某日、清澄で内装仕事。通勤読書は生江有二著『山下財宝 フィリピン黄金伝説を行く』。これ、名著かもしれん。丁寧に資料を洗って太平洋戦争時のフィリピン戦線について描いているので勉強になる。本日から守屋文雄さんが応援で左官作業に入ってくれる。アタシと2人でデコリエ左官をやったのだが、圧倒的な左官技術の違いで打ちのめされた。守屋さんの左官、マジですごい。デコリエって薄塗りでフラットに仕上げなきゃならないのだが、守屋さんは捨て塗りのスピードで完璧に仕上げていく。驚くべき技術なり。一緒に作業していても手の速さが違いすぎる。脱帽。夕方まで作業して、アタシは新宿へ。武蔵野館でケリー・ライカート監督『ファースト・カウ』をようやく観る。劇的な事・ドラマチックな事はほぼ起きない。だが、映画は充実していて面白い。とても良かったなあ。そのままション横の「岐阜屋」で班長さん(山本浩司さん)とごーいち(嶺豪一くん)と合流。岐阜屋で飲み始める。アタシは昔、三浦誠己さんに「岐阜屋のラーメンは日本一美味い」と教えてもらった。それから岐阜屋ではラーメン大盛りを食い続けてきた。今日もラーメン大盛り(580円)を食う。相変わらず安いし美味い。演出部の山田卓司さんも合流し、2軒目は「ぼるが」で飲む。山田さんの「このメンツで自主映画やりたいっすね」って話で盛り上がる。成立したら面白いな。
某日、清澄で内装仕事。通勤読書は生江有二著『山下財宝 フィリピン黄金伝説を行く』を読み終える。マル福金貨の事も理解できて、充実した内容だった。本日は守屋さん、ごーいちと3人体制でデコリエ左官。なかなか難しい。エイジング壁も完成させた。目標はなんとか達成できたと思う。仕事終わりに新宿へ。柴田鷹雄くんと会って、チラシ用のイラストと版画を渡す。柴田くんはクロネコでバイトしているので、お互いの仕事の苦労話やバカ話。聞き上手で話が弾んでしまう。イラストの方もとりあえずオッケーが出たので一安心。これで肩の荷が下りた。うちに帰るとカミさんが意気込んでやって来て「今日学校から呼び出しがあったの。倅がうちに帰ってるか聞かれたんだけどまだ帰ってなくて。先生が、同級生の靴を間違えて履いて帰っちゃったって言うのよ。心配になって探しに行ったら、やすバーバのうちでくつろいでお菓子食べてた」うちの実家は小学校の目の前なので下校ついでに寄ったらしい。「で、靴は大丈夫だったのか?」「それがさ、色も形もサイズも全然違う靴なのよ。急いで持って行ったら、女の子の靴だったの」倅は「いつもと違うな」とは思ったらしいのだが気にせずそのまま同級生の女の子の靴を履いて帰ってきたらしい。小さい事は気にしない大陸的なヒトだな。夜、ネットフリックスでデヴィッド・フィンチャー監督『マインド・ハンター』の1シーズン目を観終わった。こちらも面白くて質が高い。俳優もいいなあ。こういう作品に呼ばれてえな。
某日、無職渡世。午前中、カミさんと倅と3人で新所沢へ。もうじき閉館してしまうパルコ内の映画館「レッツシネパーク」で外崎春雄監督『鬼滅の刃 絆の奇跡、そして柱稽古へ』を観る。お客さんもまあまあ入っていた。劇場にシネパークでの思い出を書く紙が設置されていたので、記入した。シネパークはお袋と初めて行った映画館だし、自分1人で初めて行った映画館もシネパーク。ガキの頃の夏休みは、共働きの両親から小遣いをもらって伸也と映画を観に行った。倅が初めて行った映画館もシネパークだ。親子三代でお世話になった。そんな映画館が閉館してしまうのは残念だ。名物の劇場内に飾られる映画にちなんだダンボール創作も無くなってしまうのか。ちなみに今回はトトロが飾られていた。正直、シネパークがなかったら、アタシは映画業界に入っていなかったかもしれない。思い出の映画館だ。今回が最後になっちゃうかもしれないな。遅い昼食でイタリア料理「イル・キャンティ ドマーニ」へ。カミさんはキャンティのスパゲッティが大好きで、世田谷に住んでいた頃はよく行っていた。アタシは真夜中のパスタか、イカスミパスタ。今日はイカスミを食った。やっぱ美味えなあ。倅もたらこパスタをペロッと食っていた。夕方、昼寝。カミさんに怒られる。夜、原稿作業。
某日、無職渡世。午前中、日記作業。昼からカミさんと倅と実家へ。大倉のおじちゃん・おばちゃんとノボル夫婦と男の子3人がじいちゃんに会いに来た。本当はたくちゃん夫婦と子供達も来る予定だったが、昨夜たくちゃんがコロナになったらしく来れなかった。残念。伸也も集まりみんなで飯を食って、おじちゃん達はばあちゃんのお見舞いへ。伸也とカミさんとアタシが子供達とお留守番。焚き火をしたりスイッチをしたりして遊んだ。夕方、帰宅。倅は伸也と遊びたかったらしく実家に残った。夜、倅が帰宅。お泊まりはせず。夜、鈴木聖子著『掬われる声、語られる芸』を読む。
某日、清澄で内装仕事。通勤読書は昨夜に引き続いて鈴木聖子著『掬われる声、語られる芸』。小沢昭一さんの偉業「日本の放浪芸」の制作舞台裏が書かれた本で勉強になる。本日はひとりでデコリエの磨き作業とトップコート塗布。集塵機をつけたオービタルサンダーで左官面を磨き出していく。天井面や立ち上がりの部分なので脚立に乗ってオービタルを押し当てるので大変疲れるのだ。大工のヌカノブさんと相伴作業。すぐに終わると思っていたが、結局午前中いっぱいかかる。午後、新宿に出て東宝シネマでヨルゴス・ランティモス監督『哀れなるものたち』をようやく観れた。いい評判を耳にしていたが、大劇場がほぼ満席だった。すげえな。アタシは『聖なる鹿殺し』や『ロブスター』が好きなのだが、カルト傑作を撮る監督という認識で、こんな集客できるのかと驚いた。やはり主演のエマ・ストーン効果かな? 映画はやはり面白く、初期作品よりはテーマ性が明確だった。「女性の自立」をテーマにしたと宣伝されていたがアタシは時代・性別を問わない「超個人主義」の視点に立った映画に思えた。やはりこれくらいわかりやすい方が受けるのだろうな。帰りに所沢の「ツタヤブックス」で佐藤優著『獄中記』を購入。うちに帰るとカミさんが「大倉のおばちゃんがコロナになっちゃったって」と教えてくれる。帰ったら発熱してしまったらしい。大変だな。今年は実家に集まると何かしら起きるなあ。夜、倅がネットフリックスで配信の始まったアルチュール・アラリ監督『ONODA』を観たがったので、流し見。当時は懸命に挑んだ作品だったが、アタシの芝居を観ていて違和感を覚える。「あれ? アタシの芝居ってこんなにダメだったっけ?」もっと自由にやっていると記憶していたが、そんな印象は全く受けない。芝居の指向性が変わったのかな? 意外だった。当時は精一杯やっていたのだが、感覚が変わっているのだろう。やっぱ、出演映画は初号で観て終わりにしよう。今更見直した所で、芝居が直せるわけじゃねえしな。
某日、原稿作業日。朝、倅を小学校に送って実家に顔を出す。じいちゃんも朝飯をしっかり食っていて元気そうだった。「カフェドクリエ」で2ndの『あるとしか言えない。かもしれない』の最上川死闘編に取り組む。この連載は文字数との戦いである。どうしても書き過ぎてしまうので掲載文字数を軽くオーバーしてしまう。構成を考えて書き出せれば一気に書けるのだが、構成が決まらず午前中は苦しんだ。昼、じいちゃんの昼飯を食わせに実家へ。ここでも作業。作業中、ケンケンこと尾上右近くんから電話。夏の自主公演で『四谷怪談』を公演予定で「按摩の宅悦役をマツーラさんで」と言ってくれていたのだ。しかし6月の本公演で「四谷怪談」の上演が決まったそうで、自主公演の演目を変更せざるを得ないから、「マツーラさんと約束したのにすみません」と謝りの電話だった。「や、それは仕方ない事だし四谷怪談を本公演でやれてよかったじゃん!」と話すと「必ず一緒に歌舞伎やりましょう」と言ってくれる。やっぱり歌舞伎をやってみたかったが、また機会はあるだろう。それより筋を通してくれたケンケンの男気が嬉しかった。午後、おうちで原稿作業。文字数を気にせず、好きに時系列順に書く。当然のごとく1万字くらいになってしまう。これを刈り込む作業。書く事と落とす事を選別する。文章を書く事自体が好きなので、どうしても書きすぎるんだよな。時間がかかる。本日中に原稿を送りたかったのだが、間に合わず。仕方ねえ。夕方、倅とポケモン。夜、鈴木聖子著『掬われる声、語られる芸』を読む。
某日、内装仕事で館山遠征。経堂駅で藤田さんと待ち合わせて、館山の現場へ乗り込む。今回は冨永昌敬さんから譲ってもらったアジング竿とリールを試すべく、満員電車で気を使いながら釣竿を持ってきた。館山の仕事は泊まりになってしまうが、釣りが出来るので楽しみなのだ。今回の遠征では、館山の複合施設「ヤネ」3階の宿泊施設の浴槽内デコリエ左官。下地のカチオンを天井に左官する。これがなかなか難儀なんですよ。天井左官は(アタシの技術がないから)左官材がボタボタ落ちてくる。目に入ったりしてヒジョーに痛いのだ。帽子を目深にかぶって材料が目に入らないよう努力するが、それでも入っちゃう。ひとりで叫びながら作業。藤田さんは1、2階の什器関係の仕上げ。我が内装屋の社長・周平さんも応援に来た。昼飯は3人でラーメン屋「おかもと」へ。アタシはバラ肉ラーメン大盛りを頼む。アゴにくるしっかりしたバラ肉がゴリっと入っていて美味いのだ。アタシは「おかもと」のラーメンのファンなり。午後からデコリエの2回塗りもやっつけて結局、作業のキリがついたのが夜7時。夕まずめは過ぎてしまったので、今夜の釣りは諦める。残念!周平さんと藤田さん、1階の革製品の工房を構えるオーサカヤさん、施設長のジンさんと「ボーノボーノ」で夕食兼飲み。館山遠征に行っているメンツには有名な「ボーノボーノ」だったが、アタシはお初。噂に違わぬ美味さ。刺身も「アカサバ」なんて変わり種もあるし、各種料理が美味く腹一杯食う。オーサカヤさんは若い女性なのだが、色々アグレッシブな方で自宅を「ストローベイル」で改装したいと言う。藁束を積み上げて断熱材として利用し、土壁で覆う工法があるらしい。アタシは知らなかったのだが、周平さんは手がけてみたかったらしくトントン拍子で「作ろうぜ」ってなる。周平さんが「作ろう」と言っても、実際に作業するのはアタシたちで「こりゃ、巻き込まれたら苦労するぞ!」ってアンテナがビンビン反応する。だって山の中で釣りも出来ないし、現地で寝泊まりになって苦労するのは目に見えている。オーサカヤさんの弾丸トークに圧倒されるが、アタシャ騙されないぞ!でも、バレンタインでチョコを頂いてしまいどうも断りにくくなってしまった。ムムム。「ヤネ館山」の3階で藤田さんと周平さんとジンさんと更に飲む。午前2時までワイワイやっていたが、明朝は釣りに行きたいので「朝5時に起床し、相浜漁港に出発する!」とアタシが宣言して解散。
某日、内装仕事で館山遠征。朝5時起床。さすがに眠かったが、藤田さんと周平さんを叩き起こす。意外なことに二人ともすぐに起きて来たので驚いた。「眠りに入る前に起こされた」って周平さんが言っていたので、偶然にも深い眠りに落ちる前のいいタイミングだったのだろう。3人で相浜漁港に向かう。しかし本日は海面に白波が立つくらいの強風。相浜にいつもいるローカルの釣り人が誰もいない。正直、やる前から「勝負権ねえな」って分かったが、新竿の使い勝手を試したくてお二人には黙っておく。冨永竿は好調で、波の当たりやジグが動く反応までビンビンに感じる敏感竿。リールもフケがなく調子いい。魚影は全くないし、強風でジグが飛ばなかったが試竿出来てよかった。当然のことながらアタリもないボーズで引き上げ。朝飯に館山で噂になっているパン屋「LIEN」でアボカドとツナのサンドと、レーズンとクリームチーズのパンを買って食う。こりゃ美味え。昼に売り切れるとジンさんが言っていたが、納得なり。充実した朝を過ごし、左官の仕上げ作業。トップコートを塗って、乾き待ちで1階の什器造作。A液を塗って2階の什器設置。そこまでで本日の作業は終了。藤田さんと工房まで戻って道具の片付けをして帰宅。10時過ぎに着いて、風呂も入れずすぐに寝た。