某月某日、無職渡世。先月末で内装仕事の引渡しが終わってしまったので、しばらく空きそうだ。この期間中で、『あるとしか言えない。かもしれない』の原稿と柴田くんの舞台のイラストを仕上げてしまわないとイカンぞ、と自分に言い聞かせる。朝、倅を学校まで送っていく。最近、毎朝必ず棒を持って登校し、その棒を持って帰ってくる。「気に入ってるのか?」と、倅に聞くと「この曲がり具合が鎌みたいでかっこいいし、いざとなったら武器になるから」「学校に隠して持って帰るの?」「や、ヤスバーバんちに隠して持って帰ってきてる。学校に隠して取られたらヤだから」なるほどな。実家に隠してんのか。倅と別れて実家に顔を出す。両親とひとっぱなしして、「カフェドクリエ」へ。ここ十日分くらい溜まってしまった日記と「最上川の飛脚小判」についての記事の下書きをする。午後、倅をお迎えに行って帰宅。カミさんが仕事している横で倅とゴロゴロしていたら寝てしまった。途中でカミさんに「いい加減にしろよ!」と引っ叩かれたが、そのまま寝続けてしまう。夕方起きたら、カミさんが呆れ果てていて口をきいてくれなかった。でも、眠いんだからしょうがねえよなあ。夜、原稿に手を入れて半分くらい書き終える。寝る前にユーネクストで押井守監督『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』を観る。初の攻殻機動隊。面白い。
某日、無職渡世。朝から「今日も休みなのか! どんだけ稼がねえんだ!」とカミさんにどやされるが仕事がなければ仕方ねえ。「ドカタ殺すにゃ雨の3日も降ればいい」という文句があるが、「マツーラ殺すにゃ内装仕事を3日も干せばいい」だな。午前中から倅のコタツに入って、原稿を書く。書き物をしている時間は、憧れの作家になっている気がするから気に入っている。午後、いつの間にか寝てしまう。カミさんにバレて引っ叩かれる。某所から年末調整の手紙が届く。「(俳優の方の)事務所からはまだ来てねえよな?」とカミさんに尋ねると「収入が少ねえから紙に印刷するのも勿体ながられてんだ。そのへんの落ち葉に書かれてんじゃねえのか?」アタシャ、タヌキじゃねえんだわ。カミさんのこういう切り返しにはハッとさせられる。天性のモンだわな。夕方、倅と一緒に宿題をやってピクミン。風呂に入り、久しぶりに猫のシャンプーをする。タロとむっちゃんが歳のせいかケツがうんこまみれになってしまったりするのだ。洗っていると、むっちゃんはやせ細っているので洗濯板を擦っている感じ。たっちゃんはワガママボディーなのでうどんをこねている感じだった。ちょめは暴れるので諦める。夜、原稿かイラストをやらなきゃと思ったが、そのまま寝てしまう。カミさんの「口だけは忙しそうなこと言っといて、どこまで能天気なんだ」という小言が聞こえてきたが、眠気には逆らえず。しかし、よく寝てしまうのは成長期なのだろうか?
某日、朝、倅を学校まで送って、実家へ。本日は倅の授業参観なので、時間まで実家で原稿作業をする。下書きがなんとなく書き終わる。これで目処が立ったから、次はイラストを描こう。倅の授業参観は「ネットの使い方」と「道徳」だった。小学1年の頃からネットリテラシーの授業があるなんて時代の変化を感じる。でも、今の子にとっちゃ一番ためになる授業かもしれない。「道徳」の授業は、命の大切さについて。20年前に東村山の中学生がホームレスを集団暴行して殺してしまって以来、必ずこの時期にやるらしい。地元の事件だけど知らなかった。午後、倅をお迎えに行って昼飯を食う。夕方、班長さん(山本浩司さん)と「ウーファー」でトークイベント『班長さんとマツーラのトーク・ランブラーズ』のために代々木へ。いやー、ダダ滑ってしまったなあ。反省しかない。前半戦の班長さんとのお喋りで、客席の空気感が掴めず勝手に「あ、やべー受けてねえ」って思ってしまって、ひとりでアクセルを踏み込んでしまった。そんな事しなきゃいいのに。いつもの『反省会』のグダついたユルさでやればよかったのに、気負ってしまったんだな。客席の水澤さんに注意される始末。帰りの電車では猛省。でも、山下敦弘さんも元木隆史さんも奥野俊作さんも松澤匠くんも三浦景虎さんも篠原ゆき子さんも影山祐子さんも市川洋くんもミオコさんも那須さんも来てくれていた。ありがたいし、久しぶりに会えた人もいて嬉しかった。伊藤さんから倅にポケモンカードもいただく。ありがとうございました。でも、トークはダメだったなあ。悔しい。寝る前にユーネクストで押井守監督『イノセンス』観る。
某日、無職渡世。倅とカミさんが体調がそんなに良くない。風邪ッピキなのだろうか? 午前中は倅と宿題をやってお家で過ごす。本日は利重剛さんから餃子会のお誘いをいただいたのだが、残念ながら不参加。午後、倅と実家で焚き火。夕方からカミさんが買い出してくれて、実家でお袋の誕生日祝いで飯。お袋も69歳か。アタシも歳とったが、お袋も歳をとった。こうやって実家を頻繁に行き来する生活は悪くねえ。若い頃は外が楽しくて実家なんか寄り付かなかったし、両親に迷惑ばかりかけてきたが、その頃は想像しなかった生活だけどいいんじゃねえかな。そんな考えもアタシが年をとった証拠か。お袋が、ネットフリックスで配信が始まったアルチュール・アラリ監督『ONODA』を見直してくれたらしい。親父は親父で昨夜放送されていた『七人の侍』を観て興奮してなかなか寝付けなかったそうだ。映画が好きな両親でよかった。夜、柴田鷹雄くんの舞台チラシ用イラスト描く。『2nd』編集長の上田くんから『あるとしか言えない。かもしれない』4回目の修正依頼。直して原稿を送る。森繁久彌著『わたしの自由席』読む。
某日、内装仕事で清澄白河。通勤読書は親父から借りた椎名誠著『失踪願望。』面白い。皆でワイワイ遊んでガシガシ食う椎名さんのエッセイも好きだが、今作は野田さんと犬ガクの話もよかったし、コロナ闘病記で椎名さんがせん妄症状に陥った話などヒリヒリする話が多い。内装仕事は明日から乗り込む現場の準備と搬入。午後から東京にも雪が降る。しかも10センチくらい積もった。雪が降る日って、不思議と降る前から空気がシンシンして「あ、今日雪が降るかも」って予感があるのは何故なのだろうか? 帰りに西武池袋線のダイヤが乱れていて激混み。満員電車に乗っていると、自分で踏ん張らずに他人に平気で寄りかかってくる輩がいるが、殺意を覚える。ちったあテメエで踏ん張れや。秋津に着くと雪がくるぶし丈まで積もっていて、作業靴がびしょ濡れ。帰るとカミさんから、事務所からの年収が書かれた手紙を渡される。昨年の俳優の収入は250万。マジかー。結構働いたつもりだったんだけどな。カミさんが「いつまで貧乏暮らしさせれば気がすむんだ。役者なんか辞めちまえ疫病神」と、ドスのきいた声で吐き捨てた。アタシは好きな仕事をしているのでいいのだが、生活を預かるカミさんは可哀想だよな。可哀想じゃなくて大変か。「好きな映画だけやってたい」って考えじゃ到底食ってけねえわな。やっぱり広告とドラマやらなきゃ収入は上がらねえ。わかっちゃいるけど何とやら、だ。夜、ユーネクストで神山健治監督『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』を3話観る。押井版と同じ登場人物だが、違う世界線だ。
某日、内装仕事で清澄白河。通勤読書は椎名誠著『失踪願望。』読み終わる。椎名さんの著作は結構読んできたが、近作は自分が老いていくという厳しい現実と向き合って執筆されていて、非常に興味深い。現在の椎名さんは追わねばならない作家の1人だと思う。朝から嶺豪一くんと乗り込みの現場。本日は現場を全体養生してデコリエ左官の下地作りの予定だったが、現場に行くとボード屋さんが5、6人で店を広げて作業している。いや、今日からデコリエやるからアタシら左官部隊だけのはずでしょ? なんで堂々と作業してんの? 昨日の雪で作業残っちゃったからって、申し訳なさそうに片隅でやるならまだわかる。なんで我が物顔で全体に店広げてんだよ! アタシ、自分でもわからんけどメチャ頭に来ちゃって「今日左官やるって聞いてないっすか? こっちは相伴だと作業できねえんだけど」と、明らかに年上のボード屋さんを詰めてしまう。「邪魔ならどかしますんで」「や、全体養生してからじゃねえと出来ないっすから」こんなに店広げてボード貼ってちゃこっちは左官材も練れないし、養生すらできない。他のボード屋が手を止めてピリついてるのがわかったけど、こっちだって今日下地を終わらせないと、今週末までに作業が終わらない。いいよ、そっちがしらばっくれるんならこっちも引かねえよ。つーか、約束破ってんのそっちでしょ?「いつ終わります?」「なるべく早くやりますんで」「俺ら昼には搬入始めるんで」と一方的に言って廊下に出る。で、廊下に出てから現場管理に電話して、部屋内のボード屋に聞こえるように「なんかボード屋さん作業してんだけどどうなってんの」「作業できねえなら帰るぞ」と怒鳴ってしまう。途中から来たごーいちが驚いていた。現場管理も昨日でボード作業は終わっていると思っていたらしい。一言いってくれりゃあこっちだって考えるのにさ。悪びれずにノーズラこいてるから頭にくる。仕方ないのでごーいちとコンビニのイートインで時間潰しのおしゃべり。「スロットでも行こうか」って話したが、金がないので諦める。現場の駐車場でタバコを吸いながら時間を潰す。11時くらいにボード屋さんが帰ったので、搬入して養生。あいつら、アタシが「おつかれっしたー」って言っても、挨拶すらしねえ。まあ、アタシがオラついたのが悪いんだろうけど。飯も休憩も取らず、ファイバー入れてシーラー塗って下地のカチオンを左官。結局ノンストップで6時までかかった。クソ疲れたわ。しかし、ちょっとした事でスイッチが入ってしまい「このヤロー、バカヤロー!」ってなっちゃう自分が恥ずかしく悲しい。もう42チャイだよ? いつまでこんな感じなんだろうか。夜、日記を書いてイラストを描く。寝る前に、ユーネクストで神山健治監督『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』を観る。
某日、清澄で内装仕事。通勤読書は生江有二著『山下財宝 フィリピン黄金伝説を行く』。埋蔵金探しの資料として購入したが、アタシは「山下財宝」やいわゆる「M資金」にはは興味を持てない。後学の為と思って軽い気持ちで読み始めたのだが、こりゃ面白い。生江さんは軍事資料や関係者の証言から考察を重ねていくのだが、その様が徹底していていいのだ。で、本日はカウンター上のカチオン下地左官。ごーいち(嶺豪一くん)と2人作業。アタシはデコリエ左官(特殊樹脂左官)は、有機溶剤の匂いが苦手でやってこなかったのだが、デコリエ作業が多くなってきたのでそうも言ってられない。守屋さんがデコリエ左官の第一人者なのだが、その指導を受けたごーいちからアタシも教わる。シーラーを入れて、ファイバーを入れ下地をやすってから、カチオンで下地左官。その後、再びシーラーを入れて、デコリエ左官を2回塗り。オービタルでデコリエ面を磨き上げて、トップコートを塗って仕上げる。工程の要所で左官面の硬化待ち・乾き待ちがあるのでどうしても時間がかかる。ごーいちから左官材の練り方、硬さを教わりながら作業する。アタシは並行作業でシートップ左官もやってエイジング塗装をしなければならん。なかなか忙しい。夕方までやって帰る。夜、柴田くんのイラスト描く。寝る前にユーネクストで神山健治監督『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』を観る。ハマってるな。