某日、無職渡世。午後、義父母が倅の卒園服を持って遊びにきてくれた。久しぶりにお会いする。夕方、宮藤組のセリフ練習で歩き念仏。北秋津小学校の横にあった広大な雑木林が全部造成され、住宅が建ち始めている。ここの森というか丘にはタヌキがいて、夜中に所沢駅から歩いているとよく出くわした。カブト虫やクワガタもいてガキの頃にとりにいった。もう樹木は1本もなく、赤土がむき出しの更地になっている。悲しい。淵の森も半分近く伐採されてしまい、雑木林がどんどん消えている。所沢や秋津の雑木林を更地にしてまで、住宅が必要なのだろうか?人口はどんどん減っているのになあ。自分が金持ちになったら、この辺の雑木林を買って保存したい。タヌキに安住の地を!帰って、楽しみにしていたテレビ番組「巨大マグロ戦争 2023」を観る。自分が唯一と言っていいくらい熱心に観ているマグロ漁師もの。今回も大間のやもめ漁師・細間さん(奥さんを亡くされ、男手一つで、ふたりの娘さんを育てている)にグッときてしまう。長女が看護学校を卒業するエピソードも良かったが、不漁続きで参っている中、師匠の漁師に教わったトビウオで大マグロをあげる姿に感動した。誇らしげに「トビウオが一番食うじゃ」と言った姿に惚れた。「がんばってりゃ良いことある。続けてれば」と言っていたが、それは俳優も同じだな。あと、これは大切な事なのだが、マグロは重さじゃない。釣るまでの物語の濃さに視聴者はやられるのだ。担当マネージャーさんの井上さんから連絡。2月の松林組、3月のK組、WOWOWの山田組の話。1月始まりの真新しい手帳に、新規仕事のスケジュールを書き込む。仕事が入ってうれしい半面、時間を拘束されているような窮屈な感じを受けてしまう。今まではそんなことを感じなかった。なんでだろう?
某日、宮藤官九郎組『季節のない街』撮影。5時起きで土浦に向かう。武蔵野線に乗っていると、明けていく空がよく見えて気持ちがいい。道中、沢木耕太郎著『銀河を渡る』を読む。(アタシは普段から数冊の本を同時並行で読むのだ)沢木さんの本を読んでいると、どこか知らない土地に旅をしたくなる。これがアブナイ。生活と地続きな場所から離れて、放浪したくなる。若い頃ならパッとリュックを背負って1ヶ月くらい放浪してしまうのだが、もう家庭もあるし子供もいる。「や、倅を連れて行くって手もあるな」と、本気で考えてしまう力がある。沢木さんの本は本当に危険なのだ。そんなことを考えつつ、改札を抜けようとしたら、スイカが残高不足で出られない。手持ちの現金が550円しかなく、30円分足りない。マジか!困ってしまったが、駅員さんに理由を話してATMで降ろして出る。危なかった。口座に4000円入っていてよかった。下手したら、どなたかに改札まで迎えにきてもらわなきゃだった。現場でスタッフの方々始め、共演者にも新年の挨拶。そういやあ撮影始めか。本日はリリコさんと2人芝居。また好き勝手動く。宮藤さんも色々演出で足してくれるから、余計楽しくなってやってしまう。オッケーが出てから「ああ、今日もやりすぎちゃった」と後悔するのだ。仲野太賀くんや池松壮亮くんと『J』の話をする。本日も昼には撮影が終わって、帰る。土浦に滞在する時間より、移動時間の方が長いかもなあ。夜、映画を観たくてDVDを選んでいるうちにかったるくなり、寝てしまう。この、うつけ者!
某日、内装仕事で蔵前。スイカに金が入っていなくて、財布に入っていた3千円を全額チャージする。本日は給料の振込日なので、安心していた。電車内読書で赤瀬川原平著『芸術原論』読み終わる。思考の勉強になったし、また読み返す本になりそう。本日は2階の特殊左官と什器塗装。昼は「味道」で、再び鳥肉の辛子炒め定食(おかわりは我慢した)やはりメチャクチャ美味い。金が足りなかったので、ATMでおろそうとしたが、給料の入金がない。おい!マジか!今日は入金日のはずなのに。取り敢えず一緒にいた嶺豪一くんに立て替えてもらう。3時の休憩時にも入金確認したが、入っていなかった。ごーいちに申し訳ないが、タバコ代含め2000円を借りる。なんてこった。仕事終わりで、千駄ヶ谷の制作会社「ラインバック」へ。太田組の打ち合わせ。太田監督、プロデューサーの向井さん、俳優の竹中京子さん(リモート)、フランス人のプロデューサー(リモート)、脚本の芳賀くん(リモート)で話す。竹中さんもフランスで俳優をやっている方で、国際色豊かだった。さて、どう転がるか。帰りの電車内で本を読み終わってしまったので、手持ち無沙汰。自分の手を眺めて、電車内の乗客の手を眺める。みな、スマホを手に持っているので観察しやすい。「人生の経験は顔に出る」というが、そうは思わない。表情は作れるし、化粧もできる。なんなら整形もできる。顔は嘘をつく。でも、手は嘘をつかない。整形も化粧もしていないだろうから。人の経験は、手に出ると思う。観察していて、真っ白いブヨブヨした手が多い。血管が浮き出て、節が太く黒くゴツゴツした手は全然いない。アタシの手は、見てくれは悪いがなかなかいいと思う。手は大切なんだ。夜、リトルモアの孫さんから連絡。伸也と3人でAさんの面会に行くことになる。
某日、蔵前で内装仕事。年明けから弟の哲也にもらった水筒に、コーヒーを落として、現場に持って行っている。現場まで手で持ったり、ポケットに入れたりしていたが、なにぶん長いし重いので収まりが悪かった。先日の宮藤組撮影の際、大人計画から年始の差し入れでエコバックをいただいた。それが買い物袋のサイズではなく、お弁当箱と水筒が入る小さめサイズで、水筒と本とタバコを入れて持ち歩くのにちょうど良い。本も今まではポケットに入る文庫本だけしか通勤読書ができなかったが、ハードカバー本や雑誌も入る。このサイズ感の袋はなかなかなく、重宝しているのだ。本日は什器塗装と1階の壁左官。嶺豪一くん、二日酔いで遅刻。新年1発目。なかなかのハイペースで刻んでやがるな。昼は「タベキング」でチキンと菜の花カレー(ナン2枚)。アタシの請求書が見つかったらしく、ようやく給料が振り込まれた。やー、助かった。午後から守屋文雄さんと並んで左官をする。守屋さんのスピードについていこうと必死にやるが、全く歯が立たず。悔しいけど敵わねえ。守屋さんはいつも通りのスピードでやっているのだが、塗り上げるスピードも、左官材の厚みの均等さも、コテ跡のフラットさも全て敵わない。アタシもここ数年で、左官の腕をあげたつもりになっていたが、それ以上に守屋さんは凄かった。仕事終わりで山田さんが新年会として、アタシと守屋さん、ごーいちを焼肉屋に連れて行ってくれる。中目黒の「ふたご」という店。出て来る肉が全て美味いのだ。驚いた。途中、山田さんが抜けたが、その間も減量を忘れて食いまくった。二日酔いで遅刻したごーいちはどんなに勧められても酒を飲まず。守屋さん、珍しく酔って電車で寝てしまう。多分、疲れているのだ。帰ると、カミさんが「保育園でもらった写真を見て」と言う。保育園で撮られた倅の写真を見ていると、結構な確率で変顔しているので「いい顔してんな」と言うと「あんたは何もわかってない」と1枚の写真を渡される。遠足時の写真で、枝を持った倅が満面の笑みで写っている。「これがどうした?」「よく見ろよハゲ」よくよく見ると、満面の笑みの倅のズボンの股間部分が、濡れて変色している。こいつ、失禁してやがる!事態を理解して、大笑いする。ションベン漏らしてんのに、よくこんな笑顔で写真に写れるな。カミさんが倅に「どうしたの?なんかあった?」と聞いたら、さも平然と「ションベン漏らしただけ」と答えたらしい。我が倅ながら、なかなか見所がある。
某日、内装仕事で蔵前。朝は冷えて、ジャンパーの袖から手が出せないくらい寒い。通勤読書は新藤兼人著『三文役者の死』を再読。蔵前の現場は、職人さんが朝早くから働いているので(引渡しが近く追い込まれているのもあるが)、自ずと仕事始まりの時間が早くなる。6時にうちを出て、7時半には現場で一服しながら段取りを組む。現在、蔵前の現場は各業者が追い込まれてバタバタしている。大工さん、塗装屋、土間屋、設備屋、電気屋、空調屋、長尺屋、家具屋、解体屋、みな何とか納期までに納められるように頑張っている。更に厨房機器屋やシール屋、ネット配線の電気屋、火災報知器屋なんかも乗り込んでくる。材料を届けに来る問屋や配送業者も入り乱れる。お互い作業スペースが重なるので、譲り合ったりしてやっている。これって凄いことだよな。大きな建築現場の場合、施工管理者や現場監督が常駐していて、各業者のスケジュールを調整したり兼ね合いを作ったりするが、うちの会社はそんな人がいない。だから初対面のおじさん同士、自分達で話し合って譲歩するのだ。建築の現場って面白いんだぜ。本日は1階の床塗装とトイレの壁を左官、2階の什器製作や塗装をした。文字で書くとこれだけだが、水を汲むだけでも色々兼ね合いがあって大変なのだ。社長の周平さんが「カッコいいオシャレな建物も、汚ねえオッサンたちが作ってるんだ」と言っていたが、正しくその通り。昼飯は「味道」で麻婆豆腐定食。山椒が惜しみなく使われていて、汗が吹き出るほど痺辛い。ヒジョウに美味しかった。お代わりは我慢。3時の休憩時に、カヌレという洋菓子を施主さんから差し入れてもらう。カヌレというモノの存在も知らなかった。イトウくんと大工のアキラさんとパクつく。アキラさんが一口食べて、食いかけのカヌレをジッと見る。アタシも人生初カヌレ。一口食べて、食いかけのカヌレを確認する。どうやら内側が生っぽい。「これ、生じゃない?」って言おうとしたら、カヌレを食った事のあるイトウくんが「焼きプリンみたいで美味いですね」と言った。あ、こういうモンなのか!確かに焼きプリンみたいで美味い。てっきり中の生地が生焼けなのかと思ったわ。多分、アキラさんもそう思っていたのだろう。2人で「カヌレ、初めて食ったけど美味いな」と讃え合う。7時くらいまでやって帰る。ヘトヘトで、電車の中で寝てしまう。守屋さんは新宿で降りた。今からシナリオ作業だそうだ。凄いな、こんなに疲れていても書くんだから。尊敬する。風呂上がりに体重を測ると73・1キロ。ようやく落ち始めた。やっぱり年齢のせいか、落ち始めるまでも時間がかかる。寝る前に疲れていたが、ポケモン。
某日、内装仕事で蔵前。引き渡し予定日3日前。なのに今だにアタシら仕上げ部隊は左官作業をやっているし、什器塗装に手が付いていない。各業者も殺伐としてきて、現場が殺気立ってきた。知らない業者がガンガン入って来るので、作業がかち合い、至る所で口論とまではいかないが、バチバチし始める。てめえの仕事さえ終わればいいという職人と、全体を見れる職人がいる。器の大きさがわかるよなあ。本日は、1階の部分左官と2、3階のトイレ内の左官。引き渡し直前の現場で、粉物の作業をやらざるを得ないなんてしんどい。昼飯は「味道」で鳥の辛子炒め定食(おかわり我慢)。やはり美味いのよ。蔵前の現場の唯一の楽しみは昼飯。午後、守屋さんが無言モードに入ったので、あまり近づかないようにする。山田さん、タクさん、マーさんの大工チームと一服している時も、守屋さんはデコリエをやっていて休まなかった。7時まで作業。しかし、昔みたいに夜中まで作業したり徹夜したりはしない。労働の対価が日当であり、給料と労働のバランスは絶対だ。仕事終わりで、蔵前の「FOBS」という洋菓子屋さんへ。佐藤五郎さんへの手土産を買い、カミさんにもゴーフレットなるお菓子をお土産に買う。八幡山へ向かい、佐藤五郎さん主催の新年会へ。俳優部がたくさんいて、松角洋平さん、高橋雄祐くん、海老沢七海くん、遠藤雄弥くん、足立理くん、森本のぶさん、ほかにも集まってワイワイやっている。気持ちいい連中なので、一緒に飲んでいて楽しい。俳優部としての収入の話になり、松角さんから「まっちゃんはもうバイトしてないでしょ」「や、今日も内装あがりですよ。撮影ない日は毎日働いてますよ」と答えると、驚かれる。当たり前でしょ、映画じゃ食えませんぜ。五郎さんの倅のイチ(5)とライル(4)が人懐っこく、河童の話で盛り上がる。五郎さんの奥さん手製の料理が美味くて驚いた。10時過ぎに失礼する。松角さんと駅まで歩きながら、色々話す。「最近芝居ができる役で呼んでもらえるようになって現場が楽しい」と言うと「映画を観ているとまっちゃんのそれが伝わって来るよ」と言ってもらえる。嬉しい。お互い今年も芝居を頑張ろうとエールを交換する。電車内でジョージ・オーウェル著『パリ・ロンドン放浪記』読み終わる。貧乏人の生活なんて古今東西どこでも変わらねえな。末尾の方に書かれたオーウェルさんの浮浪者対策なんて、現在でさえ出来ていない。この1927年のパリ・ロンドンより、現在のトーキョーの方が貧乏人を搾取するシステムが出来上がってしまい、一度堕ちたら再浮上なんか出来ねえような気がするのです。
某日、内装仕事で蔵前。引き渡し予定日2日前。現在の進行状況では引き渡しなんかもちろん無理。焦っていたら、最終引き渡し日は7日後だと教えてもらう。ただ、4日後には保健所検査なので、それは通さないといけない。1階が戦場になっているので、2、3階のトイレ内の塗装と床塗装。週明けまでに設備屋のサカイさんチームに渡さないとトイレを設置されてしまう。本当は日曜日までに渡して欲しいと言われていたが、左官作業の絡みもあって到底無理なので火曜まで待ってもらう。本日は厨房機器も搬入されて、現場はさらに殺伐としていた。昼飯は「味道」が休みで、「タベキング」でグリーンカレー辛口(ナン2枚)。塗装は肉体的なキツさは少ないが、天井を塗るときに腰が痛い。ローラー芯も塗装バケツも満足にないので、限られた道具でやらなければならず、大変なのだ。買い出しに行く時間もない。デザイナーの資延さんもとうとう塗装作業をやり始めてしまった。日に日に資延さんの目が追い詰められていて、大変だなあと思う。本日は5時に上がって、タクさんの車に同乗させてもらい経堂へ。塩田明彦さんの新年会。演出部矢作さんが音頭を取ってくれて、俳優部の足立理くん、間宮優希さん、撮影四宮さん、演出部毛利さん、竹田さん、記録の近藤真智子さん、そして知らない女性の俳優が集まる。飲んでいる時に毛利さんがポロっと言った「安くても現場でバタバタしてた方が楽しいやろ」というひと言に現場者としての矜持を感じた。その流れで毛利さんがサードの頃、高橋伴明組で大杉漣さんがやった伝説を話してくれた。その映画で漣さんはヤクザの親分。自分の家が火事で燃える中、逃げ出て「誰だ、火いつけたのは!」と怒るシーンの撮影の本番直前、(実際にセットを燃やすので1発本番のリテイクなし)きっかけを出す当時サードの毛利さんに「毛利くん、ツルハシとメットかぶっていい?」と言ってきたらしい。漣さんの役は硬い芝居できていたし、ツルハシを持つ意味もわからない。さらに監督が伴明さんなので困って「確認します」と言うと、「毛利くんに聞いてるの!どう?」と笑いながら尋ねる。毛利さんが答えあぐねていると「本番、よーいハイ!」の声。毛利さんがドギマギしていると、漣さんは笑顔のまま、ツルハシとメットを被って出て行ったらしい。テストと全く違う芝居だったが、伴明さんはオッケーを出し「大杉!」と苦笑いで怒鳴ったそうだ。漣さんは、映画は金のかかった贅沢で豊かな遊びだと知っていたのだろう。面白いなあ。「松浦くんもそうなれよ」と言われるが、恐れ多い。一度でいいから大杉漣さんと芝居したかったな。そして、毛利さんと塩田さんの関係性も面白い。毛利さんは塩田さんに好き勝手言って、塩田さんがモゴモゴする。いいコンビ。塩田さんは芸大の教授になるらしい。「もう映画は撮れないな」なんて言うので、本気で説教した。塩田さんは芸大の収入があるのだから、生活は安定するはず。自主でいいから映画を撮り続けて欲しい。そして塩田組で芝居がしたい。帰る直前に、某女性俳優から「マツーラさんは売れてるからいいじゃないですかー」みたいなことを軽く言われて、腹が立った。同業で「売れることが偉い」とか「売れることが目的」な人に、そういうことを言われると、自分の中のアンテナがビーン!とおっ立って、怒りのスイッチが入るのだ。そもそも売れるって何だよ。思わず「売れることを目標に芝居してねえから。気分悪いぞ」と言ってしまう。(女性だったので我慢したが、男だったら引っ叩いていたかもしれない)他人がどんな動機で役者業をやっていても構わないし、アタシにゃ関係ない。ただ、そういう事をのたまう奴に限って、ろくな芝居してねえし、テメエごときに言われたかねえやと思ってしまう。準備ができている俳優でも、俳優業だけで食えている人は限られていると思うし、食える食えないが俳優の価値基準ではない。そんな貧しい価値観で他人を評価するなんてみっともねえや。アタシャ映画の現場で楽しくやってるから、金輪際俺に関わらんで生きてくれ!そもそも、売れてる奴が汚ねえ作業着詰めたリュック抱えて、手に塗料付けて飲みに来ねえだろ。その観察眼のなさが致命的なんだよ、バカタレが!ああ、せっかくイイ時間を過ごせていたのに台無しだぜ。
某日、昨夜は日記を書いて、ポケモンをやろうと思ったが、寝落ちしていた。起きたら9時半。寒い中で連日バタバタ働いているから、さすがのアタシでも疲れてんだろうなあと自分を哀れんでいたら「いつまで寝てんだ寄生虫!さっさと倅を歯医者に連れていけ!」とカミさんにドヤされる。ここで言い返すと厄介なのでさっさと逃げるに限る。倅を連れて出て行く背中に「サーカスの時のお釣りの5000円返せ!」と痛いとこを突かれる。無言でチャリンコに倅を乗せて歯医者に向かう。道中、倅が「ごり、5000円ちゃんと返しなよ」と心配していたが「そんな金、もう使っちまったよ」「何に使ったの?」「タバコ代と昼飯代。お前子供なんだから金のことなんかとやかく言うなよ。金の事ばっか気にしてると、ロクなニンゲンにならねえぞ」と6歳の倅には強気で言えるのだった。そしてカミさんとアタシとどっちがロクなニンゲンかなんてことは、6歳児でもわかるのだろう。「かーかにちゃんと返してよ」と、さらに心配そうに呟くのだった。倅の通う歯医者はなんだか洒落たデザイン会社みたいな内装で、入口から憂鬱になる隠な波長、いわゆる歯医者感が全くない。院内にカフェまであって驚いた。倅も「俺、ひとりで行く」なんて言って、診察にも立ち会わなかった。20分くらいで検診も終わり、さっさと帰ってきた倅がちょっと大人びてみえた。午後は、倅と所沢へ。金が入ったので久しぶりにブックオフでDVDあさり。激安コーナーで西川美和監督『ゆれる』、マーティン・スコセッシ監督『ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム』を救出。三池崇史監督『デッドオアアライブ』とフランシス・フォード・コッポラ監督『地獄の黙示録 特別完全版』を購入。その足で所沢駅のツタヤブックスで小林秀雄著『戦争について』を購入。帰って、倅は漫画を読み、カミさんはケータイで韓ドラを観て、各自自由に過ごす。アタシはいつの間にか寝てしまって起きたら19時だった。夜、DVDを観たかったがいい時間だったのでポケモンやって寝る。