某日、内装仕事で工房へ。朝起きたら、カミさんからバレンタインのプレゼントがテーブルに投げ捨てられていた。と言いますのもアタシが「チョコは虫歯になるしアンタに食べられちゃうからDVDを買ってくれ!」と強く要求したのです。カミさんは連日強訴するアタシに根負けして「1000円以下なら買ってやろう」と言ったのだ。しかしアタシが欲しいポール・トーマス・アンダーソン監督『リコリス・ピザ』のブルーレイは1400円だったので、更に400円の値上げを要求し、勝ち取ったものだった。今年はオーサカタニさんと石坂啓さんからのチョコとカミさんから『リコリス・ピザ』をゲットしたのだ。サンキュー。通勤読書は佐藤優著『獄中記』。面白いな。国益とはなんなんぞや! 国家権力の横暴さにゾッとする。本日は市川の現場へ什器設置。伊藤くんとでかい洗面台を製作し、現場に運び入れるが什器がデカすぎて玄関から入らない。参った。二人で四苦八苦してなんとか搬入する。「毎回毎回、どうして搬入経路を確認しねえんだ!」といつもなら伊藤くんを怒っていると思うのだが、今日のアタシは『リコリス・ピザ』でご機嫌なので「まあ仕方ねえわな」と笑っていられた。恐るべしP・T・A効果。工房に戻って狭い工房で苦労しながらデカイ什器製作。いつもなら「サブロク板も取り回せねえ工房で作業なんか出来るか!」とブチ切れていただろうが、P・T・A効果で我慢ができた。これで腰痛とイボ痔が治ったら強烈なP・T・A原理主義者になるだろう。夜、ユーネクストでヨゼフ・フィルスマイヤー監督『スターリングラード』を観る。あ、ジュード・ロウ主演じゃないドイツ版の方ね。敗戦濃厚のドイツ軍の崩壊と戦争の悲惨さがこれでもかと描かれている。キツイけど傑作だと思う。
某日、内装仕事で清澄白河。通勤読書は引き続き佐藤優著『獄中記』。国家ってそもそもなんなんでしょうね? アタシャ、常々思うわけですよ。この国家ってヤツのせいでどれだけの人命が失われて来たのでしょう。戦争・弾圧・革命なんて呼ばれるモンで数えきれないヒトが死んできたわけでしょ? そろそろ学ぼうや、人類。そういう枠に捉われない政治体系って出来ないモンですかねえ。なんて日雇い労働者のオッサンは満員電車に揺られながら考えているワケです。で、本日は1枚板の天板搬入。3パーツに分かれているが、1枚200キロ近い。エレベーターにも入らないので大型クレーンで釣り上げて窓から入れるのだ。ヌカノブさんの大工チームが3人、我が内装屋チームが4人で介助する。クレーンのオペさんは電線が張り巡らされた空間のギリギリを攻めて揚げてくるので、見ているコチラもタマタマがキュッとする。すげえ技術だなあ。立派な天板を無事に搬入して設置。3つの天板をつなぎ合わせて、7人のオッサンがウンセワッセと据える。こういう大人数の仕事って、オッサンになってもテンションが上がる。運動会的なノリになるのだ。午後3時に亀戸に移動し、赤松利市さんと会う。赤松さんと韓国料理屋「カンちゃん」で飯を食う予定だったのだが、残念ながら夕休中だったので、近くの焼き鳥屋に入って近状報告。赤松さんの体調も心配だが、精神面でもシビレているようで「俺が出来ることなら手伝うから言ってくださいよ」と何度も言っておく。赤松さんはアタシの両親と同年代なので、やはり他人事じゃねえんだよな。赤松さんの事情も知っているから、アタシが手伝える事って限られているのもわかるが、やれることがあるなら遠慮せず言って欲しい。体使うことなら出来るから。夜、原稿作業。連日内装仕事をしていると疲れてしまって書けない。ま、言い訳なんだけどさ。
某日、午前中、倅とカミさんは休日恒例のゲームセンターへ。アタシは昨夜の続きで『あるとしか言えない。かもしれない』の原稿を書く。書くと言っても文量オーバーしているので削る作業なのだが。なんとか2550字でまとめる。今回の最上川遠征記は3回に渡っての掲載になりそうだ。上田くんに原稿を送信して、ちょっと肩の荷が下りた。午後、カミさんがケーキを買って倅とカミさんと実家へ。じいちゃんの94歳の誕生日を両親と共にお祝いする。じいちゃんはここ半年で、誤嚥性肺炎とコロナで2回の入院を経ている。しかしケーキに大喜びしてバクバク食っていた。親父によると「甘いモンならなんでも喜んで食う」らしい。退院して帰って来た時は、だいぶボケが進行してアタシですら「もうヤベエな」と思っていたが、だいぶ回復してしっかりして「あと何回お祝いしてもらえるか」なんて冗談も言っていた。食欲もあるし、やっぱ人間って食う気があるうちは大丈夫だな。親父と倅と庭で焚き火。最近、休日に実家で焚き火することが恒例になっている。倅は焚き火より穴掘りに夢中。アタシはダメになった桜の老木を切る。夜、DVDで内田吐夢監督『大菩薩峠』を観る。片岡千恵蔵の御大、かっけえんだよなあ。でも映画の『大菩薩峠』は三隅研次監督で市川雷蔵さんの主演版が好き。や、もちろん岡本喜八監督版も好き。つまり『大菩薩峠』はいい。アタシに机竜之助役こねえかなあ。監督は三宅唱さんなんかいいんじゃねえか?
某日、朝、上田編集長より「『あるとしか言えないかもしれない』の掲載ページ数を3ページに増やそうと思うんですが、プラス1000字で原稿いけますか?」って連絡がくる。文量を増やす分にはなんちゃないので、「カフェドクリエ」で1000字分書き足して再送。文字数の都合で落とした話を復活させる事が出来てよかった。そのまま大泉の東映へ。白石和彌組『十一人の賊軍』のアフレコなり。初めて映像を見るので楽しみにしていた。白石さんとも久しぶりに会ったが疲れているように見えた。「白石さん、疲れてんじゃないっすか?」「なんか忙しくてさ」忙しいのは悪くねえけど体壊さないようにして欲しいモンだ。アフレコする前に映像を確認するのだが、驚いた。おそらく仕上げ前の映像だけど濃密でワクワクする。セリフの場所そっちのけで見入ってしまい、テメエの確認を忘れてしまった。こりゃ上がりが楽しみだ。白石さんに「画、すごいっすね」と伝えると「面白い映画になるよコレ」と言っていた。早く完成作が観てえなあ。アフレコも梃摺らずに予定時間より早く終わる。白石さんを昼飯に誘って、二人で食堂へ。アタシは好物のカレーライス大盛りを奢っていただく。で、『福田村事件』アカデミー脚本賞の受賞についてアタシの意見を聞いてもらった。白石さんと話していて再び強く思ったのだが、矜持を忘れちゃいけねえな。結局、思想なんかより浪花節なんだよ。スジを通さなきゃカッコ悪い。疲れている白石さんを無理につき合わせちゃって申し訳ないが、再確認できてよかった。帰って『回頭日記』の直し作業。昨年の今頃は片山組の台湾ロケだった。直していて当時のことを思い出す。担当マネージャーの井上さんにチェックしてもらうために、記事を送る。日記も掲載が始まって1年経った。きちんと校正して出版してえなあ。
某日、内装仕事で工房作業。通勤読書は佐藤優著『獄中記』。読んでいる本が他人に知られてもいいのでカバーは一切しないのだが、今朝電車内で立って読んでいたら、対面するオッサンに「その本、面白い?」と質問された。肉体労働者風情が熱心に読書しているので興味を持ったのかもしれない。「面白いっすよ。外務官僚が見せしめにパクられた獄中記す」って言ったらスマホで調べていた。良さげなスーツを着た渋目のオッサンだったが、読書が好きなのかもしれない。練馬で降りる時も「ありがとうね」なんて言われた。礼儀正しくて良き。本日は伊藤くんと什器製作。一般家庭に収める什器なので気を使う。細かい作業が多くて疲れた。伊藤くんから「マツーラさん、最近撮影ないんですか?」と質問されて気付いたのだが、岸組の撮影が終わってから次の撮影予定まで2ヶ月空いている。俳優業は水物なのでそんなことは珍しくもないのだが、昔なら気にしちゃっていただろうな。今はそんなに気にならない。先々に撮影が決まっているって事もあるだろう。あと、版画や書き物、木製のコップも作りたいし、やりたい事がたくさんあるので俳優業に対するスタンスが変わってきているのかもしれないなあ。作業終わりで、明日からの館山遠征の準備をして帰る。夜、ユーネクストで黒木和雄監督『竜馬暗殺』観る。好きな映画なのに疲れていたのか途中で寝てしまう。
某日、内装仕事で館山遠征。工房に集合し、藤田さんとランクルで館山へ。1日中雨で寒い。これじゃあ外壁周りのコーキングはできねえなあ。館山へ移動の車中、木工職人だった藤田さんに「木製コップを作る方法とオススメの材木」を聞く。やはり桜か栗の木を圧着して掘り出すのがいいっぽい。今年の目標の一つは木製コップを作る事。仕上げの塗料は「ナマのクルミを潰してクルミ油で仕上げたら?」とアドバイスしてもらう。うん、それはいい。早く材木を手に入れて製作してみたい。現着して先週出来なかったデコリエのB液を塗り仕上げる。油性のB液は激臭でアタシは気持ち悪くなる。ほとほと苦手な塗料なのだ。午前中は1階の古本屋「北条文庫」の什器を手直しして、店内側から窓のコーキング。昼飯は食わず。月末前に金が尽きてきた。午後から2階の自在窓の加工と取り付け。夕方、周平さんが到着。藤田さんは家族旅行のため帰京。作業を引き継ぐ。今回の遠征は2日間とも雨に祟られていたので釣りは諦める。マジで残念。早くアジ釣りてえなあ。夜、周平さんとジンさんと3人で「ボーノボーノ」で飯。飲みながら「館山に映画館を作りたい」って話題でワイワイやる。でも、これは酒席の戯言じゃないの。ジンさんも周平さんも本気で考えている。アタシも映画館を手がけるなんて最高だと思うので、本気で話す。店を出ても話は尽きず、3階で再び映画館の話。そしてジンさんと周平さんは学生時代の友人だったことを知る。なんだかんだと話が盛り上がって4時くらいまで話し込む。
某日、内装仕事で館山遠征。7時に起床。昨夜も深かったので眠いが、「LIEN」のパンが食いたかったので周平さんを叩き起こす。材料の買い出しついでにパン屋「LIEN」に寄ってバケットを1本買う。冷蔵庫にあったバターを塗りながら食う。あっという間に1本平らげてしまった。フランス映画の『預言者』で、刑務所内の朝食がバケットで羨ましかったのだが、やっぱパンって美味いな。本日は藤田さんの作業を引き継いで、2階の釣り扉の仕上げと自在窓の作業を終わらせる。昼飯は周平さんに奢ってもらって、近所の定食屋「むさし」でチャーシューメン大盛り。懐かしいラーメンでチャーシューも多く満足なり。店内に飾られた女子サッカーチーム「オルカ鴨川」のポスターに映る選手が可愛くて好きになってしまう。店内に何枚も選手のサインが飾られていたので、もしかしたら会えるかもと思うとトキメイテしまう。うーん、おトモラチになりてえなあ。午後も引き続いての作業。夜7時くらいまでやって片付けるが、周平さんが緊急会議に参加していて帰れない。アタシがデコリエしたお風呂に入って時間を潰す。結局10時近くに館山を出る。工房に戻ると11時半。もちろん終電もなくお家に帰れないので、工房にスタイロを敷いて緩衝材にくるまって寝る。ミノムシオッサンだわ。暖房をつけていたのだが、効きが悪く寒さで何度も起きてしまう。