某月某日、倅が義兄とディズニーランドに行く。アタシは一緒に芝居を観に行くつもりだったので残念。と言う事で、カミさんに「アンタいい加減にしなよ、自分ばっか好き勝手やって」というお小言をいただきながら、下北沢へ。アトリエ乾電池で柄本明演出『風のセールスマン』を観劇。この芝居は別役実さんが柄本さんに書き下ろしたひとり芝居の戯曲で、今回は柴田鷹雄くんが演ずる。班長さん(山本浩司さん)と待ち合わせ、劇場へ。柄本さんが客入れをしていて「なんだ、ユーヤか。ヒゲが伸びててわからなかったよ」と言われる。柄本さんがアタシの事をユーヤって呼んでくれた事が嬉しい。「何しに来たんだ?」「芝居観にきたんすよ」「いいから帰れ!」って、柄本さんとじゃれつけてさらに嬉しかった。つい調子に乗って「柄本さん、俺もこの芝居やりたいっす」と言ってしまう。「いいよ、やんなよ。俺がとやかく言う事じゃないから」「じゃあ、柄本さんのお墨付きをもらったって事で」この戯曲を柴田くんから読ませてもらって、やりたかったのだ。まさか本人に言えると思ってなかった。劇場に入るとごーいち(嶺豪一くん)と岡部たかしさんが来た。岡部さんは「今、柄本さんと現場が一緒でさ、観に来いっていわれたんだ。でも、柄本さん、俺が元劇団員だって覚えてなかったよ」と言っていた。芝居はよかった。柴田くんが演じていて、時々柄本さんの姿がダブって見えた。目玉の演出も良かったなあ。やっぱり面白い戯曲だ。終演後、岡部尚たんも混じってみんなで感想を柴田くんに伝える。今日はあと2ステやるので、早々に退散する。班長さんと別れて、『2nd』の編集長・上田くんと編集部の生田目くんと「ブルーマンデー」で次回連載の打ち合わせ。その後、三人で国分寺に行って、別企画の為に「スタミナ飯店」ですた丼を食う。アタシが十代の頃、よく通っていた店。当時は大盛りの上があって、3合飯のすた丼を食っていた。久しぶりに食べたが美味かったなあ。帰って、秋津の古本屋で移動読書用の本を漁る。小田豊二著『どこかで誰かがみていてくれる 日本一の斬られ役福本清三』、細谷正充著『野辺に朽ちぬとも 吉田松陰と松下村塾のおとこたち』、三遊亭円丈著『師匠、御乱心!』、吉村昭著『わたしの普段着』を購入。うちで昼寝。倅がいないのでカミさんの横でゴロゴロしていたら「臭いから近寄るな」と言われる。夜はカミさんとピザを食って、倅に教えてもらった「ポケモンユナイト」をプレイして寝る。
某日、午前中、カミさんと親父、お袋と多摩北部病院へ。じいちゃんのお見舞いに行く。じいちゃんは先日、肺炎で入院した。多摩北に3度目の入院。当初は「大した事ないだろうからすぐ退院になるよ」って、親父は言っていたのだが、入院したら自己嚥下が出来なくなってしまい、今は点滴で栄養を取っている。胃ろうは本人が拒否しているそうだ。「薬や入院でボケてしまって、わからないかもしれないな」と思っていたのだが、看護師さんにベッドごと運ばれて来たじいちゃんは、ウトウトしていたものの会話ができて驚いた。カミさんのこともわかっていた。親父と一緒にじいちゃんの伸びたヒゲを電気剃刀で剃る。じいちゃんに「(点滴の機械)これ邪魔でしょ? とっちゃおうか?」とシャレを言ったら笑っていた。あんまり長いこと話すのも辛いだろうってんで、早めに退散する。帰り道、四人で中華屋「ぼん天」へ。親父に「ここは量が多いから大盛りはやめたほうがいい」と教えたのだが、各自1品の注文に加えてチャーハンと餃子を追加してしまう。五目焼きそばを頼む。絶品だがやはり量が多くて、かみさんの残したニンニクラーメンを食ったらチャーハンまでたどり着けなかった。結局チャーハンはお土産にしてもらう。本当ならアタシが払うべきだが、財布すら持っていなかったのでご馳走になる。倅が帰ってくるまで昼寝。帰った倅と「ポケモンユナイト」をやる。夜、日記を書いて寝る。
某日、無職渡世。午前中は請求書を書いたり雑務をこなす。昼、成城学園へ行き、東宝スタジオで山下敦弘監督・久野遥子監督の『化け猫あんずちゃん』の試写。早めにスタジオに行って、マネージャーの井上さんとおしゃべり。最近、アタシに監督やプロデューサーから「ちょっと出演をお願いしたくて」って話をいくつかいただいたが、キャスティングの方から事務所には連絡が入っておらず「おや? どうなったんだ?」って話がいくつかある。まあ、向こうさんには向こうさんの都合があるだろうから、具体的な話になった時に考えりゃあいいのだが、企画を聞いてしまったアタシはなんだかモヤッとしてしまう。ま、仕方ねえか。試写室に行くと、監督の山下さんや久野さん、脚本のいまおかしんじさん、原作者のいましろたかしさん、前野朋哉くんが集まっていてヤーヤーする。このメンンツって(久野さんは初めてだけど)山下組ではおなじみの顔ぶれなのだが、そんな人たちが集まって作ったアニメ映画がカンヌ映画祭に招待されたのだ。これってなんだか不思議な感覚。今作プロデューサーの近藤くんともヤーヤー。近藤くんはもともと山下組の演出部で、伝説の自主映画『まんが島』でも助監督として参加してくれていた。そんな近藤くんが、アニメ会社に就職し、今作の企画を立ててカンヌまで持っていったのだ。これも凄いよなあ。今作は山下さんの監督の元、実写で一度撮影をして、それを元に久野さんがアニメーションを作った。ロトスコープって言うらしい。前野くんと並んで楽しみに上映を待った。いやー、傑作ですわ! イイ映画だった。まず、ロトスコープのおかげか、アニメに描かれるキャラクターが本当にいきいきしている。ちょっとした動作や仕草がナマナマしい。これってアニメを観ていて初めて感じた。脚本も良かった。母と娘の「逆立ち」のシーンでは泣いてしまった。いまおかさんのセリフだ! って感動した。そして久野さんのアニメ。母親の遺影を持ち出すシーンでの輝くホコリの演出。鳥肌がたった。映画はいましろさんの「あんずちゃん」の世界観を大切にしつつ、ちゃんと山下節やいまおか節の効いた作品で、それを久野さんが見事にアニメ化している。アタシは「倅に出演を自慢できて一緒に観に行ける映画」に出れたなあ。嬉しかった! 前野くんとおしゃべりしたりず、駅前の喫茶店「ソレイユ」で感想を言い合う。それくらいいい映画だったなあ。この日記が公開される頃には、サブスクでも観られると思いますので、見逃した方はぜひ観てくださいませ。
某日、内装仕事で大田原遠征。朝5時の始発で3時間かけて西那須野に向かう。移動読書は小田豊二著『どこかで誰かがみていてくれる 日本一の斬られ役福本清三』。何度目かの大田原遠征で、移動も乗り換えも慣れてしまう。3時間で『日本一の斬られ役福本清三』を読み終わる。駅で太田さんに拾ってもらって現場に向かうが、太田さんのゾンビのような顔に驚く。徹夜で作業していたらしい。ムムム、大田原の現場もいよいよ追い込まれてきたな! 内装仕事って結局、最後に施工するから現場進行のしわ寄せが全てかぶさってくるのだ。無理をせずには終わらない地獄現場。太田さんは電気工事を、アタシはシャワー棟の防水処理をやる。設備屋さんや水道屋さんと相番(作業場所がカチ合う事)になってしまい、場所を融通しながらの作業で思うように進まない。太田さんはだいぶイライラしていて、いつもに増して吠えている。仕方ねえよなあ。もう半年近く、この山の中でずーっと作業してるんだから。本日は夜まで作業。暗くなると大量の蚊やブヨが襲ってくる。壮絶な現場で、太田さんには悲壮感すら漂っている。なんてこった! 夜は2人でスーパーに寄って中華弁当を買う。「タックルベリー」に寄って釣り具を見る。太田さんはストレスで釣り具を爆買いしていた。アタシも中古の延べ竿を1000円で購入。ウキ仕掛けも買ったので、これで大田原の川で釣りができるぞ!
某日、内装仕事で大田原。朝からサウナ室の左官用の下地処理をして防水作業。本日から大工のダイゴさんが応援で来てくれた。朝から暑くて参ってしまう。とうとう今年もこの時期が来てしまったか。サウナ室でこもって作業をしていると作業着が汗で張り付く。本日は昼で早上がりなので下地処理だけはなんとか終わらせる。昼飯は太田さんとダイゴさんと3人で、食堂「竹清」へ名物ドデカチャーシューを食いに行く。行列ができていたが、目的のチャーシュー唐揚げ定食を食う。大食いのアタシが驚くどでかチャーシューはホロホロで口に入れると嚙む前に溶けてしまう。絶品だったが、大盛りはキツイな。そのまま駅に送ってもらって、駒場東大前へ。本日は荒川良々さんから「福島屋」でお誘いを受けたのだ。集合まで時間があったので駅近くの古書店「河野書店」で古本を物色。吉村昭著『長英逃亡』の上下巻、安東仁兵衛著『戦後日本共産党私記』、猪野健治著『興行界の顔役』、立松和平著『貧乏仲間』を購入し、福島屋へ。赤堀雅秋さん、荒川良々さん、水澤紳吾さん、ソータローさんと「巨人対ロッテ戦」をテレビ観戦しながら飲む。巨人は敗戦したが、終盤に惜しいところまでいった。大根仁さんも合流し皆のギアが入ったのだが、11時に近くなった頃に水澤さんが「俺とマツーラは明日現場なんでお先に失礼します」と言ってくれて、店を出た。水澤さんは明日も大田原に行かなきゃならないアタシを気遣って言ってくれたのだ。本当に優しい。何でかわからないけどアタシのスイッチが入ってしまい「チクショー!」とか「ぶっ殺してやる!」と誰彼構わず叫ぶアタシを、水澤さんが優しく納めてくれた。
某日、内装仕事で大田原遠征。朝5時出発で西那須野へ。通勤で3時間かけて通うって大変だわ。移動読書は吉村昭著『わたしの普段着』。吉村昭さんは歴史物の記録文学で有名だが、エッセイも面白い。9時には現場に着いて、バタバタとサウナ室の室内防水とデコリエ左官用の下地処理。室内作業だが風が抜けず汗が滴り落ちる。床作業があったので裸足だったのだが、気付かぬうちにブヨに刺されていて気が狂うくらいカユイ。「しまった!」気付いた時にはくるぶし周辺を3、4ヶ所刺されていて、我慢できずに血が出るくらいかいてしまう。クッソー! こいつら夕方の猛襲には警戒していたが、午前中でも来やがるんだなあ! ぬかった! 昼飯はダイゴさんと中華屋「応竜」へ。ここは唐辛子ラーメンが名物らしく、店員さんの説明を聞くが、どうもヤな予感がしてアタシは担々麺に注文を変える。ダイゴさんは唐辛子ラーメンの10唐。出てきたラーメンを見て「注文を変えてよかった!」と心から安心する。ダイゴさんはあまりの辛さで呼吸するだけでむせていた。食後、あまりの辛さで「腹が痛い」と沈んでいた。飯食って後悔するって、どんな罰ゲームだよ。ダイゴさんを励ますために「タックルベリー」に寄って、「ダイゴさんも延べ竿あったら川釣りできますよー」って唆してアタシと同じ中古延べ竿を買わせる。腹の痛いダイゴさんは釣竿よりもトイレだったらしく、脂汗を浮かべていた。午後、周平さん、アヤカ、小西のデザインチームも大田原入り。アタシはサウナ室の天井部分の左官をやっつける。夕飯は太田さん、ダイゴさん、アタシの現場方汚いおっさんチームと、周平さん、アヤカ、小西のオサレデザインチームの合同で韓国食堂「サモア」へ。ここで抜群のチヂミやサムギョプサル、スンドゥブを堪能して周平さんに奢ってもらう。店員のお姉さんが背が高くて可愛かった。美味かったので遠慮なく食いまくっていたら、周平さんが「社長って名前だけで、実際カネなんか持ってないんだぞ」とつぶやいていた。夜、ダイゴさんと相部屋。明日の早朝、川釣りに行くことを約束して寝る。
某日、内装仕事で大田原遠征。朝5時に起きて、ダイゴさんと共に川釣りへ出発。黒羽郵便局近くで車を止めて、湯坂川の川沿いを歩く。良さげなポイントで、延べ竿を伸ばして(210センチくらい)玉浮きの仕掛けに5号の袖針をつけて流す。餌はチューブ型の簡易エサ。川に魚影が確認できるが、エサを食わない。これじゃ勝負になんないから、川石をひっくり返してミミズをつける。すると1投目で食いついた。釣り師匠の太田さんから「魚が餌を食って浮きがチョンチョンって動くけど、そこは我慢して、食いついて浮きが沈んだら引け!」と助言されていたので、チョンチョンの時は歯を食いしばって我慢。浮きが沈んだ瞬間、竿を上げると10センチくらいのアブラハヤ。やー、嬉しかった! たかが小ハヤだけど、釣るのが楽しい。すぐにリリースして、同じポイントに流すと再び食った。小ハヤ2匹目。やっぱりエサは現地調達がいいのだな。ダイゴさんもハヤをあげる。「やー、楽しいっすねえ」「川の魚はスレてないからいいねえ」「欲を言えばもうちょいデカイ奴をあげたいなあ」なんて話しながら、上流へポイントを移す。川の淀みを狙ってエサを落とすと、再びハヤ。朝から大満足。ダイゴさんと那珂川の本流へ出向き、那珂橋付近で本場の鮎釣りを見学する。那珂川は鮎釣りが有名で、6月から鮎釣りが解禁となったのだ。さすが鮎の友釣りをやってるガチ勢は、装備も違う。アユ竿って驚くほど高いし、なにしろ釣りに金がかかる。オッサンたちが次々にアユを上げていて羨ましくなる。岸でヤンマ系のデカイヤゴが羽化していて、観察する。ヤゴからトンボの羽化って初めてみた。最後まで見学したかったが、8時過ぎてしまうので途中で現場に戻る。本日はサウナ室のデコリエ左官と立ち壁の下地処理。乾燥時間が出てくるので、ジェットヒーターを使って乾燥時間を短縮する。乾くのは早くなるが何しろ暑い。だって室温が40度以上になるんだもん。汗だくで左官。ダイゴさんや太田さんは、シャワー棟の仕上げをしているので、近くに誰もおらず寂しい。たまにクマンバチが飛んでくると嬉しいのだ。昼飯は食堂「のふうぞ」へ。唐揚げ食べ放題が有名らしいが、さすがに汗だく作業をして食欲も落ちていたので冷やし担々麺にする。午後はトップコートを塗りながら乾燥させる。乾き待ちの時間で、サウナ室の外壁を立てる。夕方、片付けをしていたら周平さんが「明日からお客さんが来るから」なんていう。え? 明日からオープンなの? 知らなかった! 慌ててシャワー棟の床にトップコートを塗り始める。太田さん、ダイゴさんと3人で「(お客さん来るなんて)聞いてないよー!」ってダチョウ倶楽部の真似をしながらバタバタ塗る。なんとか完成させてカッコをつけた。夕飯はみんなで鳥料理屋「秀」へ。鳥焼肉でバクバク飯を食う。労働後の飯は美味い。これだけは本当にやめられない。風呂もそこそこに、ダイゴさんが歯磨きし終える前に寝落ち。
某日、内装仕事で大田原遠征。本当は昨夜、東京に戻る予定だったが、作業が終わらず延長。カミさんに延長を伝えると「内装仕事なら仕方ない。映画の仕事だったらぶっ殺すけど」と言われる。どれだけ映画仕事を嫌ってるんだ。ホントは今朝も釣りに行きたかったのだが、流石に疲れていて起きれなかった。朝からシートップを練って、サウナ室の室内左官。理由はわからないけど、左官材を塗り上げた壁にカミキリムシがバシバシ飛んで来る。まだ硬化する前なので、カミキリムシがとまった場所に虫の形に跡が残ってしまう。その度にカミキリムシを外に逃がして、手直しする。今日だけで4匹のカミキリムシを救出した。なんでだろうか? 左官材の匂いに釣られるのかな? 本日の3時からお客さんが来るプレオープンなので、みなバタバタ作業していて、昼飯はコンビニ弁当。私は台湾ラーメンを食った。午後、左官作業を終わらせて片付け。夕方まで、場内を掃除して無事、お客さんを迎える。まあ、まだ作業は残っているけど。夕方、ダイゴさんに鶴ヶ島まで送ってもらう。事故渋滞にはまって、うちについたのが10時過ぎていた。
小田豊二著『どこかで誰かがみていてくれる 日本一の斬られ役福本清三』
某月某日、倅が義兄とディズニーランドに行く。アタシは一緒に芝居を観に行くつもりだったので残念。と言う事で、カミさんに「アンタいい加減にしなよ、自分ばっか好き勝手やって」というお小言をいただきながら、下北沢へ。アトリエ乾電池で柄本明演出『風のセールスマン』を観劇。この芝居は別役実さんが柄本さんに書き下ろしたひとり芝居の戯曲で、今回は柴田鷹雄くんが演ずる。班長さん(山本浩司さん)と待ち合わせ、劇場へ。柄本さんが客入れをしていて「なんだ、ユーヤか。ヒゲが伸びててわからなかったよ」と言われる。柄本さんがアタシの事をユーヤって呼んでくれた事が嬉しい。「何しに来たんだ?」「芝居観にきたんすよ」「いいから帰れ!」って、柄本さんとじゃれつけてさらに嬉しかった。つい調子に乗って「柄本さん、俺もこの芝居やりたいっす」と言ってしまう。「いいよ、やんなよ。俺がとやかく言う事じゃないから」「じゃあ、柄本さんのお墨付きをもらったって事で」この戯曲を柴田くんから読ませてもらって、やりたかったのだ。まさか本人に言えると思ってなかった。劇場に入るとごーいち(嶺豪一くん)と岡部たかしさんが来た。岡部さんは「今、柄本さんと現場が一緒でさ、観に来いっていわれたんだ。でも、柄本さん、俺が元劇団員だって覚えてなかったよ」と言っていた。芝居はよかった。柴田くんが演じていて、時々柄本さんの姿がダブって見えた。目玉の演出も良かったなあ。やっぱり面白い戯曲だ。終演後、岡部尚たんも混じってみんなで感想を柴田くんに伝える。今日はあと2ステやるので、早々に退散する。班長さんと別れて、『2nd』の編集長・上田くんと編集部の生田目くんと「ブルーマンデー」で次回連載の打ち合わせ。その後、三人で国分寺に行って、別企画の為に「スタミナ飯店」ですた丼を食う。アタシが十代の頃、よく通っていた店。当時は大盛りの上があって、3合飯のすた丼を食っていた。久しぶりに食べたが美味かったなあ。帰って、秋津の古本屋で移動読書用の本を漁る。小田豊二著『どこかで誰かがみていてくれる 日本一の斬られ役福本清三』、細谷正充著『野辺に朽ちぬとも 吉田松陰と松下村塾のおとこたち』、三遊亭円丈著『師匠、御乱心!』、吉村昭著『わたしの普段着』を購入。うちで昼寝。倅がいないのでカミさんの横でゴロゴロしていたら「臭いから近寄るな」と言われる。夜はカミさんとピザを食って、倅に教えてもらった「ポケモンユナイト」をプレイして寝る。
某日、午前中、カミさんと親父、お袋と多摩北部病院へ。じいちゃんのお見舞いに行く。じいちゃんは先日、肺炎で入院した。多摩北に3度目の入院。当初は「大した事ないだろうからすぐ退院になるよ」って、親父は言っていたのだが、入院したら自己嚥下が出来なくなってしまい、今は点滴で栄養を取っている。胃ろうは本人が拒否しているそうだ。「薬や入院でボケてしまって、わからないかもしれないな」と思っていたのだが、看護師さんにベッドごと運ばれて来たじいちゃんは、ウトウトしていたものの会話ができて驚いた。カミさんのこともわかっていた。親父と一緒にじいちゃんの伸びたヒゲを電気剃刀で剃る。じいちゃんに「(点滴の機械)これ邪魔でしょ? とっちゃおうか?」とシャレを言ったら笑っていた。あんまり長いこと話すのも辛いだろうってんで、早めに退散する。帰り道、四人で中華屋「ぼん天」へ。親父に「ここは量が多いから大盛りはやめたほうがいい」と教えたのだが、各自1品の注文に加えてチャーハンと餃子を追加してしまう。五目焼きそばを頼む。絶品だがやはり量が多くて、かみさんの残したニンニクラーメンを食ったらチャーハンまでたどり着けなかった。結局チャーハンはお土産にしてもらう。本当ならアタシが払うべきだが、財布すら持っていなかったのでご馳走になる。倅が帰ってくるまで昼寝。帰った倅と「ポケモンユナイト」をやる。夜、日記を書いて寝る。
某日、無職渡世。午前中は請求書を書いたり雑務をこなす。昼、成城学園へ行き、東宝スタジオで山下敦弘監督・久野遥子監督の『化け猫あんずちゃん』の試写。早めにスタジオに行って、マネージャーの井上さんとおしゃべり。最近、アタシに監督やプロデューサーから「ちょっと出演をお願いしたくて」って話をいくつかいただいたが、キャスティングの方から事務所には連絡が入っておらず「おや? どうなったんだ?」って話がいくつかある。まあ、向こうさんには向こうさんの都合があるだろうから、具体的な話になった時に考えりゃあいいのだが、企画を聞いてしまったアタシはなんだかモヤッとしてしまう。ま、仕方ねえか。試写室に行くと、監督の山下さんや久野さん、脚本のいまおかしんじさん、原作者のいましろたかしさん、前野朋哉くんが集まっていてヤーヤーする。このメンンツって(久野さんは初めてだけど)山下組ではおなじみの顔ぶれなのだが、そんな人たちが集まって作ったアニメ映画がカンヌ映画祭に招待されたのだ。これってなんだか不思議な感覚。今作プロデューサーの近藤くんともヤーヤー。近藤くんはもともと山下組の演出部で、伝説の自主映画『まんが島』でも助監督として参加してくれていた。そんな近藤くんが、アニメ会社に就職し、今作の企画を立ててカンヌまで持っていったのだ。これも凄いよなあ。今作は山下さんの監督の元、実写で一度撮影をして、それを元に久野さんがアニメーションを作った。ロトスコープって言うらしい。前野くんと並んで楽しみに上映を待った。いやー、傑作ですわ! イイ映画だった。まず、ロトスコープのおかげか、アニメに描かれるキャラクターが本当にいきいきしている。ちょっとした動作や仕草がナマナマしい。これってアニメを観ていて初めて感じた。脚本も良かった。母と娘の「逆立ち」のシーンでは泣いてしまった。いまおかさんのセリフだ! って感動した。そして久野さんのアニメ。母親の遺影を持ち出すシーンでの輝くホコリの演出。鳥肌がたった。映画はいましろさんの「あんずちゃん」の世界観を大切にしつつ、ちゃんと山下節やいまおか節の効いた作品で、それを久野さんが見事にアニメ化している。アタシは「倅に出演を自慢できて一緒に観に行ける映画」に出れたなあ。嬉しかった! 前野くんとおしゃべりしたりず、駅前の喫茶店「ソレイユ」で感想を言い合う。それくらいいい映画だったなあ。この日記が公開される頃には、サブスクでも観られると思いますので、見逃した方はぜひ観てくださいませ。
某日、内装仕事で大田原遠征。朝5時の始発で3時間かけて西那須野に向かう。移動読書は小田豊二著『どこかで誰かがみていてくれる 日本一の斬られ役福本清三』。何度目かの大田原遠征で、移動も乗り換えも慣れてしまう。3時間で『日本一の斬られ役福本清三』を読み終わる。駅で太田さんに拾ってもらって現場に向かうが、太田さんのゾンビのような顔に驚く。徹夜で作業していたらしい。ムムム、大田原の現場もいよいよ追い込まれてきたな! 内装仕事って結局、最後に施工するから現場進行のしわ寄せが全てかぶさってくるのだ。無理をせずには終わらない地獄現場。太田さんは電気工事を、アタシはシャワー棟の防水処理をやる。設備屋さんや水道屋さんと相番(作業場所がカチ合う事)になってしまい、場所を融通しながらの作業で思うように進まない。太田さんはだいぶイライラしていて、いつもに増して吠えている。仕方ねえよなあ。もう半年近く、この山の中でずーっと作業してるんだから。本日は夜まで作業。暗くなると大量の蚊やブヨが襲ってくる。壮絶な現場で、太田さんには悲壮感すら漂っている。なんてこった! 夜は2人でスーパーに寄って中華弁当を買う。「タックルベリー」に寄って釣り具を見る。太田さんはストレスで釣り具を爆買いしていた。アタシも中古の延べ竿を1000円で購入。ウキ仕掛けも買ったので、これで大田原の川で釣りができるぞ!
某日、内装仕事で大田原。朝からサウナ室の左官用の下地処理をして防水作業。本日から大工のダイゴさんが応援で来てくれた。朝から暑くて参ってしまう。とうとう今年もこの時期が来てしまったか。サウナ室でこもって作業をしていると作業着が汗で張り付く。本日は昼で早上がりなので下地処理だけはなんとか終わらせる。昼飯は太田さんとダイゴさんと3人で、食堂「竹清」へ名物ドデカチャーシューを食いに行く。行列ができていたが、目的のチャーシュー唐揚げ定食を食う。大食いのアタシが驚くどでかチャーシューはホロホロで口に入れると嚙む前に溶けてしまう。絶品だったが、大盛りはキツイな。そのまま駅に送ってもらって、駒場東大前へ。本日は荒川良々さんから「福島屋」でお誘いを受けたのだ。集合まで時間があったので駅近くの古書店「河野書店」で古本を物色。吉村昭著『長英逃亡』の上下巻、安東仁兵衛著『戦後日本共産党私記』、猪野健治著『興行界の顔役』、立松和平著『貧乏仲間』を購入し、福島屋へ。赤堀雅秋さん、荒川良々さん、水澤紳吾さん、ソータローさんと「巨人対ロッテ戦」をテレビ観戦しながら飲む。巨人は敗戦したが、終盤に惜しいところまでいった。大根仁さんも合流し皆のギアが入ったのだが、11時に近くなった頃に水澤さんが「俺とマツーラは明日現場なんでお先に失礼します」と言ってくれて、店を出た。水澤さんは明日も大田原に行かなきゃならないアタシを気遣って言ってくれたのだ。本当に優しい。何でかわからないけどアタシのスイッチが入ってしまい「チクショー!」とか「ぶっ殺してやる!」と誰彼構わず叫ぶアタシを、水澤さんが優しく納めてくれた。
某日、内装仕事で大田原遠征。朝5時出発で西那須野へ。通勤で3時間かけて通うって大変だわ。移動読書は吉村昭著『わたしの普段着』。吉村昭さんは歴史物の記録文学で有名だが、エッセイも面白い。9時には現場に着いて、バタバタとサウナ室の室内防水とデコリエ左官用の下地処理。室内作業だが風が抜けず汗が滴り落ちる。床作業があったので裸足だったのだが、気付かぬうちにブヨに刺されていて気が狂うくらいカユイ。「しまった!」気付いた時にはくるぶし周辺を3、4ヶ所刺されていて、我慢できずに血が出るくらいかいてしまう。クッソー! こいつら夕方の猛襲には警戒していたが、午前中でも来やがるんだなあ! ぬかった! 昼飯はダイゴさんと中華屋「応竜」へ。ここは唐辛子ラーメンが名物らしく、店員さんの説明を聞くが、どうもヤな予感がしてアタシは担々麺に注文を変える。ダイゴさんは唐辛子ラーメンの10唐。出てきたラーメンを見て「注文を変えてよかった!」と心から安心する。ダイゴさんはあまりの辛さで呼吸するだけでむせていた。食後、あまりの辛さで「腹が痛い」と沈んでいた。飯食って後悔するって、どんな罰ゲームだよ。ダイゴさんを励ますために「タックルベリー」に寄って、「ダイゴさんも延べ竿あったら川釣りできますよー」って唆してアタシと同じ中古延べ竿を買わせる。腹の痛いダイゴさんは釣竿よりもトイレだったらしく、脂汗を浮かべていた。午後、周平さん、アヤカ、小西のデザインチームも大田原入り。アタシはサウナ室の天井部分の左官をやっつける。夕飯は太田さん、ダイゴさん、アタシの現場方汚いおっさんチームと、周平さん、アヤカ、小西のオサレデザインチームの合同で韓国食堂「サモア」へ。ここで抜群のチヂミやサムギョプサル、スンドゥブを堪能して周平さんに奢ってもらう。店員のお姉さんが背が高くて可愛かった。美味かったので遠慮なく食いまくっていたら、周平さんが「社長って名前だけで、実際カネなんか持ってないんだぞ」とつぶやいていた。夜、ダイゴさんと相部屋。明日の早朝、川釣りに行くことを約束して寝る。
某日、内装仕事で大田原遠征。朝5時に起きて、ダイゴさんと共に川釣りへ出発。黒羽郵便局近くで車を止めて、湯坂川の川沿いを歩く。良さげなポイントで、延べ竿を伸ばして(210センチくらい)玉浮きの仕掛けに5号の袖針をつけて流す。餌はチューブ型の簡易エサ。川に魚影が確認できるが、エサを食わない。これじゃ勝負になんないから、川石をひっくり返してミミズをつける。すると1投目で食いついた。釣り師匠の太田さんから「魚が餌を食って浮きがチョンチョンって動くけど、そこは我慢して、食いついて浮きが沈んだら引け!」と助言されていたので、チョンチョンの時は歯を食いしばって我慢。浮きが沈んだ瞬間、竿を上げると10センチくらいのアブラハヤ。やー、嬉しかった! たかが小ハヤだけど、釣るのが楽しい。すぐにリリースして、同じポイントに流すと再び食った。小ハヤ2匹目。やっぱりエサは現地調達がいいのだな。ダイゴさんもハヤをあげる。「やー、楽しいっすねえ」「川の魚はスレてないからいいねえ」「欲を言えばもうちょいデカイ奴をあげたいなあ」なんて話しながら、上流へポイントを移す。川の淀みを狙ってエサを落とすと、再びハヤ。朝から大満足。ダイゴさんと那珂川の本流へ出向き、那珂橋付近で本場の鮎釣りを見学する。那珂川は鮎釣りが有名で、6月から鮎釣りが解禁となったのだ。さすが鮎の友釣りをやってるガチ勢は、装備も違う。アユ竿って驚くほど高いし、なにしろ釣りに金がかかる。オッサンたちが次々にアユを上げていて羨ましくなる。岸でヤンマ系のデカイヤゴが羽化していて、観察する。ヤゴからトンボの羽化って初めてみた。最後まで見学したかったが、8時過ぎてしまうので途中で現場に戻る。本日はサウナ室のデコリエ左官と立ち壁の下地処理。乾燥時間が出てくるので、ジェットヒーターを使って乾燥時間を短縮する。乾くのは早くなるが何しろ暑い。だって室温が40度以上になるんだもん。汗だくで左官。ダイゴさんや太田さんは、シャワー棟の仕上げをしているので、近くに誰もおらず寂しい。たまにクマンバチが飛んでくると嬉しいのだ。昼飯は食堂「のふうぞ」へ。唐揚げ食べ放題が有名らしいが、さすがに汗だく作業をして食欲も落ちていたので冷やし担々麺にする。午後はトップコートを塗りながら乾燥させる。乾き待ちの時間で、サウナ室の外壁を立てる。夕方、片付けをしていたら周平さんが「明日からお客さんが来るから」なんていう。え? 明日からオープンなの? 知らなかった! 慌ててシャワー棟の床にトップコートを塗り始める。太田さん、ダイゴさんと3人で「(お客さん来るなんて)聞いてないよー!」ってダチョウ倶楽部の真似をしながらバタバタ塗る。なんとか完成させてカッコをつけた。夕飯はみんなで鳥料理屋「秀」へ。鳥焼肉でバクバク飯を食う。労働後の飯は美味い。これだけは本当にやめられない。風呂もそこそこに、ダイゴさんが歯磨きし終える前に寝落ち。
某日、内装仕事で大田原遠征。本当は昨夜、東京に戻る予定だったが、作業が終わらず延長。カミさんに延長を伝えると「内装仕事なら仕方ない。映画の仕事だったらぶっ殺すけど」と言われる。どれだけ映画仕事を嫌ってるんだ。ホントは今朝も釣りに行きたかったのだが、流石に疲れていて起きれなかった。朝からシートップを練って、サウナ室の室内左官。理由はわからないけど、左官材を塗り上げた壁にカミキリムシがバシバシ飛んで来る。まだ硬化する前なので、カミキリムシがとまった場所に虫の形に跡が残ってしまう。その度にカミキリムシを外に逃がして、手直しする。今日だけで4匹のカミキリムシを救出した。なんでだろうか? 左官材の匂いに釣られるのかな? 本日の3時からお客さんが来るプレオープンなので、みなバタバタ作業していて、昼飯はコンビニ弁当。私は台湾ラーメンを食った。午後、左官作業を終わらせて片付け。夕方まで、場内を掃除して無事、お客さんを迎える。まあ、まだ作業は残っているけど。夕方、ダイゴさんに鶴ヶ島まで送ってもらう。事故渋滞にはまって、うちについたのが10時過ぎていた。