某月某日、映画の日だったので渋谷の文化村でリューベン・オストルンド監督『逆転のトライアングル』を観ようと朝から渋谷へ。公開を楽しみにしていたのだが先日、家庭内緊急緊縮政策が強制施行され好きに映画を観られる金がなくなってしまった。せめてサービスデーで観ようと、本日1日を心待ちにしていたのだ。しかし新宿三丁目に着いた時にカミさんから入電。「うちの鍵がないから入れない。帰ってこい」有無を言わさぬ口振りだった。最近の離婚騒動もほとぼりが冷めていないので、ムムムと下唇を噛み締めながら仕方なく帰る。カミさんの為におうちの鍵を開けて、所沢駅で明日の羽田空港行き高速バスチケットを買う。「ツタヤブックス」で、Aさんに吉村昭著『漂流』も買う。午後、元町中華街へ。赤堀雅秋さん演出『蜘蛛巣城』をKAATで観劇。偶然にも奥野瑛太くんと松澤匠くんと並びの席だった。美術も素晴らしく、何より班長さん(山本浩司さん)の芝居が抜群で嬉しくなる。芝居も面白かった。終演後、班長さん、水澤紳吾さん、奥野くん、松澤くんと武蔵小杉の居酒屋で飲む。出演者だった班長さんと水澤さんが奢ってくださる。普通は出演者を労って、観劇した方が払うのになあ。班長さん、水澤さん、ご馳走様でした! 帰って、K組の新作映画『A』撮影のため、台湾行きのパッキング。いまだに詳細がよくわかっていないが、まあ何とかなるでしょう。明日から渡台。Aさんに本の差し入れと手紙を書いてレターパックに入れる。今月は阿佐田哲也著『雀士流転』と『東一局五十二本場』、吉村昭著『漂流』の3冊。通勤読書で団鬼六著『死んでたまるか』読み終わる。団さんのエッセイはウィットに富んでいて面白い。学がある人に多い、鼻につく感じもない。好きな文章だった。
某日、K組『A』の撮影で台湾へ。6時起きでリュックを背負って所沢駅まで歩く。アタシはどんな長期ロケでもリュック1つで行くのだ。外国だろうが国内だろうがそれは変わらない。日本はまだ寒いけどメインのロケ地である台湾の嘉義市は日中25度らしいので、ウィンドブレイカーとTシャツにビーサンという軽装にした。羽田空港までは高速バス。コロナの影響で、バスの羽田空港線もここ3年くらい中止だったが昨年から復活した。成田線はまだ中止しているみたいだ。羽田第3ターミナルでエバー航空のカウンターで手続きする。免税店で女性俳優部のNさんのタバコを購入。航空券をチェックされたのでアタシの分は買えず。まあ仕方ねえ。飛行機のお供本はスウェイン・ヘディン著『ゴビ砂漠探検記』。アタシは飛行機が苦手なので席に着いたら、すぐに読書し恐怖を忘れるのだ。台湾の松山空港まで約3時間のフライト。もうちょい搭乗時間が長けりゃ眠剤飲んで寝るのだが、3時間で起きれなかったら怖いので我慢。エバー航空の搭乗手続きをネットでしたのだが、機内食を選べたので「グルテンフリー」にした。これが当たり。メインの白身魚とエビとイモをオリーブオイルで煮たヤツが美味かった。これから何度か搭乗機会があるから、毎回グルテンフリーにしよう。座席は3人掛けの端だったが、真ん中に人がおらず伸び伸びした。ただ、反対に座ったオッサンは黒スーツで角刈り。足の裾からは立派なモンモンがチラチラしていた。稼業人のオッサンは初の台湾らしく、後ろに座っていた同業者に「台湾、あついなあー」と何回も言っていた。まだ飛行機だから台湾の気温は関係ないのになあ。本を読んだりウトウトしてるうちに、台北松山空港に到着。入国手続きもサクッと済んで、とりあえず5000円分両替しておく。約1200元くらい。「さて、どうすんべえか?」と思っていたら、出口に『K組』と書かれた紙を持った青年がいた。王柏文くんで、大学で日本語を学ぶ学生さん。映画『聲の形』を観て、日本語を学び始めた好青年。王くんにアテンドしてもらって、松山空港からタクシーで、台北駅へ。台北駅から新幹線で嘉義駅。道中、台中関係や徴兵制の政治談義。天皇制を説明し、郭泰源の偉大さを話していたら嘉義駅に着いた。嘉義でプロデューサーZさんに迎えてもらって、撮影現場へ。主演俳優・某くん、片山組のクルーと「やあやあ」する。本日が撮影初日だそうで、現場もワキャワキャしていた。ホテル「洄嘉居行旅」へ戻り、Nさんと夕飯。近くにあった食堂「小龍」で小籠包と苦瓜排骨湯、蝦餃を食う。店員さんも可愛らしくて、料理も美味かった。二人で250元くらい。Nさんとエールを交換し、ホテルで倅とスカイプ。マネージャーの井上さんとメールでスケジュールの相談する。
某日、K組『A』撮影で台湾・嘉義。(今回の作品はまだ発表されていないので、仮名になりやす)朝7時に起きてホテル1階のスタッフルームに行くが、用意されていると言われた朝飯が見つからず。なんだかなあ。減量もあるし、まあいいか。昨夜の夕食は何回も「レシートをくれ」と言ったが、「メイヨー」と言われた。手持ちも残り700元しかないので、朝食は我慢する。本日はアクション練習の予定だったが、スケジュールが変わって休みになってしまう。台湾の制作部さんからポケットWi-Fiを渡されたので、借りているスマホで地図も分かるし街をウロウロするか。9時前にホテルを出る。なんとなく歩き始めたが目的地はない。所々で下水の匂いがして、ちょっとカンボジアを思い出した。やはり嘉義市も原付バイクが多い。老若男女みんな原付。歩道のスペースがない裏通りでも、結構飛ばす。なかなかやるなあ。「嘉義市慢速壘球委員會球場」と書かれた野球場を発見。小学生くらいの子供たちが野球の試合をしていた。なんとなく観客席に入り込み、親に混じって観戦。少年野球嘉義市チームの紅白戦。軟式で金属バット使用。死球を当てた投手がキチンと脱帽して謝る。なんかいいなあ。アウトを取るたびに野手が声出しして歌をうたう。それもいい。体がデカい子がレフトを抜けるヒットを打ち、全力疾走するが、鈍足。みんなに「ホーム、ホーム!」と言われて必死で走るが、レフトの返球に刺されてホームアウト。笑った。隣に仲の良さそうな夫婦が子供を応援していて、こういう幸せそうな夫婦って存在するんだなと勉強になった。しばらく観戦していて、ふと昼間っから異国で少年野球を観戦している自分が不思議になる。アタシは何してるんだ? 試合終了と共に急に寂しくなって、球場を去る。今度は繁華街に向かって歩く。駅に通じる「新民路」というメインストリートを歩くが、交通量が多くあまり楽しい道ではなかったので、「西門街」や「康樂街」と書かれた裏通りを散策。ローカルな飲食店や路上売りなどごちゃごちゃした通りは、見るものが多くて楽しい。台湾の看板は漢字なので、なんとなーく意味が想像できる。茹で麺の匂いや油の匂いが入り混じり、腹がへる。しかし手持ちが少ないからなあ。カネはありゃあるだけ使えるが、なけりゃ無いなりに楽しみ方がある。チンタラ歩きながら、爪を切るじいさんや、店の厨房で夫婦喧嘩するオバチャンを見ているだけで楽しいのだ。「包子饅頭 真甄」屋台の饅頭屋があった。とっくに昼は過ぎていて商品も少なくなっていたが、5個入りの赤い実の入った大きな饅頭(干し葡萄のような味)を買う。85元。すぐにひとつパクつくと、美味いし腹に溜まる。いい買い物をした。「台湾花甎博物館」台湾のオールドタイルの博物館。気になって入ってみた。細かい掘りと着彩でカッコいいタイルの数々が展示されていた。係の方も若い女性で「日本人ですか?」と声を掛けられる。展示場に入るのに靴を脱ぐのだが、ビーサンで裸足だったからかな? 入場料100元。しかし、いい作品が拝見できて満足。お土産にタイルを買いたかったが、400元以上だったので今回は諦める。ホテルに戻りながらスーパーで水2本とマルボロメンソール、マスクを買う。台湾はマスク着用率が日本より高いな。手持ちの残金360元。饅頭が残りひとつ。ホテルに戻り風呂に入るが石鹸がない。ベッドでウトウトする。そういや、今日はセリフやってないな。まあいいか。明日も撮影はないらしい。予定がすでに変わりまくっているが、それもK組らしくていいじゃないの。ただ、手持ちの金もねえから映画を観ることさえできねえな。あ! そういえば、スーパー以外の買い物はレシート出してくれなかった。参ったなあ、清算できるかなあ。もっと金を持ってくりゃあよかった。や、持ってくる金もねえか、、、。夜、山崎努著『俳優の肩越しに』を読み終わる。時間を余してしまうので本を多めに持って来て正解だった。
某日、K組『A』撮影で台湾・嘉義。昨夜なかなか寝付けず読書していたので、夜更かし。9時過ぎに起きる。起きたものの、なかなかやる気が起きない。台本を開く気にもならない。ついついダラダラしてしまう。本日は撮影予定だったが、出番の撮影がなくなる。フレキシブルにスケジュールが変更しているっぽい。ホテルでグダグダしていても仕方ないので、気合を入れて外に出る。外はすでに暑くなってきていて、日差しが強い。歩くと腹が減るが、無目的に街をフラフラする。若い頃に海外をウロついてた時のことを思い出す。でもアタシャもう41チャイよー。「仁愛路」の市場のような通りを歩くと、麺を茹でた匂いや油で炒める匂いがして腹が減る。あれ、昨日とおんなじ事を書いてるな。でも本当に腹が減るのよ。手持ちに限りがあるから「今は我慢だ」と自分に言い聞かせるが、やはり屋台で野菜を切ったりしている店員さんの姿に目移りする。誘惑が多いよ、台湾。飯が美味そうなんだもん。台湾は外食文化なのかな?みんな飲食店で飯を持ち帰っている。今日は土曜日だったからか、人出が多い。通りを歩いていて、老人が乗っている電気バイクが危ないのだ。スピードはそこまで出ていないが、音もなく近付いてくる。しかもアタシが避けるだろうと思っているのか、1ミリも避けようとせずに突っ込んでくるのだ。台湾的電気バイク注意! 掲示板に町の地図があって「埤子頭植物園」を発見。植物園なら金もかからず暇潰しできるだろ。街の誘惑にフラフラしながら小1時間歩いて、植物園に着くものの入り口が閉まっている。看板が出ていて「11時半から13時半までは、お休み」的なことが書かれていた。なんだよ! 11時半を5分過ぎていた。ツイてないなあ。仕方ないので、周りをウロウロしていると公園を見つける。ベンチもあったので、一息つく。すると爆音で台湾的民謡とセリフが聞こえて来る。軽トラの荷台に舞台を設置して人形劇をやっている。派手な装飾をしてズンドコしていて、周りにも人がいるが誰も人形芝居を観ていない。近寄ってしばらく眺めるが、あまり興味が湧かなかった。再びベンチに戻って、山田由梨組『品川心中』のセリフをやる。が、すぐに集中が切れてしまう。何故、異国の地でもセリフなんざやらにゃいかんの! それが旦那の仕事でしょ? 台湾の気候がちょうど良く(26度)天気も良いから、セリフやるのがバカらしくなってしまうのだ。目の前にある干上がり掛けた溜池からたくさん亀が顔を出している。目を細めて幸せそうに日光浴している亀を眺めていると、30分経っていた。台湾亀時間泥棒、我気付。亀を眺め続ける1日もなかなか贅沢だが、腹が減って我慢できないので昼食探しの旅へ。先程目星をつけたベジタリアン料理店「素才蔬食館」へ向かう。美味そうな料理をバイキング形式で好きなだけ弁当箱に入れる量り売りの店。しばらく店前で観察して買い方を理解した。歩きながらカミさんと倅にスカイプ。カミさんから「あんた何しに台湾行ってんだ?グルメ旅行か?」とごもっともな御意見をいただく。や、アタシも困ってるんでございますよ。30分歩いて「素才蔬食館」に到着するも、閉まっていた。なんだよ! 今日はとことんツイてねえや。まあそういう日なんだな。飯探しで仁愛路の屋台をチェックし、「合家香魯軟骨飯」で魯肉飯便當(大)65元を買う。茄子の煮浸し、厚揚げの煮物、漬け物的野菜、ご飯の上には豚肉がぶっかけてある。これを食うべ。途中、揚げパン屋の「二良脆皮烤饅頭」で揚げパン的饅頭を4個買う。40元。そして明日の朝食用にパン屋「馥醍烘培坊」で菓子パンを3つばかし。これが1番高くて160元。でも美味そうな菓子パン。早速部屋に戻って平らげる。いや、美味い。台湾料理って何を食っても美味い。台湾の料理に対する矜持を感じる。アタシはどこへ行っても食べ物を美味く感じてしまうのだが、台湾料理は本当に美味いよ。減量してなくて、ゼニがありゃ、際限なく食うわよ。腹が膨れりゃ、眠くなる。これ、人間的道理。夜中まで寝てた。夜中起きるが、また不思議と腹が減っていた。朝食用のパンを平らげてしまう。おいおい、減量大丈夫か?!
某日、K組『A』の撮影で台湾・嘉義。7時に起きる。部屋はおそらく禁煙なのだが、窓を開くと吸い殻が大量にあった。みんな窓際で吸ってやがるな!今日1番の発見。アタシも窓を開けてコソコソ吸う。カミさんと倅にスカイプ。今日は2人で映画ドラえもんを観に行くそうだ。アタシもやっと本日撮影で出番がきた。ナイターシフトで13時にホテル出発。ちょっと時間あるな。とりあえず日記を書いて風呂に入る。セレブみてえな生活だな。監督のKさんに「飯行こうよ」とメールするが、返信なし。なんだ?忙しいのか?12時まで待つが連絡ないから、昼飯を買いに行く。近くにある食堂「小龍湯包店」今日も可愛らしいお姉さんが料理している。彼女たちは台湾の子ではなくベトナム人らしい。撮影現場にさえ行けば飯は必ず出る。今日は飯の心配がないので残金を気にせず豪勢に、「芋頭排骨酥麺」を頼む。麺が米粉、陽春麺、油麺、冬粉と4種あるのを選ぶ。とりあえずわかる米粉にする。あと贅沢にコーヒーも付ける。90元。ちょっと高い気もするが、まあ良い。スープのカップと麺は別で、麺はビニール袋に入っていた。量もなかなかあり、ちょっと味が薄いがグッドでありました。13時にホテル出発。やっと初日を迎えたな。嘉義から40分くらいのジャンさんのご実家で撮影。なかなか広い敷地にたくさん古い建物があって、抜群の雰囲気。今回のスタッフは照明助手、美術助手、制作部、ランナー部(日本にはない部署だが、力仕事の専門家的集団っぽい)は台湾のクルー。現場は日本語、英語、台湾語の飛び交い国際的なり。俳優も日本から来ているメンツは限られていて、脇役の人も台湾在住の日本人と台湾人がごったになっている。もちろん、現場進行は日本語を台湾語に訳して説明するので時間はかかるが、台湾クルーのノリがいいので救われる。しかし、K組。テイクは重なるし更に時間がかかるので、演出部チーフの山口くんはスケジュールが大変そう。主演の某くんやNさんとおしゃべりしながら日中はアクションシーンの段取りをする。日が暮れてからいよいよ撮影。俳優でTさんも来る。アタシはTさんと芝居があるのだが、昔ちょっとした遺恨がありはっきり言って苦手。テストの時にアドリブで「お前ムカつくな、名前なんてんだ!」と言ってきた。やっぱ覚えていたか!アタシもアドリブで返し、バカにした言葉を足したりして『アタシはシッポ振りませんぜ』と芝居でやり返す。「この野郎ってなんだ!」と怒鳴ったり「そんな事言うなよー」と懐柔してきたが、アタシャ一切攻撃的姿勢を変えなかった。Tさんがちょっかいを出してくるので関係性を知らないスタッフさんが、「マツーラさん、Tさんと仲良いんですね」「いや、初めてすよ」「えー!めちゃ気に入られてるじゃないですか!いじられまくってー」と、言われる。そうか、何も知らんから可愛がられてると思ったんだ。真逆よ真逆。まあいいや。前半の芝居でかなり怒鳴ったので、喉が枯れてしまう。ガラスの喉の悪夢再び。録音の秋元さんに謝る。Tさんは現場中ずーっと鼻歌歌ったり、口笛ふいたり、たわいもない冗談を飛ばしていた。凄く寂しがりなんだろうなと思ったが、自分が映らないカットで相手役のアタシを笑わせにかかってきて、同情した気持ちも失せた。カッコ悪いっすよセンパイ。明け方4時過ぎまで撮影する。月の場所が大きく変わって、コケコッコーが鳴き始めた。なかなかハードだし、日が暮れると寒くてきつかった。5時過ぎにホテルに着く。風呂に入ってデジタルチェックインして、7時に寝る。
某日、K組『A』撮影で台湾・嘉義。10時前に起きてパッキング。さすがに眠い。腹が減っていたが、手持ちの元が全くないので機内食まで我慢。11時にホテルをチェックアウトし、コンビニへ。移動費の預かり金があったので、100元借りてタバコを買う。食事は我慢できてもタバコは我慢出来なかった。11時20分にホテル前にタクシーが来ると聞いていたので待っていると、肉屋役の宗佑くんと、商店のおばちゃん役の關多喜子さんと同乗して嘉義駅まで行く事になる。お二人は台湾で活動する俳優。他の脇役の方は素人さんやエキストラの方らしい。どうりでアクションシーンで危なっかしい人がいたんだな。宗佑くんは5年、多喜子さんは15年も台湾で活動されているので、台湾語もペラペラだし現地にめちゃ詳しい。嘉義駅までのタクシー車内から始まり、台北駅までの新幹線の車中で、台湾の俳優の契約やギャラ事情なんかを聞かせてもらう。台湾の映像業界は契約がしっかりしているらしく、昨夜のように長い時間の拘束は違反らしい。1日8時間労働が守られていて、オーバー分のギャラも最初から決まっているのが普通だそうだ。今回はあまりのギャラの安さに他の台湾の俳優は受けなかったそう。なるほど。それで素人さんのような方ばかりだったのか。しかもオーディションは昨年11月にやっていたのに、2週間前まで連絡もなくて作品自体が飛んだと思っていたそうだ。宗佑くんはもう他のスケジュールが決まっていて、今後の撮影は参加できないし、多喜子さんは事務所が昨夜の撮影時間に激怒していてやはり今後の撮影参加は厳しいかもしれないと言っていた。台北駅で宗佑くんと別れる。多喜子さんに「松山空港までならタクシーより地下鉄の方が断然安いよ」と教えてもらい、地下鉄で松山空港に向かうことにする。途中まで多喜子さんも一緒の地下鉄らしいので心強い。しかも多喜子さんが、台湾の地下鉄やバスで共通して使えるパスカード「ヨウヨウカード」を、「1枚使ってないのがあるからあげるよ」とパスケースごといただいた。これは本当に嬉しい。バスや電車に気兼ねなく乗れる。ありがとうございます!地下鉄台北駅からバンナン線で忠孝復興駅まで行き、多喜子さんと別れてウェンシュ線に乗り換え、松山機場駅。松山機場駅と空港は直結しているのでそのまま空港にチェックイン。お土産を買う金もないし、早々に出国カウンターで手続きをしていると、前に並んでいた日本人の若い女性から声をかけられる。「すみません、岬の兄妹のヒトですか?」だって。外国で声をかけられたので驚いた。「あ、そうです。すみません」なんてシマラナイ事をボソボソ言ってしまう。でも嬉しかったな。飛行機内では映画の『ジョーカー』を観る。劇場で観た時は、俳優の芝居はいいけどあんま面白くない映画だったが、今回も同じ感想でした。羽田に着いて、高速バスで所沢。ウチまで歩いて帰る。ジャパンは寒かったので、ライトダウンの上にウィンドブレーカーを着込む。久しぶりの我が家は何にも変わっていなかった。
某日、無職渡世。疲れていたのか9時過ぎまで起きなかった。本当は内装仕事をしたかったのだが、今は仕事が薄いらしく、入れなかった。パッキングを解いて荷物の整理をしたり、洗濯物を洗ったり、メダカの水差しをしたり(今年は赤土を投入したからかほとんどのメダカが冬越しした。1年目の小メダカも)、山田由梨組『品川心中』の録音をしたりして午前中が終わる。午後、山田組の長芝居のセリフを入れるため、レコーダーとコピー台本を持って歩き念仏。自宅から聖地霊園、東所沢コースで2時間ちょっと。そのシーンはなんとなく入った。アタシは常々思うのだが、初めて手にしたシナリオを読んで、役について色々想像する。この初見での役の印象って大切。で、そこからセリフを覚えて、深く入れる。これは本当に辛くてシンドイ作業。シンドイ作業を乗り越えて、初めて芝居のスタートラインに立つ。セリフが深く入ってセリフから自由になると、「あ、こんなことも出来る」「あんなことも出来る」と芝居のアイディアがわいてくる。芝居を考えるのはとても楽しい。今日は1シーンだけだったが、芝居のアイディアが色々わいた。多分芝居のアイディアなんて5つ考えつけば充分だと思う。その5つのアイディアを組み合わせたりすると現場では通用するし、結局オッケーが出て、本編で使われるのは1つ。で、ここからが今日考えた事なのだが、普段は5つしか出ないアイディアをどうやったら6つ、7つと増やしていけるかって事。経験や演技の技術も大切だろうが、映画を観たり、本を読んだり、人と会ったり、飲んだり、って結局日常の過ごし方の中でいかに演技のことを考えて意識するかが大事な気がした。夜、台湾の日記を手直し。ネットフリックスでスパイク・リー監督『ザ・ファイブ・ブラッズ』観る。