某月某日、内装仕事で門仲の工房へ。通勤読書で稲泉連著『本を作るという仕事』を読み始めるが、面白い。これはいい本なり。校閲・校正や印刷など、知らない仕事が多く興味が湧く。朝、周平さんと話して、人工代を上げてもらった。現場仕事の日はプラス3千円。工房作業は据え置き。これでだいぶ助かった。周平さんが渋るようなら「保険料が払えねえ」とか「倅に米を食わせてやりてえ」とか泣き落としにてでもと思ったが、あっさりと「いいよ」と言われ、逆に拍子抜けした。まあ、これで家に収める金もちょっとは増やせる。ありがとうございました!本日は恵比寿の飲食店の什器造作。昼飯は抜き。2月からは減量ペースを上げるため、夜1食だけでやっていく予定だ。夕方まで作業して、祐天寺へ。片山慎三組『A』の衣小合わせ。会場に行くとテイ龍進さんがやっていて、久しぶりにお会いする。テイさんから「マッチャン、最後に会ったのは、多分コロナ前だから4年ぶりだよー」と言われてハッとした。確かにそうかもしれないな。同じ事務所でも撮影現場で会わなきゃなかなか会う機会がないもんな。衣装合わせでは撮影・池田さん、照明・舘野さんのコンビは変わらずだが、衣装・メイクさんが初の方だった。衣装も何パターンも着せてもらい、色々と探っていた。急遽、軍人の役もやることになって(事前に話なんかなくホントに急な話だった)、軍服も合わせる。ゲートルも巻いたのだが、『オノダ』で連日巻いていたから、体が覚えていて無事に巻けてホッとした。今回は台湾ロケ。実際に日本が占領統治していた場所で、旧軍の軍服を着るのは気が引ける。まあ、仕事だわな。片山さんから「ちょっと痩せましょうか?」なんて言われる。監督から痩せろと言われりゃ減量するし、太れと言われたら増量しなきゃならん。でも、軽く言ってくれるよな。いいぜ、やってやらあ。池田さんが丁寧に衣装写真を撮ってくれて、舘野さんは照明をあててくれる。『さまよう刃』から恒例の写真撮りだが、気合いが入る。うちに帰るとカミさんの第一声が「おかえり」でも「お疲れ」でもなく、「年金の口座引き落としができなかったって手紙来てるぞ!さっさと払っとけ!!」だった。そんなにアタシの老後を心配してくれるなんて、なんと優しいカミさんだこと。夜、肛門が痛むので触診すると、イボ(大豆くらい)が出ている。参った。うつ伏せになっていても痛む。押し込みたいが痛くてできない。どう寝たら痛くないか探るが、どう寝ても痛い。うつ伏せで大人しく本を読んでいたらチョメがケツの上に乗ってきて、いつも通りフミフミするが、前足がアタシの秘穴に突き刺さって、悲鳴を上げてしまう。
某日、比喩ではなく「ケツの穴が爆発しそう」な痛みで起きる。腰痛はしょっちゅうなので経験的に力の入れ具合や体勢で、痛くない方法を探る術がある。しかし、イボ痔はどう動こうと、や、ジッとしていてもずーっと痛いのだ。ここまで痔が痛む経験は初めて。歩き方も内股で小幅になってしまう。そんな爆弾を抱えながら、内装仕事で門仲。電車内で立っていても痛いし、座っても痛い。本を読んで気を紛らわせる作戦も功を奏さず。什器製作中も、もちろん痛い。痛みに波があるわけではなく、ジーンと重い感じで痛みが常にある。あまりに痛いので、薬局でボラギノールを買う。軟膏と座薬があって、座薬は怖いので軟膏を選ぶ。黄色いAと、うぐいす色のMがあって迷うが、恥ずかしくて店員さんに質問できず、黄色のAを買う。すぐに軟膏を塗ろうとして、重大な事実に気付く。イボが昨夜より肥大している。たぶん、そら豆大だ。衝撃だった。こんな肥大するのか。昼はミヨねえにお願いして、減量用のチキンサラダ。6時まで作業して帰る。ニンゲン、肛門にイボが出来ただけでここまで憂鬱になるんだなあ。帰りの電車で稲泉連著『本を作るという仕事』読み終わる。巻末にちくま文庫の新作や過去作の紹介欄があるが、アタシはあのちょっとした紹介ページが大好きだ。あの短い紹介で「これ読んでみたい」と思わせるのだからたいしたモンだ。と、痛みと戦いながら感心する。レイトショーで映画『コーンフレーク』を観たかったが、こんなケツで90分間座っていられるわけがないので諦める。
某日、痔の痛みがだいぶ治まってきていた。ボラギノールを塗るために患部を触ると、昨日より小さくなっている。ボラギノール万歳!本日は昨年から楽しみにしていた『大竹伸朗展』を見るために、竹橋は東京国立近代美術館へ。10時の会場とともに入る。チケットは予約制でなかなか盛況。終了間際だったので、チケットが取れてよかった。大竹さんに興味を持ったのは『既にそこにあるもの』(ちくま文庫)を読んだから。2006年に現代美術館で開催された個展は結局行けなかったので、初めて大竹作品を見た。「続けること」「記録すること」「手を動かすこと」当たり前のことなのだが、その重要性を再認識した。正直、もう完成された「ニューシャネル」や「ダブ平」なんかよりも、その過程で作られたであろう作品群の方が好きだった。作為や意識と、偶然や無意識の中をグルグルしている思考の過程を作品を通して感じる。それは芝居とも共通すると思う。色を重ねすぎて赤黒くなったキャンバスを見るとニヤついてしまう。モルタルとH鋼で構成された作品には感心した。自分が毎日見ている建築現場にありふれた光景も、大竹さんの視点で作品になる。一通り会場を回って、また戻って見直そうとしたら再入場不可だった。なんだよ、貧乏くせえぞ近代美術館。グッズの販売も充実していたが、そこにこそ商魂たくましい大竹伸朗を感じるのだ。まあ、なんも買わなかったけど。美術館のスタッフの方に「喫煙所ありますか?」って聞いたら「コロナで廃止しています」と言われた。こんな広い施設で働いている喫煙者はどうしてるの? 喫煙所を探すと、隣の「国立公文書館」の横には喫煙所があった。どちらも公的施設だろうに、美術館のちょっとすました感じが気に入らねえ。公文書館万歳! 職員であろうおじさんと立て続けに2本吸ってしまう。タバコは痔によくないのになあ。所沢経由で帰り「ツタヤブックス」で邱永漢著『邱飯店交遊録』を購入。夕方、倅をお迎えに行って、日本脳炎の予防接種。先生が上手で、あっという間に注射してしまう。ビビっていた倅だったが、痛くなかったようで終わると饒舌になる。コープで恵方巻きを買い、夕飯で食す(アタシは減量ソバ)。豆を買い忘れたので、アメを鬼役のアタシに投げつけて「鬼は外」をやるが、想像以上にアメが硬くて、当たるとヒジョーに痛い。鬼役のアタシ、ちょっと不機嫌になる。夜、酔っ払った水澤紳吾さんから電話。「班長さん(山本浩司さん)の芝居が凄かった」という話と「お前、赤堀さんの芝居から逃げるなよ」という話。逃げてないんだけどなあ。やっぱ映画の現場が好きでやってるからなあ。まあ、仕方ねえ。
某日、内装仕事で門仲の工房。午前中は門仲の居酒屋の什器設置と補修作業。昼はミヨねえのチキンサラダ。(あれ?夜1食だけにする予定じゃなかったか?)午後は工房で什器制作。「痔が痛い」って話をソラヤのヒデさんにしたら、ヒデさんも壮絶なイボ痔の経験者で、オススメの痛み止めを分けてもらう。まさに「同病相憐む」で、一気に親近感がわく。最近工房での作業が続いているが、やっぱ現場よりは全然楽だ。トイレもあれば空調もある。工房には材料や道具もあるし、ストレスがない。ただ、時間の感覚が違う。現場では「そろそろ一服だな」と感じると大体10時、または3時だ。そこはズレがないのだが、工房で作業していると、集中して一服を忘れたり、「5時くらいかな」と思って時計を見ると6時過ぎだったりする。なんでだろうな。室内で外光が入らないから、体感的に分からなくなるのかもしれない。あまり意識することがないけど、太陽の光って相当大切なんだと思う。通勤読書で久世光彦著『美の死』を読み始める。久世さんの書評集なのだが、これが面白い。正直、読まないだろう作家の書評でも、久世さんが書くと読みたくなってしまう。ページの角を織り込んで気になる作家を覚えておく。これもちくま文庫なのだが、あら?巻末に既刊紹介のページがない。なんでだろう?作者が入れてとか、外してとかえらべるのだろうか?それとも初版だけで増刷分にはないのか?なんだろう?夜、『季節のない街』のスケジュールが再び変わるとマネージャーの井上さんから連絡。参ったなあ、カミさんに健康診断の予約をしてもらったのに、その日が撮影になってしまった。これは喧嘩の火種になる。なので黙っておくことにする。
某日、久しぶりにゆっくり寝て、8時過ぎに起きる。朝、庭で作業靴を洗ってメダカの様子を観察するが、流石に泳いでいない。1月中頃まではフヨフヨと泳ぐ姿が確認できたが、月末の大寒波で休眠状態に入ったのだろう。ただ、この寒さでどれくらいが生き残れているだろうか?全滅していないといいな。倅とポケモン。倅も一応、エンディングまでいった。でもここからもゲームは続く。倅はどこまでポケモンの世界にハマるのだろうか?「ボスを倒す」とか「幻のポケモンを捕獲する」といった具体的な目標がないまま、自分でゲームを楽しめるのだろうか?そこを観察していこう。カミさんと倅は入間のアミューズメントパークに行くらしいが、自分は肛門事情でパス。うちでDVD鑑賞。三池崇史監督『デッド・オア・アライブ』とマーティン・スコセッシ監督『ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム』の前編を観る。帰ってきたカミさんと、健康診断の件がきっかけで喧嘩になる。今回は撮影の予定が変わってしまったのが原因で、仕方ないことだ。自分も引けずに、倅の前で言い合いをしてしまう。子供の前でこういう事したくない。けどなあ。松林組もいつ決定稿を出すんだろうか?結構セリフがあるから、早く手をつけたいのだが。なら準備稿で覚えろよと言われてしまうかもしれないが、アタシ、変わる可能性があるセリフを入れるほど脳内容量が潤沢ではないのです。なのでよっぽどの事がない限り決定稿を貰ってから、セリフに手をつけるのだ。はやく決定稿出してくれー。
某日、朝、倅を保育園に送ると園長のまいちゃんから、園児の使う机と椅子の製作を相談される。3月までは撮影が続くのですぐにはできない旨伝える。やってあげたいけど、今は時間がとれないんだよな。帰ってDVDでマーティン・スコセッシ監督『ボブ・ディラン』の下巻を観る。まだ時間があったので、ネットフリックスでアンナ・フォースター監督『ルー』を観た。年配女性の殺陣がすごい。最短手で痛そうな効果的アクションだった。マネージャーの井上さんから連絡。松林麗組『ブルーイマジン』決定稿と奥野俊作組『冬物語』のシナリオが届く。これでセリフに手がつけられるナ。午後、巣鴨へ。松林麗組『ブルーイマジン』の衣小合わせ。麻美組で一緒だった林裕太くんがいてヤーヤーする。松林監督は長編初監督だそう。俳優もやられていて多才だな。サクッと衣装を決めて終わる。その後、井上さんと喫茶店「伯爵」でお茶をしながら、四方山話。井上さんとは仕事の話をしている時間より、家庭の相談やら現場でのバカ話をゲラゲラ話している時間の方が圧倒的に長い。同業者から「担当マネージャーと合わなくて」って話を聞いたりするが、アタシを担当してくれている井上さんは、一番の味方になってくれるヒトだ。この関係性が大切な気がする。宮藤組の最終話撮影のため、そのまま土浦に前乗り。ホテル横にある「湯楽の里」でサウナを3セット挑む。奥野瑛太くんと会って、一緒に帰る。9時半に飯の約束をしていた荒川良々さんから「今、リハーサル終わったけど、遅くなるから飯はまたにしよ」と連絡をいただく。リハーサルやってるなら参加したかったなあ。最終盤で大人数の大立ち回りだし、現場も大変なんだろう。明日のために早く寝る。
某日、宮藤官九郎組『季節のない街』撮影で土浦。朝6時に起きてホテル出発。池松壮亮くん、仲野太賀くん、渡辺大地くんと一緒で、本日は太賀の誕生日だった。30歳になったと聞いて感慨深い。初めて共演したのが中川龍太郎組『走れ、絶望に追いつかれない速さで』だった。まだ太賀が22、3だったんじゃねえかな。大人になりやがったなー。朝から廃校に立て籠った子供たちと、『ホームアローン』的シーンを撮影。子供たちになかなか時間がかかる。アタシが抜けでワチャワチャしていると、池松くんが悪魔の囁きをする。「マツーラさん、ここ、なんか出来ますよね?」「、、、できるよ」「じゃ、やりましょうよ」池松くんに囁かれると「なんかしなきゃ」と思ってしまう。仕方ないので倒れた時に太賀が、アタシのズボンを下ろしてケツが出るみたいな事をやると、キャッキャして笑っている。「マツーラさん、ケツはカメラに向かって横方向の方がいいです」なんて演出してきやがる。ちくしょー、オレをオモチャにしてやがるな! でもやっちゃうんだよなあ。別のカットでも「マツーラさん、ここでケツいきましょ」なんて言うから、やったのだが画面には全く映っていない。撮影の近藤さんが気付いて爆笑していただけ。なんだよー。夜はユンボが突入するカットを5カット。ユンボのギリギリを狙って転けたりしていたら、宮藤さんが「マツーラさん、面白いけどホントケガしないで」と言われてしまう。まあ芝居が出来ないから、体を張るしかないのです。すみません! アタシが今やっていることって芝居じゃなくて、『風雲たけし城』の軍団さんみたいだよな。予定よりちょい巻きで終わるが、ホテルのボイラーが故障していて、シャワーのお湯が出ない。仕方ないので閉店ギリギリの「湯楽の里」で岸健太郎さんや橋野純平くんと風呂に入る。さすがに眠い。
イヴォぢ