某月某日、内装仕事で工房作業。移動読書は三國連太郎・沖浦和光著『芸能と差別の深層』を再読。いろいろと思うところがあって読み直す。本日は一人で什器制作作業。連日、空調の効かない現場での作業だったので、効きの悪いクーラーがあるだけでも天国だと思ってしまう。朝から図面を読んでサブロクやシハチのランバー材を丸ノコで割いて、材料の切り出し。部材を組み上げて、ルーターで加工。昼飯は工房に寄った伊藤くんと、中華屋「和合餃子」で汁なし麻辣中華麵を食う。いつもは汁なし担々麺なのだが、本日は冒険した。汁なし麻辣中華麵も美味かった。午後は、組み上げた部材を面取りして小口テープを回して、塗装。水研ぎして仕上げる。塗装作業までやると時間がかかるのだが、伊藤くんからケツを叩かれているので仕方ない。残業して終わらせる。まあ、現場の灼熱地獄よりはマシだもんな。夜、寝る前にサバイバル登山家の服部文祥さんのユーチューブを観て止まらなくなる。いやー、面白いなあ。服部さんの喋り方が結構アタシに似ていて好感を持つ。服部さんの本も読んでいるから、登山家より思想家ってイメージだったのだが、立派な現場人だった。今更だけどユーチューブってすごいな。建築モノやリフォームモノ、大工道具の手入れや木取りのやり方まで、興味のある事がたくさん出てくる。アジングやエギングの釣り技法も、キクラゲの栽培法もなんでもあるじゃねえか。こりゃあ面白えや。
某日、朝5時に実家へ行って親父と共に小手指へ。朝6時前から小手指商工会の納涼祭の設営をやる。なんでアタシが設営をやる羽目になったかと申しますと、高齢化した商工会のメンバーで設営をやるのが大変で、親父から助っ人を頼まれたからでございます。まあ、地元だし、親父が怪我でもされちゃあ困るから仕方ねえや。朝から電気屋のオオバくんと、公園内に電線を引っ張り、提灯を吊るして電線をあげる。早朝でも結構な気温で、汗だく泥だらけになりながら作業する。仕事じゃねえのになんでこんな懸命にやってんのかしら? まあ、70歳以上のオッサン達にやらせる仕事じゃねえのは確かだわ。10時くらいまでバタバタやって、なんとか格好をつける。昼飯は親父に奢ってもらって「ぎょうざの満洲」でダブル餃子定食を食う。やっぱりぎょうざは満洲が一番美味えや。異論は認めん! 実家の本屋「菊屋書店」で、服部文祥著『サバイバル! 人はズルなしで生きられるのか』と色川武大著『ばれてもともと』を買おうとしたら、お袋が奢ってくれた。今日の人工代らしい。ありがとーごぜーやす。映画コーナーで『映画芸術』があったのでパラパラしてみたが、一番後ろの荒井晴彦ぼやきページで『天井の花』脚本改稿裁判の事が書いてあった。正直、みっともねえや。いつまでグズグズ言ってやがんだ? 前にも書いたが、アタシは映画を始めた頃から一貫して『映画芸術』を読んできた。『キネ旬』は体制的で、『映画秘宝』はサブカルで、『ピクトアップ』は極めてナンパな雑誌だという歪んだ見方をしてきた。結果、映画芸術原理主義的読者だったのだが、『福田村事件』のアカデミー脚本賞受賞以降、アタシの心は火星より遠く離れてしまった。荒井晴彦さんはさあ、映画芸術誌上で、さんざん日本アカデミーを腐してきたじゃん! テメエの吐いたツバ、飲むんじゃねえよ! どのツラ下げて脚本賞を受け取ってんのよ! 言行不一致も甚だしいじゃねーか! 裁判のことクドクド書くなら、きっちりアカデミー受賞について書くべきだろ!
某日、朝、N組のセリフ練習。午前中、倅を連れて新宿へ。東宝シネマで『化け猫あんずちゃん』を観るつもりだったが、なんと満席でチケットが買えなかった! おいおい、すげえなあんずちゃん! 観たかったけど仕方ねえや。いい映画だから大ヒットしてほしい! 倅とおめおめ帰るのも癪だから、「なんか観たい映画ある?」「あ、キングダム観たい」そういえば最近、カミさんと倅で配信で『キングダム』観てたなあ。アタシは1本も観た事がないのだが、佐藤信介監督『キングダム 大将軍の生還』を観る。これもほぼ満席の大盛況。観客も若者中心かと思いきや、家族連れや高齢の方も結構いらっしゃる。映画は初めて観てもなんとなく筋がわかる。大沢たかおさんの芝居にニヤニヤしてしまった。大沢さんの『深夜特急』が大好きだったんだよなあ。倅は満足したようで、二人で大沢たかおさん演ずる大将軍のモノマネをしながら小手指へ向かう。実家の本屋に寄って、商工会のお祭りに顔を出す。親方連中から労われて、タダ券をもらってたこ焼きやらかき氷を食う。親父と実家まで帰って、倅と両親、伸也と一緒に飯を食う。夜、うちに帰ってN組のセリフをさらう。寝る前に服部さんのユーチューブを観る。
某日、N組『O』撮影。午前中、「カフェ・ド・クリエ」でシナリオを読み返し、セリフをさらう。脚本家の港岳彦さんとメールのやり取りをしていて、舞台出演のお声がけいただくが、撮影中の作品『G』のスケジュールもあり、今回は流していただく。先日、T監督にもお声がけいただいたが、こちらも残念なことにスケジュールが合わず。やりたい企画に誘っていただいたのに本当に残念だ。長モノを受けるってそういうリスクもあるんだよな。昼にN組の撮影で福生に移動。共演の鈴木武くんと控え場所でおしゃべり。衣装の篠塚さんや李さん、録音助手のリョー(アタシがつけたあだ名)や特機部の実原さんとヤーヤーする。監督のNさんともおしゃべり。Nさんって不思議だな。今日やる芝居の事は一切話さず、バカ話してくれんだもんな。俳優部を信用してくれてるのかなあ。で、すぐに撮影。N組って本当に早い。段取りを1回、テスト1回ですぐに本番。本番も今日は1発オッケーが続いて、4カットがあっという間に終わった。鈴木くんと色々楽しんで芝居をしていたのでもっとやりたかったなあ。Nさんからお花までいただき(そのお花にメッセージまで添えられていた)オールアップ! ありがとうございました! ううー、もっとやりたい組だったなあ。鈴木くんとおしゃべりしながら電車で帰る。さあ、明日からまた内装仕事だ。夜、日記を書いてユーチューブで服部文祥さんの動画を観る。
某日、内装仕事で蔵前。移動読書は服部文祥著『サバイバル! 人はズルなしで生きられるのか』。面白いなあ。服部さんの動画を見て以来、すごく気になっていたのだがやはり文章も内容も面白い。作中で、瑛太くんとの登山行があり「おお、瑛太くんやってんなあ」と感心した。今日からサミュエル(米国籍の音楽家)がバイトに入った。午前中は伊藤くんとサミュエルと蔵前の荷下げと仕上げ作業。午後から清澄の現場にガラス窓をはめにいく。このガラス作業に難儀した。ガラスと押し縁の間に3ミリパッキンを詰めて挟み込んで行くのだが、慣れていない作業の上にガラスの枚数が多くて参ってしまった。「今日中にガラスが入らないと困る」との事だったので、伊藤くんと頑張ったのだが、押し縁の調整が多々あったり、ガラスのサイズが違い全て採寸しながら振り分けなければいけなかったりでなかなか進まない。もちろん空調がある現場じゃねえから、クッソ暑くてうだってしまう。夕方までに10枚もはめられず、サミュエルを帰して残業。伊藤くんと二人で黙々と作業していたら、通りがかりの婆さんに話しかけられる。「ここは何ができるの?」「なんか肉料理の定食屋らしいよ」「あんたこの辺の人?」「や、オラァ所沢から来てんだ」「アタシはこの辺で歯医者やってんのよ」婆さんはド派手なピンクのワンピースにハンドバック姿で、ちょっと怪しい。「あんたこんな暑い中働いて偉いよ。ジュースおごってあげる」というので、ちょうど休憩もしたかったしアタシが飲み物を買って婆さんに渡す。そしたら偉く恐縮して「悪いわよお、じゃあこれ受け取って」と、千円もらった。断っても無理やり渡すので、仕方なくいただく。婆さんは現場に入って来て「アタシは金には困ってないの、歯医者だから」って、自分語りを始める。最初は話を聞いていたのだが30分経っても終わらないので、作業を始める。婆さんは一人で話して笑っていた。アタシも伊藤くんもガラス設置に四苦八苦して、気付いたら婆さんが消えていた。なんだか妖怪みたいな婆さんだったな。結局9時過ぎまでかかってガラス設置を終わらせる。暑さもあってヘトヘトだ。帰ってお湯に浸かる気にもならず、シャワーを浴びてさっさと寝る。
某日、内装仕事で清澄。昨夜の疲れが抜けないまま電車に乗って現場へ。移動読書は服部文祥著『サバイバル! 人はズルなしで生きられるのか』読み終わる。この本を読んでいるとアタシも山に入ってみたくなるな。でも、アタシャ性格的に向いていないだろう。リスク判断が下手だし、ガキの頃に培われた「迷ったらやっちゃえ!」的特攻精神があるので、すぐに致命的な判断ミスを犯して死んでしまうだろうな。本日はカウンター下の腰壁を木材で装飾する作業。塗装手でミオコさんとサミュエルが入ってくれた。ミオコさんはコチラの人手のなさを心配して、舞台小屋入りの日なのに手伝いに来てくれた。ありがてえ。アタシは朝から腰壁の装飾に入りたかったのだが、新規壁の左官や補修作業に追われて午前中は手がつけられなかった。昼飯はみんなで老舗の中華屋「桃太楼」へ。ここは町中華として料理も絶品なのだが、アタシはホールを回すおばあちゃんのファンで、ばあちゃんに会う目的で訪れるのだ。店前はお客さんが並んで待っていて驚く。なんだか繁盛してるな。お店に入るとホールはおばちゃんがやっていて、ばあちゃんがいない。心配になっておばちゃんに聞くと「胆石の手術で明日から入院なんですよ、もう3回目」という。「90歳を超えてるからたまに店に出るだけで、ほとんどウチにいるんですよ」とのこと。まあ、生きてるならよかった。厨房も代替わりして倅が仕切っていた。アタシはいつものごとく、チャーハンセット大盛り。チャーハンと野菜炒めとスープのセットで、野菜炒めの油が妙に美味くて中毒性がある。チャーハンにセットのスープをかけて食うのが、マツーラ流チャーハンの食い方だ。相変わらず美味い。午後からようやく腰壁の装飾作業。図面と実際の尺がずれていて、再度計算をし直さなければならず苦戦。アタシに計算をやらせるなよー。材を切り出しながら作っていく。途中で伊藤くんが助っ人に入ってくれて助かった。なんとか6時までに終わらせて新宿へ。足立智充さんと音声ガイドの翻訳家・松田さん、シネマチュプキの柴田くんと「嵯峨野」で飲む。アタシがバリアフリー上映に興味を持ち、『悪は存在しない』の音声ガイドを吹き込んだ足立さんに、松田さんを紹介してもらったのだ。でも大バカ野郎のアタシは、音声ガイド上映も観ていない始末。せっかく足立さんが紹介してくれたのに、失礼極まりない。松田さんはそんな大バカにもわかりやすく色々教えてくれた。ますます興味を持つ。日本の映画界にも音声ガイドや字幕のバリアフリー文化が当たり前になるべきだと思う。松田さんにアタシの音声資料を送る約束をする。足立さんはそんな大バカを微笑ましく見守っていてくれた。優しい男でアタシャつい甘えてしまう。夜、K組『G』の決定稿が届く。