某日、無職渡世。朝、倅と約束していた所沢のお祭りに行こうとしたら、カミさんから「アタシが連れていくからアンタは来ないで」と宣言される。「だって倅と約束したのに」と食い下がるがカミさん譲らず。間に挟まれた倅が、ムムムって顔になっていた。仕方ないので一人で実家に行く。親父とお袋が脚立を使って庭の桜の木を剪定している。もうイイ年なんだから、電話してくれりゃあいいのになあ。アタシが脚立に上り、腐り始めた桜の枝をノコで挽いていく。この桜の木も引っ越した当時に亡くなった祖父が植えたものだ。樹齢30年ってとこだろうか。だいぶ幹も腐って痛んでいる。隣のお家に入らせてもらって、伸びた枝を落とす。一気に枝を落とすと樹勢に影響が出るそうだが、まあ仕方ねえな。ムクドリだろうか? 小鳥の巣が枝に付いていた。外を小枝で編み込んで形を作って、内側はビニールなどの切れ端で編み込んであった。保温やクッション性を考慮してんじゃねえか! 小鳥なのにすげえな。倅に見せたくて取っておいたが、脚立から降りた時に踏んづけてしまった。残念。午後は落とした枝を2、30センチで刻んで薪にする。親父とお袋もやってくれる。「せっかくの休日なんだからゆっくりしとけ」と言っても聞きゃしない。根が貧乏性だから動いてないと不安なのだろうか? 夕方、作業を終えて、コメをもらって帰る。カミさんと倅も戻り、倅はクジでBB弾の拳銃を当てたらしくはしゃいでいた。カミさんは完全無視でまったく口を聞いてくれない。夜、体調が悪くなる。頭痛、寒気、おそらく発熱。早めに床に入って、ゲオルク・ヴィルヘルム・シュテラー著『カムチャッカからアメリカの旅』を読む。あまり文字が入ってこず。パレスチナの情勢をネットで見る。暗澹たる気持ち。寝る。
某日、無職渡世。寒気がひどくて全身筋肉痛。起き上がれず。発汗。始終寝る。久しぶりに風邪をひいた。しんどい。カミさんはそれでも無視。おっかねえなあ。明日から撮影だから寝て治すしかない。あまり回らない頭で、明日の白石組の芝居を考える。考えないと不安なんだな。でも、堂々巡りに陥る。想像して準備することは絶対的に必要だが、撮影現場に入ったらその考えを捨てて共演者の芝居に反応するのが一番だ。所詮、芝居は現場でしか生まれない。夕方、食い物がないので、無理して起きてコンビニでヨーグルトやオニギリを買って食う。夜、気管支喘息の症状でたまに咳が出るが寒気は治る。
某日、白石和彌組『十一人の賊軍』撮影で、鋸南のオープンセットへ。この日の日記はアタシの役の内容に関わる記述があるため、映画公開後の11月1日以降に掲載しますわよ。なんだか偉そうですがご了承くださいませ。
某日、白石和彌組『十一人の賊軍』出番最終日。鋸南のセットでナイター撮影。この日はアタシのオールアップの日で映画の内容に関わる記述が多いため、11月1日以降の掲載とさせていただこうじゃないの。まあ、アタシのオールアップでスタッフ・キャストが大泣きしてしまい撮影が中止になったという事があったらいいなあ。
某日、無職渡世。10時に起きて、小柳くんと山田ハウスを出る。さらば、鋸南! 小柳くんが運転してくれて秋葉原まで乗せてもらう。道中、昨夜のおっかなかったトンネルの話や撮影話で盛り上がった。小柳くんも専業俳優になるつもりはないそうで、フィットネスジムを経営するそうだ。しっかりした立派な大人だ! しっかりしてねえのはテメエだけか! 高速代も小柳くんが払ってくれた。ホント申し訳ない。せめてもと昼飯を食いに。小柳くんオススメのカレー屋さん『トプカ』へ。本格的なインドカレーで、店員さんオススメのムルギカレーをいただく。ちゃんと辛くてメチャクチャ美味い。カレーを食ったのも久しぶりだ。減量してたしなあ。小川町で小柳くんと別れて、府中へ出る。班長さん(山本浩司さん)と落ち合って、お茶をする。班長さんが持っているセリフをどんどん捨てていくような芝居の話。自分も真似をしたいが、あれって天性のものだ。川瀬陽太さんや殿山泰司さんも、セリフを捨てていく芝居をされる。いいよなあ。夕方、いただいた花を持ってうちに帰る。倅が迎えてくれたが、カミさんは無視。お花を実家に届ける。本屋で本村凌二著『馬の世界史』を購入。夜、『G』の後半の脚本が届いていたので読む。風呂に入ったついでに、伸ばしていた髪をバリカンで坊主にする。眉毛も伸ばし続けていたので切る。スッキリした。さあ次はGの続編か。
某日、無職渡世。朝、倅が学校に行ってからカミさんと話し合い。カミさんはアタシの改まらない生活態度や自分勝手に入れる予定にほとほと愛想が尽きたらしい。つきましては離婚および別居を切り出される。離婚に関しては徹頭徹尾反対する。ただし、別居についてはカミさんが譲らず。年内で出て行って欲しいと言われる。「倅の事を1番に考えて高校生になるくらいまでは同居できないか?」と言うが「それじゃアタシが持たない。アンタはいつもいないから別居しても倅には影響ない」と。カミさんの条件を突きつけられるが、「俳優を続けるなら離婚、家庭を取るなら俳優をやめる」との事だった。参ったなあ。人生って選択と結果の連続だが、こりゃあ難しい問題なり。アタシの対策としては、のらりくらりとかわしておき、ほとぼりが冷めるのを待つしかない。ひとまず話し合いを切り上げ、カフェ・ド・クリエへ。溜まってしまった日記を書く。上田君から電話。次回の撮影と連載の話。演出部の山口くんから電話。『G』の現場が大変らしい。水澤紳吾さんから電話。近況報告。倅が帰って来る時間なのでうちに戻る。マッチポイント根岸さんから電話。向井さんの結婚パーティーの打ち合わせ。班長さんからも電話。本日は電話が多い日だな。夕方、井上さんに電話。今後のスケジュールの話。アタシの家庭もスケジュールもうまく収まって欲しい。『浪子回頭日記』2022年11月分の修正作業。夜、ツイッターでガザ地区の惨状が流れて来て言葉を失う。イスラエル軍は空爆だけでなく、地上からの掃討戦もやるのだろう。もう止められないのだろうか?ツイッターから流れてくる映像を見ていると胃が痛くなるので、本村凌二著『馬の世界史』を読む。
某日、倅の運動会。朝から倅を学校まで送って、保護者観覧の受付をすませる。小学校での初めての運動会だが、倅はあまり乗り気じゃなさそうだった。まあ、初めての時ってそんなもんだよな。倅の参加競技は、50メートル走と玉入れとダンスの3種目。カミさんも到着して、2人で倅の勇姿をみる。今日に限ってはカミさんはアタシと喋ってくれて、「お? このままいったらまた普段通りの関係に戻って、別居とか忘れてくれるかもしれんな」なんて前向きに考える。ここでポイントを稼がねばと張切って、場所取りや倅の応援をしていたが、「アンタ、勘違いしないで欲しいけど、運動会だから喋ってあげてるんだ。うち帰ったら話しかけるな」と強烈な一発を喰らう。あんだかや! 期待しちゃったでねえか! でも、ここでめげるアタシじゃあありませんわ。積極的に会話をして、カミさんの冷え切った心を溶かすべく立ち回る。「アンタが考えてる事なんかお見通しだから。無駄に喋りかけるな、うっとおしい」なんて言われても、めげねえもんね。倅の50メートル走はスタート位置につくまで、遠くから観戦しているアタシにも緊張が伝わるくらいガッチガチだったけど、走り出したら笑っていた。倅はゴール前で前走者を差して2着だったのに、係の子の間違いで3着にされていた。終わった後に倅にその事実を伝えたら、「オレは勝つのも負けるのもいやだから、真ん中くらいがいいんだよ」と7歳児にしては妙に達観したお言葉をいただき、本当に我が倅だろうかと不安になる。勝ち負けのどちらかにこだわるのって、確かに争いを生むし、優生思想に繋がる危ない考え方かもしれない。すげえな、本能的にその危うさに気付いているのかしら? 運動会どうこうよりも、倅のその思想性に驚いた日でございました。
某日、無職渡世。昨日の運動会でカミさんのご機嫌もなおったかと期待したのですが、全然なおらず。アタシの見通しの甘さが露呈した。結局、朝からガン無視。倅が気を使うくらいアタシを無視する。倅とは笑顔で話していて、アタシが話しかけると能面みたいな無表情になるのだ。その瞬間のカミさんの表情は、アタシでさえ感心する。すごく徹底したカミさんの意思を感じてしまうな! で、アタシは逃げるように倅と所沢のスポッチャへ。倅が週末のご褒美で楽しみにしているメダルゲーム・釣りスピをやりに行く。アタシはひたすらゲーム機にメダルを投入する係。倅は本日、レアなホオジロザメやジンベイザメを釣り上げていた。このまま釣りにはまってくれたら一緒に海釣りに連れて行ける。だから、アタシは倅の釣りスピプレイを褒めて、できる事なら本人から「ゴリ、本当の釣りをしてみたい」ってお願いされたいのだ。そしたらアタシはカミさんに「倅が釣りに行きたがってるから連れてくわ」なんて言って、館山遠征して倅と一緒に釣り三昧生活に興じることができる。素晴らしいな。だからできるだけ倅を褒めてイイ気にさせるのだ。夕方、新宿三丁目で「向井康介さんご成婚パーティー」へ。向井さん本人は全く知らずに、皆で集まって驚かせてやろうって趣旨のお祝い会だ。プロデューサーの森重さんと根岸さん、小学館の飯田さんや「猫目」のスタッフの方々が音頭をとって開催してくれた。映画界の様々な方、奥方様の知人ご友人なんかが130人近く集まってワイワイやる。そりゃあもう凄いメンツでいちいち紹介できないのが残念なのだ。まあ、想像以上の方々が集まりました。アタシはチョコチョコ動き回って、西川美和さんとお喋りしたり、荒川良々さんに愚痴ったり、野中隆光さんに甘えて金を借りようとしたり、古舘寛治さんに絡んだり、森義隆監督と地元トークしたり、宇野祥平さんと冗談言ったり、近藤公園さんとフラフラしたり、川瀬陽太さんに怒られそうになったり、田口トモロヲさんに褒められたりした。中でも嬉しかったのが、敬愛する俳優の康すおんさんとしばらくお喋り出来た事。康さんのポツポツ話す感じは本当にたまらない。しかも康さんが「マツーラくん、最近イイ感じで仕事されてるね」って褒めてくれたのだ。嬉しかったなあ。でも康さん、違うんですよ。今回来ている俳優なんかみんなアタシが憧れていた俳優で、アタシはコノ人たちに騙されたようなもんで、ただただ続けてきただけなんです。辞められなかっただけなんです。アタシが今、俳優を辞められないのはアナタ達のせいなんです! チクショー! 騙された! とにかく、向井さん、おめでとうございます!