某月某日、元旦。おめでたくもねえが、2023年初日でございます。1年の計は元旦にありなんて申しますが、俳優業なんて受け仕事だから、アタシが率先して計画を立てる事なんて出来ないんだよな。「明日から頼むわ」って言われりゃ懸命にセリフを言えばいいし、呼ばれなきゃ内装仕事をやるだけ。ここ十数年、変わらない生活だ。もちろん新年の抱負なんかもない。呼ばれた現場で(内装だろうと撮影だろうと)懸命にやるだけなのです。あえて抱負を述べるなら、昨年よりちょっとでも単価を上げる事かしら。ギャラを上げるって言ったって、値段を決めるのは先方次第だしなあ。ままならねえ仕事でござる。午前中、倅と秋津神社に初詣に行くが、あまりにも行列していたので、うんざりして帰る。こんな田舎にこれだけのヒトがいたんだと驚いた。おそらく町中の暇人が集まっていたんだろうな。昼から実家に集まる。親父・お袋・じいちゃん・伸也・ターコ・キーチ・倅・カミさん・アタシ・そして今年もごーいちこと嶺剛一くんが参加。ごーいちはなんだか気を使ってくれて、ガキ達にお年玉くれたのだ。あいつの少ない現金から絞り出してくれたんだ、嬉しいなあ。ごーいちってそういう義理は欠かさねえ人間なんだよな。飲んで食ってワイワイやる。夕方、ごーいちがキーチに自転車を指導してくれて、乗れるようになっていた。じいちゃんはボケが益々進んでいるが、酒も飲むし食う。まだ死ななそうだわ。夜、早々と寝てしまう。
某日、午前中、伸也の運転でターコ・キーチ・倅・アタシで立川へ。『木下大サーカス』の公演があり、サーカス好きとしては(カミさんに)大枚を叩いてでも観たい!と、ごねまくってなんとかチケットを取ってもらう。結構良い値段がしたが、前の方の席をとってもらった。会場は自由席に並ぶ人が多く、指定券を持っている身としては、鼻が高い。ちょっとしたブルジョワ気分を味わう。列に並ばなくて良いので、皆でゾウと写真を撮る。だってゾウと写真を撮れる機会なんて、そうそう無いもん。本物のゾウの匂いは草の匂いだった。写真を撮る際に、ゾウがいちいちポーズをとってくれるので驚いた。800円なり。これは安い!毎日3公演、休みなくやっているが、ゾウは何千回ポーズをとっているのだろうか。テントの会場に入ると、なんと前から2列目の席。目の前に腰高の仕切りがあるだけで、すぐ目の前がステージ。始まる前からガキと一緒に興奮する。2部構成で、前半は軽業中心だが、何しろ目の前なので、パフォーマーの筋肉の震えや息遣いまで感じられて、圧倒される。これが距離がある席だと息遣いまでは絶対に感じられないし、本当によかった。後半は、開始早々ライオンの曲芸。目の前に柵が建てられたものの、2メートル前にはでかいメスライオンが4頭。あまりの迫力に、アタシですらビビる。ターコに至っては「ライオンが来そうだから逃げる準備しなきゃ」と軽くパニクっていた。アタシもいざという時のために、脱出のルートだけは確認する。出口に逃げるよりも、テントの梁に登った方が助かる気がする。ライオンのうなり声が想像以上に怖く、調教師が鞭を振るうたんびに「もうやめて!」と祈るような気持ちだった。バイク曲芸や空中ブランコもすごかったが、鉄の玉型ブランコの曲芸は肝が冷えた。なにしろ2時間本当に楽しませてもらって大満足。サーカスは前の席に限る!貧乏でも、サーカスだけは前の席で観るべし! 夕方、大型デパートのフードコートに行ったが、人が多すぎてテイクアウトして車内で食べる。実家に帰っても子供達はサーカスの凄さを語っていて、企画者として誇らしかった。
某日、倅とターコキーチと一緒に智光山公園に行く予定だったが、朝、倅が「明日から保育園か」と長期休み明けの憂鬱にとらわれてしまい、結局行かなくなる。午前中は倅とポケモン。6歳児がゲームの操作を理解して、一丁前にプレイしているのはすごいと思う。好きこそ物の上手なれは本当だな。午後、特製カレーを作って実家に持って行く。親父から松本次郎著『烈士満』を勧められて読む。初読書は竹田米吉著『職人』。これが名著だった。明治時代後期に大工見習いから始め、近代建築の施工管理をした竹田さんの回顧録。当時、手探りだった西洋建築を試行錯誤する話は読んでいて勉強になった。夜、請求書作成とAさんに差し入れ。今月は『サピエンス全史』上下巻と阿佐田哲也著『先天性極楽伝』を送る。
某日、本日から倅が保育園始め。そして自分は保育園のウッドデッキ作業をやる。一人でやるつもりだったが、年始の挨拶に訪れた椿田さんと職員の佐藤さんが手伝ってくれる。やはりウッドデッキ20本を外して、全面サンディングしてステイン塗装をやると時間がかかるんだよなあ。三人で午後2時過ぎまでやって、塗装まで。設置は一人でやって4時に終了。一人作業だと終わらなかったな。サンディング作業を腰をかがめてやっていたから、腰痛がひどい。腰が痛いのでアウストラロピテクスの歩き方になってしまう。明日から内装仕事で左官作業だけど、アタシの腰は大丈夫だろうか?夜、宮藤勘九郎組『季節のない街』のセリフをレコーダーに吹き込んで、練習。俳優としての仕事始めだ。夜、スイッチで『ポケモン スカーレット』やる。
某日、蔵前で内装仕事。本日から仕事始めで、乗り込みの新規現場。5階建てのビル一棟を内装受け。大工の山田さんが頭。大工のアキラさん、設備屋のサカイさん、しんさん、いつものメンツが集まり、新年早々総力戦。20日までに1、2、3階を引き渡すらしいが、まだ軽天にボードを張っている状態。相変わらず工程に無理がある。とりあえず本日は3階部分の床塗装。昨日のウッドデッキ作業で、腰がやばい。やばさを具体的に言えば10でギックリ腰だとしたら、7か8くらい。ギックリ手前腰なのだ。電車でちょっとした揺れに、腰がビキっとなってしまい、こわごわ作業する。昼、すき家でネギ牛丼中盛り。山田さんに奢ってもらう。ありがてえ。本日から減量のため、糖質を切る。ただ、昼飯だけはまだ食っとかないと肉体労働がきつい。朝、抜き。昼、食べる(なるだけ糖質を切りたい)。夜は糖質以外を少しだけ。年をとって体重が落ちにくいのと、無理をするのが辛いから早めに減量を開始する。全ては夏に撮影予定のS組『J』のため。目標は『オノダ』撮影時の体重である56キロ。山田さんから「新年会がてら焼肉行こう」とお誘いをうけるが、カミさんが体調悪いらしくゲキ切れしているので別日にしてもらう。夜飯、卵と納豆の炒め物。寝る前にポケモン。
某日、蔵前で内装仕事。朝の電車で幸運にも座れたが、乗り換えのため練馬で立とうとして腰がビキっとなる。危なかった。ビキッとなった瞬間、ちょびっとだけお漏らしした。腰が怖いので階段も恐る恐る降りる。そもそも今回の現場は蔵前の駅前だと聞いていたが、浅草線蔵前駅のそばであって、大江戸線蔵前駅から10分くらい歩かなければならない。腰をかばいつつゆっくり歩いていて気付いたのだが、筑摩書房のビルがあった。ちくま文庫では小沢昭一さんや殿山泰司さんの本が多数文庫化されている。いつかちくま文庫でアタシの本を出したい。蔵前はおもちゃ問屋が多数ある。しかも今風のおもちゃではなく、懐かしい昭和テイストのおもちゃ。凧問屋もあった。いまどき凧を上げる子供がどれだけいるのだろうか?今日は壁面左官。作業を始めると不思議と腰が気にならない。昼は中華「味道」。本格中華を謳っていて、お客さんがひっきりなし。鳥肉の辛子炒め定食を頼んだが、めちゃ美味かった。偽りなく本格中華だ。きっちり辛くてうまい。ご飯がおかわり自由。減量中なのにおかわりしてしまった。蔵前の現場では「味道」に通ってしまうだろうな。夕方、残業して左官を終わらせて、下北沢へ。「古書ビビビ」で阿佐田哲也著『東一局五十二本場』、赤瀬川原平著『芸術原論』、沢木耕太郎著『銀河を渡る』、村上龍著『村上龍文学的エッセイ集』を買う。沢木さんの本も村上さんの本も立派なハードカバーの厚い本だが、安かった。だが、通勤時の満員電車内でハードカバー本を読むのは大変だし、なかなか読み進められないだろうなあ。その後、スズナリで東京乾電池『12人の怒れる男』(演出・柄本明)を観劇。これがめちゃくちゃ面白かった!腰が心配だったが、それを忘れさせるくらい芝居にのめり込んで観てしまった。出演者はほとんど知り合いなのだが、そんなこと関係なく、舞台上の成り行きを見守った。見守ったというより、無罪票を最初に入れた陪審員(飯塚三の介さんが演じたのだが、抜群によかった!)に肩入れしてしまい、話の展開にいちいち驚いた。窓から雨降る遠景の街がみえる終わり方にもグッと来た。今まで結構、東京乾電池の芝居を観て来たが、一番面白く感じた。(今まで1番好きだったのは『はと男』)岡部尚たんや西本竜樹さん、ヤットくん、柴田鷹男くんにも会えたので、興奮して「めちゃ面白かった!」と伝える。尚たんに促されて、柄本明さんにも挨拶する。ニコニコしながら「これ、面白いよね。宣伝してよ」と言われた。尚たんと「風流四季」で飲む。柄本さんの演出を色々きく。柄本さんの演出を受けてみたいなあ。めちゃいい芝居を観れたが、やはり腰はきつかったらしく、帰りの電車で立ち上がれなくなる。あぶねえ。1時間45分の芝居で立てなくなるとは。不甲斐ない。帰りの電車で小林信彦著『一少年の観た聖戦』読み終わる。
某日、蔵前で内装仕事。腰痛がひどい。電車移動の最中もビキビキきてしまう。電車内で読み始めた赤瀬川原平著『芸術原論』が面白い。赤瀬川さんをあまり読んでこなかったので、きちんと読まないといけねえ。本日は2階フロア全体の床塗装。2液性のモノなので、手間がかかる。昼は「味道」を楽しみにしていたのだが残念なことに休みだった。近くのアジア料理「タベキング」でチキンカレーとナン2枚。本日も山田さんが奢ってくれる。夕方までパキパキやって、新宿へ。西口の喫茶店「ピース」で、フランスに住んでいる澁谷悠くんとお茶をする。オノダの現場通訳で出会ってから、澁谷くんの帰国時は定期的に会っている。澁谷くんは年下だが、ものの考え方をしっかり持っていて、アタシより数段しっかりしている青年。亡くなった澁谷くんの祖母の話や澁谷くんの監督した中編映画の話をする。映画の完成が楽しみだ。赤坂の美味そうなたい焼きもいただく。ありがとうございました。夜、無性に『地獄の黙示録』が観たくなりDVDを探すが見つからず。結局、ポケモンをやって寝る。
地獄の黙示録DVD