某日、J組の撮影で新宿集合。今日も始発。電車の中で『猛き黄金の国 二宮金次郎』読む。面白いが開墾シーンやモブシーンを考えると映画にはしにくいと思う。J組では衣装部に中村みのりさんがいる。中村さんとは森組『福田村事件』で一緒にサバイブしていたので、森組の現場話で盛り上がる。主演夫婦は若葉竜也くんと深川麻衣さん。若葉くんと映画の現場が一緒になるのは吉田康弘組『旅立ちの島唄』以来10年ぶり。ただ、Aさんを交えて飲んだりしていたので、会ってはいたが。若葉くんと大衆演劇の裏話で盛り上がる。深川さんとはお初だったが、朝からメイクの弥生さんや中村さんに際どいシャレをかましている姿を見ていたらしく、「マツーラさんって凄く怖い方でお話しできないと思っていました」と言われる。や、全くそんな事ないんだけどなあ。どこの現場行っても変わらないし、スケべな事ばっか言ってる不真面目なおじさんで、オッカナイイメージなんてないと思うんだけど。『ガンニバル』の時も永田くんに同じことを言われた。なぜだ?片岡礼子さんとは今回とうとう夫婦役。田口トモロヲさんとは初めましてだった。トモロヲさんが「Jさんって早くていいね」と褒めていたので、Jさんに伝えると「実は助監督の時にトモロヲさんにメチャクチャ怒られた事があってさ。覚えてなくて良かったよ」との事。色々あるよな。自分も制作部として初の現場(確か監督は安藤尋さんのエロVシネ)のチーフ助監督がJさんで、初日朝イチに、引っ叩かれたのを覚えている。6時半集合は朝飯を用意しなきゃいけない事を知らなかったので、それを怒られたんだと思う。その後、Jさんのデビュー作にも呼んでもらって以来、J組の低予算作品をやりまくった。何があるかわからないよなあ。Jさんが「オッケー」を出した後、タバコの「若葉」をすごい勢いで吸う姿は20年前と変わらなくて可笑しかった。あれ?あの頃って「ゴールデンバット」吸ってた気がするな。その事を言うと、「マツーラだって出会った瞬間から生意気で変わってねーよ」と言われた。マジかよ。忖度しながら生きてるはずなのになあ。そんなJさんだが、演出は分かりやすいし、基本的に芝居は任せてくれるし、何しろ早撮り1発勝負なので、やっていて楽しい。若葉くんもスピード感に驚いていた。昔、Jさんのやっていた、3日撮りの現場なんかもっと早かったぜー。終了予定時刻は21時だったのに19時過ぎには終わって帰る。本日も実家。カミさんはだいぶ吐き気も治まってきたらしい。親父に『二宮金次郎』の感想を伝えると、今度は井原忠政著『人撃ち稼業』を渡される。サッカーワールドカップの日本対ドイツ戦が中継していたので見ていたが、前半でドイツに先制されたので、諦めて寝る。


 某日、日下組『冗談じゃないよ』撮影で戸越銀座へ。22、23歳の頃は戸越銀座に住んでいた。戸越幼稚園の上の部屋を学生6人でシェアハウスとして使っていた。懐かしいな。演出部のギータこと柳田くんにワールドカッップの日本対ドイツ戦の結果を聞いて驚いた。まさか逆転勝ちをしたとは、、、。信じられずギータにダイジェストを見せてもらう。撮影のテラも一緒になってみていて「マツーラさんの反応が新鮮ですよ」と言われる。すごいな、ドイツに勝つなんて。若いクルーが集まったチームなので、皆サッカーの話をしていた。や、若者がサッカー好きなんて変か。たまたまサッカー好きが集まっていただけか。撮影で大橋未歩さんと一緒になる。出演者の出しがあったので、バタバタとやって終わる。日下組はオールアップ。若い子たちとやれて楽しかったな。日下監督もまだ23歳だし、これからも監督してほしい。みな、頑張れよー。帰って「カフェ・ド・クリエ」でJ組のセリフ練習をやる。夜、実家で飯を食う。本日から寝るのは本宅にする。だって寝つきが悪いんだもん。テラから電話。「バタバタしちゃってすみませんでした」なんて珍しく神妙に謝られてしまう。全くそんな事なかったし、個人的にはすごく楽しんだ現場だったんだけどな。今回はテラが誘ってくれたから、なんか気にしちゃったのかもしれないが、「楽しかったしまた誘ってくれー」と頼んでおく。テラは今後、独立映画を支えるカメラマンになるだろうし、変に気を使わんでほしい。テラみたいな奴らが今後の邦画を担ってくんだからな!


 某日、J組の撮影で新宿集合。新宿郵便局前でおっかなそうな集団に「やってるねえ!」と声をかけられて、見てみたら先日の賀々組のプロデューサーの村岡しんさんと田中彪さんだった。「今、J組ですよ、しんさんは?」「佐藤寿保組だよ!頑張ってなあ!」なんてエールを交換する。こういうのは嬉しい。みんな頑張ってるな!ハイエースに乗り込むと深川さんから「お知り合いだったんですね」と声をかけられる。しんさんの映画業界武勇伝を話したかったが、はたして深川さんが笑ってくれるか微妙だったので自重する。しかし深川さんが毎朝集合場所に来るなんて意外だった。自車か事務所が車を出すと思っていたが、本人はあっけらかんと「いつもバス移動です」なんて言う。なんか好感持っちゃうよな。自分は岸部一徳さんがいつも本隊移動でロケバスに乗るという話を聞いて、かっこいいなあと憧れたのだ。まあ、車も持ってないし、事務所に車を出してもらうような俳優じゃないしね。メイク衣装で使う集会場で、若葉くんとおしゃべり。深川さんと深川さんのマネージャーさんと、森組で井浦新さんに御世話になった話をしていたら、マネージャーさんが「来年、井浦とまた一緒ですね」と言うので「え?なんの話ですか?」「ゴールデンカムイです」「俺、ゴールデンカムイは出ませんよ?」「え!昨日その話をしたんですよ、松浦さんの名前があったので」と言う。どういうこっちゃ?よくわからん。松浦祐也じゃなくて、松浦慎一郎くんじゃないかな?J組の撮影は、片岡礼子さんと夫婦シーンを3つ。自分で言うのも痴がましいが、片岡さんと夫婦だもんなあ。嬉しい。『愛の新世界』や『ハッシュ』を観ていた憧れていた俳優。待ち時間は片岡さんとずーっと話す。片岡さんは芝居に対して凄く真剣で、ずっと役のことやアプローチについて話す。アタシは基本的に役や芝居のことを話すのは苦手なのだが、片岡さんだから聞いてられた。脳出血で倒れた話や家族の話を当たり前に話されるので驚いた。ざっくばらんな方なんだ。自分が内装屋と兼業だと言うと「そんなの当たり前だよ、そっちの方がいいよ、私だって○○でやってたもん」「映画にこだわってたら家庭と両立なんて大変だし、働かないとダメよ」「奥さんと長いんでしょ?ちゃんと愛してお金入れな」なんて励まされてしまう。いい俳優っていうか、いい先輩だな!そんな片岡さんが相手役なので思いっきりやれて楽しかった。帰りも電車でお話ししながら帰る。素晴らしい方と出会えたなあ。


 某日、久しぶりに撮影がない。無職渡世。9時過ぎまで起きなかった。カミさんがバタバタと掃除洗濯をしていて、その音で目を覚ます。病み上がりなんだからゆっくりしたらいいのに。アタシが「やるよ」と手伝おうとしたら「二度手間になるから触るな」と怒られた。テーブルの上に事務所から今月の明細表が届いていた。開封されていて、振込金額は1万8千円だった。「おめえ、いつまでも高校生のバイト代みたいな明細置いとくな、穀潰しが」とキツイお言葉をかまされる。コーヒーを落としてすすっていると「金も入れねえのによくゆっくりしてられるな、働けよハゲ」と追い打ちをかけられる。タバコ吸いがてら、庭に緊急避難する。落ち葉を掃いて時間を潰してると「年寄りでも出来る事すんな、窓でも磨けハゲが!」うちにいても全く落ち着かない。アタシが撮影現場が好きな理由は、そこに居場所があるからだろうな。倅を連れてOTへ。花岡先生が今日も可愛かった。倅もなぜか今日はやる気に溢れていて驚いた。帰って昼飯を食うと「稼ぎがねえのに一丁前に食いやがって。燃費の悪い奴だ」カミさんの小言が止まらないのは元気な証拠。調子が戻ってよかった。午後、溜まっていた日記を書いたり、コメントを書いたり、請求書を書いたり雑務をこなす。夕方、寝てしまう。夜、作業を終わらせて黒澤明監督『どですかでん』を観る。今回は田中邦衛さんと井川比佐志の(黒澤組なのに)自由に見える掛け合いの素晴らしさ、そして伴淳三郎の外連味のある芝居にグッときた。


 某日、無職渡世。午前中、倅を連れて府中のゲームセンター、タイトーステーションに行く。金がないからカミさんから小遣いをせびる。府中本町が混んでいて不思議だったが、ジャパンカップの開催日だそうだ。倅がお菓子のクレーンゲームにはまっているのでタイトーステイションに行ったのだが、すごい数のクレーンゲームに圧倒された。昔のクレーンゲームと違って、インチキくさい景品ではない。しかも店員さんが「どうぞ取ってください」とばかり、次々に景品を補充してくれる。でかいお菓子がバタバタ取れるし、あっという間に金を使い果たす。1時間半くらいで持ち金を使ってカミさんに電話すると「昼飯代含めて渡したのに、ゲームで使い果たすバカがどこにいるんだ!」と怒鳴られてしまう。しかし、ここは危ない。バカになって遊んでしまう。デズニーランドより夢の国だった。大人の夢の国、府中競馬場に後ろ髪を引かれながらも帰る。昼飯を食って、倅と実家に行って、自転車の練習をする。漕ぎ出しで、バランスが取れてきたのでもう少しで乗れそう。バッティングもやる。山崎努著『「俳優」の肩ごしに』を購入。夕方帰って、サッカーワールドカップ・日本対コスタリカ戦を観る。日本敗戦。まあ、選手もお互い一生懸命やってるから仕方ないやね。


 某日、内装仕事で門仲。通勤時に三國連太郎・沖浦和光著『芸能と差別の深層』を読む。今日の作業自体はなんちゃない感じだったが、嶺豪一くん、伊藤くん、設備屋のサカイさん、電気屋の堀川さんとレイジ、大工の山田さんとタクさん、現場がオールスターだった。昼は久しぶりに中華屋「鴻利」。担担麺と水餃子。相変わらず肉体労働者のおっさんで栄えていて、相変わらず可もなく不可もない味で安心した。マネージャーの井上さんから電話。井上淳一組『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』のオファーがあり、日程を調整していたが結局はまらなかった。宮藤組でヒゲが繋がっていたのだが、オファーをいただいた役は髭を剃らねばならず、スケジュール的にそれは出来ないので仕方ない。夜、倅と風呂に入っていたら「ゴリ、サボロじゃなくて、スボロじゃなくて、三色丼の肉の細かいのなんだっけ?」「、、、そぼろ?」「あ、そぼろか」最近倅はいろいろな言葉を使おうとして、面白い。「コンソメ」を「ソメンコ」と言っていたり、「すあま」を「すまあ」と言ったり。なかなかセンスがある。倉本聰著『破れ星、流れた』読み終わる。


 某日、麻美組『ラストサマー』撮影で渋谷へ。橋野純平くんと一緒。控え室で前のシーンを撮り終えた、奥津裕也くん、豊満亮くん、細川佳央くんと一緒になる。現在の独立系映画の強面俳優が一堂に会した感じ。衣装より私服の方がイカつくヤンチャな3人だった。主演の林裕太くんからお土産に日本酒をいただく。なんか気を遣わせちゃって申し訳ない。林くんはわざわざ自分らが出るシーンも見学して行くと言う。なんて真面目でいい奴なんだ。俺らの芝居観ても勉強になんないのだろうに。スタッフも監督も凄くやる気に満ちていてなんだか嬉しい。さっさか進んで3時前に撮影終了。橋野くんと喫茶店でお茶して帰る。倅を保育園に迎えに行くと、倅と同級生の女の子にジャレつかれてちょっと嬉しい。移動中に井原忠政著『人撃ち稼業』読み終える。夜、佐賀純一著『浅草博徒一代』読み終える。やっぱちくま文庫はいいなあ。アタシもいつかはちくま文庫で出版したいなあ。


 某日、内装仕事で勝どき。壁のシートップ左官。嶺豪一くんと一緒に作業する。昼は抜いて、休憩せずに早目に仕事を終わらせる。豪一くんと共に、黄金町へ。二人で天丼屋「豊野」で海鮮丼大盛りを食う。やはり豊野丼はメチャクチャ美味い。東洋片岡さんみたいなよくしゃべる親父と無口なお兄さんのコンビも健在。前は800円だったが、値上げして900円になっていた。それでも安いが。近くのパチンコ屋に寄ってマイジャグに千円入れると、二人ともビッグをひいた。勝負したかったが、豪一に止められる。伊勢崎町の居酒屋で飲んでいると澁谷麻美さんが合流。三人で飲む。ジャック&ベティで張元香織監督『船長さんのかわいい奥さん』上映後に、澁谷さん、張元さんと登壇。自分の大好きな作品だが、なかなか上映の機会に恵まれなかった。いい映画なんだよなあ。ジャックアンドベティさんで上映できてよかった。これを読んでくれている皆様、張元香織監督作『船長さんのかわいい奥さん』オススメなんで、上映時や配信なんかで観られる機会がございましたら、ぜひ観てくださいませ!世の中にはなかなか日の目を見ない映画がたくさんございます。その中でも、光る1本が『船長さんのかわいい奥さん』なんですよ。張元さんは演出も素晴らしいし、イイ監督なので、これから期待なんです!騙されたと思ってご覧あれ!