某月某日、元旦。朝、我が家の多数決により今年から正月は、雑煮ではなくお汁粉にメニューが変わった。だってお雑煮よりお汁粉の方が好きなんだもん。倅がお汁粉派になってくれてよかった。午前中、倅と共に実家へ。伸也、哲也、ゆかちゃん、親父、お袋、じいちゃんが集まっていたが、伸也は体調が悪いらしく寝込んでいた。昼に料理を作って馳せ参じたカミさんが合流し、皆で新年を祝って飯。じいちゃんは流動食ではなくなっていたが、あまり食わなかった。食後、哲也が「なんか熱っぽいわ」と言って寝てしまう。ゆかちゃん曰くだいぶ熱っぽいらしい。年末の疲れが出たのだろうか?アタシは先に帰宅し、うちでウトウトしていたら携帯が「地震デス!」と不穏なアラームと共に叫んでいた。夢心地でアラームを切ってそのまま寝てしまう。夕方、カミさんが帰って来て「哲也くん、だいぶ熱出ちゃってるみたい」と言う。テレビを付けたら能登半島の地震で「津波です!命を守る行動を!」なんてテロップが出てアナウンサーが避難を呼びかけていた。驚いて「おい、地震だって」とカミさんに報告すると「今更なんだバカ! さっきすごく揺れたでしょ」「や、気付かなかった」「あんたどこまで能天気なの、タニシが!」と呆れられる。アタシは「ハゲ」とか「役立たず」とは呼ばれていたが、「タニシ」は初めてだ。カミさんの悪口ワードのセンスにはみるものがある。新年早々災難だな。夜、再び実家に行ってお袋と話す。伸也と哲也は寝込んでいるそうだ。こっちも難儀だな。帰って倅とピクミン。寝る前に版画作業。この版画は東京乾電池の柴田鷹雄くんが公演する『風のサラリーマン』のチラシになる予定だ。
某日、午前中、倅とカミさんがゲームセンターに遊びに行ったので、アタシは版画を彫る。だいぶいい感じに仕上がったので、刷り出して写真を東京乾電池の柴田鷹雄くんに送った。柴田くんから連絡があり「せっかくなんですが、自分の顔がチラシになるのはちょっと、、、」と言うので、ボツになる。まあそうか。柴田くんは謙虚なんだな。また別な物を作ると約束する。午後、倅と一緒に冬休みの宿題をする。伸也から連絡があり、ゆかちゃんまで発熱したらしい。あんだかや! インフルエンザかコロナかな? 絶大な感染力だな。両親とじいちゃんは大丈夫だろうか? 夕方、羽田空港でJAL機の炎上する姿が中継されていて驚く。乗客乗員が心配だったが、全員無事だったそうだ。ただ、衝突された海上保安庁の飛行機で複数名死亡したらしい。海保機は地震の救援に行くところだったと。いたたまれねえ。アタシがテレビの内容を大声で台所にいるカミさんに教えると「アンタは人様の心配できる身分じゃないだろ。寄生虫が」と、返される。家内安全なり。カミさんはアタシにあたる事で日頃のストレスを発散しているのだろう。「当たり所」としてアタシは充分に存在価値がある。夜、寝る前に『小山さんノート』を読む。なかなかしんどい。
某日、倅と国立博物館に行く予定だったが、カミさんが「倅が熱出たら大変だから近場にしろ」と言うので大泉のTジョイでポール・キング監督『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』を観る。倅が楽しみにしていた映画でアタシはそこまで期待していなかったのだが、大当たり。撮影がチョン・ジョンフンさん(パク・チャヌク組の撮影監督で、近年は『IT イット』や『アンチャーテッド』等の海外大作も手がけている)美術が抜群で美術監督のネイサン・クロウリー氏は『ダークナイト』『ダンケルク』『インター・ステラー』『テネット』を手がけた超一流。子供から大人まで楽しめる映画こそ、こういった一流のスタッフさんが手がけるべきだよ。大人の本気をみせてくれた。劇中でウォンカが夢を見るだけで罰金を取られるシーンがあり、なかなか辛辣なこともやっている。こういう年齢・性別問わずに楽しめる映画がやりたいけど、我がジャパンだと何だろうか? 『ゴジラ』とか『翔んで埼玉』か? ムムム。新しい『ゴーストバスターズ』の予告が流れて、倅と「これは絶対観ような」と約束する。帰って、倅とピクミン。夜、倅が発熱、38・8度。ああ、とうとう我が家にも飛び火してしまったなあ。
某日、朝、倅は熱が下がっていて元気そうだ。大事にならずよかった。午前中、「カフェ・ド・クリエ」でここ数日の日記を書く。岸組の『仮想儀礼』のシナリオを読む。午後、岸組『仮想儀礼』衣小合わせでテレビマンユニオンへ。ここは建物の横に喫煙所があるから好きだ。衣小合わせの時、もらった役に合わせて髪型やヒゲを作ってから監督と会いたいのだが、以前それをやって某監督(激しい系の演出部叩き上げの方で、身長が2メートル近くある)から大目玉を食った事があった。末期癌の役だったので勝手に眉毛と髪を剃り上げて臨んだら「どうみてもシャブ中やないか!」と、怒られてしまったのだ。それ以来、現在のそのままの姿で行く事にしている。岸さんは毎回、役の背景や撮影の狙いを丁寧に説明してくださる。今回はアタシに課題も課してくれた。「1・劇中で笑わない事。」「2・爪痕を残そうとしない事。」この2点。なるほどなあ。こうやって岸さんが毎回色々な役で呼んでくれて、役幅を広げようと考えてくれているのが嬉しい。期待に応えられるように懸命にやります! 終わるとカミさんからメールがきていて、倅が再び熱発。39度まで上がっているらしい。倅が食えそうなアイスやお菓子を買って帰る。倅は流石にぐったりしていてかわいそうだ。今の所カミさんもアタシも無事だが、時間の問題かもしれない。夜、日記を書いて寝る前にU-NEXTでスコット・クーパー監督『ブラック・スキャンダル』観る。
某日、仕事始め。内装仕事で新富町。店内の立ち壁の特殊左官。移動読書はダーティ工藤著『大俳優 丹波哲郎』。本日は嶺豪一くんが応援で入ってくれた。外部の塗装を頼む。伸也から連絡あり。両親も発熱で参ってしまったそうだ。元旦に実家に集まったメンツがほぼ全滅なり。なんつー新年だ。しかしこれはごく個人的事情であり、国内では北陸の被災者やガザの難民、ウクライナでの戦争犠牲者もいまだ復興の兆しすら見えていないことを鑑みると大したことではないでしょう。じいちゃんが心配だが、実家にいる両親も伸也も寝込んだとなれば時間の問題かもしれないな。とにかくアタシは自分ができることを粛々とやっていく。ということで、豪一くんと映画のおしゃべりをしながら作業。ライカート監督の『ファーストカウ』とカウリスマキ監督の『枯れ葉』と滝本憲吾監督の『笑いのカイブツ』は観たくて仕方がない。あと佐藤寿保監督の『火だるま槐多よ』も観なきゃならんが、はてさて全て観れるだろうか。早めに仕事を終わらせて、実家に救援物資を届ける。カミさんに報告すると「やっぱりバカは風邪引かねえってのはホントだな」と珍しく褒められる。流石にカミさんは頭痛がひどいと言っていた。確かにアタシだけは元気だ。夜、柴田くんのチラシ用に絵を描く。寝る前にU-NEXTでトッド・フィリップス監督『ウォー・ドッグス』を観る。
某日、朝、下北沢の「アトリエ乾電池」へ。乾電池の柴田鷹雄くんが「4日から朗読会をやってるんです」と言っていたのを思い出し、乾電池詣なり。アタシの尊敬する柄本明さんが朗読をしていた。新年のご挨拶。西本竜樹さんもいたので新年のご挨拶。演目は女性劇団員の方が芥川龍之介の『蜜柑』。朗読を聞いていると情景が浮かんでくる。それがいいか悪いかはわからないが、聞いている間に思考が巡る。鹿野祥平くんが柄本佑くんが書いた『映画日記』を。佑は文章が憎いくらい上手いなあ。食事と映画にまつわる日記でとてもよかった。柄本さんは岩井俊二監督が書いた『ヒポクラテスたち』についてのエッセイ。うん、やっぱりどんな時も媚びない柄本さんの姿勢にビっとさせられる。年明け早々刺激をいただきました。そのまま内装仕事で新富町。黒板塗料を塗装して養生をあげる。これで室内の塗装・左官はほぼ終わった。さすがに収まってくると店内が締まってみえるな。来週は撮影でほとんど内装仕事ができないだろうから、ここまでやれて安心。午後、マネージャーの井上さんから連絡。新規案件のオファーが2件。仕事の話はさっさと終わらせて、バカ話で盛り上がってしまう。佐藤五郎さんからも電話。明日、五郎さんのご自宅で恒例の新年会を開催予定だったのだが、五郎さんがインフルエンザになってしまい中止になった。残念だが五郎さんの体調の方が大切なので養生するようにお伝えする。インフルやコロナが流行っているんだな。夜、絵を描いて、岸組のセリフを練習。寝る前にU-NEXTで武田倫和監督『破天荒ボクサー』を観る。