某月某日、朝、倅を保育園に送って、「カフェ・ド・クリエ」へ。某組の新たな差し込み(ラスト一連が大がわりした)を読み、セリフ練習。方言なので何度も口に出して馴染ませる。内装業と俳優業のスケジュール整理をする。俳優業で撮影日以外の「衣小合わせ」や「アフレコ」、「舞台挨拶」、「セリフ練習日」などの稼働日が多く、どうにもならなくなってきた。内装仕事をやって日銭を稼がないといかんのですが、ムムム、、、。リハーサルや本読みは断っているが、もう舞台挨拶も考えなきゃならんなあ。「生活」と「俳優活動」のバランスが悪くて参ってしまう。結局、撮影日で1ヶ月の半分を取られると内装仕事ができず、生活費が捻出できない。先月は危うーい綱渡りだったが何とか乗り切った。ただ、今月は俳優業の収入の見込みがないし(ギャラは撮影終了月の末日に請求され、振り込まれるのが約2ヶ月後以降なので、収入のタイムラグが出来るのです)、某組とJ組でスケジュールを取られていて、内装仕事が全く入れられない。どうすりゃあいいのよ!どうにもならんぜ、おっかさん!俳優は撮影日だけでギャラに換算されるが、実際はセリフを入れなきゃならんし、衣小合わせ・アフレコ・上映時の舞台登壇と、お金に換算されない稼働日が多いのです。悲しいなあ。愚痴ばっかりの兼業俳優だ!悲観もそこそこに、有楽町へ移動して、朝日ホールで『東京フィルメックス』のコンペ作品、ダヴィ・シュー監督『ソウルへ帰る』を観る。これが、超傑作だった!友人のダヴィが監督したからではなく、まぎれもない傑作。主演女優のパク・ジミンさんが、腰抜けるくらい素晴らしかった。そして出てくる俳優が皆、良かった。ダヴィはどうやって演出しているんだろうか?劇場は残念ながら閑古鳥がフヨフヨしていた。フィルメックスは選出作品の質がいいんだから、集客を頑張っていただきたい!そして俳優部諸君!同時期に開催されているバカみたいに華やかな某映画祭もいいけどさあ、フィルメックス作品を観ようぜ!喫茶店に入り、興奮冷め止まぬうちに、ダヴィに感想をメールする。北参道に移動し、麻美組『ロストサマー』の衣装合わせ。大瀬誠くんと合流して、コーヒーすすりながらダベる。ほとんどが尾篭な話。衣装合わせもサクッと終わって、帰宅。本屋でAさんへの差し入れ本や、DVDを買いたいが、金欠のため諦める。本日発売のブルータス映画特集で美術デザイナー三ツ松けいこさんが『岬の兄妹』を挙げてくれているとお袋から連絡があったので、確認する。面識のない方なので嬉しい。帰るとカミさんがジロ喪失で泣いていた。「ジロ、まだこの部屋にいる気がする」「そんな泣いてるとジロも成仏できないぞ」「ほら、この辺歩いてる感じがする」「魂だから歩けないだろ。フヨフヨ浮いてるだろ」「魂でもジロは浮かないよ、歩いてる」なんて話をした。夜、戌井昭人著『厄介な男たち』を読み終わる。


 某日、内装仕事で勝どき。たとえ1日だろうと空いている日は、必ず内装仕事を入れないと今月の収入がヤバイ。死活問題ってこういう事だべな。映画を観たいが、そんな時間も金もない。通勤時は読書か、セリフを吹き込んだレコーダーを聞いてセリフ練習。今日の通勤読書は、吉村昭著『敵討』。これも映画になったら面白い小説だ。アタシは時代劇で侍役をやったことがないので、やってみてえもんだ。本日は勝どきのワインバーで塗装作業。昼はカレー。現場の近所にある唐揚げ食い放題の店(店名がわからない)。減量しなきゃいけないのに、「食い放題」の魅力に我慢できずバカみたいに食ってしまう。食った後に必ず後悔するのに、ホント、おバカさんよね!苦労するのはテメエなんだから、文句あるか!守屋文雄さんと大工の柳沢さんに久しぶりに会った。内装現場の右隣の駄菓子屋さんのばあちゃんと、左隣の魚屋の爺さんと休憩中に話す。駄菓子屋は雨が降るとお休みらしい。湿度でばあさんの関節痛がひどくなるそうで、「アンタも身体には気を付けなよ」と言われる。魚屋のおっさんは、佃神社の八角神輿について熱心に語っていた。この辺の年配者は、お祭りが生き甲斐なのだ。夜、帰ってもジロがいなくてさみしく思う。生後間もない頃から引き取ったので、タロとジロの兄弟猫は自分が3時間ごとにミルクをあげて育てた。甘えん坊で、アタシの薬指をチュッチュと吸う癖があった。死んだら無だと思っているが、ジロを感じられるなら感じたくもある。

 某日、某組の撮影。早朝から電車で常磐線赤塚駅へ。途中、飯田芳くんと会う。赤塚から宿泊所兼ベース基地の「いずみ屋」で衣装を着て、撮影場所の金山跡地へ移動。山の中での撮影で、デイシーンの撮影は日没との戦い。今回は16ミリフィルムでの撮影なのだが、照明機材は最小限なので、日が暮れたら勝負権はない。撮影の北川さんはじめスタッフは焦っているが、監督である某は、友人と話し込んでしまい、いつもとペースは変わらない。予定のシーンを撮りこぼして日没サスペンデッド。早々に予定スケジュールが崩れているが、大丈夫なのだろうか?某とは学生時代からの付き合いで、今までの映画は完全な自主映画だった。自主映画であればスケジュールなんてそもそもあって無い様なモノだが、今回は自主映画の体制だが予算やスケジュールがある作品。某のペースで撮り切れるのか心配になる。18時には宿に着いたので、柳俊太郎くん、水上剣星くん、KEITOさん、藤江琢磨くんと飯に行く。大工町に出るが祝日とコロナ閉店の影響で、開いている店が少ない。伝説の客引きのおじさんに勧められた「潮彩」で飲む。柳くんのバカ話で盛り上がっていたが、飯田芳くん、森岡龍くん、某とその友人が合流して、空気が変わる。某が「○○さんはセンスがない。合わない」って言い出したもんだから、頭にきて怒ってしまった。しかも、監督自らそんな事を俳優部がいる場で言うなんて、どうかしている。俳優部は監督がそんなこと言ったら「ああ、そうなんだ」って信じてしまう。アタシが見ている限り、○○さんは監督の意見を極力具現化しようと、最大限の努力をしてくれている。その上、全力で現場をより豊かにする為に我が身を削ってまで時間と人脈を使ってくれている。そんな人の事を、テメエが言える立場じゃねえだろ!ホンキで怒った。年の若い俳優部の前で怒ったのは申し訳ないが、自分の組の為に集まってくれているメンツだゼ。その事を想像できないのだろうか?某はそれを言われても、謝らずに不貞腐れて言い返してきた。驚いたね。マジで降板しようかと思ったが、一生懸命にやっている他の俳優部に悪いと思い踏み留まる。今回の撮影は我慢するが、もう某とは映画をやれねえな。ただ、そんな某を他の俳優部がかばって止めに入った事が嬉しくもあった。某は才能あるし、やっぱ面白い。今回初参加の俳優も、そこを理解してくれていたのが嬉しかった。柳くんと龍と飯田ともう1軒飲みに行く。主演の柳くんが動揺せずに「マツーラさん、面白い映画にしましょうよ」と気遣ってくれた。柳くんはカラオケで松山千春を熱唱していて、上手くて笑ってしまった。自分より歳も若いし、主役の重荷を背負っているのに、周りをちゃんと見ていて立派なヒトだなと感心した。先輩として朝まで飲ませてあげたかったが、金がないので1時間で上がる。貧乏な先輩で申し訳ない!

 某日、某組撮影で、5時半起床6時メイク。今回は老けメイクとカツラがあるから、メイクの征矢さんは準備が早くて大変だろう。話していたら、どうやら征矢さんとは藤原健一組『最強兵器女子高生 RIKA』で一緒だったらしいが、全く寝れない現場で、申し訳ないが全然記憶になかった。朝イチで支度は出来ていたが番手変更になり、10時まで部屋で寝る。10時過ぎても本隊からは連絡がなく、チェックアウトの時間だったので部屋を出て外でタバコを吸っていたら、ケイトも出てきた。ケイトも「どうしたらいいか連絡がないんです」と言っていた。さすがだなあ。撮影現場でイッパイイッパイらしく、残された俳優部に全く手が回っていない。昼くらいにようやく江尻くんが迎えにくる。結局今日も、午後からの出番。デイシーンでのオープン撮影だったので、日没との戦い。森岡龍くんが監督補的な立場で現場をぶん回してくれて、大いに助かる。龍は現場の陣中見舞いに来てくれただけだったのに、一泊してその上撮影まで手伝ってくれている。ありがたいよな。照明部で秋山さんが参加してくれて、嬉しくなる。北川さんが呼んでくれたそうだ。村上ロックさんや島田芯八さんも久しぶりに会う。相変わらず某はモニターを抱えた友人とゴチャゴチャやっていたが、今日は龍が某と現場間の通訳をしてくれて、本当に助かった。日が暮れても無理やりやって、最後は何をやっているかよくわからなかったが撮り切る。芯八さんは神経をやってしまったらしく足を引きずっていた。そんな芯八さんは結局出番なしだったっぽくて、本当に申し訳ない。山は日が暮れるとクソ寒くて困った。プロデューサーの筒井さんの運転で新宿バラし。夜、水澤紳吾さんから電話。Aさんの事を話し合う。

 某日、朝、お隣のKさんと久しぶりに話す。午前中、倅を連れて実家へ。弟の伸也が来ていて、香山哲さんの『ベルリンうわの空』という漫画を読ませてもらう。3巻あったのだが一気に読んでしまうくらい面白かった。思想的にも漫画的にも面白い。香山さんの漫画をもっと読みたいと思う。昼飯をジイちゃんと伸也と倅と食べて、午後、倅と歩いて所沢のツタヤブックスへ。倅が「にゃんこ大戦争」という漫画を買った。アタシも本が欲しかったが、もちろん金がないので買えなかった。帰りがけに「kyon coffee」という自宅焙煎してくれるコーヒー豆屋さんで、豆を200グラム買う。夕方、倅と野球。バッティングが上手くなっている。夜、カミさんが「来年、役者やめないと離婚だ」とキレ散らかす。急にスイッチが入るので怖い。理由を聞くと「20年も努力してきたのに貧乏から抜け出せなくてほとほと愛想が尽きた」との事。「20年耐えられたんだからもうちょっと頑張れ!」と励ましたら、ケータイで殴られた。ホンキで殴られたのでマジで痛かった。倅はアタシの様を見て爆笑していたが、アタシャ涙が出るくらい痛かったのでございます。マネージャーの井上さんから電話。「J組のスケジュールがはまらなかったんだろうな」と思っていたが、J組と宮藤組が歩み寄ってくれて、敏腕マネージャー「泣きの井上」が、見事に全てのスケジュールをまとめてくれた。嬉しい!これでJ組も宮藤組もどちらもやれる!どちらの作品もやりたかったのだ。スケジュールはビッチビチだけど、はまって本当によかった!しかし、J組という単語を聞いただけで(過去のエロVシネのイメージがあるんだろうな)カミさんの機嫌が更にこじれたのでさっさと部屋に逃げる。うちの中では、映画の話は一切禁止なのだ。だから電話がかかって来ても、映画の話をする際はうちを出て、お外で話しているのです。厳しい制約の中でやってこそ、兼業俳優を続けられているのでございます!もうちょい我慢してくれ、カミさんの堪忍袋!


 某日、午前中、倅をチャリンコに乗せて東所沢のブックオフへ。この店舗ではポケモンカードが大量に売られていて、倅に話すと行きたがっていたのだ。店内に飾られたポケモンカードの量に圧倒されていたが、2枚ほど棚から選んで買っていた。そして300円で5枚カードが入っている(うち2枚がキラカード)ポケカガチャを3回やっていた。その熱の入れように、アタシもビックリマンシールの収集に熱を上げていたことを思い出す。そういや、あの大量にあったビックリマンシールやガンダムのカードダス、ドラゴンボールのカードはどこにやってしまったのだろうか?記憶を思い出すが、全く覚えていないのであった。あれも綺麗に保存していたら、今頃ひと財産になったんじゃあるめえか?ブックオフを後にして、伸也がいる実家に遊びに行く。昼はカミさんも加わってみんなで飯。午後、山崎樹一郎監督『やまぶき』の舞台挨拶でユーロスペースへ。4階へ上がったら、偶然、柄本明さんとばったり。柄本さん『ジュディー・ガーランド特集』まで観ているのか、、、。柄本さんの映画熱ってすげえなあ。山崎組の撮影部俵健太くん、助手のたかちゃん、たかちゃんのカミさんも観に来ていた。山﨑さんと久しぶりに再会。ペチャクチャおしゃべり。上映後に黒住くんと3人での登壇。客席に奥野瑛太くんや斉藤陽一郎さんの姿がみえる。ワーワーしゃべって、終演後、山崎さん、川瀬陽太さん、奥野くん、黒住くん、ほたるさん、影山祐子さん、ケンタと飲む。凄く盛り上がっていたが、カミさんからの「帰れメール」を受信したため、後ろ髪を引かれながら早々に引き上げる。夜、ネットフリックスでエドワード・ベルガー監督『西部戦線異状なし』を観る。せめて映画を観て、テメエを慰めてあげなきゃなあ!


 某日、朝4時起きで新宿集合。某組の撮影で水戸へ。水戸のラーメン屋で2シーン撮る。今日はあるヒトがお休みだったので、某が積極的に現場を動き回って、俳優部とのディスカッションや技術部とのコミュニケーションを綿密にとっていて、とてもよかった。やはり現場を私物化してはいかんよ。撮影現場の柱は絶対的に監督なんだから、そこは一線引かないとダメだ。先日の飲み屋での一件がモヤモヤしていたが、今日の様に某が監督業に集中してくれたらいいのだ。アタシが撮影現場に、キレイなオネーチャンを連れて来て、テストのたんびにチャンネーとペチャクチャしてたら、みんな「なんだこの野郎!」って思うでしょ。アタシがそんな事してたらどこからも呼ばれなくなりますわな。おんなじ事だと思うわけですよ。何人たりとも撮影現場を私物化しちゃあいけない訳です。今日の様な空気感で毎日撮影が進めば、いいのになあ。撮影終了後、飯田芳くんと特急で帰るが、手持ちの金が特急代に足りなかったので、江尻くんから電車賃を前借りする。移動費くらい常に持てる様になりなさいや、ロートル俳優!電車賃もねえテメエ如きが、偉そうに撮影現場がどうこう言うんじゃねえ!ハイ!ごもっともでございます!お口にチャックしてセリフだけ言ってりゃあいいんでございます!