某日、朝5時に起きて出発。本日はAさんに会いに行く。メンツは水澤紳吾さん、嶺豪一くんと3人旅。金がないので新幹線ではなく東海道本線の鈍行で行く。品川で待ち合わせ、一路某所へ。前日、水澤さんが「4時間も電車乗ってるとタバコが吸いたくならないかな?」と心配していたのだが、アタシは「大丈夫ですよ、4時間なんてあっという間ですって!」と相手にしなかった。しかし、「ダメだ! タバコ吸いたいです!」と、一番初めに音を上げたのはアタシでした。沼津で我慢しきれずに、電車を1本逃して喫煙タイム。水澤さんに「ホント、マツーラはダメだなあー」と呆れられてしまう。予定よりも遅くなって某所着が10時30分。Aさんは相変わらず元気で安心した。映画業界の話はアタシなんかよりも断然Aさんの方が知っている。3人それぞれの近状を伝える。あっという間の時間だった。バスで駅まで戻って、水澤さんと豪一はいつもの「浅見そば本店」でラーメンを食う。アタシは減量の為、我慢。帰りは高速バスで渋谷まで。渋滞にはまって予定時刻より45分遅れたが、ゆっくり寝れたのでよかった。そのまま3人で「福島屋」へ。赤堀雅秋さんと荒川良々さんにも連絡し、遅くなった赤堀さんの誕生祝い。良々さんの甥っ子のヒカルくんも参加。いつも通りワイワイ飲む。後半、赤堀さんの「誰に向けて作品を作るか」って話が為になった。死を考えている人が作品を観て「こんな悲惨なヒトでもなんとか生きてんだから、死ぬ事ねえか」って思ってもらえたらいいと、赤堀さんは言っていたが、確かにそうだ。赤堀さんの作品ってその優しさがある。イイ話を聞かせてもらった。終電で、酔った水澤さんを三鷹まで送って帰る。「俺も減量がんばるから。マツーラがやってるから俺もやんなきゃって思うんだよ」と水澤さんに言われ、ハッとする。水澤さんもI組の時代劇で減量しているのだ。水澤さん、逆ですよ。水澤さんがいつも命をかけた減量をやってるから、アタシは真似をしているだけなんです。あと、アタシは元々しっかりした労働者体型で落とす肉があるけど、水澤さんはもとから痩身なので無理してやらないでください! 周りに気合が入った俳優の先輩・後輩がいると気が抜けねえし、切磋琢磨できる。アタシはヒトに恵まれてます。
某日、昨夜からカミさんの機嫌がすこぶる悪い。「アンタは自分のことしか考えてない! フザケンナ!」と口をきいてくれない。おっかねえ。午前中、倅を府中のタイトーステーションへ連れて行く。倅はクレーンゲームが大好きで、そのためにお小遣いを貯めて、今日プレイするのを楽しみにしていたらしい。朝一発目のクレーンゲームで、ポケモンの人形をゲット。お菓子やマイクラ人形にバンバン金を突っ込むので(こういう金のつぎ込み方って、競輪で負けている時のアタシに似ていて薄ら寒くなる)あっという間に3000円使っていた。その間40分。このままやっていたら1時間で使い切っちゃうから、流石に止めて、東宝シネマで大根仁監督『クレヨンしんちゃん 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司』を観に行く。これ、『君たちはどう生きるか』と同じテーマを扱っていた。大人が作った世界で後進の子供達が苦労する。その子たちに向けて、宮崎さんは現実を突きつけ突き放したが、大根さんはエールをおくる。「ガンバレ! ガンバレ!」はあまりにも無責任じゃないかと思ったが、じゃあ、どうすりゃイイの? と考えても答えが出せない。アタシならどうするか? 考えながら映画館を後にする。倅に「富士そば」でコロッケそばを買って、うちに帰る。午後、東映大泉へ。マネージャーの井上さんと合流し、白石和彌組『十一人の賊軍』の衣小合わせ。衣装の大塚さんが、ボロッボロの野良着を作ってくれた。「まだまだ汚すから」と言ってくれる。ありがたい。カツラも装着し、撮影の池田さんがスチールを撮ってくれる。もちろん照明の舘野さんのライト付きで。白石さんと、三途の造形について話す。「もう帰る所もないし、生にあまりこだわらない諦観がある」という考えを支持してもらい、衣装も仰々しい鎧姿ではなく、なるだけ裸に近い形でやりたいと伝えた。もち道具の松永さんが、刀を背中に背負う形やほお当てを提案してくれて、嬉しかった。しかし、想像していた姿よりもカッコいいけどいいんだろうか? まあ、ここから揉むそうなので楽しみにしておく。ああ、はやく現場で芝居したい。本日から固形物を食わず、水も極力断つ。きついけどインまでの2週間で一気に追い込む。三途は一家心中を試みた。我が子を手にかける心境まで自分を追い込まないと。
某日、内装仕事で館山へ。始発で秋津を出発し、東京駅から6時20分発の館山駅行き高速バスに乗る。バスの移動中は眠かったが、『十一人の賊軍』の脚本を読む。脚本を読んでいてシーンを想像していく。今が一番楽しい時期だ。可能性が多く広がり、自由に芝居の発想が出てくる。これが段々と可能性より不可能性の割合が高まって、苦しくなってくる。それはどんな映画でも同じだ。この自由で豊かな時間をできる限り楽しみたい。8時過ぎに館山の現場に到着。太田さんや豪一、本日から乗り込みの大工の柳沢さんや大吾さんと合流して、壁の左官作業に取り掛かる。この現場はなぜか既に空調機が設置されているので、清澄の現場とは比べものにならないくらい仕事がしやすい。バタバタと壁左官を進める。午後、豪一が帰京。夕方、「館山の宿は海のそばだ」という話を聞いて、「なら釣りをしたいなー」と呟くと、釣りが大好きな柳沢さんと太田さんが乗ってくる。ダイゴさんも釣りをやりたかったらしく、皆で盛り上がる。「じゃあ、仕事終わったら釣りに行こう」とまとまった。「釣り」という目標があると、皆の仕事に対するやる気が変わる。目の色変えてバタバタと仕事して、作業を終わらせる。片付けもそこそこに、釣り具が充実している「ヤックス」に皆で乗り込む。それぞれ安い釣竿を購入し(釣り師匠の柳沢さんがたくさん仕掛けを買ってくれた)、館山旅館前の北条桟橋で竿を出す。アタシは陸釣りが初めてだったが、柳沢さんにご指導いただきコマセ釣りに挑戦。トリック針という仕掛けを使う。仕掛けにコマセを付けて、ゆっくり着底させて竿を微妙に動かす。2、3分で竿を上げて、コマセをつける。これの繰り返しなのだが、暗い海に向かって竿を出しているだけで楽しい。アタリはあるが、小フグだそうだ。全く釣れなかったが、気付いたら11時を過ぎていた。やー、いいなあ釣り! 柳沢さんが「釣れなくても竿を出してる時間がいいんだよ」と言っていた意味がわかった。釣りに夢中になっていて、みな夕飯も食っていない。館山で11時過ぎにやっている飲食店はほとんどない。ウロウロ探し回って、中華屋「正龍」で飯。腹が減って寝付けなそうだったので、アタシもハバネロカレーライスをいただく。「正龍」は夕方から深夜まで営業する、飲み客相手の中華屋だが、味は抜群に美味かった。館山旅館に戻って、寝付くまで『十一人の賊軍』の脚本を読む。
某日、館山で内装仕事。朝早く起きて釣りをしたかったのだが、起きられなかった。残念。ダイゴさんは早朝釣りに行ったので、羨ましかった。昨日の続きで室内左官。現在の現場は、小さなホテル。海も近いし、何より館山駅からすぐなので、車を持たないアタシでも来れる。完成したら、家族旅行に良さそうだな。みな、休憩中はずっと釣りの話をしている。オッサン達が夢中になっていて、なんかイイ。アタシも釣りをしたい。夕方までバタバタ作業して、予定していた仕事は終わらせた。4時半の新宿行きのバスで帰京。車内で脚本を読む。今回、白石組で全員参加の「本読み」を打診された。しかし、アタシは参加しない。何度か書いているのだが、「本読み」で監督の求める芝居がわかってしまうと、どうしてもその意図を意識してしまって現場でそれに沿った芝居をしてしまう。その演出を忘れようとしても、俳優部として監督のオーケーを取りにいく芝居をしてしまうのだ。オッケーを狙う芝居をする事自体悪いことではないし、現場で時間を短縮する合理的な作業だと思うのだが、監督の意図以上の芝居が生まれる可能性がある限り、そこを信じたい。その場でその瞬間に感じたことを素直に体現したい。なので可能な限り「本読み」は参加しない。そんなアタシのワガママなのだが、白石監督やキャスティングの田端さんが理解してくれて参加しなくてもよくなった。本当にありがたい事なので、結果を出さねばならん。誰よりも脚本を読んで、想像を巡らせ、現場で豊かな芝居をしなきゃならん。現場でついた演出にキチンと応えられなきゃならん。プレッシャーはあるが懸命に芝居したい。高速バスは渋滞に巻き込まれ、新宿に着いたのが、7時過ぎだった。渋谷でダヴィ・チュー監督の『ソウルに帰る』の上映を観る予定だったが、間に合わないので、テアトル新宿で大西諒監督『はこぶね』を観る。主演の木村知貴さんがとても良かった。レスイズモアな芝居で、観客の想像を掻き立てていた。内田春菊さんのウンザリするような芝居もよかった。終映後、木村さんに挨拶をしたかったが、明日も早いので失礼した。お客さんもほぼ満席で感心した。
某日、内装仕事で門前仲町。本日は門仲で開催される「富岡八幡宮例大祭」、いわゆる水かけ祭りの準備。我が会社も出店を出したりするので、テントを張ったり、看板を作ったり、水かけ用のでかいプールを設置したり、朝からバタバタやる。コロナがあって以来のお祭りなので街自体がソワソワ浮かれている。しかも今年は本祭り。いいなあ、久しぶりだなあこの感じ。店内で流し素麺もやるので、竹を切り出して設置する。食器も竹から作った。境内やその周りには早くもサンズンがついて、テキヤさんがバイを始めている。町内半纏を来たオジサンたちが準備しつつも、もう1杯引っ掛けてワイワイやっている。ああ、祭りが帰ってきた! 夕方、会社内で揃いのTシャツを作る。シルクスクリーンで好きな柄を印刷する。今年は会社のロゴとクマさんを入れた。さあ、明日から祭り。楽しみだ。夜8時に渋谷へ移動。「フルムーン」で『ソウルに帰る』ダヴィ・チュー監督と会食。『ソウルに帰る』は昨年のフィルメックスで観たが、本当に傑作だった。日本で公開されて嬉しい。ダヴィは『オノダ』のプロデューサーでもあったので、遠藤雄弥くん・カトウシンスケさん・吉岡睦雄さん・井之脇海くん・伊島空くん・澁谷悠くんも集まった。配給会社や通訳さん、ダヴィや澁谷くんの友人のフランスの哲学者も参加する国際色豊かな飯会。店に入ると『ソウルに帰る』主演のパク・ジミンさんもいて興奮してしまった! 彼女の芝居は本当に素晴らしく感動したので、それを早口の日本語で伝えてしまう。パクさんは帰りのフライト時間があったので1時間で帰ってしまったが、彼女と会えてよかった。ダヴィとも久しぶりだったのでワイワイと話す。映画を通じて会話するって本当にいい。ダヴィとは『オノダ』の現場以来会っていなかったが、その間の空いた時間の分も話しているうちにすぐに取り戻せた気がした。ダヴィは「2軒目に行こう」と言っていたが、終電が迫っていたので残念だったが帰る。別れ際にダヴィが「また映画の現場で必ず会いましょう」と言ってくれたので、嬉しかったなあ。ダヴィが監督かプロデュースする映画の現場に呼ばれるよう、精進しなきゃ。
某日、朝から倅を連れて門前仲町へ。富岡水天宮の水かけ祭りだ! 暑さもあってか、雨予報だったからか例年より人出は少ない気がする。倅もこれだけの規模で出店がついているお祭りは初めてだったからか興奮していた。わかるぜーその高揚! アタシも興奮してるもん。会社で出しているフルーツかき氷を食いながら、プールに水かけ用の水を貯める。水澤紳吾さん一家も合流して、水澤ジュニアと倅は、プールでバシャバシャやっていた。子供達が射的やスマートボールをやりたがったので、連れて行って遊ぶ。テキ屋さんも今や空調服を着ながらバイをしていた。昼飯は会社で作った流しそうめん。竹を切り出した本格的な流しそうめんを初体験した倅は、周りが心配して止めるくらい食っていた。いいね、やっぱ美味いよな。午後、富岡2丁目の神輿が出て、店の前にとまる。総出でプールの水を担ぎ手にぶっかける。バケツやボール、ホース、あらゆる器を使って(塗料用のバケツまで動員された)皆で水をぶっかける。最初は遠慮していた倅だったが、やってるうちに興奮してプールに入って水をかけていた。今年は最前線に出ないようにしていたアタシも、結局最前線でバケツを振り回してしまう。着替えがないのに全身ずぶ濡れ。でも、そんなことは関係ないくらい楽しかった。倅は「明日も水かけたい!」と言う。担ぎ手の人に気に入られ、富岡二と染め抜かれた手ぬぐいをもらっていた。夕方、水澤さんと倅と下北に移動。「ふるさと」で荒川良々さんやヨウカイさんと飯を食う。アタシが食えない分、倅が名物のでかオニギリをぺろっと平らげてしまう。良々さんからライブを誘われたが、倅が眠さ限界だったので失礼して帰る。道中、倅は寝てしまったが「明日も水かけ行きたい」と言っていた。見事なお祭り男になってほしい。