某日、朝6時に目が覚めた。カミさんの様子を伺いに行くと、まだ熱が下がらないらしい。倅が起きて「一人だとさみしい」と言うので、一緒に寝そべっていたらアタシはそのまま寝てしまった。9時頃目が覚め、慌ててキッチンに行くとカミさんが洗い物を終えていた。「もう朝ごはん食べさせたから。本当に役に立たないな」と捨て台詞を言われる。カミさんから掃除と洗濯、倅の運動靴洗い、2階のトイレ掃除、猫のトイレ洗い等の「やること」リストがメールされた。もちろんカミさんは寝てなきゃいけないから、アタシがやるべきなのは分かっているが、昨日からの「役に立たない」という言葉がすごく引っかかっていた。リストを上から順に1つ1つこなして、倅を映画館に連れていけないので、一緒にDVDで長谷川安人監督『十七人の忍者』を観る。倅が映画の疑問点を質問するので、わかりやすく教えて解説する。途中でウトウトすると倅が「怖いから起きてて」と起こされる。土曜は昼寝したいのになあ。昼飯にカレーうどんを作るが、具が入ってないタイプで失望。せめてうどんを茹でる前に気付いていればなあ。昼飯を食っているとカミさんから「洗濯終わってるから干しといて」と、メールが来た。せっかくやることを終えて、倅と「午後はどっか行くか」と話していた時だったので頭にきてキレてしまう。カミさんに「やって欲しいことはまとめて言えよ!」と怒鳴ってしまった。カミさんも負けずに「家事なんて終わりがないんだから当たり前でしょ!」と言い返してくる。熱あるんだから黙って寝とけばいいのに! あまりに頭にきて、関係ない倅にも「洗濯物は表にして出せ!」と怒ってしまう。もう最悪ですわ。落ち着いた頃にカミさんにポカリを持って行ったら「あんたとは絶対に分かれる。やってけないわ」と言われてしまう。もう、どうすりゃいいのよ。倅がゲームをやっている間に、ガイド音声の台本を読み、書き込みをする。一生懸命やってんのになあ。カミさんが降りてきて「倅にテレビばっかり見せないでよ!」と再び怒られる。うん。仕方ねえや。倅と夕飯を作って風呂に入って寝かしつける。寝る前にガイド音声の練習。映像を見てタイムコードを確認しながら発生すると、どうやっても遅れてしまう。みんな、これをどうやっているのだろうか? もしかしてセリフを暗記しているのか?! ムムム、こりゃあ参った! 夜中、カミさんの咳が辛そう。心配で起きてしまう。
某日、朝、倅を起こして一緒に朝飯を食う。今日は午前中から倅と大泉のTジョイでティム・バートン監督『ビートルジュース ビートルジュース』を観る。倅はゲロシーンが苦手なのとホラーを観たがるくせに血が出るシーンは苦手なので、上映中何度か耳を塞いでいた。ティム・バートンって結構残酷な描写をいきなり突っ込んでくるから油断できない。映画ではウィノナ・ライダーが相変わらず魅力的であった。しかし彼女が高校生の母親役をやるようになるなんて、当たり前なんだけど驚きだ。鑑賞後は映画館の下のゲームセンターで遊んで、ブックオフで中古DVDを漁る。倅と一緒に観れるような時代劇を探したがいいのがなかった。矢口史靖監督『スウィングガールズ』とピーター・ウィアー監督『トゥルーマン・ショー』が安かったので購入。これなら倅と観れるな。昼飯は実家で焼きそば。親父とお袋は、倅を連れて行くと喜ぶ。アタシの出来る唯一の親孝行だ。お袋から深田晃司著『日本映画の働き方改革』を貰った。出たばかりだが、面白そうなホンじゃないの! ありがとうございます。倅は庭で穴を掘ったり焚き火をして遊ぶ。夕方、帰って日記の宿題をする。倅はなかなか面白い文章を書く。カミさんが起きてきて、止めたのに倅の夕飯のおかずだけ作っていった。アタシは冷凍ギョーザを焼いて一緒に食う。倅を寝かしつけて、夜ガイド音声の練習。
某日、内装仕事で清澄。朝、守屋さんに遅刻する旨連絡をして、倅を起こして朝飯を食わせる。学校の準備をして一緒に家を出る。登校時間には早いが、倅には実家で時間を潰すようお願いする。移動読書は深田晃司著『日本映画の働き方改革』を読む。おお! やっぱり面白い! 働き方改革ってタイトルだけど、邦画界の全体的な問題提起をしているなあ。文中で底の抜けた低予算映画として「アートポートの青春H」が書かれていて、笑ってしまった。ホントひどい制作会社で、アタシは今泉力哉監督の『終わっている』に出たのだが、プロデューサーのOが「マツーラさん、予算がないので1万円でお願いします」と言ったのだ。気乗りしなかったが今泉さんとやってみたかったので、3日間の撮影を終えると、出演料が1万円ぽっきりだった。いやいや、日当1万でしょ! フザケンナよ! アタシャ、当時も今もギャラにはうるさいし、絶対に取りっぱぐれはしない。早速プロデューサーのOに電話をするも一切出ない。おお、シカトするつもりだな。こうなるとアタシは「取り立て屋ゆうちゃん」になる。Oの留守電に「今から会社行くから。ギャラ用意して待っとけ」と吹きこむと、すぐに折り返しが掛かってきた。「今から行くから逃げないでくださいよ」と言ったらすぐに3万振り込んでくれた。だったら最初から渡せよ。手間かけさせやがって。後日談だが、知り合いの女性俳優部が「脱ぎもあったのにギャラが払われない」と相談してきたので、この時も「取り立て屋ゆうちゃん」になって、ギャラをOから取り立てたのだ。まあ、どうしょもない会社だったな。本日は守屋さんとエイジング作業。二人で答えの見えないエイジングの迷路にはまり込む。昼飯は「桃太楼」でチャーハンセット。しっとりチャーハンにスープをかけて食うのが絶品。しかし、今日の野菜炒めは塩っけがなくて、いつもの野菜炒めじゃなかった。調理している倅が疲れているんだろうなと心配になった。アタシは早上がりさせて貰って、倅の夕飯を作って一緒に食う。寝かしつけているうちに、一緒に寝てしまい、ガイド音声の練習ができなかった。
某日、内装仕事で清澄。本日も朝、カミさんの咳がひどくて大変そうだったので、倅の朝食を食わせて一緒に出る。遅刻だが守屋さんは事情を知っているので「急がないでゆっくり来て」と言ってくれる。ありがたい。カミさんは昨日病院に行って「肺炎」と診断された。今、流行しているマイコプラズマ肺炎だろうか? 咳が辛そうで「寝てたら」と言っても「横になっている方が辛い」と言っていた。まあ、カミさんはアタシと全く口を聞いてくれないので、倅に言っていたのだが。移動読書は深田晃司著『日本映画の働き方改革』を読み終わる。うん、いかに邦画の労働環境が異常かよくわかるな。だって今も契約書を交わすなんて珍しいし、ギャラだってほとんど後出しだ。スタッフも俳優部もひどい環境でやっている。フランスのように権利を勝ち取らなきゃいかんのだよ! 問題意識すら抱かずに働いている方も多いと思うので、ぜひ深田さんの『日本映画の働き方改革』を読んでほしい。色々と気付く事があるでしょう。本日も守屋さんとエイジング作業。午前中にデザイナーのシノブさんが現場に来たが、エイジングを見て悩んでいた。どうやらシノブさんも正解が見えていないらしい。もちろんアタシにだって正解は見えないが、とにかく手を動かす。昼飯は「いちばん星」でメンチカツ定食。美味い。夕方までやって帰る。カミさんから「もう家事できるから、帰ってこないで」とメールをいただくが、もちろん帰る。カレーを作ってくれていたが、アタシとは喋らず。倅と風呂に入って寝かしつける。夜、ガイド音声の練習をするが途中で寝てしまう。
某日、本日は原稿作業を進めたかったので休みをもらう。午前中、「カフェ・ド・クリエ」で『あるとしか言えない。かもしれない』の最終回を5000字まで書いて上田くんに送る。午後は、日記を書いて、ガイド音声の練習。ガイド音声の練習って書いたけど、全文を読むだけで2時間くらいかかるの。つっかえたらすんなり読めるまで繰り返す。普段のセリフ練習とは全く違う。声だけでも感情は読み取れると思うし、音量も考える。相手がいてその距離感で発するセリフとは全く違うな。そしてアタシ自身が「か」が続く言葉や「さ行」の言葉の滑舌が悪い事がわかり、失望する。夕方、新宿へ。歌舞伎町シアターミラノ座で、赤堀雅秋作演『台風23号』を観劇する。水澤紳吾さんと待ち合わせ、並んで観た。赤堀さんが今まで作ってきた暴力性を封印し、不穏さに塗れる市井の人々のみっともない日常を描いた劇。前作『ボイラーマン』や『白昼夢』に続く、アタシの好きな芝居だった。タップリやっている方やなんか馴染めてない方もいたが、戯曲は面白いと思うし、さすが秋山菜津子さんだった。終演後、観劇していた新井浩文さんと孫家邦さん、水澤さん、班長さん(山本浩司さん)、村岡伸一郎さんと「犀門」で飲む。久しぶりに新井さんとワイワイできたし、新井さんは変わらず新井さんで嬉しかった。舞台終わりの赤堀さんも合流する。伸さんや孫さんが話す秘密話を聞かないふりしたり、赤堀さんの笑い話に過呼吸になったり、結局、荒戸さんの話になって、終電までオッサンだけでワイワイした。
某日、音声ガイドの収録。朝、倅を送って「カフェ・ド・クリエ」へ。最後のガイド練習。苦手な箇所を練習。アタシは何度も「福子」って読まなきゃいかんのだが、「福子」が言えない。こりゃ致命的ですぞ。午前中、中野坂上の収録スタジオへ。片山慎三監督『雨の中の慾情』のガイド音声を収録する。ガイド台本を作り(すごいセリフ量だし、決められた時間の尺に言葉をハメ込む作業は想像を絶する)、収録の演出をする松田さんとヤーヤー。現場中の片山さんの代わりに、メイキングでベタ付きしていた丸山くんも来てくれた。で、10時過ぎからさっそく収録。まずは1ガイドづつ収録し、そのペースと感じを掴んでいく。やっぱ、視覚障害の方がアタシの声を聞いて映画のイメージを想像すると思うと、責任を感じる。声のトーンや音量を注意して発声する。やはり滑舌が悪いから何度もやり直す文が出てくる。自分の滑舌に愕然とさせられる。芝居だと、多少甘くても「味」や「芝居」で誤魔化せたりするが、今回はなかなかそうもいかない。松田さんは「ナレーターじゃないから、ある程度は味だと思いますよ」って言ってくれたが、聞き取れなかったら意味ないもんな。最初の1時間はあっという間に過ぎたし、水を毎回飲むからペットボトルを2本空けてしまった。休憩時は毎回丸ちゃんと喫煙所で話す。午前中は慣れない作業で四苦八苦したが、午後からなんとなくペースを掴み、1ブロックずつ録音する。もちろん何度もやり直すが、色々わかってきた。午後7字過ぎに全ての収録が終わった。お世話になりました。アタシは邦画全体にバリアフリー対応作品が増えるべきだと思うし、そうあって欲しい。色々な方が楽しめるモノとして映画が存在して欲しいと願う。今回のガイド音声に参加できてよかったなあ。アタシ、滑舌悪いし下手だけど、ガイド音声喜んでやりまっせ!