某日、F組のセリフ練習。朝、倅を学校まで送って実家に顔を出す。親父から井原忠政著『豊臣仁義』をもらう。府中本町まで出て、多摩川沿いをセリフ念仏。登戸まで歩いて往復。久しぶりの4時間半歩きだったので、足の親指の付け根にマメができた。今回の役の物語内での役割、そして人物の「目的」を定める。「目的(動機)」には、「大きな目的」と、それをこなすための「小さな目的」があると古舘寛治塾で教わった。これを捉えるのが最初の作業。そしてアタシは役の人物がどのような「状態・状況」であるかを考える。役の「状態」さえ掴んでおけば、いかようにもセリフは出せると思う。「こんなセリフは言えない」とかのたまう方がいらっしゃるが、その役の「状態」が掴めてねえから言えないんじゃないかな? で、俳優部ってそこを考えるのが仕事だから、のたまっちゃう系の方々って俳優部としての仕事を放棄しているって思われちゃうんじゃねえかな? ああ、余計なことを書き過ぎました! 夕方、亀戸へ。赤松利市さんと橋本紡さんと韓国料理屋「ビビンパハウス」で飯を食う。久しぶりに会った赤松さんがだいぶスッキリしていた。20キロ痩せたらしい。数字だけ聞くと驚くが、ちょうどいい体型だと思う。アタシは生意気だが、「赤松さんが書く私小説的なものを読んでみたい」と意見する。赤松さんも68歳だし、色川武大さんみたいな小説を書いてほしく思う。井上さんから連絡。足立正生組から出演のお話。
某日、大雨。朝、倅を学校へ送り、実家に顔を出す。お袋からコーヒー豆をもらう。午前中は「カフェ・ド・クリエ」でセリフ練習。歩きたいけどこの大雨じゃ仕方ねえや。シナリオを繰り返し読むうちに、色々とイメージが湧いて来た。言いにくいセリフや疑問に思うセリフも、役の状態を理解するヒントになる。その疑問を一つ一つ理解していくと、あれだけ難儀していたセリフが愛おしくなる事があるのだ。今回も難儀するセリフがあったが、自分なりに理解ができて、抜群に愛おしいセリフになった。そういう瞬間って俳優をやっていて楽しい時間なのだ。役の状態が理解できていれば、現場でつけられる演出にも「軸がある分」対応しやすい。「セリフが言えない」ってのは、その俳優本人の頭の尺度で考えているから「アタシはこんなこと言わない!」ってなるんだろう。そりゃ、役の人物がアンタ本人ならそれも通用するかも知れないが、9割9分、役の人物と俳優は別人である。だから俳優は「言えない」んじゃなくて、「言うためにどうアプローチするか」って試行錯誤するのが仕事なんだと思う。だってそれでゼニ取ってんだから。「目的」を理解して「状態」を掴む。あとは現場で目の前のことに素直に反応して演出に対応する。現場に行ったら今までの準備を全て忘れるべきで、撮影時に嘘をつかないように気をつけて芝居する。難しい事をやってるわけじゃねえよな。夕方、『2nd』の上田くん・生田目くんとスカイプで打ち合わせ。「いまだにスカイプ使ってるのってマツーラさんくらいですよ」と言われる。知らなかった。
某日、朝、倅を学校へ送り、実家に顔を出す。本日はセリフ念仏で所沢ー聖地霊園ー東所沢コースで3時間半歩く。祖父母の墓参りもする。暑くて汗が止まらず。水道を見つけては手ぬぐいを濡らして、汗をぬぐいながら歩く。先日から何度かアタシの仕事の事を書いたが、「目的」にしろ「状態」にしろ、「絶対に正解はない」って事だけ理解してほしい。アタシのやり方だって今のアタシがそうやっているってだけで、これが正解だとは思っていない。「目的」も一つじゃないし、「状態」だって正解なんかない。役の「状態」なんて色々あると思うから、可能性のある限りイメージしたり試したりした方がいい。その作業は楽しいと思う。セリフを深く入れることってアタシにとっちゃ苦行でしかない。でも役の可能性を考え続けることは、楽しいし大好きな作業なのだ。午後、錦糸町へ。移動読書は黒川博行著『国境』の上巻。錦糸町の駅で嶺豪一くんと落ち合い、すみだパークギャラリー『ささや』へ。石黒麻衣作・演出の劇団普通『水彩画』を観劇。岩谷健司さんや岡部たかしさんに勧められて前作の『風景』から観始めた劇団普通だが、やはり面白かった。芝居の中で何か劇的なことが起きるわけではなく、茨城弁で交わされる日常会話を(まるで病院の待合室で隣の患者さんの会話が意図せず聞こえてきてしまう様な)覗き見る感覚の演劇。ただそんな日常会話の中でも、劇的なことは起こりうるのだ。その変化の幅が微細なだけで、そこに面白味を感じられるかどうかは観客次第だろう。アタシは圧倒的に面白いと思う。特に老夫婦を演じた、用松亮さんと坂倉なつこさんの芝居は抜群だった。終演後、坂倉さんと伊島空くんとおしゃべり。演出の石黒麻衣さんにも挨拶。同じ回を観ていたキャスティングの富岡さんや奥野俊策監督ともどうもどうもする。劇場を出てごーいちと二人で伸也のシェアハウスに遊びに行く。移動中、何度も「うわ、すげー」と言いながらスカイツリーの写真を撮るごーいちを見てホッコリした。ごーいちは次の作品で体重を増やさなければならず、伸也に「どうやったら太れますかね?」と質問していた。伸也はさも当たり前の様に「1回の食事で、おかずとご飯を6合食べたら4キロは太れるよ!」と答えていた。そりゃあ180センチの身長で168キロの体重がある伸也だから出来ることで、ごーいちには無理だろうが。3人でしばらくおしゃべりして帰る。帰宅後、奥野さんと電話。アタシは辻斬りだって話をした。
某日、朝、倅を学校に送って実家に顔を出す。そのまま所沢ー航空公園ー東所沢の大回りコースで歩き念仏を3時間半。帰りに所沢のツタヤブックスで、春日太一著『鬼の筆』、鈴木義昭著『桃色じかけのフィルム』、赤松利市著『あじろ』の3冊を購入。午後、『あるとしか言えない、かもしれない』の8回目の初稿を書く。今回は2200字。いつもは書き過ぎてしまうのだが、今回はうまく収められた。夕方、倅が「にゃんこ大戦争」をプレイしているのを見る。夜、ネットフリックスで『ファウダ 復讐の連鎖』の1シーズン目を観始める。面白い。
某日、雨。朝、倅を学校に送って実家に顔を出す。お袋からネットフリックスの『アバンとアディ』を勧められる。歩いて台詞練習したかったのだが、雨でやる気が失せる。うちに帰るとカミさんから「あんたさ、毎日なにやってんの? ずーっとフラフラして舞台観て、映画観て、大学生の夏休みじゃねーんだよ! 働けよ!」と激励される。「や、セリフを練習してるのよ」「はあ? だって午前中フラフラしてるだけじゃん。午後は遊んで、帰って倅と遊んでるだけじゃん。仕事も家事もしないで、どこまで能天気なんだよ!」と言われてしまう。「もう離婚して出てけ!」と、怒鳴られるが、カミさんの言う「離婚して出てけ」は、「おはよう」とか「おかえり」と同じ意味合いなので、「今日は映画でも観に行くか」と上映時間を調べていたら、粘着テープのついたコロコロで思いっきり殴られた。流石に痛かった。「いてえよお」と抗議すると、さらに追撃をかましてくるので、仕方なく今日は映画を諦めた。午後、日記書きと『回頭日記』の原稿の直し作業。オンボロパソコンをパチパチしていると、トイレに降りてきたカミさんが「まーた、金になんない事ばっかやって。頭の中に豆腐でも入ってんじゃねえの? 早く出てけ!」と言われてしまう。うちを出ると「フラフラしてる」と言われ、うちにいると「出てけ」と言われる。ナゾナゾみたいだ。
某日、午前中、倅とカミさんと立川へ。様々な動物と触れ合える動物カフェ「MOFFカフェ」へ行く。モノレールに乗ったのだが、「立川のモノレールは(レールが上にある)チョンマゲ型モノレールか(レールが下部にある)おちょぼ口型モノレールか?」で、カミさんと言い争いになる。アタシは「絶対におちょぼ口型だ」と言い張ったのだが、カミさんは「立川に来た事もない田舎者がモノレールを語るな! チョンマゲ型に決まってるだろ。沖縄と同じなんだよ!」と、沖縄モノレールまで引き合いに出してマウントを取ってくる。結果、おちょぼ口型だった。カミさんは不貞腐れて口をきかなくなった。動物カフェにはフクロウ・ひよこ・ミミズク・インコなどの鳥類から、モルモットやキンカジュウ、リクガメ、ナマケモノ、犬、多数の動物がワイワイしている。開店前から待っていると店内が見え、フクロウが木にとまっていた。倅に教えると「ゴリ、あれはミミズクだ。眉毛がピンと立ってるのがミミズクで、眉毛がないのがフクロウだぞ」と、ご教示を受けた。確かに眉毛が立っているのがミミズクで、眉なしはフクロウだった。知らなかった。開店と同時に店内に入ると、先に入店した老夫婦が、犬コーナーでずーっと犬と戯れていた。恐らく、犬が好きだけど飼えねえんだろうなあ。犬も慣れていて、老夫婦にウレションしていた。アタシはすぐに興味があるナマケモノの観察に。ちょうどスタッフさんが野菜をあげていて「ナマケモノは1日4時間しか起きてないんですよ。あとはほとんど寝ています」と言っていた。カミさんが「あんたみたいだな」と呟いた。人間界のナマケモノと動物界のナマケモノが、初顔合わせだった。ミミズクは寝ていたので静かに観察する。かっこいい。リクガメは倅に懐いて付いて回っていた。リクガメもかわいいな。珍しくカミさんが「リクガメなら飼ってみたい」と言う。インコを観察すると、2匹のインコに指の皮をむしられる。なぜだ? 鳥好きっぽいお客さんの手には乗るのに、アタシには指の皮を剥く。インコにも好き嫌いがあるのだろう。カミさんと倅もインコを手に乗せていたが、アタシは皮を剥かれただけだった。昼飯を食って、午後は国立極地研究所の南極・北極科学館へ。ここでは昭和基地への遠征資料や南極で回収された隕石などが展示されている。カミさんと倅はそこまで興味がなさそうだったが、アタシが好きなので付き合ってもらう。科学館に入ってすぐに南極で取れた実際の氷が展示されていて、テンションが上がる。触れるし、すげえぞ。南極で使用されていた雪上車や昭和基地の近くで採取された藻類、南極基地隊員の装備の展示が素晴らしい。そして隕石の展示。おいおい、こんなに隕石が回収されているのか。南極大陸に落ちた隕石は、氷の流れに乗って氷中を移動する。山脈にぶつかると、氷の中から浮上して地上に現れる。それを研究員が回収しているそうだ。なるほどなあ、アタシも南極で隕石探ししたいぞ。やはり極地にはロマンがあるな! アタシは大満足だった。夕方、うちに帰って昼寝をしたらカミさんが激ギレした。夜、KさんちのYとJが遊びに来る。
某日、カミさんの機嫌が悪い。アタシが「遊んでばかりでなんもしない! ナマケモノ以下だ!」と朝から引っ叩かれる。まあ実際その通りだし抵抗発しない。アタシは常に無抵抗主義者なのだ。しかしあまりにも引っ叩くので、渋々部屋の大掃除をする。撮影で使用した脚本を捨てる。撮影の終わった脚本ってだいたい捨ててしまうのだが、なにか有効利用する手立てはないのかしら? ホントは研究者とかにお渡ししたいのだが、そんな知り合いいねえしなあ。だからって第三者に渡ってしまうと色々問題があるだろうし。んー、なんかねえかなあ? 午後、GちゃんとSちゃんが遊びに来る。倅とカミさんも混ざり4人で「にゃんこ大戦争」や「人生ゲーム」をしてワイワイしていた。カミさんはこうやって、ちゃんとガキの相手をしているから偉い。アタシは原稿の直し作業。夕方、F組のセリフ練習で2時間歩く。夜、ネットフリックスで『ファウダ 復讐の連鎖』を観る。