某月某日、K組『A』撮影で台湾・嘉義。昨日は朝の5時過ぎに寝たのに、10時にベッド横の電話が爆音で鳴って飛び起きる。レトロな電話機だったので飾りだと思っていたが、まさか現役だったとは。寝ぼけながら対応すると、フロントから英語で「チェックアウトの時間だからサッサと部屋を出ろ!」と言う。マジかよ、今日も撮影あるのに。わざわざスタッフさんに連絡して起こすのも悪いから、フロントに行って明日まで宿泊延長の旨をスーパーブロークンなんちゃって英語で伝える。不安だったので「宿泊延長、我出立明日」と書くと「オケー」と理解してくれたようだ。スタッフルームに弁当が届いたので、豚肉煮込みぶっかけ飯をゲットして食べる。どう考えても台湾飯は美味い。せっかく減量していたのに、台湾に来てからは普段通り食べてしまっている。我、意志薄弱。帰国時体重計量的恐怖。部屋に戻って、カミさんと倅にスカイプ。そのまま夕方まで寝る。こんなに堂々と昼寝できるのも今日までか。17時に衣装に着替えて、台湾キャストの方の車に乗せてもらって撮影現場へ。なんでアタシだけ撮影車ではなく、台湾キャストの方の私用車に乗せてもらえたのかよく分からん。しかも着いたら誰もいなくて(場所を間違えたらしい)、別の台湾キャスト?の原付バイクに乗せてもらって裏路地を彷徨う。誰だかわからん人の原付に乗りながら、異国の寂れた裏路地をウロウロしていると「もうこのまま撮影なんか忘れて、ここで生活するのも悪くねえなあ」とか思ってしまう。よくわからん人が懸命に聞き込みをしてくれて、ようやく撮影現場に着く。まだ前のシーンを撮影していたので、ホッとした。近くに住む酔っ払った台湾のオジサンに話しかけられて、お家に招かれる。オジサンは台湾語、アタシは日本語で会話。分からん時は筆談。漢字を使うとだいたい意味が通じる。「我在日本、我、電影演人」と書いたら笑って、ペットボトルに入った塩ピーナッツをくれた。オジサンと部屋でタバコを吸ってたら、奥さんに怒られたので退散する。夕飯にピータン粥弁当を食う。ハオチー。美術部の阿部ちゃんが近くのノースフェイスに買い物に行くというので、Kさんを誘ってついていく。Kさんが「昨日頑張ってもらったから、なんか欲しいもの買いますよ」と太っ腹な事を言ってくれたので、有り難く肩掛けのバックを買ってもらう。謝謝、巨匠!ワンシーン撮影してK組『A』はオールアップ!スタッフの皆様、シンクーラー!ありがとうございました!ホテルに戻って、Kさんとおしゃべり。スタッフルームでクルーの方々とおしゃべり。別れ難くて部屋に帰りたくない。本隊は残り数日撮影がある。皆さま、我希望你是最好的!12時近くまで油を売って、部屋に戻りパッキングする。嘉義市長さんから手紙とお土産をいただいた。台湾タイルが入っていて嬉しい。台湾は雨季に入ったらしく、夜中スコール。バタバタと窓を打つ雨音が妙に哀愁の念を誘う。
某日、K組『A』撮影で台湾・嘉義。7時起床。本日帰国故最後日的在台湾。朝、シャワーを浴びてタバコを吸いに降りると、メイク部のみなさん、衣装部のみなさん、主演の某くん、Nさんと会う。皆に挨拶をする。演出部バオガイさんが「アンタと仕事出来て楽しかったよ。別れが悲しいわ」と言ってくれる。ありがてえ。9時にホテルを出て、嘉義駅までプラプラ歩く。もうアタシくらいの国際俳優になると、アテンドなんかつかねえんだから! 途中でスーパーに寄り、張さんに勧めてもらったベッコウ飴の中に干し梅が入ったキャンディを買う。昨日、Kさんに買ってもらった肩掛けバッグがお土産を入れるのに重宝している。リュックはパンパンだからもう入らないのだ。嘉義駅でバスに乗り、高鉄の嘉義駅まで。昨日から台湾は大型連休に入ったらしく、街もバスも人出が多い。台湾制作部のスマイル曰く「台湾人は旅行が好きだから、連休には必ず出かける」そうだ。確かに公共機関がどこも混んでやがるな。高鉄嘉義駅から台北まで新幹線。ここも車内は満員で通路には人が立っていた。移動中、書けなかった日記を書く。台北駅で「微風」というデパートに入る。太陽餅やナッツのタルトをお土産に買う。台北駅の周りを彷徨くが、もう金もないし荷物が重いので、地下鉄で松山空港へ。空港カウンターで搭乗手続きをして、手荷物検査へ。ここでまさかの事態が起きた。守屋文雄さんへ買ったお土産の蝦醤2本と、伊藤くんのお土産に買った腐豆腐の瓶詰2本が没収されてしまう。液体の入った瓶は内容物が150ミリリットル以上はダメらしい。なんてこった! 守屋さんと伊藤くんには悪いが、ここは諦めてもらうしかない。出発まで1時間半、読書をして過ごす。今更だが、手荷物としてではなく、荷物を預けてしまえば瓶詰めは没収されなかったんじゃないかと後悔する。飛行機に搭乗して3時間で羽田へ。途中食事が出されたが、特別食にする手続きを忘れていて、普通の機内食を食べる。ちなみに出されたなんて事はないコッペパンが妙に美味かったのだが、あれってお代わりできるのかな? 羽田から所沢行きの高速バスが出発したばかりで、次が1時間後。仕方ないので池袋までバスで行き、電車で帰る。さっきまで暑い台湾だったので、日本の寒さが身にしみた。ゲロだらけの池袋の路地裏でタバコを吸っていたら、すでに台湾が懐かしく感じる。数時間前までいたのにな。うちに帰るとカミさんも倅も寝ていて、タロ・ムッちゃん・チョメの3匹の猫が出迎えてくれた。荷物を解いて洗濯をする。請求書を書いたり、何だかんだしていて全く寝れなかった。
某日、5時起床。一睡もせず。そのまま内装仕事のために門仲の工房へ。台湾帰国後すぐに内装仕事を入れるのは、ゼニがないから。働きたくて働いてるんじゃねえや。工房で伊藤くんとごーいち(嶺豪一くん)にお土産を渡す。ハイエースに乗り込んで、箱根の建築現場へ。今日は、セメント、砂、砂利を200体近く荷揚げする。急な斜面を20キロある砂を抱えて何度も往復しなきゃならない。昨日まで台湾だったんだぞ! というか、アタシもう42歳だよ! こういう荷揚げは卒業させてヨ。しかも仕事内容を知らなかったので、ビーサンだよ。勘弁してくれ! 10時までひたすら斜面に足を取られながら、エッチラオッチラ運ぶ。こんなんじゃ夕方までかかっちまうよ。しかし、人間って素晴らしいね。自分が楽をするために、必死で解決策を考えるの。一服しながら頭をフル回転させて、アイディアを思いつく。プラベニをつなげて道を作り、斜面を滑らせて下まで流してしまえばいいのだ。名付けて「シューター大作戦」。ごーいちと伊藤くんに説明し、早速シューターを設置。穴があって跳ねてしまうので、穴を砂袋で埋めて修正。残りの材料を全て滑らせてしまう。作戦は見事に功を奏し、昼過ぎには終わる。こうやって人間は重労働から解放されるために頭を使って進化してきたのだな。ただ、砂運びは重労働で、体がバッキバキになる。昼飯は抜いて(台湾で食事制限を全くしなかったので体重が戻ってしまった)工房へ帰る。夕方、うちで倅にお土産の台湾産ポケモンカードを渡す。嬉しがっていてよかった。倅は今日から学童保育に参加。夜、実家に台湾土産を持って行く。親父から井原忠政著『百人組頭仁義』を渡される。「早く読んでAさんに送ってあげろ」との事。
某日、内装仕事で門仲。通勤読書で森達也著『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』を読み始める。午前中、東京駅の丸ビルに什器搬入。しかし、ゼネコン現場で管理が厳しく、作業靴を履いていないビーサンのアタシは入場できず。トラックで寂しく待つ。午後から工房でソラヤ用の什器制作。伊藤くんとごーいちと3人で作業。昼はサラダ。台湾ロケで制限なく食ってしまい、体重がだいぶ戻ってしまった。なんてこった。薄々感づいてはいたが、体重計がないのをいいことに見て見ぬ振りをした報いだ。意志薄弱なアタシに乾杯! 夕方まで作業して帰る。本日は倅の7歳の誕生日。お寿司とアイスケーキでお祝い。(ここでまた食ってしまった)カミさんがプレゼントにパソコン用の「マインクラフト」を渡す。カミさん曰く「これはプログラミングの勉強になる」らしい。まあ、アタシみたいにパソコン音痴だと現代生活は困るだろうからなあ。早速「マイクラ」やってみるが、キーボードを押して操作するので難しい。ゾンビに何度もやられて、何もできないが倅は喜んでいた。
某日、午前中、カフェドクリエで高杉組『シガテラ』のシナリオを読む。原作漫画は昔、読んでいたのでなんとなく雰囲気のイメージはあるが、文字面で読むと印象が変わるな。昼、岩井俊二組『キリエのうた』のアフレコで赤坂へ。1年ぶりに岩井監督と会う。アフレコは苦手だし、映像を見るのも1年ぶりだったが、すぐに感覚が取り戻せた。岩井組のアフレコはまた独特で、まず、ヘッドフォンからは途切れる事なく波音が流されている。2行くらいのセリフ分の映像を2回流して見て、3回目が無音で本番。それを繰り返して行く。1発オッケーが続いて、自分でも意外だった。途中、伝説の「森のクマさん」歌唱シーンがあったが、そこはアフレコで全く別のセリフを差し込む。オッケーテイクを確認のため流すのだが、個人的には現場音の方が芝居はしっくりするなあ。予定より2時間早く終わる。最後に宣伝用の歌の朗読を収録。プロデューサー紀井さんが顔を出して、岩井監督とスタッフの方々と飯に行く。減量中なので飯を遠慮すると、紀井さんが「遠慮せんで食ったらええがな!」「や、紀井さんの映画で減量してるんですよ!」「あ、アレか!」「そうですよー」「まあ、ええがな!」よくねえって。ホテルのエライ高い飯を出されたが我慢する。岩井さんと勝さんの『新・座頭市』の話で盛り上がる。岩井さんは高校生の頃、放送を楽しみにしていたらしい。オススメは『冬の花火』だそうで、勝さんと宮崎駿さんの少女趣味性は同じなんだって話を聞く。『紅の豚』と『冬の花火』の構成は似ていて、観たら驚くよと言われた。紀井さんからは『社長たちの映画史』を勧められた。岩井組の完成を楽しみにしていますと伝え、別れる。そのまま赤坂にある我がバードレーベル・ディケイドの事務所へ。新しいマネージャーさん2人と会ってご挨拶し、作業部屋でフリーペーパー「フライングプレス」に掲載される松本佳奈監督への手紙を書く。書き終わると、ちょうど社長の佐伯さんが戻っていて、ひとしきり映画談義。夕方、帰る。倅とスイッチでマリオ。夜、班長さんと電話。
某日、倅の小学校入学式。朝から倅はナイーブになっていて無口。お袋がお赤飯を届けてくれる。台湾土産と一緒にお祝いをいただいた久保田さんに持って行く。倅もカミさんもアタシも綺麗めな服を着て、我が母校の小学校へ。倅は道中、あまり喋らず。そりゃそうだよなあ。初めての学校だもんな。体育館の前で会場を待っていると、同じ保育園や幼稚園の子同士はキャッキャしている。倅は俯いてカミさんのそばから離れない。組と担任の先生が発表されて、倅は上級生に連れられて教室へ。アタシとカミさんは体育館で待つ。式が始まり、起立を求められたので立つ。すると国歌斉唱。なんだよ、だまし討ちじゃねえか。モチロン歌いたくねえから座ろうとしたら、カミさんに腕を掴まれて「あんたの式じゃないんだから、大人しくしてろ」と鋭く釘を刺される。や、これは思想信条の問題だからと座ろうとしたのだが、爪を立てて離さない。カミさん、怪力なり。結局座る前に終わってしまう。なんだかなあ。気分悪いや。倅はしばらく大人しくしていたが、在校生の歌が終わると隣の席の子とヒソヒソ話を始める。校長の話も終わって、来賓の挨拶になると、倅を中心に5、6人の子たちが話し始めて周りの女の子に「静かにしなさいよお」と怒られていた。まあ、そんくらいじゃなきゃな。写真撮影をして帰ると、倅は緊張から解放されて饒舌になっていた。卒園した保育園に顔を出すと、園児に先輩風を吹かせる倅。さっきまでのしおらしさはどこ行ったんだ? 仕事帰りに寄ってくれた義父と飯を食いに「とんでん」へ。倅は2日続けて寿司を食っていた。うちに帰るとアタシはカミさんに引っ叩かれながらも昼寝してしまう。夕方起きて、倅とスイッチでマリオ。井上さんから連絡。永江組のオファーあり。また地方合宿なのでカミさんの機嫌が悪くなる。夜、川瀬さんと電話で話す。『シガテラ』の監督の高杉さんは、瀬々組の演出部だった高杉さん。やっぱりそうだったか。テレビドラマだからって断らないでよかった。
某日、倅は咳が出て風邪気味。登校2日目だが、早退するそうだ。新たな環境になって大変なんだろうな。午前中、カフェドクリエで高杉組『シガテラ』のセリフ。相手がいる会話ではなく、独白ばかりなので暗記が必要。高杉組の衣小合わせで調布へ移動し、井上さんと待ち合わせるが、約束の時間まで1時間あったので喫茶店に行くも満席。仕方ないので駅前のスロット館でマイジャグを打つ。2千円でレギュラー2回引いて、飲まれ切る寸前にペカってビッグ。50回転する前に2連チャン。すぐに3回目が引けそうだったが約束の時間になってしまったので後ろ髪を引かれつつ、台を離れる。9000円勝った。余り玉で井上さんの倅にトミカをもらう。井上さんと日活のカフェで近々のスケジュールを打ち合わせて、雑談。今回の監督である高杉さんが顔を出したのでそのまま作品の打ち合わせ。高杉さんとももう長いな。城定組のVシネ時代から一緒だもんな。今回の役のイメージを聞いて、衣装合わせ。今回は原作のビジュアルに寄せたかったのでカツラを用意してもらったのだが、なかなかいい。さあ、現場が楽しみだ。帰りがけに班長さんのうちに寄って、台湾土産を渡すつもりだったが留守。お土産をポストに入れておく。地元に戻って、島忠でメダカの餌や倅のアクエリアスを買って帰る。倅は咳が辛そうで、夕方一緒に寝てしまう。ごーいちから電話。夜、セリフ。体重67・75キロ。いぼ痔が再発。まだ大豆くらいの大きさだが痛い。