某日、朝、倅を保育園に送って、「カフェ・ド・クリエ」へ。日下組と麻美組のセリフを当たる。午後、浅草へ。マネージャーの井上さんと合流。西徳寺へ向かい、井上さんがお世話になっていた中村勘三郎さんの御墓参りに行く。自分はお会いできなかったが、手を合わせられてよかった。鷲神社で酉の市をやっていたこともあり、中村七之助さんと挨拶する。自分より年下なのに、白髪混じりで貫禄があって、それこそ「役者が違うな」って感じでした。なにしろケツがバチーンと出ていて足も太く、プロ野球選手みたいな体格で驚いた。ちなみに七之助さんのマネージャーをしているのが、井上さんの実弟。七之助さんの車に乗せてもらって、洋食屋「ヨシカミ」へ。井上さんが「ここはなんでも美味いです」と太鼓判を押す店。ランチのメンチカツとカレーのセット大盛りとカニクリームコロッケ、ハムサラダを注文。うめえのなんのって驚いた。驚いてばっかだな田舎者!カレーもドロドロ系で文句なし!秋津にあった名カレー屋「デリー」より美味いと思ってしまった。厨房に10人くらいコックさんがいてわちゃわちゃ活気があり、常にお客さんが行列だった。浅草寺に出された平成中村座で宮藤官九郎作演の『唐茄子屋 不思議国之若旦那』を観劇。人生初歌舞伎。メチャクチャ面白かった!声を上げて笑ってしまった。歌舞伎ってこんなに楽しいのか!今まで見れていなかったことを後悔した。そして、なによりも我らが荒川良々さん!スターの歌舞伎俳優に囲まれているのに、一番凄かった!良々さんが輝いているのが誇らしく、興奮した。休憩後、『乗合船恵方萬歳』という踊りを観る。ずっと出続けている勘九郎さんはじめ歌舞伎役者ってすごいな。これを1ヶ月に27日間やり続ける。とんでもない体力だ。役者ってこういう人をいう言葉なんだろうな。井上さんと写真家の桑田絵梨さんと「ひょうたん鍋」で飲む。桑田さんから写真集『東京祭臭』をいただき、帰り際に写真を撮ってもらう。素敵な方でございました。そのまま渋谷はイメージフォーラムへ向かって、リム・カーワイ監督と『あなたの微笑み』のトークショウ。映画を観てくれていた小林聖太郎監督とお話ししながら帰る。濃ゆい1日だったなあ。


 某日、朝、飯田橋でマネージャーの井上さんと待ち合わせて、J組の衣小合わせ。Jさんと久しぶりに会う。二人で話していたら『デコトラ4』が最後にやった作品らしい。今やJさんは押しも押されぬ大人気監督。今年は5本も撮ったとのこと。すげえな。サクッと衣装合わせを終えて、秋津に戻る。J組の製本台本をもらう。そして方言CDももらった。しかし総合スケジュールはまだ出ない、、、。なかなか総スケが出ない作品ばっかだなあ。午後、保育園に倅をお迎えして、こぐまの学校へ。倅は参加2回目だが、6人の同級生とダチになっているそうで、楽しそう。後半の授業は見学させてもらった。消しゴムの使い方やノートの取り方を教わっていた。板書をするのに、先生が書いたマス目まで模写している子がいて、感心した。本屋でケン・リュウ編『金色昔日 現代中国SFアンソロジー』を購入。読み応えがありそうな厚さ。夕方、カミさんと収入のことで喧嘩。7時にふて寝したらそのまま熟睡。金のことってどうにかなるもんだし、どうにかならんときは借りるしかないんだから、考えたり悩んだりする時間が無駄だと思うのだが、その考え方が気に入らねえんだろうな。


 某日、田中聡監督『朽ちる』の撮影で、三鷹台へ。母親が異形のモノに成り果て、それを介護する倅の話。田中組は2020年に撮影が始まり、1日で第3章まで撮った。次が昨年2021年の秋で1日で第4章を撮影。そして今年2022年に1日で第5章を撮影。なんと3日間の撮影で3年かかっている。そしてあと2章あるので、このペースだと2025年あたりに撮り終わるのだろうか?壮大で贅沢な撮影である。これには理由があって、完全な自主映画なので特殊メイクや造形も時間があるときに制作するからなのだ。羽子田洋子さんは6時入りで特殊メイク。自分は9時入りで、10時シュート開始予定だったが、メイクが終わらず、田中さんらとおしゃべり。13時撮影開始。6カットで終了。セリフが秋田弁だったのを忘れていた。あぶねー。羽子田さんは今日でオールアップ。次回以降は完全に変身しているので、吹き替えでやるらしい。ありがとうございました。撮影終了後、そのまま吉祥寺に出て、「バサラブックス」で佐賀純一著『浅草博徒一代』、三國連太郎・沖浦和光著『芸能と差別の深層』、『赤塚不二夫対談集 これでいいのだ』を購入。新宿に出て、佐藤五郎さん、遠藤雄弥くんと会い、タイ料理屋で飲む。実はこの3人で飲むのは初だった。『オノダ』の話や『福田村事件』の話が飛び交う。そして12月から1ヶ月、路上生活を送ることになった五郎さんの話。一軒じゃ終わらず、2件目のバーで終電まで話す。五郎さん、無事に新年を迎えて欲しい。


 某日、夜中の3時頃に倅が嘔吐。そのまま眠れず。内装仕事で工房へ。本当はJ組のセリフをやらないといけないのだが、金がないから働かなけりゃあならんのよ。マジメにやれよ、兼業俳優!それでも来月の支払いがヤバイなあ。某組のギャラが今月末に入らないと、カミさんはいよいよ俺をうちから追い出すつもりだ。しかし、手持ちの金もないので、日銭稼ぎで働かないといかん。撮影が立て込むのは嬉しいが、生活はより不安定になる。総合的に映画のギャラが安いからなんですわ!しかし大声で「ギャラが安いぞ!」なんて叫んでも、「テメエの出演料はそんなもんさ」って鼻で笑われておわりだろうしなあ。アタシャどうすりゃあいいのさ!そんな事を悶々と考えながら、代々木の現場で什器設置。昼は伊藤くんとトンカツ屋「代々木庵」でトンカツ定食大盛り。800円で大満足。ここって昔、中川組の映画でロケしたような気がする。平日は行列なのに土曜だからか2組しか客がいなかった。夕方まで作業して工房に戻ると、結婚パーチーをしていた方から「岬の兄妹のお兄さんですか?」と聞かれて驚く。夜、日記を書く。ツイッターで森達也さんがニューズウィーク日本版の記事で『岬の兄妹』のことを書いてくれているのを知った。嬉しかった。J組、総スケが出る。初日、2日目の撮影シーンが変わっていて慌てる。今日は疲れた。明日からセリフやる。


 某日、倅は復活。ヒドくならずによかった。倅は、今年のクリスマスプレゼントに、「ポケモンスカーレット」というスイッチのゲームが欲しいらしく、サンタに手紙を書いていた。サンタからの返事をノルウェーから出してくれる企画があって、それを申し込む。午前中、「カフェ・ド・クリエ」でJ組のセリフ練習。今回は三河弁。しかしアクセントが関東弁に近いからそこまで癖はない。しかもJ組はセリフ量が少ない。役で少ないのではなく、脚本のセリフ全てが少なめなので、Jさんの特徴なのかも知らん。シーン自体も長いものは少ない。覚えるのに苦労しそうなセリフがあまりないので安心した。昼に所沢でカミさんと倅に合流して、ガストで昼飯を食う。ミックスグリルライス大盛り。フニャフニャな鶏肉のトマト煮にガッカリしたが、ファミレスの料理に期待しちゃいけねえ。二人と別れて、J組のセリフを歩き念仏。聖地霊園まで行って、祖父母の墓参りをして帰る。夕方、昼寝。夜、倅とカミさんの喧嘩が勃発。仲裁に入る。倅は進研ゼミが簡単でつまらんからやりたくないらしい。とりあえず、義務教育までの重要さを話す。クリスマスプレゼントのポケモンスカーレットの時間も約束で決める。土日祝日の2時間。まああとはやってみてだな。倅がどんだけポケモンをやりたいか知って驚く。周りに聞くと、スイッチは小学校1、2年生でデビューする人が多い。自分も実家ではテレビゲームがなかったのでまだ早いと思ったのだが、カミさんはゲーマーだったらしく理解がある。サンタさんに手紙まで書いて楽しみにしている倅を見ると微笑ましい。倅はどう育つのだろうか?まあ、少なくともアタシには似ないでいただきたいもんですわ。


 某日、日下組『冗談じゃないよ』撮影で高輪ゲートウェイへ。はじめての高輪ゲートウェイ駅。なんだろうな?面白みを感じない駅だ。と、いうか駅周辺を大規模開発していて、なーんもない。大型ダンプが工事現場からひっきりなしに出たり入ったりしている。まだまだこれからな街だな。今作も撮影は寺本くん(テラ)、イシのコンビ。そして演出部はギータ。『MADCATS』と同じメンツで、勝手知ったる仲だ。スタッフも俳優陣も若く、ウキウキする。パタパタと撮影をやって、あっという間に出番のシーンが終わる。品川から新宿へ。リトルモアの孫さんから連絡があって、夕方から飲む事になる。時間があったので武蔵野館で 関友太郎 · 平瀬謙太朗 · 佐藤雅彦監督(三名の名前があった)『宮松と山下』を観る。これが、面白かった。予備知識も全くなく、香川さん主演だったので観たのだが、『ゆれる』と同じくらいよかったなあ。脇役の尾美さんや津田さんもいいが、中越典子さんっていい俳優だと思った。「タイムズ」でヒーコーしばいて、映画の感想を奥野監督と小林監督に伝える。そのまま「犀門」に行き、孫さんが社長の「アズランド」の皆さんと飲む。弟の伸也が俳優として「アズランド」に所属する事になり、兄としてご挨拶。宇野さんも参加されていて、金子さんや鈴木卓爾さん、謙作さんらとわいわいする。しばらく飲みたかったのだが、宇野さんや孫さんが明日からインするJ組の現場を心配してくれて、9時過ぎに帰る。うちに帰ると、カミさんに倅のノロがうつったらしく、吐きまくっている。世話を焼こうとしたら、「テメーにまでうつったら面倒だから今日から実家にいけ」と御達しが出る。共倒れになって撮影に迷惑かけても仕方ねえので、言われた通り実家へ避難する。20年ぶりに実家で寝たが、なかなか寝付けず。もう、自分の中では川沿いのうちが実家で、ここは実家の感覚じゃねえんだなあ。


 某日、J組の撮影で新宿集合。始発で出る。新宿から入間郡の一軒家での撮影。初日、ファーストカットを自分の出番で幕開き。久しぶりのJ組だが、Jさんは相変わらずセッカチで、撮影はバンバン進む。なんだったらテストなのに、Jさんから「オッケー」が出てしまう。何かに取り憑かれた様に次のアングルを探し出すJさんに、みんなで「Jさん!テストだから!」と突っ込んでしまった。2シーンを30分で撮ってしまう。クッソ早い!まだ9時前だったのに出番が終わってしまった。武州長瀬という初めての駅から帰る。そのまま下北沢に出て、班長さんと「トロワ・シャンブル」でコーヒー。「働けど働けど楽にならざり我が暮らしじっと手を見る」って話を、お互いに交わす。何故なのかなあ。班長さんが「パンコントマテ」でパスタを奢ってくれたので、ペペロンチーノの大盛りを食う。ご馳走様でした。班長さんと別れて、K2でずーっと観たかった工藤梨穂監督の『裸足で鳴らしてみせろ』を観る。素晴らしい映画!大傑作!驚いた。忖度なく、今年一番驚いた作品だった。撮影の佐々木さんも良かったなあ。主演の俳優2人も素晴らしかった。あんな繊細な芝居をどうやって演出したのだろうか?工藤さんこんな才気走った映画を監督する方には見えなかった。飲んだ印象だと、本当におぼこい人だったのになあ。すごい。邦画界はこの才能を大切にしなきゃいかんぜよ。興奮冷めやらぬまま、新代田で井上さんと待ち合わせて、「カフェ2スタ」でお茶。井上さんに『裸足で鳴らしてみせろ』の話をする。時間になったので、宮藤官九郎組『季節のない街』の衣装合わせ。メイクのルミさん、衣装の立花さん、小道具の福田さんなど、顔なじみのメンツがいたので先に言い訳をしておこうと「さっきションベンしたらパンツに染みちゃって。テニスボールくらいの大きさだけど気にしないで」なんて話していたら、横浜聡子さんがいて驚いた。横浜さんが監督するなんて知らなかったし、ちゃんと話すのが初めてなのに、ナンテコッタと後悔した。初対面の印象が最悪じゃないですか。横浜さんの映画好きなのにさあ。台本をさっきもらったので読んでもいない。だから横浜さんがいるのも知らなかったのだ。まあ、横浜さんと鈴木常吉さんのお話もできたし、渡辺監督、(リモートで)宮藤監督とも話せてよかった。衣装合わせは始終宮藤さんが褒めたり喜んだりしてくれるので、とても和やかで安心した。さあ、『どですかでん』も観直さないとな。実家に帰って寝る。枕が合わない。親父から本宮ひろ志著『猛き黄金の国 二宮金次郎』を渡される。