某日、午前中、倅とカミさんが「ツリスピ」に行ったので、その間『あるとしか言えない。かもしれない』の別話を書く。今日は一気に書けた。なんだかスイッチが入ったようだ。ほぼ詰まることなく4200字書いていた。なにが原因なんだろうか? 不思議だな。書き終わって、ウエダくんに送る。急に村上龍の『海の向こうで戦争が始まる』を読みたくなって探したが、本棚にはなかった。村上龍の小説で一番好きな作品。といっても、最近の本は読んでいない。午後、倅とポケモン。そして冬休みの宿題プリントを一緒にやる。漢字の練習も。倅は字の書き方のコツを教えたら、すぐに飲み込む。反映が早い。夕方、たこ焼き。ここ数年、クリスマスイブはアタシがたこ焼きを焼いて、食後にアイスケーキをいただくのが通例になった。今年もそうだ。倅はサンタに『ピクミン4』を頼んだ。夜、三好さんに勧められた『小山さんノート』を読むが、なかなか食らう。
某日、内装仕事で新富町。移動読書は『未来の探検準備室』。しかし途中から「隣の空き家を買って、アトリエに改装する」という空想に囚われてあまり本は読み進められず。金もないし予定もないのに、なんでそんな考えになったのだろうか? 先日読んだ「セルフビルド本」の影響だと思う。でも、空き家を改装したり、セルフビルドで平家を建てたら面白いだろうな。アトリエがあれば絵も描けるし、書き物もできるし、セリフの練習もできる。いいよなあ。誰かアタシにアトリエ買ってくれ! 朝、伊藤くんと入り口のテントを解体する。本日は天井塗装。そしてトイレ内の塗装も仕上げた。残業して帰る途中、新富町の駅で先日までマッチポイントに勤めていた遠山さんと会う。びっくりした。遠山さんの新しく勤めている法律事務所がこの辺らしい。「じゃあ、アタシがパクられた時はよろしくね」と言っておく。夜、アタシの部屋の窓の隙間風があまりに寒いのでカミさんに言ったら、早速ニトリで断熱マットを買ってくれたので設置。隙間風が来なくなった。ありがたい。
某日、新富町で内装作業。移動読書で井原忠政著『奥州仁義』(三河雑兵心得シリーズ)読み終える。最近、立て続けに井原さんの著作を読んでいるなあ。本日で年内の内装仕事は終わり。本日は店内立ち壁の特殊左官材の1液を2回塗装。そして2液の左官材を1回入れる。天井と立ち壁、トイレの色が入ったので店内がだいぶ締まった。現場を掃除して年内の内装仕事を納める。やー、今年も働きました。ありがとうございました。駒場東大前に移動して、水澤紳吾さんと合流して「福島屋」へ。赤堀雅秋さん、荒川良々さん、そうたろうさんと忘年会。赤堀さん、良々さんには今年も大変お世話になったので、水澤さんと共にお二人にタバコを献上する。その様に赤堀さんが「お前、年貢を納める百姓じゃねえんだからさー。ありがとな」と笑っていただく。アタシは腹ペコだったので特製巨大たぬきムスビを作ってもらった。カキフライも万願寺炒めも非常に美味いのだ。いつも通りに最近の失敗談やバカ話をしてケラケラしていると、吉岡睦雄さんが合流。吉岡漫談『某監督からラインとツイッターを切られた話』を聞いて笑う。盛り上がっていたのだが、『冬物語』の登壇のために店を出る。シネマハウス大塚へ移動して奥野俊作監督と上映後に登壇。山内雅子さんやガンニバルの方言指導でお世話になった安藤ゆかりさんが来場してくれていた。ありがたい。登壇後、奥野さんや布施さんと「みっちゃん」という飲み屋へ。なかなか素晴らしいすえ具合の店で、みっちゃんの人柄もいいし料理も美味い。布施さんはいい店を見つける天才だ。『冬物語』は来年の都内上映も決まり、嬉しい。次の奥野組の企画を無責任に話す。終電で帰宅。本日からカミさんと倅が帰省しているのでうちが寒い。
某日、朝、実家に行ってお袋と多摩北部病院へ。誤飲性肺炎で入院していたじいちゃんが退院するのでお迎えに。若い看護師さんがパキパキ働いていて「ここなら入院してえな」と思ってしまう。じいちゃんはだいぶボケが進み「三条の人は迎えに来ないのか?」なんて言っていたが、体調は良さそう。一先ず良かった。お袋は介護がますます大変になるだろうな。なるべく手伝いに行かないとな。実家に戻るとじいちゃんは安心したのか、昼食を「味がいい味がいい」とバクバク食っていた。固形物はまだ難しいので、フードプロセッサーで潰したとろみ食。誤飲性肺炎って気管に回ってしまった食べ物が原因でかかると思っていたが、食べ物だけでなく自分の唾液が原因で発熱する事もあるそうだ。知らなかったな。「ぎょうざの満洲」で冷凍餃子を10パック購入して、経堂へ。水澤紳吾さん、川瀬陽太さんと合流して、「オオゼキ」で買い物し、川瀬さん宅で恒例の「川瀬会」の忘年会。川瀬会ももう7年目かな? アタシがまだ宮の坂に住んでいた頃から、年末に川瀬さん宅で開催されている。自宅で飲み会なんかアタシャお断りだが、川瀬のおじさんはもう諦めている。今年は大西信満さん、西山真来さん、嶺豪一くん、途中から撮影終わりの菊地健雄さん、もろずみりょうくんが合流。今年は奥野瑛太くん、木村知貴さん、影山祐子さんは参加できず。水澤さんと奥野くんとアタシで川瀬さんちに押し入った7年前から始まった忘年会だが、今回は初の女性参加者や俳優部以外の参加者が増えた。毎年「川瀬会」には、泥水を啜って足掻き回り貧しい邦画界を豊かにしようとしている先鋭的俳優を選抜し強制召集するのだが、本年は菊地さん・西山さん・影山さんは志願参加。こんな地獄飲みに志願するなんて狂ってるよな。今年も女性器の呼び方や飛沫を飛ばさないションベンの仕方等、全く芝居とは関係のない下品な話題をマジメに議論した。また本年から「川瀬陽太映画大賞」なるものが創設され、名誉ある初受賞者にアタシが選出された。まあ、ピング男優賞以外の賞を取った事がないアタシを憐れみ、川瀬さんがノリで作った賞で、1ミリの権威も名誉もない。コピー紙に川瀬さんの汚ねえ字で殴り書きされた賞状をいただく。極度の反権威主義者のアタシは、「権威主義的映画賞などいらねえ」と常日頃言っていたのだが、この全く権威のない賞であればありがたくいただけるし、嬉しかった。初受賞者として映画界の恥部という意識を忘れず、業界の活性化のためにより一層精進しようと思う。川瀬のねえさんが仕事から帰られたので、近所の居酒屋に移動し飲み始めた途端、机に突っ伏して寝ていた水澤さんが落ちて眉を切る。眉上なので結構出血があったが、圧迫止血して店を出る。ボクシングのカットマンになった気分だった。店を出ると、偶然にも駒木根隆介さんと会ったので、地獄に落ちた水澤さんを押し付けようとしたが逃げられる。結局、西山さんがタクシーで水澤さんを送ってくれた。川瀬さん、そして参加者の皆様、今年もありがとうございました。来年も邦画の荒波を泳ぎ切りませう。
某日、朝、両親が働きに出たので実家に行って、じいちゃんの世話をしながら日記を書き、セリフ練習。H組の新作アニメーションのオーディションに呼ばれたので、声に出して練習しておく。アニメの声の仕事なんてやったことないのでどう挑んでいいのか分からず。セリフも文語体なのでなかなか難しい。録音するセリフの書かれた紙と別紙で絵コンテがきた。コンテの絵を見てキャラクターのイメージの声を作るべきかとも考えたのだが、アタシャ所詮は俳優部。声優さんとは違うので素のままでやる。アタシがセリフを言うたびにじいちゃんが「そうですか」と、相槌を打ってくれる。たまにセリフを聞き返されるので、多分アタシの発声が悪いのだろう。聞き返されたセリフを重点的に練習。昼、弟の伸也が実家に来てくれたので、じいちゃんの世話を交代して、信濃町の録音スタジオへ。スタジオにはH監督本人がいて驚いた。「映画拝見しています」なんて言っていただき、二度驚く。セリフを読むと「やー、人間臭くていいですねえ」なんて褒められる。急遽別役のセリフも録音して終了。監督が別役をやらせたって事は、本来の役じゃハマらなかったのだろう。はてさてどうなるか。新宿へ出てブックファーストでダーティ工藤著『大俳優 丹波哲郎』と、イ・チャンドン著『鹿川は糞に塗れて』を購入。村上龍の『海の向こうで戦争がはじまる』が目当てだったのだが、売ってなかった。仙川へ向かって、仁科貴さんと忘年会。上月監督も合流し、3人で『首』の話。そして仁科さんの現場話や親父さん(川谷拓三さん)の話をお聞きする。今夜は全て仁科さんが奢ってくれた。ごちそうさまでした! 仁科さんは素晴らしい俳優で、アタシが若い頃に観た映画にしょっちゅう出てきて印象的な芝居をされていた。アタシが憧れて好きな俳優部。そんな仁科さんが「親父の倅っていまだに言われるよ」なんて言う。実際、素晴らしい俳優の親父さんがいたのだから、そりゃ言われるだろうが、今や「川谷拓三の倅」だから撮影に呼ぶなんて事はない。生意気だが「仁科貴が必要とされてるんだから、自信を持ってやってください」と伝える。自分の過去の事を今だに気にされている仁科さんだが、映画界ではそんな事は関係ない。過去に失敗をしたヒトでも、現在懸命にやってりゃあきちんと評価してくれるのが邦画界だと思う。出自・人種・国籍・思想・前科。いわゆるマイノリティーの集合体で、右も左も清濁合わせて飲み込むのが邦画界のいいところだ。その多様性が邦画の豊かさにつながっている。コンプライアンスの厳しい昨今珍しい業界だが、その風潮を断ち切っちゃあならねえと思うんだよなあ。
某日、朝から柴田鷹雄くんが来年公演する『風のセールスマン』のチラシ用の木版画に取り組む。建築現場で出た端材を持ち帰って、気の向くままに鳥やヤギ等の動物を彫る。アタシはメスキータの版画が好きなので、参考にする。しかし、メスキータは絶大なデッサン力とずば抜けたデザイン性を持つ作家。アタシみたいな素人とは次元が違う。でも憧れる作家の真似から入るのは、どの作業でも同じだと思う。「芝居」もそうだ。憧れの俳優や好きな俳優がどういう芝居をするか、想像しながら真似ることから始まると思う。そこから自分の特性に気付いて個性が出る。メスキータは規則性の人。私は偶然性を好む。根本的に思考が違うが、それでもいい作品には惹かれる。版画は白と黒のバランスが全てだと思う。その捉え方に個性が出る。面白いんですよ。夕方まで集中して取り組む。倅とカミさんがいないので集中が途切れず、小作4品、A4サイズの抽象画を彫った。各作品、刷り上げ。版画は刷る作業が楽しい。インクの乗せ方や刷り方、刷る紙の質で全く表情が違う。アタシはアマゾンの梱包で使われているわら半紙のような雑紙が好きだ。画用紙には出せない味がある。夕方、新所沢のシネパークで山崎貴監督『ゴジラー1・0』と北野武監督『首』を観る。本年の映画納めだが、どちらも期待値が大きかったので、残念だった。山崎さんなんか『ゴーストブック』好きなのになあ。しかしどちらの映画も公開から時間が経っていたが、客入りが良かった。つまり世間的には面白い映画なんだろうな。なのになあ、芝居がなあ。まあ、いいや。まずはテメエがお客さんが喜ぶような映画に出る俳優になれって話だよな。世界堂に寄って、精密彫刻刀を2本購入。帰って深夜まで版画作業。なかなか納得いくモノが出来ず。
某日、カミさんが帰ってくるので家中の掃除。ご機嫌取りのために入念にやっておく。そして引き続き木版画制作。昨日まで色々彫ったが納得できず、全てを捨てて新たに1からやる。こういった制作は諦めが肝心なり。今度は柴田くんの肖像を彫る。これもメスキータの影響。今作はなかなか面白いものが出来そうな予感。しかし、夕方に倅が帰宅。作業を中断して一緒に「ピクミン4」をやる。これが面白そうでアタシも倅に勧められるままデータを作ってやり始めてしまう。昨年の「ポケモン」と同じパターンだ。アタシはあまりゲームに触れて来なかったので新鮮でハマりやすい。カミさんから「またエンタメ泥棒しやがって」と罵られるが、倅に教えてもらいながら操作を覚える。ピクミンは背景画がリアルで驚く。ピクミンも可愛い。これはいいなあ。夜、実家に弟の哲也と哲也のカミさんのゆかちゃんが来たので倅を連れて挨拶に行く。お土産をたくさんもらった。夜、倅が寝てから1人で「ピクミン」やる。版画制作が止まってしまった。
某日、大晦日。午前中からカミさんと倅と豊島園へ。「ハリーポッターランド」に行く。そもそもカミさんと倅だけで行く予定だったのだが、アタシだけお留守番は寂しいので、チケットを取ってもらった。わざわざチケットを取ってもらったのだが、アタシはハリーポッターを1度も観た事がなかったのだ。壮大なセットや小道具に「すげえな」とはなるものの、作品の内容が全く分からないので正直、ふーんって感じだった。そんなアタシの態度をカミさんは目ざとく見付け「せっかく苦労してチケット取ったのになんだその態度」「やー、観た事ねえからなあ。これが敵?」「知るか!アタシだって最初のハリーポッターしか観てないんだから」周りのお客さんは外国人が多い。ハリーポッターのコスプレをしたお客さんも多い。倅はカミさんが買ってくれたポッターの衣装を着ているが、丸メガネはのび太みたいだし、衣装はフードを被ると岩ピクミンみたいだ。アタシが「のび太ピクミンみたいだな」と倅に言うと、カミさんが噛み付いてくる。「正規の衣装買ったらいくらするか知ってんの? めちゃ高いんだよ!」「おお、これはどうしたの?」「アマゾンで見つけたバッタもんだよ!」と大声で言うので恥ずかしかった。帰って自宅で年越しそば。倅はテレビ、カミさんはごろ寝。アタシは版画作業をして各自自由に年末を過ごす。