某日、内装仕事で勝どき。移動読書は古山高麗雄著『断作戦』を引き続き読む。朝、早めに現場に入ってセリフ練習をやろうとしたらすでに守屋さんが来ていた。話していたら、昨日も仕事後に脚本を書いていたらしい。守屋さんって本当に凄い。朝、3時4時に起きて脚本作業にかかる。その後、朝飯を作って仕事に来て夕方まで作業して、仕事後に喫茶店(新宿のピースが多い)で脚本作業。夜は早めに寝て、また翌朝早い時間から脚本に取り掛かる。このペースの生活を続けている。守屋さん本人から聞いた訳じゃないが、この前も予算がある原作物の脚本の話が来たが、内容を読んで「これは自分じゃない」って断ってしまったらしい。それを受ければしばらくは金の心配しなくてもいいギャラだったらしいのに。徹底している。守屋さんのそのストイックさには敬服する。かっこいいよなあ。それで内装やってるんだもん。その矜持を本人が語る事はないが、脚本家としてのスタンスも監督・俳優としての在り方もカッコよくて憧れる。身近にこんなヒトがいたら、アタシも映画に対して半端な事はできないよな。本日は二人でシートップ左官。バタバタやる。アタシは守屋さんのスピードに付いていくのがやっとだ。昼飯は「天串 にしおか」でカレーと唐揚げ。食い放題の唐揚げはやはり美味い。店主の東南アジア系のおにいちゃんも、アタシたちの顔を覚えてくれたらしく「唐揚げ揚げたてやりますからー」と言ってくれる。午後もバタバタ左官していたのだが、守屋さんのペースが落ちる。どうも左官のやり過ぎで、腕が上がらなくなったみたい。登板過多の中継ぎ投手みたいだな! その分、アタシが頑張って登板する。夕方までやって渋谷へ。今日はアタシが最初に所属した俳優事務所の社長の平出さんと飯を食う。アタシがサムギョプサル食いたいとお伝えしたので、「吾照里 渋谷本館」へ連れて行ってもらった。アタシは事務所の成り立ちなんか1ミリも知らなかったのだが、平出さんから色々教えてもらう。昭和・平成の所謂芸能界の話を聞いてトンデモねえ仕事だなとケラケラ笑う。美味い肉を食いながら、バカみたいなノンコンプライアンスな話を聞けて面白かった。平出さん、ご馳走様でした!
某日、勝どきの現場を空けなければならず、本日はお休み。大工さんの仕事を先に終わらせてもらわないと相番出来ない、狭い現場なのだ。ちょうど良かった。『2nd』の連載『あるとしか言えない。かもしれない』の9回目の原稿の準備。日記を元に下書きを書く。文字数を気にせずに書くので相当多くなる。ここから初稿に向けて削るのだ。だいたい1万3千字相当。いや、今回も収まんないなあ。しかし書きたいことが多いので、一応編集長の上田くんに相談する。7000字での掲載を検討してくれるとの事。そしてK組のセリフ練習。午後から聖地霊園コースを歩いて、セリフ念仏。途中で祖父母の墓参り。雑草をぬいて墓石を洗い、タバコを供えておく。アタシは神や仏を信じている訳じゃないが、祖父母のお墓に手を合わせて願をかける。家族と猫の健康と映画の仕事が上手くいくようにお願いした。3時間歩いて帰る。明日からK組の初日撮影だ。今までにない長い期間の撮影になるが、未だ総合スケジュールは出ず。風の噂で難儀な現場だと聞いたので(K組で難儀じゃない撮影なんてなかったが)気合を入れる。ああ、早く現場で芝居がしたいな。
某日、K組撮影初日。朝、洗面台で眉毛を剃り落とし、髭を作る。今回は撮影のたびに眉毛を剃り落とさなければならない。自分で提案した事だが、正直、ここまで長い期間の撮影になるとは思わずちょっぴり後悔。やはり眉毛がないと表情がよめずに怖い。この眉毛にした事で、他の仕事が着地しなかった。某組は面白そうな役だったのだが、この眉毛が災いし「今回はすみません」と先方からお断りされた。やはり寄った時に眉を描いているのがバレるからだろう。残念。ちなみにZ組の話もいただき、こちらもやり甲斐のありそうな役だったし、Z監督が大好きなアタシとしては是非ともやりたかったのだが、残念ながらスケジュールがはまらず。悔しかった。Kさんが大作を撮る様になった事は心から嬉しいが、これだけ長い期間の拘束だと、他の仕事に多大な影響が出る。長モノは考えなければならんな。眉無しゆうちゃんのまま、いつもの「カフェ・ド・クリエ」に行ったのだが、顔なじみの店員さんにそっけない態度を取られてしまった。眉なしだからだろう。ざっとセリフを当たって、現場へ。本日は1シーン。Hくん、HSさん、Iくんと一緒だった。Hくんとは初めまして。芝居をするのが楽しみ。現場では撮影の池田さん、照明の舘野さん、衣装のモモさん、御手洗ちゃん、お馴染みのK組クルーがバタバタやっていて挨拶。撮影部はだいぶメンツが変わっている。照明部も若い女性がワイワイしていた。Kさんも時間を気にしながら監督然とやっていた。アタシの初シーンなので演出が付くかと思ったが、何も言われない。それよりメイクとカツラの出来に喜んでいて、芝居なんか見てねえのかもしれないな。HSさんとのやり取りだったのだが、K組にしてはサクッと終わった。終電に間に合ったので電車で帰る。
某日、K組予備日だったが、昨日は撮り終わったので内装仕事へ。勝どきで塗装作業。移動読書は古山高麗雄著『断作戦』を読み終える。本日は守屋さんが左官を終わらせてくれた部分の塗装。一人作業だったので、昼飯はオリジン弁当でおにぎりを買って食う。夕方、作業のキリが良かったので工房へ戻って必要な資材と道具を選別して積み込み。帰りに門仲の本屋「本間書店」に寄る。この本屋は、いつもアニキが一人で切り盛りをしている。店頭に並ぶ本に特色があるわけではなく、店も小さな個人書店。でも、覗くたびにアニキが一人で店頭に立っている。二代目で本屋を継いだのだろうか? うちの両親も個人書店を営んでいるので、書店業の厳しさは理解している。なんで、この若いアニキがなぜ本屋をやっているのか、個人的に気になっているのだ。本屋って大切にしなきゃダメなんだ。だって、こうやってフラッと入って実際に本を眺めるお店がなきゃ、現在どんな本が出版されているのか知る機会がなくなってしまうでしょう。多くの街で本屋が廃業しているが、せめて今も経営している本屋さんは応援しなきゃいけないんだ。 おい、みんな、本を買って読んでくれよ。確かにネット注文したらすぐに届くし便利だけど、本屋で本を買ってくれよ。本で吸収できる知識や体験って、ネットで得る情報とは質が違うと思うぞ。本を読め! バカこそ本を読め! 人間、知識欲がなくなったら終わりだぞ! アタシは本が好きだから本屋さんがなくなったら困っちゃう。宇野祥平さんに言われて電車の中で本を読む様になって、ある程度読書量が増えた。読書が習慣付けばコッチのもんだぜ。本を読め!
某日、K組撮影。朝から新宿郵便局前集合。現場でタバコを吸いながら制作部の若い子と映画話。妙に映画に詳しく、最近の公開作の話で盛り上がる。こういう子が増えて邦画界が盛り上がってほしいなあ。アタシが昨日も内装仕事をしていたと言ったら「マツーラさんがバイトしてるなんておかしいっすよ!」と、憤慨してくれた。あまりに怒ってくれるのでアタシも胸がスク。ありがとな、若人よ。でもさ、現実ってそんなもんだし、アタシャ兼業で満足してんだぜ。ギャラが安いのはどうかと思うけどよお。君みたいな奴が邦画界を改革するんだ。頼んだ! 現場でアクション部の雲雀さんとキャッキャしてアクションシーンの撮影。小雨の中、Hくんが暴れまわる。アクションの確認をしていたらK監督が「1カット長回しでいきましょう」と言い、現場に緊張感が走る。そして本番。いろんなアクシデントも見事にHくんが芝居で回収して、見事に1発オッケーが出る。クルーの中から自然に拍手が起こって、みんなで喜ぶ。Hくん、素晴らしかったな。生の芝居でやっていて嬉しくなった。次のシーンはKさんも悩んでいて、段取りを何度かやるが、なかなかコレと言ったものにならず。脚本通りにやってもリアリティに欠けるのかもしれない。なるべくアタシが動いて芝居を停滞させない様に意識する。結局、その案が採用されて本番。セッティング変えの時に、珍しくKさんが愚痴る。これだけの規模の撮影を一人で切り盛りするのはストレスだよなあ。まあ、アタシャ芝居でやるだけだ。まだKさんと役のイメージが一致してない気がするが、そのうち合うでしょう。始発までやってなんとか撮り切る。スケジュールがたいへんだな。
某日、朝起きると筋肉痛。あまり動いた記憶はないのだが、不思議だなあ。朝からカミさんが倅を連れて出て行ったので、アタシはお家で『あるとしか言えない。かもしれない』の原稿作業をする。だいぶオーバーしている文字数を刈り込んで、初稿に向けての準備。約8000字くらいまでカットした。切る事でこぼれてしまうエピソードも多々あったが、仕方ねえよな。実はそういう本編とは関係のない無駄話こそ面白いのだけど。映画も同じかもしれない。あまりに無駄を切ると、整った話にはなるけど面白みも削がれてしまう。そのバランスが大事なんだろうな。夜飯は今日も冷凍ギョーザ。今の冷凍ギョーザって、油をひいたり水を足したりしないでいいのだ。凍ったままフライパンで焼くだけで、見事に美味しいギョーザになる。すごい進歩だ。倅の残したオカズを盗み食い。まるで泥棒のような夕食だが、食えるだけありがたい。寝る前に、ユーチューブで服部文祥さんの登山モノを観る。続けて登山家の山野井泰史さんの番組も観た。どちらも面白かった。
某日、内装仕事で勝どき。移動読書は永六輔著『芸人たちの芸能史』読み終わる。引き渡しが迫って来て終わりがまだ見えずバタバタしている。ごーいちくんが実家に帰省や芝居の稽古でもう内装に出れないので、アタシ一人で補修左官やら塗装作業をやる。昼前に伊藤くんが合流したので、昼飯を中華屋「たんたん」で台湾ラーメンセットを食う。勝どきで昼飯を食うときによく「たんたん」を利用するが、まあ、正直アタシはムムムと思っている。不味くはないが美味くもないのだ。でも勝どきの飲食店で「ここだ!」って店とも出会えておらす、結局「たんたん」で済ませることが多い。守屋さんは「たんたん」が気に入っているのかよく利用しているが、理由はわからない。今度、問いただしてみよう。残業して今日のノルマを終わらせる。寝る前にネットフリックスで大根仁監督『地面師たち』を最終話まで観終わる。北村一輝さんとマキタスポーツさんがたまらんかったな。