某月某日、午前中、カミさんの「部屋片付けろ攻撃」から逃げ出し、倅と共に新座へ。ユナイテッド・シネマ新座で、ジェイク・カスダン監督『レッド・ワン』を観る。倅が予告編を観て「ゴリ、この映画は観よう」と言ったのだ。『レッド・ワン』はドウェイン・ジョンソンが主演だし、我が息子なかなかセンスがいい。ただ、ドウェイン・ジョンソンの主演作はハズレもあるんだぞ。東所沢からバスで行こうとしたのだが本数が少なくて結局、新座駅からブラブラ歩いて映画館へ向かう。駅から映画館に向かう道沿いに、柳瀬川が流れているのだがうちの裏ではちょろちょろ川だけど、ちょっと下ると結構立派な川になっていて驚く。釣り人もいたのだが、護岸造成工事中で少し残念。倅と一緒に土手を歩いて行くのが気持ちよかった。新座の映画館は人が少ない。子連れとお年寄りが2組くらいで立派なスクリーンで鑑賞。贅沢だなあ。『レッド・ワン』はサンタを守るドウェイン・ジョンソンのお話。なんちゃない映画なのだが、楽しめる。こうやって子供と大人が共に楽しめる作品が一番尊い気がするなあ。アタシがどんな映画に出たいかなんて言っても仕方ねえのだけど(俳優業って受け仕事なので)やっぱり子供も一緒に楽しめる喜劇映画をやりてえんだよな。相米慎二監督『夏の庭』とか、菅原浩志監督『ぼくらの七日間戦争』とか、最近だと山崎貴監督『ゴーストブック』みたいな映画。『男はつらいよ』とか『社長シリーズ』みたいのもいいやなあ。ハスに構えた内輪受け映画じゃなくて、バカバカしい正統喜劇映画をやらせてくれい!
某日、朝から女池組のセリフ練習で所沢を歩く。聖地霊園コースで2時間半。途中で祖父母のお墓詣りして、墓掃除。寒くなって来ているのに細かい雑草が生えていて感心した。こうもしぶとく生え続ける雑草魂、素晴らしい。掃除をしているとカラスが近くに舞い降りて、アタシの事を観察している。全然逃げないので、触れるかと手を伸ばすがギリギリのところで下がられて触れない。しかし全く飛び去ろうとせず、アタシを眺めている。カラスって目が綺麗でカワイイ。カバンを漁るとどっかの現場のオヤツであろう「カルパス」が出て来たので、ちぎって置くと近付いて食べた。全部食べると、「もっと出せ!」ってカーカー鳴くので、カバンをひっくり返して「もうねえんだ」って言ったら、理解したように鳴きやんで「貧乏人が仕方ねえな」って感じで飛び去ってしまった。なんだよ、ゲンキンな奴だな。帰って、うちで請求書を作る。作業をしているとカミさんが来て「おい、またセリフって言う名のお休みか! みんな必死で働いてんのにふざけんな! 隙間バイトでも闇バイトでもイイから金稼げ!」とドヤされる。夕方、水澤紳吾さんと奥野瑛太くんがうちに来て、三人で大袋に200本の「川瀬陽太 俳優道30周年 記念タオル」を詰めて、川瀬さんちに向かう。200本のタオルって相当重い。最寄りの駅で嶺豪一くんも合流して、四人でタオル代を清算し、川瀬さんちに乗り込む。水澤さんが「こんなタオルもらったら感動して川瀬さん泣いちゃうよー」って言っていたが、実際に渡すと川瀬さんは照れて困ったフリをして、全然泣かなかった。「水澤さん、泣いてないじゃないっすか!」「おかしいなあ、後輩にこんな事されたら普通泣くだろ!」「こんな嵩張るモンもらったら、違う意味で泣きてえよ!」って川瀬さんに言われてしまった。元々は年末に朝まで飲んだ水澤さんと奥野くんとアタシが、突然魚屋で売られていたカニを買って川瀬さんちに届けたのが毎年恒例になった年末の川瀬会のはじまりだった。それから毎年、年の瀬が詰まった頃に川瀬さんちに集まって「今年もなんとか乗り切りました」ってお互いを労う忘年会を開催。ちょっとづつメンツが増えて、最近だと後輩の俳優部から「川瀬会に参加したいっす」なんて言われるようになった。でもさ、そんな大層な会じゃねえんだぜ。くちウルセエオッサンが集まって、酔っ払ってクダを巻いてるだけなんだから。流血沙汰なんかもあるし、迷惑極まりない会。「邦画界の恥部のエクスペンタブルズだな」って川瀬さんが言うくらいなんだから。ただ川瀬陽太っておじさんを慕う問題児が集まる、汚ねえ集まりなの。川瀬陽太のおじさんは近年映画だけでなく、民放ドラマや配信ドラマ、広告までを渡り歩く俳優になった。とても嬉しいことだ。ようやく世間様が川瀬さんに気付いたのだ。結局本日は、川瀬さんも含め五人で飲んで、今年の川瀬会の打ち合わせ。今年は30周年もあり、池の上のガリガリを借りて川瀬会を開催する事になった。メンツを聞いたら正直、嵐の予感。問題が起きぬように万全の準備を心がけるべし!
某日、映画大学の2年生演出コースの実習で、女池充組『爆ぜる』撮影。朝、新百合ケ丘の校舎へ。監督の女池さんと撮影の伊藤寛さん、演出部の山城研二くんとアタシがいわゆるオトナで、あとは全てを学生さんで賄う。演出コースは、ドキュメンタリー監督や映画監督、俳優を目指す学生の集まり。中国からの留学生も多くて、日本語だけではなく中国語も飛び交う面白い現場だ。男女比も女性の方がちょっと多いんじゃないかな。みんな初めてのことに真剣で、とてもイイ感じ。アタシの作品を観てくれている生徒さんも多く、話していると自分が先輩っぽくてなんか偉そうになっちゃうな。映画大の教師も、四天王のサトウトシキさん(『さすらいのボンボンキャンディ』や『青空』の監督)、天願大介さん(『デンデラ』『赤の女王』監督)、井土紀州さん(『レフト・アローン』『ラザロ』を監督)なんて知り合いばっかだし、渡辺紘文監督の卒業制作『八月の軽い豚』もやっているから、アタシは映画大の卒業生みたいな気分になっちゃうのだ。さて、女池組の撮影だが、寛さんが「女池は決められないからなあ」って言っていたから覚悟していたのだけど、予想していたよりはテイクを重ねない。女池さんに言ったら「や、授業だし時間の制約があるから、一応考えていますよ」って時計を何度も確認しながら、丁寧に演出をつけてくれていた。女生徒役の熊谷さんも男子生徒役の久保田くんも懸命にやっている。録音の技術を教えに4年生の石川くんが来て、2年生を指導してくれて、こういうのもとてもイイなと思った。本当はアタシが芝居でリードしなきゃいけないのに、なかなかそうもいかず申し訳ない。夕方にアタシの出る前半ブロックの撮影が終わって、ひと足お先に帰宅。さあ、明日もがんばんべえ。
某日、映画大学の2年生演出コースの実習で、女池充組『爆ぜる』撮影2日目。10時に現場入りするが、中盤の生徒同士の撮影のテストをやっている。チーフの山城くんと話すと「昨日はリハーサルで終わってしまって、朝から撮り始めたんで出番までちょっとかかります」と言われる。しばらく現場を見学して、王さんとロウ・イエ作品の話をしたり、4年生の卒業公演の準備をしている天願さんとおしゃべりして過ごす。再び現場に戻るも、まだ時間がかかりそうなので、大学の隣のパチンコ屋にお散歩。ちょっとだけマイジャグを叩いたら、2000円で連チャンが始まった。4回連チャンしたら昼だったので、山城くんに確認の連絡。「まだかかりそう?」「あ、マツーラさん出たんですか?」「や、4連チャンだよ、もうちょい引けそうな気がすんだけど」「まだ大丈夫なんで、出してください!」ありがとうな、山城くん。頑張って出して差し入れするべえ! って気合いを入れて打ち出したら7連チャンまで伸びた。時間を気にしながら打っていたら、おやおや? 飲まれ始めたぞ。やべえ、アタシは学生さんに差し入れするんだ! もうこれ以上のまれたら差し入れどころじゃなくなるな。でもあと100回くらい回したら、また波が来る気がする。さあ、ここでヤメてお菓子の差し入れをするか? しかし、もうちょい勝負してさらに増やして4年生にも差し入れしてあげたいしな。悩んだあげく、勝負をしたらぜーんぶ飲まれました! バカヤロー! カッコつけたかったなあ。まあ仕方ねえや。しょぼくれて学校に戻ると、山城くんが「どうでした!」「ごめん、のまれた。差し入れ出来なかった」「あらー!」って笑っていた。生徒同士の芝居部分が撮り切れていなかったが、日の関係もあって後半部分を先に撮影する。時間を気にしながらバタバタやって、アタシの出番部分はなんとか埋まったが、学校閉館時間までかかってしまった。この実習は2日で撮る約束らしく、残をどうするか女池さんは頭を抱えていた。女池さんと寛さんと山城くんと1杯やりに行く。アタシなんかお気楽に「残部分はブツ撮りだって言って、明日撮っちゃえばいいんじゃないっすか?」なんて言っていたのだが、結構な問題らしく女池さんは方々に電話して謝っている。寛さんと山城くんと、授業の感想や課題なんかをワイワイ話していても女池さんは連絡に忙しい。大変だなあ。終電まで飲んで、寛さんと電車で帰る。学生さんと芝居して本当に楽しかったし、後進に教える事の楽しさがわかった気がする。勉強になったなあ。
某日、内装仕事で工房。移動読書は中川右介著『社長たちの映画史』を読み始める。本日は伊藤くんと什器の修正と組み上げ。ラジオを流していたら急に所沢の話題になって、聞き入ってしまった。所沢は先日、駅前の商業施設「エミテラス」が開業しTジョイの映画館も出来て、アツイ場所らしい。アツイって言われても、「ユニクロ」とか「H&M」がオープンしたところでなんとも思わねえけどなあ。「まあ、田舎モンを騙眩かすにはちょうどいいだろ」って笑ってるのが透けて見えて、アタシャ好きじゃねえけど。映画館が出来たのは嬉しいけどさ。で、バタバタと作業して現場へ設置に行く。仕事終わりで池袋へ。喫茶店「伯爵」で祷きららさんとお茶。デートだったら嬉しいんだけど、進路の相談でヤマシイ事はないのであった。祷さんは空音央監督の『ハッピーエンド』で素晴らしい芝居をしていたし、芯の太い俳優で若いのに俳優としての客観性も持っている。つまりはイイ俳優なのだ。だからアタシもアタシなりの考えをキチンと伝えて、話を聞く。多分、祷さんの中でもある程度決まっていて、その事をどうやっていけばいいか順番を整理するだけだ。アタシが出来ることなんて何にもないが、こういうイイ俳優のためならアドバイスしてあげたいと思う。まあ、テメエの事も客観視できねえバカな俳優の進路相談なんかお断りだかんな! アタシがイライラしちゃうだけだもん。でも、結局さ、自分が選んで決断しなきゃダメなのよ。他人に言われたことを鵜呑みにするような奴は、この仕事向いてねえ気がするもん。テメエの握った刀で、自ら切り開くのだ! 往往にしてその刀が錆びてたりナマクラだったり極端に短かったりするんだけどな!
某日、内装仕事で工房。移動読書は中川右介著『社長たちの映画史』。引き続き伊藤くんと什器制作。塗装の仕上げ方や磨きの方法を試行錯誤しながらより仕上がりが良くなるように作業する。仕事終わりで新宿へ。テアトル新宿でトマ・カイエ監督『動物界』を観る。なんの予備知識もなく、予告編だけ観たのだが、ホラー映画かと思っていたが左にアラズ! これが色々な問題をうまく定義しながら世界観を作り上げた傑作だった。なんだろう? 荒唐無稽な設定だが、緻密に練られた設定がうまく機能していて過剰にならない俳優の芝居もよかった。ラストの父親の選択にグッときてしまった。いい映画を観たな。その後、本日からアップリンク吉祥寺で公開された奥野俊作監督『冬物語』の登壇へ。上映後、奥野監督とスクリーンの前にたった瞬間、客席にいる水澤紳吾さんに気付いてしまい一気に緊張して、全く喋れず。参ったなあ。上映後、水澤さんと市川くんと1杯だけ飲んで帰る。水澤さんから「映画の中のマツーラはカッコよくてムカつく瞬間があったけど、登壇で出てきたら、なんだこのコジキみたいなオッサンは! って愕然としたよ」と言われてしまった。まあその通りだと思う。実際のアタシはただのハゲたオッサンで観るべき価値もない。
某日、K組『G』のアクション練習日。午前中は喫茶店「カフェ・ド・クリエ」で、奥野俊作監督『冬物語』のパンフレットに掲載する文章を書く。奥野さんからいくつかの案を提案してもらったのだが、殿山泰司さんの『ノン・タイトル』って文章を参考にしたものを選んだ。アタシが俳優になるまでをザザッと書いて、3000字くらいの文章を送信。なんかこういう雑文って、構えて書くと詰まったりするが、気楽に書いている時は早く書き上げられるもんなんだなあ。昼、東宝スタジオへ向かう。成城学園駅の本屋さんで沢木耕太郎著『凍』と、高野慎三著『神保町「ガロ編集室」界隈』を購入。『凍』は出版当時に読んだのだが、まだ登山やクライミングに興味を持つ前だったし、山野井さんのことも知らなかった。最近、山野井さんにもクライミングにも俄然興味を持ったので、再購入。昼に東宝スタジオで飯休憩中のK監督と会って、今後撮影するシーンのアイディアを提案。Kさんもノッてくれたので、採用された。二人でセットに入って美術部さんと演出部さんに相談。なんとかなりそうだ。Kさんがだいぶ疲れていて大変そうだ。アタシはラストの立ち回りのアクション練習。ゴクウの雲雀さん達に手を付けてもらって実際に動く。アタシ自身はあまり手がなくて残念。まあカツラの事もあるし仕方ねえ。しかし、柔軟体操するだけで身体中が痛い。参ったなあ。5時までやってアクション練習終わり。セットに顔を出してスタッフさんとおしゃべり。しかし美術デザインの倉ちゃん、今回もすげえセットを建てたなあ。エイリアンの映画が撮れそうなセットだった。
某日、倅と柳瀬川に小物釣りに行く。延べ竿で米粒を餌に竿を出すが、なにも反応がない。アタリすらないので早々に帰る。何だろうか? 川に小魚がいないわけじゃないから餌がわるいのかな? 川釣りは難しい。うちに帰って倅の宿題の九九をやる。セリフと同じで口で覚えないといけないから、何度も復唱させていたら、カミさんから「虐待してるみたいだからやめろ!」と怒られてしまう。夕方、アップリンク吉祥寺へ。奥野俊作監督の『冬物語』登壇。池田暁監督や佐藤快磨監督が来てくれていた。本日はちゃんと喋れたと思う。上映後、池田監督やたまたまいたケイティ、中村君なんかとみんなで飲みに行く。