某日、内装仕事が休みだったので、朝、小学校に倅を送る。倅は食事自体があまり出来なくなってちょっと痩せてきた。カミさんが心配して手を尽くしている。アタシは楽観的に「極限まで腹が減ったら食うし、心配しすぎるな」と伝えるが、「腹を痛めて産んだ母親と無責任な父親の差だ」と相手にされない。何事もバランスだ。そのまま実家で伸也と『浪子回頭日記』の作業をする。映画無料鑑賞券の話もする。村岡伸さんと孫さんと電話で話す。監督の保中さんと撮影のタオちゃんに『スキマのオヤジ』の感想を電話。倅が学校から帰ったので、一緒に帰ってスピルバーグ監督『インディ・ジョーンズ 失われたアーク』をDVDで観る。新作インディに向けての予習。夜、新宿へ。西新宿の「タカマル鮮魚店」で東映の高橋さんと飲む。魚が美味い店で驚いた。『賊軍』の話や映画界の話をヘラヘラと。佐藤五郎さんも合流して、2軒目は「加賀屋」。バカバカしい話をマジメにやった。
某日、午前中、倅とDVDでスピルバーグ監督『魔宮の伝説』を観る。心臓を抉り出すシーンで、倅は怖がってしまう。「映画だから全部作り物だよ」「じゃあ、あの血も嘘なの?」「あの血も嘘だ」「映画は全部嘘なの?」と、難しい質問。でも「全部が嘘じゃないんだ」と答える。全部が嘘だと思われたら悲しい。昼、伊藤くんがうちに倅の本棚用の什器を届けてくれる。こっそり作業中に塗装して仕上げた棚。本棚があると、本が更に好きになると思う。午後、パソコンのメールに某金融カード会社からメールが届く。「更新手続きしないとカードが使えなくなるから、至急連絡されたし」との事。こりゃ、一大事とカミさんに相談したら「楽○カードの審査すら通らねえヤツが持ってもないカードの心配すんな!エロサイトばっか見てるから詐欺メール来るんだ!」と引っ叩かれた。確かにアタシはカードが作れない身分だ。でも、心配になるじゃないさ! 危うく詐欺られるところだった。夕方、カミさんのママチャリの修理に東村山の自転車屋「サイクルスポット」へ。店員さんがとても親切な方で、前輪のタイヤ交換、ブレーキ交換、変則ギアの修理をやってもらう。待っている間、「マクドナルド」で日記の修正作業。夜、リングフィット40分。体重63キロ。『浪子回頭日記』のロゴを版画で掘るが、失敗。イメージしていたモノと、自分の手で作られたモノの差異に我慢できなかった。オイ! 偉そうに作家気取ってんじゃねえやバカ野郎!
某日、朝、倅から父の日のプレゼントで「手形の絵」をもらう。カミさんはアマゾンギフト券をくれた。ありがてえなあ。午前中、倅が通っていた保育園のウッドデッキの補修作業。デッキ材を外すと大量の土が詰まっていた。デッキ材を水洗いして乾燥させる。昼前に職員の佐藤さんが手伝いに来てくれた。せっかくの休日なのに申し訳ない。二人で土間に溜まった大量の土を掻き出す。午後、デッキ材をオービットサンダーで磨き、油性のキシラデを塗装。クソ暑い中、日差しを遮るものがないので、真っ赤に日焼けした。夕方6時に作業終了。まだ補修が必要な所があるので、あと2、3回は作業しないと。夜、倅と親父と3人で地元の名店お好み焼き屋「竹辰」へ。倅はたこ焼き(抜群に美味い)、親父と俺は、焼きそば(抜群に美味い)、豚玉(抜群に美味い)、キムチ玉(驚くほど美味い)を食う。ひっきりなしにお客さんがやって来て、おばちゃんと娘さんはてんやわんや。なにか特別なことをしているわけでも、奇抜な食材を使っているわけでもない。でも、昔っからある普通のザ・お好み焼きで、流行りなんか一切無視して焼き続けたおばちゃんの戦後から続く伝統のぺったんこお好み焼きは、地元の住民を虜にしているのだ。素晴らしい。時を経て油を吸って黒ずんだ鉄板も、クーラーの全く効かない店内も、おばちゃんの職人的お好み焼きの美味さを引き立てている。「竹辰」が我が町にあることがとても誇らしい。
某日、内装仕事で工房。通勤読書は色川大吉著『ある昭和史』。伊藤くんと工房に溜まりまくった金属ゴミを金属屋に捨てにいく。クーラーの内機・外機を2組、テレビ台のセット8組、Fケーブルをガラ袋1体、雑金属をガラ袋20体くらい。ハイエースの荷台がパンパンになった。金属屋では中国人のおじさんが金属の種類を見極め、「ここにクーラーだけ出して!」と指示をくれる。車重をダイカン場で計量しながら、指示された場所に金属を降ろす。ユンボがひっきりなしに大量に積まれた鉄筋をダンプに積んでいて、騒音がすごくて大声で叫ばないと言葉が届かない。結果、作業員はみな大声で叫んでいて、一種異様な雰囲気になっている。怒っているわけではないが大声で叫んでいるので、ハタから見たら常に喧嘩しているように見えるだろうな。アタシはこの金属屋の雰囲気が好きなので、機会があったら働いてみたいと思っている。これでだいぶ工房も片付いた。引き渡しのラッシュがひと段落して、仕上げ作業がある現場も今週はない。仕事がないので明日から空くことになる。しかし、それをカミさんに伝えたら「私が働いてるのにブラブラしてんじゃねえ、仕事しろ!」と怒られる。日雇いのアタシは「仕事がなけりゃあ呼ばれないのヨ」と説明するが「だったらヤマザキパンでバイトしろ穀潰し」と怒鳴られる。それがキッカケで口論になってしまう。日雇いは仕事がなけりゃあ仕方ねえのよ。わかってちょうだいませ!
某日、無職渡世。カミさんがプリプリしながら在宅で仕事をしているので、倅を学校まで送って「カフェ・ド・クリエ」へ避難する。この喫茶店は喫煙所があるし、若い客が少ないので落ち着いていて好きなのだ。白石和彌組『十一人の賊軍』の準備稿を読む。今月は撮影もないので、脚本を読んで時間を潰すことすら満足にできねえや。まあ、骨休みだな。昼、うちに戻って倅が作った工作品を額装してトイレに飾る。こうやって展示するとちょっとした現代アートみたいでなかなかイイじゃない。感心しているとカミさんが一切こっちを見ずに「金になんないことばっかやってるな、穀潰しが」と褒めてくれる。午後、先日途中でやめてしまった『浪子回頭日記』のタイトルを版木に彫る。なかなか思うようにいかず。版木からゴム板に素材を変えて、新たに彫る。平刀や切り出し刀の使い方のコツがわかってきて、細かい文字も彫れるようになった。何事も数やらなきゃダメだよな。夜、『松浦祐也』と名前も彫り出して、色々な種類の紙を準備して版画を刷る。この刷り出し作業は楽しい。紙の種類はもちろんのこと、インクの乗せ方、刷る力加減で表情がぜんぜん変わるのだ。納得がいったモノを写真を撮って伸也に送る。伸也がトップページに載せてくれる。グーグルの広告審査も申請したそうだ。さあ、いつから皆様に公開できるでしょうか。
某日、無職渡世。朝、下北沢へ。電車が激混みで苦痛。9時からアトリエ乾電池で『朝の朗読会』を観る。柴田鷹雄くんが角田光代さんの『枝豆についてのエッセイ』を、岡森健太くんが宮本輝の『泥の河』を、鹿野祥平くんが町田康さんの『男の愛』を朗読した。やはり勉強になる。脳髄を揉む時間になるんだよな。終演後、西本竜樹さんと出演者の3人でタバコを吸いながらおしゃべり。アトリエには喫煙所もあるから最高だ。アタシもいつか漫談で朗読会に出てえなあ。郵便局でたくちゃんに振り込みをして、新宿へ。本日はサービスデーだったので、残り少ない金を奮発して映画鑑賞日にした。まず1本目はテアトル新宿で、阪本順治監督『せかいのおきく』を観る。スクリーンで『福田村事件』の予告が流れてちょっと意識してしまい恥ずかしかった。『せかいのおきく』、阪本監督は常に映画で闘っている。めちゃ良い映画だったから、もっと話題になっていいのになあ。ここまでうんこをリアルに映した映画って思い付かない。傑作『糞尿譚』よりも、匂いが映っていた。美術が素晴らしいのは、企画から原田満生さんが入っているからだろうな。劇中で池松くんが「汲み取りサボってやろうか」と言っていたが、あの時代にサボタージュが語源のサボるって言葉はあったのかな? そんな細かいことは映画の本質に関係ないけど! DVDが出たら買っちゃうわよ。傑作! 2本目は武蔵野館で二ノ宮龍太郎監督『逃げ切れた夢』。光石研さんが素晴らしい俳優だって事は重々存じておりましたが、今作は光石さんの魅力全開で感心しっぱなしだった。視界に入った事象に対して素直に反応する身体性に嫉妬。松重豊さんとの喧嘩のシーンは、もう垂涎モノだった! 客入りも良く、年配の観客が多くて驚いたナ。二ノ宮作品がシニア層に届いたのはいい事でござる! 渋谷に移動して、ヒューマントラストシネマへ。3本目は新人シャーロット・ウェルズ監督『アフターサン』。何かを予感させる緊張感が続く映画で、観ていて「次のカットでなんだか大事件が起きるんじゃねえか」って想像してしまいドンドン引っ張られてしまった。繊細な父親の行動に対して、全く繊細じゃないアタシは理解できない事があったが、その繊細さに共感するヒトは多いのだろう。父親役のポール・メスカルも、娘役のフランキー・コリオも過剰な所がない芝居がよかったなあ。ラストの解釈がよくわからなかったが、その余白が魅力なんだろう。4本目は御大ポール・シュレイダー監督『カード・カウンター』。主演がアタシの大好きなオスカー・アイザックだったから、メチャクチャ期待していたんだけどなあ。後半まで凄え面白く観ていたのだが、ラストの復讐に疑問を持ってしまった。個人を対象にするんじゃなくて、自分を嵌めたシステムそのものに復讐の矛先を向けて欲しかった。キッドの仇討ちに収束したら、何も変わらない。や、何も変えられないってことを御大はやりたかったのかもしれないが、せめて映画内では現実には起こり得ない事を描いて欲しいんだよなあ。でも、イイ映画なんだから! 5本目はこれまた新人ローラ・キヴォロン監督『ロデオ』。予告を観ただけで気になって、内容を知らずに鑑賞。(アタシは基本的に一切映画の内容を知らずに映画を観たい)破滅型の移民の少女がバイク窃盗団に入ってって話なんだけど、傑作ですわ。良かった。バイク映画が好きなアタシ的にはTシャツノーヘルで公道を疾走する主演の姿に気持ち良くなる。もう彼女が単車に乗って風を浴びているだけで大満足。主演のジュリー・ルドリューがトンデモなくイイ顔をしている。日本の俳優部にはいないタイプの顔。すきっ歯で三白眼で、常に不満そうな目つき。まさに今作にぴったりな俳優。ただ、劇中で搾取され続ける女性(主演も含め)を出したからには、主人公の死で映画を終わらせて欲しくないとも思った。まあ、ああいう破滅型の人間にはハッピーエンドは迎えられないんだけどさ。今日は5本とも満足する映画で珍しい。映画館の神様が「金もねえのに無理しやがって。せめて満足する作品を観せてやろう」って選んでくれたのかもしれねえなあ。
某日、門仲で解体仕事。焼き鳥屋のカウンター天板(4メーター級)を解体して取り出す。化粧板を開くと、釘ビス混合のしっかりした作りになっていて壊すのに難儀する。しかし、昼前に抜き出して、天板を製材所に運んで加工を頼む。大型冷蔵庫を工房まで運搬。今日はこれしか作業がなかったので、昼上がり。川瀬陽太のおじさんをつかまえて、新宿でお茶をする。昨日観たポール・シュレイダー監督『カード・カウンター』の解釈について激論。川瀬さんの見方を拝聴して納得するところもあれば、納得いかないこともある。しかし、映画ってすごいや。こんな新宿の場末喫茶店でおっさん同士で映画の感想を言い合ってんだもん。当のシュレーダーだって極東の片隅でそんな事になっているなんて知りもしめえて。川瀬のおじさんから『魂の行方』、『キラースナイパー』、『バグ』、『スパイダーバース』をお勧めされる。おじさんが勧める映画は当たるから、観なきゃなるめえ。2人で仲良く新宿DVD漁りの旅にでる。川瀬さんが「マルイの『駿河屋』には結構拾いモノがある」と教えてくれたので、早速行く。マルイなんかにDVDあるのかねえと、半信半疑だったが、アニメグッズに囲まれた一角にありましたよDVD棚が。漁るとなかなかイイ品が出てくる。値段が安いものを発掘し、ダニー・ボイル監督『トレインスポッティング』(400円)、ロバート・アルドリッチ監督『カルフォルニア・ドールズ』(1000円)、ジャック・ニコルソン監督『ゴーイング・サウス』(1300円)、イーストウッド監督『スペースカウボーイ』(安さに騙されてダブってしまった!300円)、デイヴィッド・クローネンバーグ監督『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(600円)を購入せり!散財。アタシの財政状況が大ピンチなり。おそるべし駿河屋。夜、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』を観るが寝てしまう。