某日、森組『福田村事件』撮影。「虐殺」シーンの後半戦でアタシの出番最終日。昨夜は午後からの西日の直射と蒸し暑さで、夕方には思考が止まってしまった。本当にキツくてシャワーも浴びずに倒れた。本日は朝5時起きでホテルを出る。1番早い行商団の若手は、朝3時過ぎからメイク先発。連日出演者が増えるし、1番大変なのはメイク部・衣装部の支度班だ。現場までは水上竜二さんの車に乗せてもらう。撮影現場の神社で、森さんから「なぜ茂次は行商団を殺したのか理解できますか?」と尋ねられる。当時の世相・状況は理解できるが、人を殺す動機は分からないと正直に話す。森さんも「僕も理解できないんですよ」と言ってアウシュビッツの話をしてくれる。「虐殺、芝居でやれますか?」と聞かれたので、「もちろんできます」と答える。俳優の心情を理解して気遣ってくれる、森さんが好きだ。東出くんも、同じ話をされたらしい。撮影は血糊や仕掛けで時間を食ってしまい、なかなか進まない。そんな中、応援演出部の柳さん(京都東映や松竹の演出部)がバシバシ進めてくれて頼もしかった。時間に追われての撮影で、アタシが「竹槍で刺し殺す」シーンも、1発オッケーだったが、芝居がイイっていうより、時間の無さゆえだと思う。その後も遮二無二撮影していく。ロングショットがない気がした。ミドルショットの長回しばかりで、群衆の同調圧力の恐怖は描けているのだろうか?森さんには、もっと時間に余裕のある撮影スケジュールで、納得いくまで演出してほしかった。撮り終わっても、誰一人スケジュールを理解しておらず、監督に聞きに行くと「松浦さんは出番全部終わりましたか?」と、逆に質問される。現場の混乱ぶりが思いやられるなあ。森さんから「茂次は本当に理解できない役になりました」とお褒めの言葉を頂く。所詮、人間なんか理解できないし、その方が豊かだと思う。オールアップのコールをしようとするので、みんな次のシーンの準備があるだろうから、やらんでいいからと断る。ホテルに戻るとちょうど森さんと会い「稀代の悪役マツーラの送別会をしたい」と言ってくれたが、明日からのリスケで首脳部会議に呼ばれて参加できず。結局、五郎さん、川本さん、東出くんとお好み焼きで飯。今回も大変だったが、面白い現場だったなあ。終わってしまえばあっという間に感じる。まあ、毎回そうなんだけど。今日は朝まで部屋で飲む。東出くん、五郎さん、さいとうなり、と。現場バカ話。五郎さんがやる某俳優のマネが面白くて過呼吸になる。森さんともう一度映画をやりたい。自主映画でいいから、次は時間をかけて森さんの好きなように撮って欲しいなあ。

 某日、朝9時に起きて、東出くんに挨拶。『福田村事件』もとうとう終わった。さらば四条大宮。市バスで京都駅へ。さらば京都。お土産に七味を買う。一路おうちへ。うちに着くと、猫が出迎えてくれた。メダカも生きている。毎日メダカにえさをあげてくれた倅に感謝。仕事をするカミさんの横で昼寝。夕方起き、倅と風呂。日常の生活。夕飯が美味い。カンボジアの『オノダ』凱旋上映の登壇の話、正式にお断りする。撮影が決まってしまい、スケジュール的に不可能になった。残念だが、仕方ない。某組の撮影の他に、もうひとつ被ってしまった。上映を企画し、アルチュールと遠藤くん、そして自分まで招待する資金を集めてくれたプロデューサーのダヴィには感謝しかない。しかし、撮影を優先したい。申し訳ないが、次の機会には必ずカンボジアに行く。ダヴィ、約束を果たせず申し訳ねえ!

 某日、弟の哲也の結婚式に参加するため、カミさんと倅と名古屋へ。倅は初めての新幹線で楽しみにしていたのだが、列車の速さを実感できずに、実際乗車したらあんまり喜んでいなかった。式の受付まで時間があったので、単身「シネマスコーレ」へ。ちょうど高橋ヨシキ監督『激怒』の初日だったので、川瀬さんやヨシキさんも名古屋に向かっていたが、時間が合わず会えなかった。スコーレの坪井さんが驚きを持って出迎えてくれる。『激怒』のパンフレットにサイン。スコーレに飾る色紙にサインを頼まれたので、「別個に進んで、同時に撃て」と揮毫する。たしかトロツキーのスローガンで、スコーレには相応しいか。そのまま式に向かう。立派な会場で料理も上手く、満足なり。哲也とゆかちゃんが幸せになれますように。そのまま夕方、東京に帰る。なかなかハードな移動で、夜は疲れて寝てしまう。

 某日、無職渡世。台風の影響で大雨。市民プールに行きたかったが諦める。カミさんに怒られながら部屋の片付け。午後は、溜まっていた日記を書いて諸雑務。夕方、姪のタカコから電話で、「秋津に来たから倅と一緒に遊びに来て」と誘われる。倅と一緒に実家へ。姪のタカコと甥のキーチと一緒にはしゃぎまくる倅。親父と戦いごっこをずーっとやっている。義弟のタイキは酒が飲めるので親父も嬉しいのだと思う。タイキから競艇の整備士の話を聞く。面白い世界だなあ。江戸川の競艇場に行きたいらしいが、明日も台風だから開催中止かもなあ。夜、倅は泊まるというので帰る。親父から「これ、Aさんを主演で映画化したらどうかな?水澤さんや伸也の役もある」と言われて井原忠政著『足軽仁義』を渡される。親父から企画を進められるのも珍しい。読んでみよう。夜、日記の続きと、カンボジアのダヴィへ『オノダ』上映に参加できなくてごめんとメールを出す。

 某日、無職渡世。朝起きたら8時過ぎだった。昨夜も脚本を読んでいるうちに寝落ち。午前中から実家へ行って、タカコ・キーチ・倅とポケモンカードゲーム。雨が降ったり止んだりだったので、結局一日中実家で過ごす。午後、じいちゃんがショートステイから帰って来る。ひ孫の顔を見て嬉しそうだった。カンボジア上映に不参加と、遠藤雄弥くんに電話で話す。

 某日、久しぶりに内装仕事。工房で周平さんと太田さんと今後の作業予定を詰める。相変わらずバッタバタな現場模様。今日から常盤の現場に乗り込むことに。大工のダイゴさんと奥さんがいる。天井がスタイロフォームが表しになっていて、釘や金物を落として下地処理。明日からシートップ左官。床とカウンター立ち上がりも、デコリエ左官らしい。初のデコリエだなあ。柱の残っていたクロスをはがすが、薄紙が残ってしまうので、水で濡らすてスクレーパーをかける。これがかったるい。久しぶりの作業で身体が疲れてしまった。通勤読書で、親父から勧められた井原忠政著『足軽仁義』の1巻を読み終わる。なかなかな活劇物だ。親父のキャスティングだと茂兵衛がAさん、辰蔵が水澤さん、丑松が伸也が良いと言っていたが、アタシはどの役だ?夜、Aさんに手紙を書く。

 某日、内装仕事で常盤。壁や柱のモルタル補修と天井左官。朝、肌寒くてウインドブレーカーを着て出勤。左官作業で右肩が痛い。脚立の上り下りを一日中していたので足も痛い。6時頃まで作業。昼抜き。森組撮影後は1日1食を心がけている。仕事の後、三鷹台へ。中田組で一緒だったメイクの外丸さんと演出部佐伯さんと「ムサシ」で飲む。外丸さんは『岬の兄妹』からの付き合い。飲んでいてなぜか佐伯さんに褒められる。「結局さ、人がよくて、優しい奴が勝つんだ」と言われた。アタシ、そんな優しくないし、人も良くないと思うけどなあ。あと、本読みはシナリオを読んでいない俳優部を試す儀式だという説を聞く。なるほどなあ。俳優部同士で飲むだけでなく、他部署の方々と飲むと勉強になる。結局、お二人にご馳走になってしまう。いつか返さねば。終電で所沢へ。井原忠政著『旗指足軽仁義』読み終わる。ダヴィから返信が来る。ダヴィが監督した映画『ソウルに帰る』がフィルメックスで上映されるらしく、11月に東京に来るらしい!

 某日、内装仕事で常盤。終日天井左官。流石に首と肩を痛める。今日は謝花さんの塗装チームと相伴。予定を繰り上げてパテ処理に入ってもらっているので、早めに現場を渡すため、休憩せずに作業。3時頃に終わって、荷物を片付け早上がり。練馬で守屋文雄さんと喫茶店でお茶。スコーレの登壇で使うプレゼントにサイン。通勤読書で井原忠政著『弓組寄騎仁義』読み終わる。腰と肩がやばかったので、秋津の指圧へ。今日はいつもの先生じゃなくて、厚めの化粧をしたふくよかな中年女性。先生によって施術の仕方に違いがある。それで合う合わないも出るのだが、今回の先生は筋肉ごと揉む方で、自分とは合っていて気持ちよかった。寝そうになった。ゴリゴリと筋肉を引き剥がす施術が好きだったが、いろいろあるんだな。夜、バタンキューで寝る。