某日、内装仕事で工房。移動読書は『柄本明・絶望の授業』を読む。NHK『課外授業 ようこそ先輩』で放送された柄本明さんの授業を書籍化したもの。柄本さんの本ってホント少なくて、柄本ファンのアタシはとても不満なのだ。今、柄本明の思考・思想を本にしておかないと、柄本さんの思想が後世に受け継がれる事がなくなっちゃうぞ。それって俳優をやっている者にとっちゃ、損失でしかない。この本の中でも柄本さんの発した言葉に色々考えさせられた。受け取る側の問題かもしれんが、アタシはもっと柄本さんの考えが知りたい。子供達が「よく笑う先生で優しかった」と言っていたが、その「笑い」が怖いんだよ。柄本さんが観てる芝居は、「劇の内容」より「柄本さんが何に笑ったのか」が気になってしまう。この人は怖い人なんだ。工房で伊藤くんやダイゴさんと清澄の什器制作。昼に大物什器を現場に搬入。階段を通すのがギリギリで焦った。昼飯は守屋さんも合流してラーメン屋「東煌」で醤油ラーメンとチャーシュー丼セット。午後も工房で什器制作。早上がりさせてもらい、新橋へ。『2nd』編集長の上田くんと生田目くんと待ち合わせ、「新橋スタンプ商会」で最上川で手に入れた二分金の鑑定をしてもらった。結果、「言語道断な偽物」でした。真鍮製で「田舎の家に額で飾られた小判があるでしょ? あのレプリカじゃないか」とのこと。残念! この結果を踏まえ、連載の『あるとしか言えない。かもしれない』の最終回を書く。鑑定後、新宿の喫茶店「ピース」で豊光亮くんこと大瀬誠くんとお茶。近況報告をしつつ、話し合う。大瀬くんに先輩面して偉そうなこと言っちゃったなあ。アイツの方がすげえんだけどなあ。ま、許してちょんまげ。
某日、午前中、倅を連れて王子へ。北トピアつつじホールで柄本明演出・別役実作『飛んで孫悟空』を観劇。毎年恒例となった東京乾電池の子供劇。今年は水澤紳吾さんと水澤ジュニア、河井青葉さんとジュニアも来ていた。観劇前に矢戸くんと挨拶。今年は昨年に比べて子供が少なく、大人の多い客層だな。倅は子供劇が好きで、そこから乾電池にハマったから楽しみにしている。西本竜樹さん、岡部尚たん、松沢真祐美さん、前田亮輔くん、矢戸一平くん、諫早幸作くんら知り合いが出演し、楽しそうにやっていていてそれを観ているだけでも楽しい。孫悟空が空を飛ぶギミックなんか、コピーした写真を引っ張り上げるのだがそのアイディアに驚いた。子供も大人も楽しめるいい芝居だったなあ。終演後、西本さんや尚たん、矢戸くん、諫早くんに挨拶。中山求一郎くんも観ていて、「お、若いのにわかってんな」と思う。中山くんに「ブログ読んでます」なんて言われて、ドキッとした。若い俳優に参考にしてもらえるのは嬉しいけど、あんま真面目に読まないでねとも思う。観劇後、水澤さんとジュニア、青葉さんとジュニア、岡部尚たんと昼飯を食いに行く。もう、ガキどもは言うことを聞かない。ま、それがいいんだけど。楽しい時間だった。帰って昼寝。夜、『あるとしか言えない。かもしれない』の最終回を書く。初稿、7000字。3時くらいに書き上げて上田くんに送る。書く作業ってやっぱ楽しいなあ。連載が終わって寂しいけど、また何か書く機会があるといいな。
某日、午前中、倅とともに衆議院選挙の投票へ。投票するアタシの横に倅がいたのだが、小選挙区の記入をしていたら、倅が結構な大声で「ミヤモトなんて読むの?」と聞いてきた。別に隠す事じゃないのだが、小声で「トオルって読むんだよ」と教える。「ゴリはミヤモトトオルなんだ!」と喜んでいた。比例の記入をしていたら「キョーサントー!」と、またもや大声で発表してくれた。まるでアタシがゴリゴリの共産党員みたいでちょっと恥ずかしかった。や、今回はれいわ、立民は躍進するだろうし、あえて共産って思ったのだ。しかしあんな大声で発表されるとは思わなかった。昼に義父母と両親と倅とうなぎを食いに連れて行ってもらう。初めて鯉のあらいやナマズの唐揚げを食った。美味かった。うなぎもうまかったなあ。義父さん、ごちそうさまでした。倅と実家で焚き火したりして夕方まで過ごす。帰ったら寝てしまう。夜、日記を書いてK組のセリフ練習。選挙は自民過半数割れがカタイ。そりゃそうだよな。金曜の仕事中、伊藤くんに「選挙行けよ」と言うと「誰に入れていいかわからないから行かないっすよ」と言っていたので「選挙は義務だと思って行け! ケータイで調べたら公約出るから、誰に入れたいか調べろ」と伝えたのだが、行っただろうか?
某日、内装仕事で工房。移動読書は荒井修著『浅草の勘三郎』を読み終わる。いい本だったなあ。老舗の扇子屋さんの主人が見た十八代中村勘三郎の姿。歌舞伎の内情もしれて、先代の人柄にグッときた。本日は什器制作。守屋文雄さん、ダイゴさんと3人で作業だったので、狭い。3人でワイワイ話しながら作業する。昼飯は「てんや」で上天丼大盛り。上天丼にはエビ天が2本、普通の天丼にはキス天が入っていて凄く悩んだ。苦渋の決断で、エビ天2本を選んだのだが、やはりキス天が食いたかった。天丼にエビが入っていたら嬉しいけど、アタシはエビよりキスが好きなんだな。再確認。次回は天丼にキス天をプラスして大盛りにしようと心に誓う。夕方まで作業して新宿へ。電車に乗る前に、門仲の本屋さん「本間書店」で園部晃三著『賭博常習者』と吉村昭著『高熱隧道』を購入。今日もいつものアニキが一人で店番していた。この本屋さんはアニキが一人で切り盛りしているのだろうか? 町の個人書籍店は経営が厳しいと思うが、長く続けてほしい。本屋がない町は、アタシにとっては死んでいる。書店でブラブラ本を眺めながら、未知の作者や本と出会う機会は豊かな瞬間だ。アニキ、頑張ってなあ! 新宿の居酒屋「嵯峨野」で、『雨の中の慾情』の台湾クルーや東京国際映画祭帰りの中村映里子さんとワイワイ飲む。台湾のクルーは、リキくんやリュウくんはじめ15人くらい集まった。監督の片山さんや池田さん、舘野さんは撮影中で来れなかったが、日本の映画屋と台湾の映画屋が入り乱れて飲んでいて、すごくよかった。リュウくんと合作映画や台湾の補助金制度について教えてもらったり、リキくんに日本の俳優部のギャラ事情を説明したり、ケイティーに現在準備中の作品についてヒソヒソしたり、中村さんに悲惨な出演料について慰めあったりした。台湾で『雨の中の慾情』は、かなり噂になっているらしい。アタシが「悪い噂だろ!」と言ったら、リュウくんが「いい噂ですよ! みんな楽しみにしてるんです!」と言っていた。今作は台湾の優秀なクルーの規格外の協力によって成立している。少しでも作品で恩返しできたら嬉しいよなあ。
某日、内装仕事で工房。移動読書は園部晃三著『賭博常習者』。本日も昨日に引き続き什器制作。ダイゴさんと二人作業。作業しながら「ちまき」の話になる。「ちまきが巻かれてる物って何か?」って話をしていて、アタシは笹の葉をイメージしていたのだが、ダイゴさんに伝わらない。ダイゴさんは鹿児島出身なのだが、竹の皮をイメージしていた。ちまき自体のイメージも違っていて、アタシは白いもち米で三角形だった(砂糖ときな粉をつけて食べる)のだが、ダイゴさんのちまきは、もち米で炊き込みご飯のようにたくさんの具が入ったモノだった。ちまきにも地方差があり、面白いなあ。昼飯はダイゴさんとダイゴさんの奥さんと3人で、スリランカ料理屋「タップロボーン」で、バナナの葉で米と様々なおかずを包んだ「ランプライス」を食った。これは来るたびに気になっていたが、1800円にビビって頼めなかったのだ。今日は大奮発。3人で指を使って食ったのだが、バカ美味だった。スリランカ料理がアタシの舌と合うのか、料理人の腕なのかわからんが、とにかく美味かったのだ。飯を食ってここまで感動することってなかなかないぞ。仕事後に守屋さんと電車で帰りながら、「最近初めて落雁を食ったんですが、食う前に想像していた味と全く違って驚いたんすよ。なんすか? あのぽそぽそ感は!」「細金さんが美味いアジフライ専門店を押しててくれたんだけど、アジフライが2000円するらしい」「細金さんは担々麺のゴマ屋を絶賛していて、細金さんが行くと頼んでないのに煮卵をつけてくれるらしい」とかずーっと飯の話をしていた。帰ってここ1週間、全くカミさんと会話がなかったのだが、今日久しぶりにカミさんを笑わせられた。これがきっかけになるといいな。夜、ケイティーに電話。秘密の相談。T組とK組のセリフを吹き込み、練習する。
某日、本日はセリフを練習するため仕事を休んだ。朝、K組とT組の脚本を読むために「カフェ・ド・クリエ」へ。カミさんは今朝も口をきいてくれない。倅とだけ話す。アタシの仕事場の「カフェ・ド・クリエ」で脚本を読んでいると、隣の席に70代くらいのオッサン二人が座ってデカイ声で話し始める。「今回の選挙はダメだったな」「あいつはやっぱり中国寄りだから」「日本も核武装しなきゃダメだ」「中国に好きなようにやらせてよお、戦争する気で対応しないと!」「日本がバカにされてんだよ!」なんてクソみたいな話を周りを憚らずやっているのだ。しかも、ちょっとションベンくさい。二人ともヨレたウインドブレーカーを着ていて、動くたびにシャカシャカうるさい。おい、オッサンよお、テメエらが国防語っても鉄砲持って戦えねえだろうが。戦わなきゃならねえのは、アタシやその下の世代だろ。無責任に言いやがって! マジで腹が立つ。暇で貧乏で想像力の欠けた年寄りが、テメエの身上は無視して「腰の調子が悪い」って話と同列に「戦争しなきゃ」なんて言ってんじゃねえ! アタシがずっと見ていたら、その視線に気付いて話を変えたが、それもダセエ。もう、弱い者がさらに弱い者を叩く社会にはうんざりだ。脚本をやりに来たのに、アタマにきて文字が入らねえ。バカヤロー! 腹を立てていたら井上さんから電話。T組の撮影が天候不順で延期になる。あら、雨じゃあ仕方ねえ。隣のオッサンが帰ったのでこれで集中してやれるなあと思っていたら、カミさんから「役者やめるか別居するかどっちかにしろ」という恐ろしい通告メールが届く。文面からカミさんの本気が伺えてヒジョーにやばい。今までだったら慌てて電話して、カミさんとやり取りしていたのだが、もう毎年こういうビックウェーブが襲ってくるのでこちらも対応に慣れて来た。そっと携帯を仕舞って、セリフ練習をする。お互い感情的になってしまうと問題が拗れるので、時間をおいた方がいいのだ。セリフをやって、さらに日記作業をして、うちに戻る。カミさんは「話し合いには応じない」とメールで書いていたが、話し合わなきゃ始まらねえ。ま、アタシはとにかく「倅がいるんだから、もう2人だけの問題じゃない。倅がどう思うか聞いてくれ」と言う。「アンタは卑怯だ、倅は関係ないでしょ」「倅を味方にするな!」と言われるが、アタシはどんなことがあっても別れたくないし別居も嫌だ。俳優もまだ続けたい。「金銭的なDVだ」「アンタは人の心が理解できないサイコパスだ」と言われても、今回は話してくれるだけマシだ。「アンタがそうやって笑わせて、結局のらりくらりと居続ける作戦は分かってるんだからね!」と、核心を突かれるが、アタシはバシーっと言ってやりましたよ。「そうだよ!」って。決断なんかしなくていいのだ。のらりくらりとやって決断から逃れ続ける。これがアタシの作戦なり。倅が学校から帰って来たので、もう安心。倅はもちろん「ゴリは出てかないで」と言ってくれたので助かった。間に入る倅にとっちゃあ災難だろうが、仕方ねえ。カミさんからは「アンタに毎日冷凍ギョーザ食わせて嫌がらせしても出てかないのは、頭がおかしいんだろうね」って言われたが、アタシだってずーっと夕飯が冷凍ギョーザで参っていたのよ。でもそれをひた隠して食ってたの。正直、冷凍ギョーザのパックを開けただけで「ウェッ」ってなってたけど、これは戦いだからな。一昨日、冷凍庫に冷凍ギョーザが残り1パックになって「ああ、これでギョーザ戦争も終わる」とホッとしていたのだが、昨日、冷凍庫を開けたらギョーザが4つに増えていてどれだけ絶望したか。まあ、そんなこたあいいのだ。カミさんは「年内に出てけ」と言っているが、今回は大事には至らなそうだ。ああ、よかった。もちろん夕食は冷凍ギョーザ。美味かったなあー。夜、井上さんが別居問題を心配して、電話をくれる。井上さんに「そうだよ」とか「冷凍ギョーザ」の話をしたら、笑いすぎて泣いてしまった。井上さんの奥さんが心配していたようだ。
某日、K組『G』の撮影で名古屋へ。ナイター撮影なのだが、移動時間がかかるので10時に出発。13時20分に名古屋駅集合。移動読書は、園部晃三著『賭博常習者』。東京駅に着く前に読み終わってしまったので、吉村昭著『高熱隧道』を読む。これ、面白いなあ。土木工事の経験があると、この高温の隧道の地獄加減が理解できると思う。こういうの井筒監督とかやってくれないかなあ。思わず村岡しんさんにメールする。名古屋から現場に行き、支度。衣装部のモモさんや御手洗ちゃんとキャッキャして、メイクの高橋さんにカツラをつけてもらう。このカツラが凄いんだ。パンチなんだけど襟足が長くて、異様なの。これを高橋さんがうまく自毛となじませてくれる。あと、今回は眉毛を剃って描いているんだけど、毎回形を変えている。これは繋いで見たらわかるかなあ? 岡部たかしさんが現場に到着したのでお喋り。岡部さんと撮影で一緒になるのは初めてかもしれない。もう15年前に初舞台でご一緒してから、岩谷健司さんと三人でよく飲ませてもらった。当時から、こんなに面白い芝居をする岡部さんや岩谷さんが、なんで仕事がないのか不思議だった。夕方、現場に行くと、特機部・実原さんの助手ほのかがいた! 昨年の『賊軍』も先日の『愚か者の身分』も一緒で、アタシは大好きなのだ。あと5年、実原さんの元でやったらスーパー特機部になって邦画を背負っていくんじゃないかな。現場でKさんや池田さん、舘野さんとお喋り。明日から『十一人の賊軍』が公開なのでオノズトその話に。舘野さんが「初めてお世話になった師匠たちに『賊軍』と『雨の中の慾情』のチケットを送ったんだ」と言っていて、なんだか本当に嬉しかった。どちらもナイターシーンが印象的で舘野さんの照明が素晴らしいもんな。最初のシーンを撮影している時に、オッケーが出た後、池田さんが「マツーラさん、さっきと同じ芝居じゃなかった?」と言われてドキッとした。自分は変えたつもりでも、変わってなかったのかもしれない。池田さんはずーっとアタシの芝居を映してくれているから、何か違和感があったのかも。んー、もっと変えた方がいいのか。悩むなあ。K組が初めての岡部さんは「やっぱりドラマと違って時間かけて撮っているね」と感心していたが、自分の出番が終わったと思ったら実は最後にもう1シーンあって、絶望していた。「マツーラくん、これ絶対朝になるやん。大丈夫かなあ?」とずっと心配していて笑えた。アタシの出番は5時に終了、なんとか明ける前に岡部さんに渡せてよかった。そのまま始発の新幹線で東京に戻る。