某日、5時半に起きてカミさんの様子を見に行く。「仕事休んで看病するよ」と伝えるが、「あんたはいても役に立たないからせめて働いてこい」と言われる。カミさんの熱は38度5分。倅の熱はさがったが、二人とも咳が激しい。カミさんが何度も「しご、ゲホゲホ、仕事、いけ」と言うので仕方なく内装仕事に出る。移動読書は中川右介著『歌舞伎座誕生』。本日は工房で什器の仕上げ作業。一人でやる予定だったが、守屋さんと豪一くんの行くはずだった現場が入れず、応援に入ってくれた。三人でやる量じゃないので、アタシは早上がりさせてもらう。三人で昼飯にトンカツ屋「イッペコペ」でランチ。とんかつもメンチも美味かった。うちに帰るが、カミさんも倅もだいぶ良くなっている。よかった。本当は今日、映画大の講評と打ち上げだったのだが、女池さんに理由を話して欠席させてもらった。倅の小学校から連絡があり、明日明後日は全校で学級閉鎖だそうだ。おそらくコロナの患者が増えまくったのだろう。大変だよな。しかし、明日の個人面談は行うらしい。カミさんもいけないので、アタシが早上がりして行くことになった。
某日、朝4時半に倅の咳で起きる。激しくて喘息の発作みたいになっている。横で寝るカミさんも起きて背中をさすっていた。倅、一睡もできていないらしい。カミさんも寝てない上、発熱でフラフラになっていた。今日は仕事を休んで看病する。掛かりつけの病院の予約が全く取れない。仕方ないので電話してなんとか診療してもらえることに。朝から掃除洗濯をして、ゴミ出ししたり家事をやる。いつもはこれをカミさんがやってくれている。すげえなあ、ありがたく思う。昼に倅を病院に連れていったら、先生に「ワクチンうってないでしょ、だから重症化するんだ」「これは喘息の発作じゃなくてコロナの症状なんだよ」と言われる。「子供に出す薬はないから、自力で治すしかないんだ」と。まあ、そうなんだろうな。咳の薬を出してもらう。その後、小学校で個人面談。学校自体はインフルとコロナが爆発してしまい、学校自体が休校なのだが、面談はやるらしい。学校の先生も大変だ。担任の先生から学校での生活態度や勉強のことを聞く。いはまこんなに手厚くやってくれてるんだなあ。夜、倅は落ち着いて寝た。薬が効いたのか。明日は仕事どうしようか。
某日、看病のために仕事を休む。倅は昨夜久しぶりに眠れたようだ。本当に良かった。一方でカミさんの症状が重くなっている。「今日から仕事をする」と言っていたがさすがに無理そうだ。体調悪い時くらいゆっくりしてりゃあいいのになあ。「役立たず、なぜ仕事に行かねえんだ!」と言われながら掃除と洗濯をする。倅に「なんか欲しいモンあるか?」って聞いたら「自由と健康な体」って言われた。「ほら、これが本当に体調悪い人の言葉だ」とカミさんが言う。8歳で自由と健康な体を欲しがるなんて、銀河鉄道999じゃねえんだからさ。カミさんに罵詈雑言を浴びせられながら看病的なことをする。たまに「そりゃあねえっすよ」って言いたくなるようなこともあるが、カミさんが悪口言えるのも最悪の状態を脱したからだろうと思うのでそこまで腹も立たない。「明日は衣小合わせと良々さんの舞台観に行くから」と伝えたら「舞台なんか行ってんじゃねえ」とキレられた。「まあ、バカには風邪もうつらないって本当なんだな」とも罵られた。でも確かにアタシには感染してないって事を考えると、嘘じゃねえかもな。
某日、午前中、A組『T』の衣小合わせで渋谷へ。ユーロスペース前で井上さんと待ち合わせ。井上さんからハチミツ二郎著『マイ・ウェイ』と是枝裕和著『映画を撮りながら考えたこと』の2冊をいただく。井上さんからオススメされる本は当たる。アタシの読書傾向や嗜好がおわかりなのだろう。今回も楽しみだ。A組の衣小合わせは監督はじめメインスタッフが若く、それもそのはず、A監督は23歳。「高校生の時に『岬の兄妹』を3回観ましたー」なんて言われて、公開時に高校生だった若人が立派に映画監督をしているという事実に驚く。マジかー、アタシはいまでも若い気でいるのだが、時間は残酷だな。しかし、アタシはやっぱりこれから映画界で勝負する作品(監督デビュー作や初長編の作品なんか)の時に呼ばれる事ほど嬉しいことはねえ。同世代の監督やベテラン監督に呼ばれる事も嬉しいけどさ、これから邦画を背負って立つ若人と戦えるのが一番嬉しいやね。言い方難しいけど、演出ひとつとっても理解出来ねえ事を要求される方が、勉強になるもんな。アタシの錆び付いた感覚を若人の尖った演出で叩き直して欲しい。衣小合わせ終わりで、せっかく渋谷にいるから映画でも観るべえかと思っていたのだが、結局ぶらぶら時間を潰して三軒茶屋の世田谷パブリックシアターに向かう。水澤紳吾さんと奥野瑛太くんと落ち合って、ケラリーノ・サンドロビッチ演出『桜の園』を観劇。荒川良々さんに無理をお願いしてチケットを取っていただいた。初めて『桜の園』を観たのだが、良々さんと山中崇さんがよかったなあ。良々さんから飲みに誘っていただくが、ご挨拶とお礼だけお伝えして帰宅。
某日、内装仕事で工房。移動読書はハチミツ二郎著『マイ・ウェイ』。面白くて一気に読み進めてしまう。伸也が二郎さんと交流があり、話を聞いていたので余計身につまされる。二郎さんが立川談志師匠から言われた言葉「おめえは勲章を狙うな」って話がグッとくる。やっぱ勲章や栄誉、賞をもらって良いニンゲンと貰うべきでないニンゲンがいる。貰うべきでないニンゲンはそうあるべきで、おそらくアタシも貰うべきではないニンゲンだ。「くれるモンならもらっとけ」って言うヒトが多いけど、貰う事によって大切なモンを失うことだってある。アタシは名誉や権威からは縁遠くあるべきだ。だって、コスいニンゲンや胡散臭いニンゲンを演じている奴が勲章持ちだったら説得力無いでしょう? あ、柄本明さんは勲章もらってるけど変わらないか。やー、なんだろうな? 難しいな! 伊藤くんと什器制作をして、昼ご飯はお誕生日の伊藤くんを鰻屋「大和田」へ連れて行き、特上うなぎをご馳走する。アタシも特上にしたかったが、銭コが心配だったので竹にした。や、竹でも美味かったぜ。夕方、やはり体が怠い。練馬の西友で安い牛肉を買ってうちですき焼きを作って食う。やっぱすき焼きは美味い。年末で予定も多いし、こんな時期に体調崩したら参っちゃうからな。夜、乾電池の矢戸一平くんから電話。明日公演予定だった『五人の紳士とピンクの象』が、急遽中止になったとの連絡。演者にインフルが出てしまったらしい。残念だ。また公演決まったら教えてと言って電話を切ったが、アタシも発熱。37・8度。うわ、やべえ!
某日、身体中が痛い。熱高し。何もできず寝込む。とうとうアタシも感染したか。バカにも感染するじゃねえか。一応、抗原キットで検査をするが、陰性。あれ? コロナじゃねえのか。寝ているアタシの布団で飼い猫のタロとチョメがずーっと寝ている。カミさんが心配してくれるが、3食の飯はしっかりと食うアタシを「あんた、本当は仮病じゃねえのか?」と疑うが、いや、本当に辛いんだよ。でも飯はしっかり食わないと良くなるモンもならねえじゃねえっすか。3度の飯はしっかり食って寝る。頭痛より全身の筋肉痛がつらい。熱にうなされながらウツラウツラしている時に夢をみる。アタシが芝居の新しい画期的な方法論を見出して、一人ほくそ笑んでいた。夢の中のことだが、その方法論を思い出そうと頑張ったが何も思い出せない。悔しい。
某日、発熱、全身痛。今日は乾電池の子供朗読会で、西本さんから倅と共にお声がけいただいたが、残念ながら参加できず。午後、熱が下がってくる。ユーネクストで『ザ・ペンギン』を観始める。絶望的に面白い! 主演のコリン・ファレルの芝居も素晴らしいが、見た目が特殊メイクで全くわからない。それが功を奏して、ペンギンという人物にしかみえないのだ。くそう! 熱っぽい頭で悔しさと面白さでワーッてなる。こんな凄え作品観たら寝てる場合じゃねえっつーの。クー、俺もこんな役やってみてえ! すげえ脚本だよ、面白いんだから。4話まで一気観してしまい、悔しくてふて寝。
某日、熱も下がったので内装仕事に出ようとしたら「陰性でもコロナの可能性もあるから5日間は出てくれるな」と言われてしまう。結果、年内は仕事にありつけず。カミさんに報告したら「稼ぎもねえのにどうすんだ!」って怒鳴られたので、まだちょっと熱っぽい事を言い訳に寝る。寝ながら『ザ・ペンギン』を8話まで観る。悔しいくらい面白い。今年観たドラマ作品で一番面白かった。クリスティン・ミリオティも素晴らしい俳優だな! 鳥肌が立ったぜ。しかもアタシより年下でやんの。お見事! 悔しいなあ。ついでに阪本順治監督『KT』も観てしまう。体調悪いって言いながら映画ばっか観ていると、精神的に満足してしまう。満足しちゃいけねえんだよ! こんな良い芝居観たら悔しくならねえと。倅が学校に行ったので、一緒に宿題をやる。夜、寝れずにユーチューブで登山映像ばかり観てしまう。