某日、内装仕事で蔵前。引き渡し予定日だったが、もちろん終わらず。出入りの職人がだいぶ減ったが、いまだに作業に追われている職人さんは、地獄コースなのだった。通勤読書で小林秀雄著『戦争について』を読むが、1章ごとに読むのをやめて考えてしまうので、地獄現場前の読書には全く向かない。1階の左官、塗装、床塗装をバタバタとツブしていく。普段は軽口を叩きながら作業をするのだが、その余裕すらなくなった。終わりが見えない仕事ほどキツイものはない。1箇所仕上げると、3箇所くらいやらなきゃならない作業が見つかってしまう。仕上げ作業というのは、敗戦処理のピッチャーみたいなもんだ。各業者が残した作業(相伴でできなかった作業もあるが、大概は面倒だから残された作業だ)のケツを拭かなければならない。時間が足りないわよ。昼は「タベキング」でグリーンカレー辛口(ナン2枚)を食す。辛口はうまいが、夜の排便に支障をきたすのだった。毎回、夜に後悔するが辛口にしてしまう。朝7時から作業して、19時過ぎまで。仕事終わりに班長さん(山本浩司さん)のお宅に伺う。大きくて甘そうなイチゴをいただく。すごく立派なイチゴで、八百屋で買ったら高くて手が出ないヤツ。ご馳走様です!久し振りに班長さんの娘さんに会ったが、5歳なのにしっかりしていて驚いた。前回会った時はガキって感じだったけど、今はすでにオンナを感じさせる。何なんだろうなあ。倅とは違うわ。班長さんとも久しぶりにバカ話ができてよかった。帰ると事務所から三木聡監督『コンビニエンス・ストーリー』のブルーレイが届いていた。この映画、好きなんだよなあ。ソフト化を機に、多くの方に観ていただけるといい。寝る前にポケモン。そろそろ脚本読んだり、セリフに手をつけないとだが、内装仕事が落ち着くまで無理だなあ。
某日、内装仕事で蔵前。仕上げ作業の終わりが見えない。ドツボにはまってしまったぞよ。朝6時前にうちを出て、7時から作業して、連日こなすうちに疲れが溜まってくる。すると、なかなか映画を観に行く気にならない。今年はまだ映画館で映画を観ていないな。観たいという欲はあるし、上映時間を調べてもいる。でも仕事が終わると疲れ切って、帰って寝たい欲に負けてしまうのだ。情けねえ。嶺豪一くんは仕事終わりでも映画を観に行ってるし、多分、守屋文雄さんも観てるだろう。ダメだなあアタシは。こんなザマじゃいかんぞ!昼飯は「味道」で、初のたまごチャーシュー丼。ご飯に甘辛のタレとタップリチャーシュー、その上に目玉焼きが2つも乗っかるドリーム丼。山田さんが食っているのを見て、自分も食いたくなった。これがまた美味いんだ。味道で不味い料理ってあんのかな?本日は2時まで作業して、早上がり。渋谷の美学校試写室へ。鎌田義孝監督『TOCKA タスカー』の試写。初号に伺えず、マスコミ試写にお邪魔する。ユーロの前で鎌田監督とばったり。タバコを一服しながら話す。試写室へ行くと、プロデューサーの村岡伸一郎さんがいた。伸さんが「ガンの治療法」の本を読んでいて、心臓がキュッとする。こわごわ聞いたら、参考に読んでるだけで自分がどうのじゃないらしい。あー、驚いた。孫家宝さん、渡辺謙作さん、弟の伸也も来場し、皆でワイワイ話す。伸也は孫さんや謙作さんに可愛がられていて安心した。弟が同業者になるってのも、なんだかケツのアナがこそばゆいな。本編を観て自分の芝居の反省。スーパーの店長役だったが、当時腰痛がひどくて、歩き方がガニ股で役と合ってない。歩き方は気を付けないと。足立正生さんの芝居が一番良かったなあ。試写会を出ると、鎌田さんや謙作さんから飲みのお誘いを受けるが、明日の内装仕事に支障が出そうでヒヨって断る。そういう所がダセエなと思うが、早く帰って寝ないと明日が地獄になる。モウシワケアリマセン!吉祥寺で「バサラブックス」に寄って、通勤読書用の古本を探す。バサラは品揃えが好みと合うのでお気に入りなのだ。なんせ、文庫コーナーにちくま文庫だけの棚がある。しかも安い。素晴らしい古本屋さんだ。野上照代著『天気待ち』、久世光彦著『美の死』、吉村昭著『実を申すと』、赤瀬川原平著『純文学の素』、稲泉連著『本を作るという仕事』(以上ちくま文庫)、森達也著『放送禁止歌』、色川武大著『うらおもて人生録』を購入。久しぶりに早く帰れたのだが、やっぱり疲れていて何もしないうちに寝てしまう。
某日、内装仕事で蔵前。夜明け前の暗い淵の森を通り、帰りは夜なので暗い淵の森を通る。ただ、冬は夜も明るく、夜道が見やすい。全く街灯のない淵の森だが、冬は暗闇の中でも道が見えるのだ。特に曇りの日は明るい。なぜかしら。水筒にコーヒーを入れていたのだが、豆が切れたので今日からはゴボウ茶。最初はあんま美味く感じなかったが、慣れると美味く感じる。作業は1階のエイジング壁の塗装作業。1階のカヌレ屋さんは稼働し始めて、カヌレの試作品を仕込んでいる。内装はまだ完成してないのに。昼飯は「味道」で麻辛汁なし担々麺。初めてだったがこれも美味かった。来月からは昼飯も制限しようと思っているが、こんな美味いものを食えなくなると思うと、気が滅入る。2時まで作業して、本日も美学校試写室へ。櫻井圭佑監督『君に幸あれよ』のマスコミ試写。若いクルーの制作だったが、みんな頑張っていた。主演の小橋川建くん・髙橋雄祐くんがよかった。高橋くんは『福田村事件』でも一緒だったが、いい俳優でアタシは好きだ。アタシはなぜか高橋くんが短命な気がしていて、心配なのだ。本人にも健康に気をつけるよう言っているのだが。まあ、ヒトの心配なんかできる身分じゃねえか。試写後、海老沢くんや櫻井くん、小橋川くんと話す。なんだかアタシを立派な俳優扱いして立ててくれるが、そういうのは苦手だ。おらあ大層なモンでもねえし、偉くもない。あんたらの方が立派にやってると思う。シッポを振るヒトは、少ない方がイイんだぜ。通勤読書で野上照代著『天気待ち』読み終わる。帰って、コッポラの『地獄の黙示録』をDVDで観る。途中で記憶にないシーンが出てきて、パッケージを確認したら、2001年の特別完全版で202分の長尺。こりゃ、1日で観きれんわと、カーツ大佐登場で中断。でも、とんでもない映画だ。若い頃に観た感覚だと、間延びしていて退屈な印象だった。でも、いま観ていて面白い。全く退屈しない。なんでだろうな?
某日、内装仕事で蔵前。7時過ぎに現場に行くと既に守屋文雄さんが作業を始めていた。慌てて作業に加わる。現場にはアタシらだけ。軽口も叩かず黙々と作業する。8時過ぎに伊藤くんや資延さんが来る。みなそれぞれの仕事に追われていて、口もきかない。午前中はバタバタと仕事をこなして、昼飯の時間になったので皆を呼びに行くが、誰ひとり返事をしなかった事にキレてしまう。仕事に追われてるのはみんな一緒だ。シカトすることねえよ。飯くらい食おうぜ。本当にムカついた。結局守屋さんと山田さんと「タベキング」でグリーンカレー。帰って作業をしていると、太田さんに「マツ、あれはねえぞ。気分悪いわ」と怒られるが、アタシも収まってないので太田さんにまで噛み付いてしまう。ダメだなあ。世話になっている太田さんにまで噛み付くなんて、見境がなさすぎる。こんな事してちゃマジでダメだ。でも、自分からは謝れず、8時まで作業して帰る。太田さんが大人だったので歩み寄ってくれて険悪にならずに済んだ。申し訳ない。夜、『地獄の黙示録』の続き。カーツ大佐が出てからも長い印象があったが、あっという間に終わってしまった。Aさんに手紙を書きたかったが、寝てしまう。
某日、内装仕事で蔵前。電気屋の堀川さんや大工の柳沢さんに「マツーラくん、本業は忙しくないのか?」と心配される。心配ご無用なり。撮影があるとかないとかで左右されるような繊細さなど、お袋の子宮に忘れてきました。なんて言えるようになったのもここ最近か。撮影がある時はあるし、ない時はないのだ。当たり前だけど。そんな浮草渡世に慣れましたぜ。そして内装業も立派な本業なり。アタシは俳優が本業だとは思っていない。優先させてもらってはいるが、兼業でどちらも本職だと思っているのになあ。よく言われるのが「いつか売れるかもしれない」みたいな事だが、売れることが目的じゃないんだよな。「ドラマに呼ばれるようになれ」とも言われるが、正直テレビドラマに魅力は感じていない。生意気かもしれないが、(岩谷さんがよく言う)パヤパヤ芝居してお金もらえばいいとは思えない。映画をやりたくて俳優を続けているので、その矜持は変えたくない。これからも映画にこだわってやっていく所存です。そんなアタシの矜持なんかどうでもいいか。まあ、現在の所信表明。いつ変わるか分からないけど、今この瞬間は嘘なくそう考えている。本日も引き渡し前の追い込み作業。タッチアップや補修、手直しに追われる。仕事はこなしているのに増えていく一方で、流石に守屋さんもキレていた。昼飯は「味道」で長いもとエビチリ定食。週替わりで定食メニューが変わるそうだ。相変わらず美味い。文句なし。味道が今のアタシの救いなり。午後の作業中、1階のカヌレ屋さんからカヌレの差し入れ。フランスに古くからあるお菓子らしい。こちらも美味い。夜8時までやって終わる。できる事なら、ユーロで柄本佑監督『IPPO』という短編集が観たかったが間に合わず。仕事が納まらなかったので明日も出勤になった。まあ、稼げるときに稼がにゃいかんわいな。村岡伸一郎さんから連絡。Aさんから伝言で、本の差し入れを頼まれる。柚月裕子著『最後の証人』、『検事の本懐』、『検事の死命』、『検事の信義』の4冊。夜、Aさんに手紙を書く。
某日、内装仕事で蔵前。引き渡しの日で昨夜クリーニングが入ったのだが、全く納まっていない。1階は鉄屋の安藤さんが回転扉を設置してるし、電気屋の堀川さんは配線を廻していて、器具付けが終わらない。アタシら内装チームは追加作業に加え、残塗装作業(堀川さんが次々に付けるモールや器具の塗装)、そしてタッチアップ。アタシは外で什器のクリア塗装。今日は寒すぎて塗料が硬化せず全く乾かない。やっと硬化したと思っても表面だけで、中が乾いておらずに引っ張ってしまう。予想以上に時間を食う。昼飯は「やよい軒」でミックスとじ定食(ご飯1回おかわり)。トンカツと牛肉の卵とじでなんとも贅沢な一品。弥生亭デビューだったのだが、驚いたのが全自動白米よそり器があったこと。お椀を置いて白米の量を選ぶと、上からポトポト落ちてきて定量を入れてくれる。暖かいし米も潰れたりしていない。ナゼ米が潰れたりくっついたりしないのか!不思議で仕方なく、おかわりする人の手元をずーっと観察したのだが、仕組みがわからなかった。すげえマシーンだな。今日はいつも通り追い込まれて次々に追加仕事がでて、終わりが見えなくなる。夕方くらいからイラついていたのだが、太田さんがキレ始めるとアタシはスッと冷静になる。キレている人がいると、自分は冷静になるのがこれまた不思議だ。堀川さんの残作業を、100ボルトの活線に痺れながら手伝って納める。結局夜10時過ぎまで作業して帰る。最後の方は疲れてナチュラルハイになる。毎回仕舞い作業は遅くなる。定時で工程通り進められる現場をやりたいが、ハジカミはずーっとこのままなんだろうなあ。帰りに大量にカヌレをもらう。さあ、明日は休みだ。通勤読書で森達也著『放送禁止歌』を読み終わる。自分で考え、判断することって当たり前なんだけど、難しいのだ。夜、ポケモンの進行が倅の方が進んでいることを知って、アタシの威厳を保つために眠かったがプレイして進める。頑張るが、途中で寝落ち。
某日、11時ごろ目覚める。朝、カミさんが「こいつ、スイッチやりながら寝たんだな、腹立つわ」と言っていたのを微かに覚えているが、起きなかった。やっぱ疲れていたんだなあ。カミさんと倅は、新所沢のレッツシネパークに『スラムダンク』を観に行ったらしい。カミさんが映画館に行けるようになってよかった。昼頃、庭で作業靴を洗って、Aさんの差し入れ本の代金をコンビニで支払う。ついでに大竹伸朗の美術展のチケットも購入する。終了間際だったが、なんとか行けそうだ。昨夜大量にもらったカヌレをお隣のKさんちと実家におすそ分け。92歳のじいちゃんもカヌレを食って「噛めば噛むほど味が出る」と感心していた。が、5分後にはさっき食ったカヌレのことは忘れていて、面白かった。午後、倅とカミさんも実家に来てお茶。夕方、帰って倅のポケモンを見学。倅はあまりレベルを上げないでバンバンボス戦を潰していく。アタシはレベル上げが好きで、ボス戦を進めないので倅に進行状況を抜かれてしまう。夜、撮影スケジュールと内装仕事のスケジュールの整理をする。撮影も数本決まっているが、まだどの作品も決定稿が出ないので、準備稿をざっと読んだだけ。決定稿が早く欲しいなあ。セリフに手をつけないといけねえんだけど、アタシャ決定稿が出ないとやらないんですわ。
某日、清澄で内装仕事。今日は起きて床に素足を下ろした瞬間、足の裏が引っ付くんじゃないかって思うくらい寒かった。タロもむっちゃんもチョメも、アタシの体の上から動かない。猫が動けないくらいの寒さ。昨夜入れておいた水筒のゴボウ茶もいつもより冷えている。スクレーパーで足を切って以来、作業靴を履いているのだが、例年はどんなに寒くてもビーサンで過ごしていた。どうかしてるな!電車内で赤瀬川原平著『純文学の素』を読んでいたのだが、大江戸線の都庁前で乗り換え、席に座った瞬間寝てしまっていた。まだ月曜日なのに、疲れが抜けていない。清澄の現場で、雑作業。昼飯は久しぶりに「富水」に行ったのだが、休みだった。結局、居酒屋「栄」でトンカツ定食。可もなく不可もなく。「富水」の天丼か大サバの口になっていたので仕方ねえか。再び現場に戻って作業。夕方6時に終わる。帰りの電車内でも寝てしまう。危なく乗り過ごすとこだった。うちに帰ると、倅がテレビで戦国時代のクイズをみていて、しきりに「たけしんが最強だよ」と言っている。「たけしんって何だ?」と聞くと「知らねえの?武田信玄だよ」と言う。まるで友達のようにたけしんを連呼していて、器がでけえなと感心した。明日から再び蔵前の是正と追加工事。寝なきゃなあ。