某月某日、清澄白河で内装仕事。通勤読書は古川緑波著『ロッパの悲食記』。本日で清澄の現場も最終日。残りは是正工事になるから本日中に作業を終わらせなければならないが、窓枠の部材も届いていないし、塗装も器具付けが終わらないからできない。痺れるなあ。ごーいち(嶺豪一くん)と伊藤くん、担当者のあやかも乗り込んでウロウロバタバタする。午前中で粗方出来ることは潰したが、いまだ窓枠の部材が届かず。午後にようやく届く。ここからごーいちと枠から組み始め、加工、取り付けをやる。ようやく終わったのが7時過ぎ。ここから道具や材料を積み込んで荒掃除。養生をあげて終わる。最後はバッタバタだったけど、これは毎回の事なり。なんとか納めた。ホントは7時から新宿で飲む約束をしていたのだが、遅れてしまった。ごーいちと連れ立って新宿の韓国料理屋「モンシリ」へ。影山祐子さんが予約してくれた美味い韓国料理屋。影山さんと井之脇海くん、山本奈衣瑠さん、中島歩くんと合流しワイワイやる。皆がそれぞれ面識があって嬉しかった。料理も美味かったな。二軒目は「無頓着」で飲む。ここは上田くんと飯食った時に偶然入った店だわ。昨今のハラスメント問題やユーロの上映中止運動の事を話し合う。12時で終電だったので後ろ髪をキュンキュンに引っ張られながら帰る。
某日、無職渡世。午前中、倅と連れ立って下北沢へ。本日はアトリエ乾電池で東京乾電池『大朗読会』が行われていた。一日中アトリエで劇団員や関係者による朗読が行われ、入場無料・出入り自由。アタシは朝から倅と伺う。西本竜樹さんや嶋田健太さんが読んだ『ヴィヨンの妻』はさすがだと感心し、沖中千英乃さんの読んだエッセイでは倅も笑っていた。岡部尚たんは倅が「ウンコの話して!」と電話で伝えたので、本当にうんこにまつわる絵本を朗読してくれた。聞いていた倅は大喜びだったが、会場のおばさま達もケラケラしていた。一度劇場を出て飯。受付で倅は西本さんやスタッフさんからお菓子をもらっていた。飯は蕎麦屋「広栄屋」で倅と天丼を食う。ロッパさんの本の影響か、今日はどうしても天丼を食いたかった。カミさんから金をせびって「てんや」を探したが、下北に「てんや」がなかったのだ。「広栄屋」の天丼は、エビ天が2本だけの天丼で、内心「これは海老天丼で、アタシの望んだ天丼じゃない!」と思ったが、美味かったので平らげた。倅もペロッと食っていた。岡部尚たんと河井青葉ちゃん、そして岡部ジュニアと合流し、喫茶店のテラス席でお茶。偶然、中村映里子さんが通って一緒にお茶する。岩谷健司さんも通り、ヤーヤーする。おいおい、この辺にゃ役者しかいねえのかよ。下北って怖いな。その後、尚たん、青葉ちゃん、ジュニア、倅、アタシでゲーセンへ。みんなでクレーンゲームを楽しむ。ワイワイやって帰る。アタシは帰宅後、昼寝。夜、溜まっていた日記を書く。上田くんから原稿の増量以来。あと630字足してほしいそうだ。まあ、明日やろう。
某日、午前中、カミさんと親父と3人で祖母のお見舞いに特養へ行く。久しぶりに会うばあちゃんだったが、今日はなんとなく目が開いたりもして反応があった。理解しているとは思えないし、正直、元気で世話をしてくれていた頃のばあちゃんの記憶が濃くて、今の姿がどこか受け入れきれない。仕方ねえんだけどさ。男か女かすらわからない不思議な感じで、年取ると性別を超えて別の生き物に進化するのだと納得した。昼飯は実家で、じいちゃん、両親、カミさんと倅とリンガーハットの皿うどんを食う。美味かった。午後、倅とカミさんは恒例のゲーセンへ。倅は桃鉄のジャックポットというゲームにハマっているらしい。アタシは帰宅して、『あるとしか言えない。かもしれない』の原稿を手直し。上田くんに送る。森義隆監督・阿部修英監督のNHKドラマ『母の待つ里』の製本台本が届く。早速読むが、グッとくるシナリオだった。脚本は一色伸幸さん。アタシは滝田洋二郎監督『僕らはみんな生きている』が大好きで、これも脚本は一色さん。参加できて嬉しい。今作はドラマだけど、監督が森さんだしやりたいと思った。夜、原稿作業。
某日、無職渡世。新井さんに会いに行く。伸也と実家の車で所沢駅へ。嶺豪一くんと合流し、一路某所へ。午前中、某所にて新井さんと面会。変わらず元気。「マツーラと時生はホントにポンコツだわ。出たらビンタ案件だよ!」と言われる。いやいや、ポンコツは今に始まったことじゃないでしょ。勘弁してくださいよ! 面会後、新井さんに頼まれた「ジョジョランズ」の1・2巻と「岸辺露伴ルーヴルへいく」、ホッカイロ2個を差し入れ。昼飯は焼肉の食い放題優良店「平家」で3人ガッツリ食う。ごーいちくんを都内で下ろして帰宅。運転中、マナーが悪い運転者を見ると「あさましや!」と叫ぶ遊びが流行って、二人で爆笑した。ユーロの上映中止問題についても話す。「白河の清きに魚の住みかねて元の濁りの田沼恋しき」何事もいき過ぎると息苦しくなるし、結果テメエの首を絞めることになる。悪い事は悪いと思うが、一方的に正義を振りかざすだけではダメだ。繰り返しになるが、悪いことは断罪されるべき。それは絶対だ。ただ、刀を抜くなら、抜く前に収めどころを考えるべきだし、その「正義」が終わりのない規制になることを危惧する。人種・出自・思想・宗教、前科者だろうが高学歴者だろうが、全ての垣根を乗り越えたごった煮的猥雑さが映画の強みだと思う。相手を尊重し慮る関係で「面白い映画を作る」って目標のもと、いろんな奴らが蠢く業界でいいのだ。そもそも社会の落ちこぼれが集まったような世界だぜ。全てを受け入れ飲み込む許容も必要だ。拒絶や排除が強まる世界なんか面白くないんじゃねえかな?
某日、内装仕事で工房。通勤読書は古川緑波著『ロッパの悲食記』読了。今日は秋津から有楽町線直通電車で月島まで出て、門仲というルートで行った。このルートだとそこまで混まなくて快適。しかも座って読書できた。ただ、往復で250円くらい高い。でもこっちの方がいいな。年々人混みが苦手になってくる。本も集中して読めるのでしばらくはこのルートで通おう。本日は什器制作。伊藤くんとごーいち(嶺豪一くん)と作業。昼飯用にカミさんが作ってくれたオニギリを忘れてきてしまった。カミさんからの激怒メールで気付く。今月からタバコと昼飯とコーヒー代を合わせて1日1000円生活がスタートしたのだ。本日はタバコを2箱買ってしまったので、昼飯はナイススティック1本。ナイススティックはヒジョーに美味い。緑波さんにも食わせてあげたい。夕方、早上がりして成城学園へ。担当マネージャーの井上さんと合流し、東宝スタジオへF組『某』衣小合わせ。今回もキャスティングの田端さんと山下さんにお世話していただく。この2人にはホントに足を向けて寝られない。アタシが最近面白い作品に関われているのは、多くが田端さん案件だ。アタシは長いこと1シーンだけ賑やかして終わる役が多かった。でも、田端さんが声をかけてくれるようになって、長く芝居ができる役が増えた。「本読みしねえ」とか「ギャラを早めに」とかワガママ言うのに、それでも呼んでくれる。本当にありがたい。懸命にやります! 当たり前か! 衣装のまさえさんとキャッキャしながら和装に着替え、バタバタやる。監督のFさんから丁寧な作品のご説明を受けて、最後に「なんかご質問ありますか?」と聞かれる。アタシはこれが困る。みんなどうやって答えてるんだろうか? 芝居のことは現場でやりゃいいし、セリフの解釈とか聞くのかな? なんか役者っぽい質問を考えた方がいいのかな? アタシャいつも「特にありません」としか言えないのだ。「全然できないのでご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします」としか言いようがない。「あとは、現場で!」だ! 帰るとカミさんから「いつまで役者やってんだ、早く辞めろ」と詰められる。カミさんはアタシのスケジュールがわからず家族旅行の予約が取れないから、大変ご立腹なのだ。アタシもなんとか矛先を躱すため「あと5年やって映画で食えなかったら、保谷納豆に就職する」と啖呵を切ってしまう。うう、食うのが目的で芝居をやっているワケじゃねえのだが、あの状況じゃあそう言うしかなかったのよ。大丈夫かしら?? まあ、大丈夫じゃねえだろうなあ。のらりくらりとかわしつつ、誤魔化しながら続けていくしかねえや。
某日、内装仕事で工房。通勤読書は高峰秀子著『わたしの渡世日記・上』面白い。読書はするべきだな。高峰さんもそう書いてる。本日も伊藤くんと什器制作。細かい仕事が多くて肩がこる。朝の就業前と昼休みに個人的趣味で木製コップを作っている。えー、今日の1000円は「まいばすけっと」でタバコ1箱、コーヒー2缶。そして昼飯は考えに考えた結果、1本120円のフランスパンのバケットと100円のピーナツクリーム。これが一番ハラがふくれそうだったのだ。パッサパサな味気ないバケットをちぎって、ピーナツ風味の水飴みたいなクリームを塗ったくって食う。とくかく、満腹感だけはあった。貧者が太るというのは、安いこんな食事ばっかしてるからだろうな。あーあ、「富水」で天丼か大サバ定食が食いたいヨ。残業して帰ると8時過ぎ。帰りの大江戸線では読書せず寝てしまう。しかし、1日3時間以上(下手したら4時間くらい)電車に乗っている。宇野祥平さんのアドバイスがなかったらアタシは通勤読書をしていなかっただろうから、膨大な時間を無駄にしていたかもしれない。読書はいい。帰って日記を書いて寝てしまう。やらなきゃならん事はたくさんあれども、肉体労働で疲れちまってダメだなあ。そろそろセリフもやらねば。柴田くんのロゴと原稿と確定申告も。メダカの水槽も直さなきゃだし、家庭菜園もやらなきゃ。
某日、内装仕事で工房。通勤読書は高峰秀子著『わたしの渡世日記・上』。高峰さんが戦前から子役として活躍され、戦中・戦後を駆け抜けたトップスターだと知ってはいたが、この本に書かれた義母との葛藤や俳優としての試行錯誤、そして何より金銭事情は驚くほど新鮮だ。映画俳優として必要な心構えの根本は、現在も変わっていない。ただ、映画界の経済事情や撮影環境の厳しさは、当時とは比べられないくらい悪化してるよなあ。昔を羨んでも仕方ねえけど、現在の俳優部はよくやってると思う。NHKドラマ『母の待つ里』の総スケが出た。どうやらしばらくは岩手に泊まりになりそうだ。カミさんが荒れちゃうなあ。本日も伊藤くんと什器制作。アタシは仕上げ塗装をバタバタとやる。昼飯はカミさんが握ってくれたオニギリ2個。昼飯を食うだけで午後の動きが変わる。食わねえとダメなんだな。「コメが仕事する」ってのは本当だ。残業して仕上げまで終わらせる。夜、カミさんに撮影スケジュールを伝えようと思ったが、機嫌が悪いのでやめておく。こういう事は、お伝えするタイミングが大事なのだ。普段は「うちに帰ってくるな、出て行け」って言ってるのに、いざ撮影合宿が決まると途端に機嫌が悪くなってしまう。「アンタは家事・育児全て放り出して、てめえだけ金にもならない好きな事をやってる」「アンタが必要な時に必ずいないのは才能だわ」まあ、その通りなんで返す言葉もない。この2ヶ月くらい撮影もなく、真面目に内装をやっていたのでカミさんの心も平安だったんだろうなあ。全方位にご迷惑をかけつつ、騙しだましやっていくしかねえのよ。おい、俳優志望の若人よ。これが現実だ。決して華やかな世界じゃねえからな!
某日、内装仕事で市川。朝、タバコを吸いに外に出ると、雪が積もっていて驚いた。昨夜の天気予報で「雪予報」でてたっけなあ? 電車は運休や遅延になっている。でも、雪が降ろうと槍が降ろうと、日雇い労働者は仕事に行かなきゃなるめえて。通勤読書は高峰秀子著『わたしの渡世日記・下』。戦後、若くして母親役をやり始めた高峰さんだが、その努力を知る。映画が一番勢いのあった頃、スクリーンを躍動していた俳優の話は面白い。や、憧れる。朝から、市川の現場に工房の什器を搬入。雪が雨に変わり、ビショ濡れになりながらの作業で、ヒジョーに寒い。午後はごーいち(嶺豪一くん)と再び工房での什器制作。アタシは3時に早上がりして表参道へ。テレビマンユニオンでNHK『母の待つ里』衣小合わせ。森義隆監督と阿部修英監督。森さんとようやく仕事ができる。(森さんと初めてお会いしたのは映画に全く関係のない、西武球場だった。お互いライオンズファンなのだ)そして脚本は一色伸幸さん。アタシが大好きでガキの頃繰り返し観た映画『僕らはみんな生きている』の脚本家。嬉しいなあ。はしゃいで乗り込んだが、森さんがバタバタ進めるので、あっという間に終わった。アタシのおしゃべりが過ぎたのだろうな。渋谷まで出て井上さんとチョコレートを買って、ユーロスペースに差し入れ。アタシは自主映画や独立系の映画で、「ユーロスペース」や「ポレポレ東中野」そして「ケイズシネマ」には大変にお世話になってきた。アタシはなんも出来ないけど、せめて顔を出そうと思ったのだ。北条さんとワチャワチャお喋りして、影山さんともキャンキャン話す。アタシャ、思想・信条よりも義理・人情で動くニンゲンだ。矛盾を抱えながら自由に生きたい。浪花節だぜ、人生は!