達したり、職業によっては指先が荒れていたり、関節が太くなっていたりする。指にタコがあったり、爪に塗料が付いていたりする。もしかしたらガキの頃に自分で入れたタトゥーがみえたり、拳裂傷の痕があるかもしれない。その手をみたら色々わかるんじゃないかな。顔や服装は装えても、手までは考えないもん。私の手は拳裂傷がいくつもあって、左手首には薬品火傷の痕、丸ノコで裂きかけた傷がある。まあ、こんな手は選ばれねえな。仕事終わって、すぐうちに帰って倅とマイクラ。今日はボートと釣竿を作って、釣りをしていた。文字を書くことが苦手な倅に、マイクラ日記を書いてもらう。その日にやった作業を1、2言で書くだけだがいい練習になると思う。夜、DVDでドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『メッセージ』を観る。いい映画って、いつ観ても面白い。