某月某日、白石和彌組『十一人の賊軍』撮影。千葉県は水沼でのナイターロケ。今月は、いよいよ鋸南町におっ建てられたメインセットの砦で、籠城戦の撮影がある。暑さもおさまらず、スタッフさんの間でも「鋸南ロケは地獄になる」と囁かれ、アタシもまあまあビビっているのだ。さあ、どんなもんだんべえか? 本日は12時半に新宿郵便局前集合で、現場へ移動。撮影開始は日没後なので、出番までだーいぶ時間があるが、人によっては刺青描いたり、傷メイクがあるので仕方ねえ。アタシは衣装の大塚さんが作ってくれたズタボロの野良着を着て、カツラをかぶって歯を汚す(歯専用のヨゴシワックスを使う)だけ。地肌が黒いから、たまにメイクさんがヨゴシを忘れてしまうくらい馴染んできた。支度が終わり、公民館の外で尾上右近くんとおしゃべり。右近くんは歌舞伎に関する知識が半端なく、本人は「ただの歌舞伎マニアですよ」なんて謙遜するが、なんでも知っているのだ。歌舞伎マニアの領域をとうに超えて、歌舞伎研究家なんじゃねえかな? 研究家の右近先生から、歌舞伎の成り立ちや「2の裏は5」のお話を教えてもらっていたら、近所のおばあちゃんが孫を連れて梨を差し入れてくれた。差し入れは嬉しいんだけどサ、おばあちゃんがアタシの名前を聞くので名乗ると「知らないね。汚いオジサンだけど、ホレ、写真撮ってもらいな」と孫を促す。もちろん孫は汚ねえおっさんに全く興味はないので、嫌がる。嫌がる孫と何故か満面の笑みで写真に映るアタシ。梨はメチャ美味かった。夕方、急に支度班がバタバタしだして、急遽現場に呼ばれる。慌てて移動したが、現場スタッフは「なんでもう来てんの?」なんて言われてしまう。照明の舘野さんからは「俳優部が来ちゃうと緊張しちゃうんだよー、こっちはまだ1灯も建ててないのに」なんて冷やかされる。参っちゃうなあ。日没後、砦に向かう面々の撮影。アタシたち賊軍チームは、腰縄で繋がれて、重い荷物を背負わされる。アタシは背負子に3俵の俵を背負うのだが、コレがメチャクチャ重いのよ! マジで30キロはあるの。『オノダ』の時にリアルに道具を詰められたリュックが30キロあったが、それを超える重さ。一人じゃ背負えないんだもん。最後尾のアタシは、抜けに映るかもしれないのでほぼ毎カット呼ばれて、荷を背負う。何度も担いでいると、背負子の肩紐が骨ばった肩に擦れて皮がむけ血が出ていた。仕方ねえなあ。アタシはそういう事をやってゼニを稼いでいるんでございます。夜中の2時に撮影終了。特殊メイクのナギが東所沢の実家から来ていたので、車に同乗させてもらい帰宅。夜が明けて明るんだ空が綺麗だった。
某日、朝、カミさんから叩き起こされる。本日は撮影がない。9時半から倅の小学校に行って、授業参観。教室前の廊下に「夏休みの自由研究」の作品が飾られていて、なかなかイイのです。本日の授業は防災の日に絡めて、防災訓練と引き取り練習。倅達の授業で「お・か・し・も」という標語の意味を先生が尋ねる。最初の子が「お」は、「押さないー」と答えると、ほとんどの子がその答えに乗って「押さない」と答える。だが、中には「追っかけない」とか「怒らない」という独自の答えを導き出す子がいて面白い。「か」は「駆けない」なのだが、難しかったらしく「火事から逃げる」という火事関連の答えが多かった。「し」は「しゃべらない」。「も」は「戻らない」。普段意識しない帰宅路の危険性なんかも教えてくれて、アタシが勉強になった。授業後に引き取り訓練。児童の名前を伝え親が引き取るのだが、先生から名前を聞かれて自分の名前を名乗ってしまい笑われた。午後、渋谷はユーロスペースへ。赤松利市さんと『福田村事件』を観る。お客さんが満員で危うくチケットが買えないところだった。お客さん入ってよかったなあ。受付の子に「入ってるね」「はいー、驚きました」「昨日は?」「昨日も満席でしたー」なんて、嬉しい事を言ってくれる。森さん、よかったなあ! 本編は2度目なので、自分の芝居の反省を含め全体を冷静に観れた。豊原功補さんの芝居、凄くよかったなあ。お客さんは虐殺が始まると食い入るようにスクリーンを観ていて嬉しい。劇場を出る時に数人の客さんがアタシを見て「ほら、殺した人」なんてヒソヒソ言うので、慌てて出る。劇中でやった役が、悪さしただけでアタシ本人はいたって善良なオッサンなんだよ。赤松さんと「シャルマン」で一服して別れる。ユーロライブで日下組『冗談じゃねえよ』の試写を観る。コレがなかなか良かった。主演の海老沢七海くんが頑張っていたし、脇の佐藤五郎さんや髙橋祐介くん、浦山佳樹くんなんかはサスガでした。映画も良かったので広がって欲しいな。劇場を出て、保中さんと感想を話し、帰る。夜、井上さんから連絡。白石組でコロナ陽性者が出てしまい、スケジュールの変更。仕方ねえやね。糸井重里著『あるとしか言えない』を読み終わる。赤城山の埋蔵金発掘本なのだが、途中から穴掘り土木本に変わってそれがイイのだ。やっぱ、イイ歳した大人が「コレは出るかも」って本気で期待して夢中になれるって素晴らしいと思う。でも、赤城山はもう水野さんと糸井さんのものだから、アタシは違う件を探そう。だってコレには勝てないもんな。
某日、朝、倅と稲荷山公園へ。狭山市立博物館に行き、特別展の「ざんねんないきもの展」へ。倅の希望だったが、アタシも楽しかった。メスにかじりついて交尾すると、そのままオスはメスのイボになって取り込まれてしまう「ミツクリエナガチョウチンアンコウ」の存在なんて知らなかった。入り口に展示されたホッキョクグマの標本がでかくて驚いた。常設展も見る。狭山の歴史が縄文時代辺りから時代順に展示されていた。今、幕末の百姓役なので、江戸時代の農機具や農民の生活の展示が勉強になった。あわよくば、この辺に埋蔵金伝説はないかと思ったが、それはなかったなあ。昼飯に「富士そば」で紅しょうが天そばを食う。倅が「富士そば」が大好きで、食いたがるのだ。倅を一人で食わせるわけにいかんので、アタシも久しぶりに昼飯を食ったのだが、美味かった。午後はメダカの手入れと日記を書く。『2nd』の連載記事の直しもやる。書き物作業はやっていて楽しい。夜、『十一人の賊軍』のシナリオを読んでセリフをやる。畠山清行著『海底の秘法と埋蔵金』を読み始める。どうやら著者の畠山さんは、日本のトレジャーハンティング界の権威的人物らしい。読み始めて、日本でも沈没船引き上げをたくさんやっていた事実を知る。そして引き上げから多くの財宝を得た人の話を知って、猛烈なやる気が出る。まあ、その3000倍くらいの人が失敗して、身を潰してるんだろうけどさ。さて、アタシはどの財宝や埋蔵金にチャレンジするべえかな。
某日、白石組撮影予定日だったが急遽変更。お休みになる。撮影スケジュールも天候やコロナに振り回されていて大変だと思う。午前中、メダカの水換えをしていたらでかいヤゴが入っていた! 最近、メダカが減ったなと感じていたが、ヤゴの仕業か! すくって柳瀬川に戻っていただく。午後、所沢ー東所沢を3時間セリフ念仏。新発田弁もなんとか言える状態になったと思っていたが、歩いていたら突然イントネーションがわからなくなってしまう。「あれ? 言えてたのになあ」と、レコーダーで方言を確認するが、聞いても標準語との差がわからなくなる。なんだこの状態は? ゲシュタルト崩壊の音版か? 初めての経験だったので戸惑うが、わからない状態で無理してやっても仕方がない。今日は諦めて念仏中止。まあ、そんな時もあるさね。どんな事でもやり過ぎはダメだな。無理しても変な癖がつく。諦めが肝心なんですわ。夕方、新宿へ。業界御用達の飲み屋「犀門」で、プロデューサーの森重さんと飲む。森重さんは30歳から独立系の邦画の数々をやってきた、歴戦の猛者。今日は、脚本家の向井康介さんが結婚したそうで、そのお祝いパーチーの打ち合わせ。山下敦弘さんと参列者の候補を書き出した。森重さんは「100人くらい来てくれたら向井にもご祝儀出るんだ。100人を目標にしよう」と言う。しかし、ひと月後のパーチーだからもう予定が入ってしまっている人も多いだろう。しかも「向井には秘密でサプライズにするから」ってミッションまである。お口の軽い映画人。なかなかにハードルが高いなあ。打ち合わせもそこそこに森重さんと映画話。森重さんのプロデュースしてきた映画って、まさにアタシが映画を観始めて憧れていた作品の数々だった。話が面白くて打ち合わせどころじゃなくなってしまう。やっぱ、映画っていいな! 11時くらいにお別れして帰る。夜、畠山清行著『海底の秘法と埋蔵金』を読了。財宝発掘や沈没船引き上げの成功譚を読んで、我が事のように気分が良くなってしまう。森達也監督『福田村事件』が公開から満席続きらしく、嬉しい。山中崇さん・渡辺謙作さん・松角洋平さんはじめ、色々な方から映画の感想の連絡をいただく。ありがてえなあ。
某日、白石組『十一人の賊軍』撮影イン鋸南。本日からナイターシフトで集合は夕方。午前中、神楽坂の喫茶店で『2nd』副編集長の上田くんと連載の打ち合わせ。今、埋蔵金関係の勉強していて、捜索の候補を選定中と話す。今は最上川の小判探しが有力。上田くんと今後の掲載スケジュールや連載の予定ネタを話し合う。10回分のザックリ予定を決める。アタシが発掘熱に浮かされてしまっているので、冷静な上田くんの意見はありがたい。この連載も面白くなりそうだなあ。一度、帰宅してパッキング。今日から白石組ではメインセットの砦を鋸南町で撮影するのだが、基本スタッフ・キャストは通いになる。しかし山田孝之くんが、俳優部で泊まりたい人が泊まれるように別荘を借りてくれたのだ。少しでも移動の時間を短縮し疲労を軽減する為、そして俳優部同士の交流がうまれるようにという心遣い。本当にありがたい! 山田くん自ら貸し手の方と交渉してくれて、エアーベッドまで用意してくれた。そこまで考えてくれるとは。もう、感謝を通り越して、崇め奉ってしまう。もちろんアタシは泊まらせていただく。だって、うちに帰ってまた通うのも面倒くせえもんな。泊まっている方が集中できるし楽だ。夕方、新宿集合で鋸南のメインセットへ。採石場の山の中に建てられたセットで、携帯電話の電波も通じない僻地なり! セットに着いてその規模感に驚いた。まず山の入り口には数棟のプレハブ小屋があり、メイク部屋・衣装部屋・小道具部屋・特殊メイク部屋に分かれている。テントも建っていてさながら難民キャンプのようだ。奥に歩くとテント部落で、食事場になっている。その更に奥にセットの砦。そして重要なセットの橋。この橋がまるでフリードキンの『恐怖の報酬』みたいな吊り橋なの! そんなセットを見たらテンションが上がってしまう。白石さんと橋を渡りながら「『恐怖の報酬』ですね!」「お、観てるねーフリードキン亡くなっちゃったね」「フリードキンは最低限のたしなみですわ」なんて笑い合う。いやー、こんなセットで芝居できるなんて幸せだな。セットに負けない芝居をしなきゃな。天候でスケジュールが変わったので、逆つながりの撮影。本日は山田くんを縛り上げて、その後、山田くんと太賀の真剣シーン。右近くんとチャカチャカ芝居して(右近くんと息が合ってきて楽しい)、山田くんと太賀の芝居を見る。これがめちゃ良いシーンだった! 太賀の早抜きは見事だし、山田くんのセリフのスピード感はアタシにないもので見ていてゾクゾクした。すげえ芝居しやがるな! アタシが先に終わったので、山田くんの借りてくれた別荘へ。なんだここ! 凄えとこじゃないか! ボロボロの民宿を想像していたら、新しい立派な別荘だった。今日はまだ山田くんが撮影しているし、立派な別荘にアタシひとり。嬉しくなっちゃうねえ。メールを確認すると、明日のスケジュールが変更に。どうやら台風が来るらしく、急遽食事シーンの撮影になった。ああ、ここは2、3日食事を抜いて挑みたかったなあ。まあ、仕方ねえや。塙幸成監督から「福田村観ました、松浦、良かった!」とメールをいただく。塙監督は『初恋』で無所属の素人だったアタシをメインキャストで選んでくれた大恩人。本当に嬉しかった。本日からしばらく、山田くんの手配してくれた別荘に泊まる。
某日、白石組『十一人の賊軍』ナイター撮影で鋸南のセット。朝、起きてスカイプでカミさんに電話。倅は今日、学校をおやすみらしい。朝から『浪子回頭日記』の9月・10月分を修正して伸也に送る。昼まで日記を書いたり書き物作業。山田くんを起こさぬように静かに過ごす。午後、山田くんが起きたので、ベランダでタバコを吸いながらおしゃべり。現場では「寡黙」って印象で、あまり言葉を交わさなかったのだが、今日は話し始めたら止まらなかった。もしかしたら役の状況に合わせて、他の俳優と交わらないってアプローチだったのかもしれない。山田くんの仕事の選び方や、役の準備の仕方、今までの経歴なんかを話す。なるほどなあ。感心するくらい考えてる。しかも山田くん、今年40歳でアタシの2歳下だったのです! 正直、もっと年下だと思っていました。気付いたらお迎えの出発時間で、3時間ばかり話し込んでいた。こういう事があるから、泊まりはいいのです! 撮影現場以外の交流って大事だし、絶対芝居に作用すると思う。さあ、現場でまず衣装に着替えて、カツラをつけ、汚しを入れて、小道具(ワラジや刀)を身につける。持ち道具の古村さん(コブちゃん)や親方の松永さんとワイワイ言いながら道具を装着する時間が好きだ。松永親方は、一見おっかなそうな面構えだが、とても優しい。衣小合わせの時から、色々と提案してくれて「三途」のキャラクターを作ってくれた。準備ができたらナイター撮影なので夕飯。しかし、今日は食事をするシーンを撮るので食わず。ケイタリングの夕飯は美味そうだったなあ。雨がポツポツ降り始め、現場がバタバタしだす。機材の養生やらセットに流れ込む雨水の逃しが必要で、スッタフさんが殺気立つ。そんな中、砦で芋ご飯を食うシーンの撮影。脚本上は芋ご飯を食って「うめえ」なんて言った後、突然泣き出し自分のやった事を後悔するセリフを言うのだが、泣けなかったなあ。まあ、仕方ねえか。白石さんは美味そうに飯を食う様や、食い終わった後、丼を舐める芝居を褒めてくれた。泣けなかったけどなあ! 1カット1カット、密度の高い画を撮影しているためどうしても時間がかかる。でもさ、映画ってそういうもんじゃないですか! 早く撮るのが優秀なんじゃねえのですわ。クルーは大変かもしれないが、俳優部はノッてきたなあ。夜、2時に撮影終了。終了時に「明日は台風直撃のため、撮影中止」の伝達が来る。台風が来ていたのか! 全く知らなかった。スケジュールが再び変わってしまうだろうが仕方ねえ。本日から山田くんの宿に松尾諭さんも合流。終わり時間が皆、一緒だったので3人で宿飲み。明日が撮休になったので、気を使わずトコトン飲める。バカ話をワイワイしながら朝の6時まで飲む。こういう時間がイイのですわ。わかるかなあ? わかんねえだろうなあ。明るくなった空を見ながら、山田くんとタバコを吸って寝る。
某日、白石組『十一人の賊軍』台風のため撮休。昼頃起きるとまだ雨は降っていない。あれ? 台風どこいったの? 松尾さんと山田くんも起きたので、みんなでジャニーズの記者会見の中継をみる。午後、まだ雨も降っていないし、このままダラダラしても仕方ないので、3人で釣りに出る。松尾さんの車でまずは釣具店「 釣吉」に買い出し。松尾さんは新たなルアーを、山田くんは竿とリールとサビキセットを買う。雨が降り始めたが、釣り好き3人の火が付いた心には関係ない! 早速、富浦新港の防波堤で竿を出す。アタシはアジ狙いのジグ釣り。松尾さんは大物狙いのルアー。山田くんはサビキで小物をあげて、それを餌に泳がせ釣り。各自意気込んで竿を振るもののやはり台風前で魚が散っているのか全くアタリがない。そもそも魚影がないわ。山田くんはサビキでネンブツダイを数匹あげて、泳がせでコチを1匹あげた。しかし、小ぶりだったのでリリース。アタシも頑張って投げるが、2グラムのジグでも強風に流される難儀な釣り。夕まずめだったが、ちょっとアタリが出ただけで何も釣れず。場所を変えて真っ暗な海に投げるが、サビキすら相手にされない状況で、7時頃終了。でも、面白かったなあ。「さあ、撮休の今夜はどう過ごす?」「まあ、まず美味いもの食おう!」って事で、最寄りの保田駅まで移動して店を探すが、台風のためかどこも営業していない! あんだかや。唯一やっていた飲み屋に入るが、全くやる気のない店で早々に撤収。「こうなったら館山に出よう!」松尾さんの英断で、館山に移動する。山田くんが飲食店を調べてくれて、寿司を食いたがるアタシの為に「光ずし」という老舗の寿司屋に入る。ココが素晴らしい店だったのよ! 老夫婦のやる寿司屋で、ちっちゃい親父さんが威勢がいい! 入るなり「んいらっさいあせえ!」と大声で迎えてくれる。漫画みたいな鉢巻きを締め、下駄ばき。こんな寿司屋の親父ってホントにいるんだ! 期待値が一気に上がる。まず出してもらった盛り合わせを食うと、美味い! 松尾さんは「もう飲むわ。帰りは代行呼ぼう」と言って山田くんと祝杯をあげる。店内に飾られた写真を見て「あれ、昔のご夫婦かな?」「親父さん、若い頃は背が高かったんですねえ」なんてヒソヒソ話していたら、存在感を消していたおばあちゃんが「あれ、宇梶さん!」と突然言う。こっちの話を聞いていたのも驚いたが、宇梶さんだったのか! あまりの意外性に吹き出してしまった。こう言うのって本当に面白い。その後、親父さんの握りも堪能して大満足。山田くんが全部払ってくれた。ごちそうさまでした! そして近くのスナックへ。上品なママさんがいる店で、入るなりママさんが「きゃー」って悲鳴をあげていた。台風の日に突然入店した客に驚いたのかなあなんて思っていたが、実はママさん、大のテレビっ子で山田くんが来た事に驚いたらしい。ママさん交えてワイワイ話し、午前1時に代行で帰る。宿でも飲み出して、山田くん解説で『クローズ2』を観る。しかし、なんで本人の解説付きで映画を観てんだ? ワイワイやって朝6時に寝る。森組『福田村事件』の集客が好調らしく、友人知人から連絡をいただき嬉しい限り。
某日、白石組『十一人の賊軍』鋸南のセットでナイター撮影。午前中、あまりに大きな雷鳴で驚いて起きる。物凄い土砂降り。激しく落ちる雨粒で、庭の土が舞い上がり土煙。あまりの様子にしばらくぼーっと眺めてしまう。しかし2度寝。起きたら昼過ぎだった。松尾さんが「アクアラインが暴風で通行止めになってるよ」と教えてくれる。そりゃあ、この雨風じゃあ止まるよなあ。撮影も中止かもしれないな。午後、「ダラダラしてるのももったいないから、近くの保田港で竿を出そう!」となり、3人で釣りに行く。集合時間まで1時間くらいしかなかったが、「アクアラインが止まっているし中止だよー」なんて希望的観測をもとに竿を出す。チョコチョコ携帯をチェックするが、一向に「撮影中止」の連絡がない。あら? やるのかしら? 港での釣りは全く魚影が見えず。アタリもない。そりゃあ台風の真っ只中だもんなあ。町内放送で「命を守る行動をしてください」って流れて来た。たった1時間だが釣りを楽しみ、そのまま松尾さんの運転で現場へ向かう。撮影、決行するみたいだ。「命を守る行動を!」って言われている時に、映画屋は映画を作るんでございます! すげえだろ! 道中、崖崩れがあってユンボが土砂を片付けていた。思わず「これでも撮影やるって凄いね」と呟いてしまう。さすが映画屋! 撮影現場の採石場は、雨で斜面に滝ができていて、なかなかの風景。橋の下の大穴も、雨水が流れ込んで大池になっていた! しかし、映画屋集団は、室内セットに入り込んだ雨水をスポンジとカッパギで綺麗に流し出し、豪雨の中でも何事もなく撮影をするのです。カットによっては雨が見えるので雨樋を作ったり、ライトで雨を映さない様に工夫して、室内シーンを撮り切った。外に駆け出すシーンの撮影準備のため、スタッフは豪雨の中を駆けずり回り、アタシも衣装とメイクチェンジをして待機していたが、夜12時に「続行中止」の判断が出る。この雨じゃ仕方ねえか。制作部のハルナの運転する車で秋津まで帰る。スタッフさんを送りながらの便だったので、帰宅は朝の4時過ぎ。ハルナ、ありがとね。おつかれさん!