某日、猛暑。まったく暑くてやってられない。いつからこんな気温になったのだろうか? 朝からうんざりする。朝はメダカとプランターの手入れ。午前中、倅と共に小学校へ。アサガオの鉢をうちに運ぶ。しかし、アサガオはカレッカレのパッキパキになってしまっている。倅が「毎日、水あげてたんだけどなー」と言うが、2、3日あげなかっただけで、ここまで乾燥するだろうか?とにかくうちで盛り土をして水を与える。昼、カミさんが「ゴリのこと好きじゃないもんね?」と倅に聞く。すると倅は「や、普通だよ」と言っていた。何? 普通って? 好きでも嫌いでもイイけど、普通ってなんか傷つくな。午後、倅をプールに誘うが行きたがらない。仕方ないのでアタシ一人で市民プールへ。フリーコースが空いていたので、平泳ぎとクロールで10往復くらいしていたら、急に肩の付け根の筋肉が攣ってしまう。危なく溺れるところだった。上がると40分くらいしか泳いでいなかったが、帰る。実家に寄って米を分けてもらう。夜、新たに差し込みが届いた『極悪女王』のダフ屋のセリフをさらう。いやー、関西弁は難しい。2時間歩き念仏。
某日、朝からカミさんと言い争い。うんざりする。や、基本的にアタシが悪いんですけど。金も稼がない上に、夏休みのスケジュールを立てられないアタシが全て悪いんですけど。午後、倅とマイケル・ベイ監督『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』を観る。夜、2時間歩き念仏。水澤紳吾さんから入電。セリフに苦労しているらしい。「赤堀さんのセリフは一言一句で入れた方がいいよ」と教えてもらう。ありがたい。
某日、茂木組『G』撮影。朝、倅を小学校まで送って「カフェ・ド・クリエ」へ。山下組『日本対俺』のセリフと、茂木組『G』のセリフをさらう。森達也著『虐殺のスイッチ』を最後まで読む。森さんが今考えていることに興味がある。「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい」という言葉が刺さった。いい言葉だから、タトゥーでおでこあたりに彫りたい。英語と中国語でも彫って、道ゆく人に意識させたい。撮影までまだ時間があったので、池袋へ出てジュンク堂で森達也著『集団に流されず個人として生きるには』を購入。山手線を逆回りに乗って、早速読む。午後、代々木体育館で茂木組『G』の撮影へ。今回はダフ屋のおっさん役。監督の茂木さんとは同い年で、昔から現場を戦って来た仲間だ。今回は志願して呼んでもらった。現場では、色々な組で一緒だったスタッフの方々とヤーヤーする。白石和彌さんも現場に来ていた。ちょうど剛力彩芽さんと唐田えりかさんがオールアップで、ゆりやんさんと村上淳さんも立ち会って拍手していた。アタシは本日1シーンの出演なのに、演出部から担がれて、挨拶する羽目に。なんてこった! そんな事はどうでもよくて、ゆりやんさんも剛力さんも唐田さんも、この役のためにしっかり身体を作っていて驚いた。凄えなあ。淳さんもそのことをとても褒めていた。資金さえあれば日本でもしっかりした作品はできるんだなあ。出演者も和気藹々としていたし、スタッフも雰囲気がよく、良い座組なんだとすぐにわかった。アタシは250人のエキストラさんと一緒にワチャワチャする。全部で4カットだったが、どうせだったら全部映ってやろうと勝手にウロチョロする。白石さんも茂木さんも「仕方ねえな」って感じで苦笑いだった。あっという間に終わってしまう。楽しい時間って短いよな。夜、2時間セリフ念仏。
某日、倅が学校を休む。カミさんはだいぶ参っている。「アンタがうちにいるとイライラするから出てって」とのことなので、朝から「カフェ・ド・クリエ」でセリフ確認。そのまま府中に出て、多摩川沿いを4時間セリフ念仏。気温33度。真っ赤に日焼けする。さすがに復路の途中で、ぼーっとしてしまう。でもやらなきゃだ。昨日、白石さんと話して「体重をあと3、4キロ落とす」と言ってしまった。現在60キロを切ったが、ここからなかなか落ちない。山下組の撮影が終わったら、ひたすら歩いて減量するしかない。50キロ台になるとアバラも浮き出る。筋トレをどうしようか。身体の作り方に悩む。夕方帰って、倅とリングフィット。夜、早めに寝る。
某日、朝、倅を小学校へ送る。そのまま「カフェ・ド・クリエ」でシナリオを読む。午前中、府中に出て、府中ー登戸往復多摩川コースを4時間。セリフはほぼ完璧に入った。赤堀さんの書く脚本は、セリフの独特の言い回しや繰り返しがあり、それぞれに意味があるから一言一句入れた。今回はセリフ量がある上に、撮影が2日しかない。撮影時間も限られているだろうから、セリフの間違えでリテイクは絶対したくない。さらに、大好きな山下組で、共演が赤堀さんと水澤さんという尊敬する先輩なので、絶対に失敗できない。できれば「お、マツーラなかなかやるじゃん」と思われたい。や、そんなに欲をカクといけねえんですがねえ。「イイと思われたい」と願った時点で、もうダメなんですよ。表現にはしる瞬間を見逃してくれるような甘いメンツじゃないですから。肝に銘じろ! 夕方、倅をお迎え。夜、テアトル新宿で『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』の舞台登壇。驚いた。テアトルの客席が満席。脇でちょっと出てた若い男性キャストのファンらしい。名前の書かれた看板みたいなものやうちわを持参して、キャーキャーしていた。アタシ、結構舞台挨拶して来たけど、このキャパが完璧に埋まったのは初めてだったし、登壇中、話していても客の視線を全く感じない事も初めてだった。ファンの方はその男性をずーっと見ているので話しているキャストを見ていないのだ。しかし、普段映画館に来ないような観客こそ、大切にせねばいかん。終演後、片山慎三監督と島田桃依さん、中原果南さんと「みくに丸」で飲む。終電で帰って、1時間だけ歩いてセリフ。珍しく明日からの撮影を考えて眠れず。緊張してんのかな?
某日、山下組『日本対俺』の撮影。そもそも『日本対俺』とはなんぞや? ってとこからですが、大根仁さんが企画した赤堀雅秋さんの一人舞台のタイトルなんです。その幕間に流す短編を今回、山下敦弘さんが監督する。出演は赤堀さんと水澤紳吾さん、アタシの3人。朝、渋谷に集合して驚く。「え? これちゃんとした撮影体勢じゃないですか? てっきり山下さんがアイフォンで動画を回す程度」かと思っていました。撮影照明で中瀬くん・谷さん・高井さん、録音に古谷さんという立派なメンツ。演出部にケイティ。クルー全体で14名という編成。赤堀さんも「こんなちゃんとした撮影だと思ってなかった」とこぼす始末。でもさあ、赤堀さんが脚本で監督が山下さんだったら、そりゃ低予算だろうが参加したい人って多いと思う。撮影現場の千葉まで向かう道中、赤堀さんから「今回はセミドキュメンタリーだから。セリフは忘れてな。エチュードでやるから」と今回の趣旨を伝えられる。ええ?! 想像していなかった言葉に面食らって、思わず水澤さんと顔を見合わせてしまった。一言一句違わず入れてきた身としては「赤堀さん、この脚本はホント面白いからこのままやった方がいいんじゃないですか?」と聞いてみるが「だってセリフになった途端芝居っぽくなっちゃうじゃん。それじゃあツマンナイからさ」と言われる。確かにアタシの技量だと、セリフになった途端芝居っぽくなっちゃうから、言葉を返せなかった。最初は車内のシーン。赤堀さんが軸になってエチュードが始まるが、どうしても脚本上のセリフを言って芝居の流れを作ろうとしてしまう。赤堀さんから「セリフにしなくていいから、力入っちゃってるから」と言われる。エチュード、すげえ難しい! 芝居をしながら流れを作って話を展開させていく事を同時になんか出来ないっすよ! しかし、出来ないからってビビって萎縮したら、アタシが呼ばれた意味がない。腹をくくって、芝居でブレーキをかけたくなった時こそアクセルを踏み込むようにした。もう、事故ってもいい。赤堀さんが修正してくれるだろうし、山下さんが編集でなんとかしてくれるだろう。ここは3テイク撮って終わる。アタシは自分が何をやったか全く覚えていなかった。山下さんが「極論NGなんてないし、全部オッケーだから」と慰めてくれる。2シーン目はトンネル。朝イチの撮影で、なんとなく赤堀さんの意図した芝居が見えてきたから、ここはさっきよりだいぶ落ち着いてやれた。3テイク目で芝居中に泣いてしまう。こんな経験はなかったので不思議だった。ここも3テイクで終了。スタッフの方も楽しんでくれている様子。撮影も順調で、かなり予定時間を巻いて進む。3シーン目は海辺。めちゃくちゃ暑くて陽を遮るものがないので、皆真っ赤に日焼けする。ここはほぼセリフ通りで進んだので、1テイク目でオッケーが出た。山下さんが「今日の撮影は面白かったけど、マツーラは情緒不安定にみえるかもなあ」と言われてしまう。芝居で上げ下げが激しかったからだろう。自分でもコントロールできなかった。山下さん、編集で上手い事お願いします! 夕方には撮影終了して、全体で「福島屋」へ移動。スタッフさんは外観を撮影し、赤堀さん水澤さんアタシの俳優部は終了。そのまま「福島屋」で飲む。エチュードの難しさを話す。赤堀さんから「ビビらずアクセル踏むのはいいけど、これは言って欲しいなってセリフを悉く外したな!」「マツーラは結構かまってちゃんだよ。どうでした? とか聞かないほうがいい」とダメ出し。ただ、「芝居じゃなくセリフを言おうとする瞬間の感覚が、ちょっとでも掴めたらそれでいいんだ」「芝居しながら芝居する意識を捨てるのって、矛盾なんだよ。でもそれが出来るようになって欲しい」と、すごく大切な事を教えてもらった気がする。後半はベロベロになって、「9時には帰るぞ!」って言っていたのに、結局23時過ぎまで飲む。水澤さんを三鷹まで送って、終電で帰宅。
某日、山下組『日本対俺』撮影2日目。11時30分に「福島屋」集合。昨夜はバタンキューで寝てしまった。朝起きて、「カフェ・ド・クリエ」でセリフの確認。芝居じゃなく、セリフを言う感覚を意識する。意識した時点でもう芝居になってしまうのだから、これも矛盾しているのだが。レコーダーでセリフを言いながら電車に乗って、1本乗り過ごす。ああ、やっちまった! こんな日に限って10分遅刻。水澤さんに「マツーラ、お前遅刻なんかしないのに、なんで今日に限って!」と同情される。本日は福島屋を借りて居酒屋のシーンを2つ。普段飲んでいる状況と変わらないからだろうか、フラットにやれた気がする。芝居もほぼ台本通りに進んだが、普段飲んでいる感じでやれたと思う。ああ、こういう感覚なのか。ほんのちょっとだけ、味わえた気がした。予定では夕方までかかるスケジュールだったが、2時前に撮影終了。夕方に終わったら、そのまま「福島屋」で打ち上げの予定だったが、時間が余ってしまった。赤堀さん水澤さんと池尻の「文化浴泉」でひとっ風呂浴びる。1軒だけ軽く引っ掛けて、5時から「福島屋」で飲み始める。赤堀さん、水澤さん、山下さん、ケイティー、荒川良々さんが参加。バラシ後に中瀬くん、谷さん、高井さんも合流。みんなが「撮影楽しかった!」と言ってくれたのでよかった。「毎年やりたい」「定期的に撮ってシリーズ化しよう」との意見も出た。赤堀さんは「金にもなんない事なのにこんな豪華にやってもらえて嬉しい」「皆が楽しんでくれたなら何よりです」と喜んでいた。まあ、酒が入ればいつもの飲み。良々節が炸裂して皆で大笑い。赤堀さんはスタッフの方に席を移動して、皆を労っている。赤堀さんも良々さんも山下さんも、本当に気遣いのヒトだ。優しくて気が狂っている。このヒトたちがなぜ可愛がってくれているのか分からないが、色々な事をたくさん勉強させてもらっている。ありがたい。盛り上がって終電で帰宅。
某日、家族旅行で新潟の村上・瀬波温泉へ。倅が小学生に上がったので、交通費も子供料金がかかるようになり、カミさんが「交通費だけでもバカにならないんだから! なのに収入も上がらないし、税金は上がってるのにどういう事よ!」と嘆く。ここは現政府がいかに国民を蔑ろにしバカにした政治をしているか教えるチャンスだと、詳しく説明するが「アンタは屁理屈ばっかこねくり回して話が長いしツマラン」と言われて無口になる。大宮から新幹線で新潟へ。新潟から特急で村上。村上の駅を降りると炎天下。もう、動かなくても汗が出る。減量中だがこの旅行中だけはチート・デーで食事制限を解く。いやあ、自分に甘いなあ。昼は駅前の食堂「石田屋」で倅の好きなはらこ丼を食う。いくらの醤油漬けをはらこって言うみたいだ。久しぶりのコメがクソ美味くて、あっという間に平らげる。この美味さに「減量」という意識のタガが外れてしまった。食後、お土産を買いに「千年鮭きっかわ」へ。クソ暑い日の一番暑い時間に延々歩かされる。カミさんの「歩いて10分くらいだから」という言葉に騙された。10分歩いて倅も顔が真っ赤になってフラフラしているので、「タクシー呼ぼうよ」と提案したが「タクシー代がバカになんないの! 歩いて行ける距離なんだから文句言わず歩きなさいよ!」と言われる。これ以上何かを口にすると、必ずアタシの収入批判に繋がるので、倅と黙って歩く。さらに20分くらい歩いてようやく「きっかわ」に到着。鮭が1本づつ吊るされて乾燥している様は壮観だった。倅が結構でかい声で「ここ、鮭くせえ! おえー」と連呼するので、思わず怒鳴ってしまう。お土産を買ってバスを調べるが、日曜日で運休。カミさんがブツブツ言っていたが、倅と連帯し「もう歩けない」コールで、ようやくタクシー乗車を勝ち取った。「この2000円はアンタの口座から差っ引くから」と、告げられてしまう。今回の宿泊は「大江戸温泉物語 汐見荘」。「チェックイン前に荷物を預けられるから」ってカミさんは誇らしげに言っていたが、行ってみると荷物は預かってもらえなかった。ここで不平を言ってもヤブヘビなのでヘラヘラしておく。荷物を抱えながら海岸に出て、海に入る。人出も少なく、海は濁っていたが海岸はキレイ。夕方まで倅とチャプチャプする。ここでも俳優部としてイヤラシイ根性が働き、次の白石組の舞台でもあるこの辺の方言に聞き耳をたてる。嫌だねえ。せっかくの旅行なのに、そんな貧乏根性を出してしまう。「あ、結構東北の訛りに近いな」なんてバカじゃねえの! ホテルに戻って、部屋から海岸に沈む夕日を眺め、夕食。バイキング形式で大体こういうホテルのバイキングって貧乏くさくて飯もマズイと思っていたが、ごめんなさい! ここは素晴らしかった! 刺身からステーキ、中華、洋食、全てが揃っていて作りたてで、デザートも充実。いや、驚いた。減量のタガが外れたアタシは、バカみたいに食いまくってしまう。キスの天ぷら、イカの握り、肉まん、ステーキ、美味しゅうございました! 久しぶりに腹がパンパンになった。夜、倅と温泉に浸かる。ここもお湯がいいし、サウナまであった。風呂から出るとアイスも無料。至れり尽くせりで怖くなる。このまま太らされて出荷されるんじゃねえのか? って疑ってしまう待遇だ。部屋に戻ると、流石に疲れたのか倅もアタシもすぐに寝てしまう。