某日、無職渡世。体調の良くなった倅を連れて遊びに行こうとしたら、カミさんに「病み上がりの子を連れまわして、再発したらどうすんだ! 能無しが!」と怒られる。仕方ないので、倅の冬休みの宿題の硬筆課題をやる。『お正月のあさです。「おめでとう」と、みんなでいいました。ことしも、げん気でがんばります。』と書くのだ。別に頑張んなくたっていいのになあ。倅は字のバランスの取り方を教えると、素直に書くので上達が早い。どうしても名前が枠内に収まらなくて、倅は気にしていたのだが「はみ出したっていいじゃん」「ゴリはそう言うよね。カーカは絶対ダメって言う」「枠なんか気にすんな。枠内に収めようとして字がまとまる方がつまんねーよ」なんて言っておく。枠からはみ出すなんて気にすることじゃない。そもそも名前なんて千差万別なんだから「丸修」って名前と「五所川原歌右衛門」って名前が、同じ枠内に入れなきゃいけないなんて不公平じゃないか? そういう事を気付かせるのが教育だと思うんだけどなあ。昼飯を挟んで、午後まで倅は頑張って立派な硬筆課題を仕上げた。ご褒美に一緒に「ピクミン」をやってネットフリックスで『ハンターハンター』を観る。倅の楽しい冬休みも明日で終わり。夕食を食べながら、学校給食の話になる。給食の献立を見せてもらったのだが、なかなかシャレたメニューがあって驚く。2月には「国からの無償提供でホタテ料理があります」と書かれていた。ああ、政府が買い上げたホタテを給食で出すんだな。自分が小学生だった頃は気がつかなかったが、献立は手が込んでいるしありがたいよな。夜、絵を描いて「ピクミン」やって寝る。
某日、無職渡世。朝、洗濯して掃除。カミさんから「アンタがいるとうちが汚くなるし臭い」と言われる。臭いのはタロがアタシの部屋でオシッコをしてしまうからだ。仕方ねえのになあ。カミさんと倅はゲームセンターに行ったので、日記を書き、セリフ練習。豊満亮くんから大美賀均監督『義父養父』の絶賛メールがくる。これも観なきゃなあ。レコーダーにセリフを吹き込んで歩き念仏。2時間歩く。倅とカミさんと合流して、スシローで飯。寒ブリが美味かった。白石和彌さんから連絡。新年の挨拶。午後、猫と共に昼寝してカミさんに怒られる。「これだけ怒ってんのになんで効かないの? あんたサイコパスだよ」でもさあ、自分の欲求に素直なだけで、眠くなったら寝りゃあいいんでないかい? そこが分かんねえんだよな。夕方、倅から「赤ウミガメがクラゲの毒に耐性があるのは何故なのか?」という質問をされて驚く。真摯に答えるため調べていると、時間がかかったためか倅から「もういい」と言われてしまう。カミさんからは「クソの役にも立たねえな」と辛辣なお言葉をいただく。夜、ネットフリックスでデビィッド・フィンチャー監督『マインド・ハンター』を3話観る。これすごく面白い。さすがフィンチャーだな。何てことない芝居が丁寧に撮られていて羨ましい。
某日、無職渡世。本日から倅は学校。朝、一緒に小学校へ向かう。道中、昨日の赤ウミガメの毒耐性について話す。あと、ビニールをクラゲと間違えて誤食し死んじゃう事も伝える。実家に顔を出すと、親父がまだ陽性反応が出ているため、本屋を休んでいた。じいちゃんは結局陽性にならず。すごいなあ、92歳なのに耐性があるのか。そのまま岸組のセリフを歩き念物。航空公園から聖地霊園へ歩いて、祖父母の墓参り。アタシは最近、セリフで歩いているとついでに墓参りをする。別に霊的なモノを信じているわけでも、ご加護を祈願しているわけでもない。じゃあ何で墓参りするのか考えたのだが、好きだったじいちゃんばあちゃんを「忘れない」為なんじゃねえかな。多分、そうなんだと思う。午後、倅を小学校までお迎えに行って、再び実家に寄ってじいちゃんの食事の補佐。親父が起きてきて「テレ東で1時半から『燃えよドラゴン』がやるから」と教えてくれる。アタシも倅も特にブルース・リーが好きなわけじゃねえんだけどな。うちに帰って倅と「ピクミン」。夕方、セリフ練習で近所を歩く。夜、ネットフリックスでデビィッド・フィンチャー監督『マインド・ハンター』を2話観る。
某日、岸善幸監督『仮想儀礼』撮影で新宿集合。移動読書でイ・チャンドン著『鹿川は糞に塗れて』。岸組でおなじみ演出部の岩屋拓郎くんがデビュー作『オアシス』を編集中との事。オリジナル脚本で武蔵野館公開だそう。いやー楽しみだなあ。こうやって馴染みの演出部が映画監督として一本立ちすると聞くとアタシは何にもしていないのに嬉しくなる。今後は岩屋くんみたいな若い監督がバンバン邦画界を引っ張っていって欲しい。や、引っ張らなくてもいいや。好き勝手にやって引っ掻き回して欲しいな。本日は松浦慎一郎くん、今藤洋子さん、川島鈴遥さん、アクション部の小原さんと一緒。松浦慎一郎くんとは、同じ「松浦」つながりで面識はあったが、初めて一緒に芝居した。岸さんも演出部の方々も「松浦さん」と呼ぶと、2人して返事をしてしまうので「慎一郎さん」と「祐也さん」と呼ばれる。なかなか名前で呼ばれ慣れてないのでちょっぴし恥ずかしい。岸さんはやっぱり芝居をキッチリ見ていてくれて細かいニュアンスの演出をつけてくれるので、本当にありがたい。芝居も集中してやりやすい環境を作ってくれるし、大好きな監督。驚いたのは川島鈴遥さんの集中力だ。何度も泣き芝居をバチッとやっていてびびった。だいたい、1回泣いてしまうと泣けなくなるものだが、毎回、しかも相手向けの芝居の時まで泣いていた。なんという集中力だ。まだ若いし、本番直前まで笑っていたりするのになあ。アタシャそんな芝居は出来ないので脱帽なり。アタシが言えることではないが、目先の損得にとらわれずいい俳優になってほしい。休憩時にタバコを吸っていたら、岸さんから「マツーラさんって二枚目ですよね」と言われる。そんな事を言うのは岸さんと奥野俊作さんくらいだ。「韓国だったらスターになれるんじゃないですか?」なんて言ってくれたが「岸さん、じゃあ日本じゃダメって事っすか?」と問うと、笑って誤魔化された。撮影は予定より早く進んで、昼過ぎには終了。今藤さんと木更津から高速バスで新宿まで帰る。夕方に帰宅。倅と風呂に入って『ポケモンコンシェルジュ』を観る。夜、ネットフリックスでデビィッド・フィンチャー監督『マインド・ハンター』を2話観る。もうどハマりしている。主演の2人の抑えた芝居がかっこいい。
某日、朝、門前仲町の駅で俳優のMIOKOさんと待ち合わせて、工房へ。先日、MIOKOさんが「内装仕事あったら誘ってください」と言ってくれた事を伊藤くんに話したら、塗装手が欲しいからお願いしたいとのこと。早速、工房に連れて行き、皆に紹介。周平さんと条件面を話し合ってもらった。女性の俳優部は初めてだが、美大出で油彩科だし、うまくやっていけると思う。移動読書はイ・チャンドン著『鹿川は糞に塗れて』読み終わる。やっぱり、イ・チャンドンさんは小説家としてもずば抜けている。「民主化運動」「労働者」「父性」映画でもテーマとしてきたものが、小説にはすでにモチーフとされてきた。できる事なら、小説家イ・チャンドンの作品をもっと読みたい。下北沢へ出て、「K2」で先日豊満亮くんにオススメされた大美賀均監督『義父養父』を観る。ちょうど監督の石井慎吾くんとマネージャーの藤本ちゃんが観に来ていて、ヤーヤーする。『義父養父』とても良かった。傑作でしょう。主演の澁谷麻美さんの芝居が良かったし、有薗芳記さんと菅原大吉さんは言わずもがな。その芝居さえも飲み込むバケモノ級の芝居をされていたのが、松田弘子さん。怖くなった。上映後、藤本っちゃんと話していたら驚きの報告を聞く。なんだよ! 言ってくれよ! そして大美賀監督と長尾卓磨くんがいたので、ヤーヤーして、石井くんも一緒にタバコを吸いながらペチャクチャ話す。いい映画を観た後ってそのまま飲みに行きたくなるが、皆さま予定があったので解散! アタシは班長さん(山本浩司さん)のお宅に行って『班長さんとマツーラのトークランブラーズ』の予告編を収録。班長さんとシナリオの話をして、帰宅。夜、倅を歯医者さんに連れて行き、一緒にサイゼリアで夕飯。安くて有名なサイゼリアのたらこスパが倅は大好きだ。倅は歯にフッ素を塗ってもらったから30分は飲食禁止だったのを、全て食べ終わってから思い出した。
某日、岸善幸監督『仮想儀礼』撮影で蒲田のロケセットへ。移動読書はウラジミール・ソローキン著『テルリア』。本日は酒向芳さん、今藤洋子さん、岩橋道子さん、河井青葉さんらと一緒。エキストラの方々とワイワイやるシーンの撮影。酒向さんとは『ガンニバル』以来だなあ。酒向さんは40代まで解体屋でバイトをされていたそうで、解体屋話で盛り上がってしまう。青葉ちゃんは昨年、偶然会ってお喋りしたがそれ以来で現場で一緒になるのは久しぶり。撮影時、酒向さんの演説芝居が面白くて見とれてしまった。そして川島鈴遥さん。アタシたちの芝居のキッカケにもキチンと向き合ってくれてやりやすかったなあ。気を抜くと彼女の芝居を見てしまい、自分の芝居を忘れてしまいそうになる瞬間があった。なんだろうな? 初めて山本奈衣瑠さんと芝居した時の衝撃と似たものがある。休憩時に岸さんに「川島さんすごくイイっすね」なんて偉そうに言ってしまった。テメエ如きが何言ってんだ! みっともねえ。松浦慎一郎さんと今藤さんなんかとワイワイしながらやっていて、松浦くんから「マツーラさんてずっとこんな感じなんですね。もっと怖いと思っていました」と言われる。アタシャ、どこ行ってもお喋りして助平顔でヘラヘラしてるので、怖いイメージを持たれる事が不思議である。ナメられるよりはイイかもしれんが、怖がられるのもなあ。口が悪いけどヤサチイおじさんなのよ。今作の脚本家の港岳彦さんと再会。港さんが引っ越されてご近所さんだと知る。実家の本屋も知っていてなんだか恥ずかしい。港さんも今、予算の大小にかかわらず多くの映画脚本を書いてるもんなあ。昔からの知り合いが活躍していると、とても嬉しい。夕方に撮影が終わって帰る。夜、DVDで三池崇史監督『極道恐怖大劇場 牛頭 GOZU』を観る。アタシが付き人をさせてもらっていたオヤッサン(曽根晴美さん)の元気な姿を見て色々思い出す。しかし、佐藤佐吉さんの脚本ってぶっ飛んでるな。