某月某日、移動日。兵庫県の和田山から『福田村事件』の撮影のため京都へ。長かった『ガンニバル』の撮影だったが、アタシの出番分は撮り終えた。本体の撮影も残りわずか。なんとか無事に乗り切って欲しい。そして、いよいよ森達也組『福田村事件』に乗り込む。立て続けの撮影だが、なんとかセリフも入ったし、初の京都撮影所が体験できる。京都駅から演技事務の梅沢さんの車に柄本明さんと同乗して、衣装合わせに向かう。柄本さんとがっちり芝居をするのは初めてだ。アタシにとっては尊敬する俳優なので車中、始終緊張する。こう言っちゃあナンだが、アタシは役者相手に緊張する事って、ほぼ無い。やっぱ柄本さんは自分にとって特別な存在。今回柄本さんとバチバチに芝居ができるって、本当に楽しみ。そして衣装合わせで初めて森監督と会う。イン前日に監督と初顔合わせってのもなかなかない体験。おお、この人が『A』や『FAKE』の監督か!写真で見た印象だとおっかなそうだったが、実際お会いするとそんな印象ではない。寡黙で思慮深そう。表情があまり変わらないので、ちょっと堅い印象は受ける。先に衣装合わせをしている柄本さんは、今回結構こだわっていた。柄本さんの一挙一動を観察してやる。アタシは衣装でニッカボッカを履き、大正時代にもにニッカがあったのか!と新鮮だった。役でも私生活でもニッカ履いてるなあ。自他ともに認める労働者俳優。カッコ良く言ったら、プロレタリアート俳優なり。カッコつけるなバカヤロ!ホテルに戻り、風呂。明日から出番初日。前半戦は柄本さんとの芝居。さあ、やるぞ!夕方、四条大宮のホテルを出て四条通をプラプラ歩く。鴨川に出て、川沿いをセリフ念仏。京都の街は碁盤の目状なので、札幌に似ている。や、札幌が京都を真似たのか。明日から、いきなり東出昌大くんと乱闘のシーンだ。

 某日、森組『福田村事件』撮影で京都。6時にホテル出発。いや、久しぶりに緊張で寝付けなかったなあ。初の東映京都、太秦。でっけえなあ。スタジオも歴史を感じる。大泉なんかスタジオ棟だけで、オープンセットないもんなー。京都撮影所は来るまでちょっと怖かったけど、いきなり怒鳴られたり殴られたりなんてこたーない。まあ、そりゃそうか。とにかく、会う人には全員挨拶して頭を下げとく。曽根晴美ことおやっさんがここで映画やってたと思うと感慨深い。「おやっさん、太秦来たよ!時間かかったけど、オレ、東映京都で映画しますぜ!」朝から支度して8スタでひたすら待つ。自分も初日なので誰が誰だかわからないが、佐藤五郎さんや川本三郎さんとヤーヤーする。水上竜二さんは初対面だったが『岬の兄妹』を褒めてくれて、嬉しかった。持ち道具の上田さんは、いかにも京都スタッフって感じのイケイケだったが、『菊とギロチン』で和田光沙さんと一緒だったらしく「岬よかったで!今回も楽しみやわー」とハッパをかけてくれた。開始が10時だったが、なかなか始まらない。出征兵士の宴会シーンの撮影で、前半は柄本さんと絡んで、後半は東出君と乱闘。柄本さんへの第一声のセリフを言うまでめちゃ緊張した。だけどまあ、始まったらこっちのもの。撮影中、柄本さんの一挙一動を観察する。柄本さんが本番前に体を揺らして脱力していて、「あ!同じだ!俺もやるなあ」と思った。柄本さんは毎回、微妙に芝居を変えて色々試している。アタシも毎回変えるようにする。柄本さん、やっぱりいいなあ。あんな役者になりてえなあ!昼休中、初めましての東出君とちょろっとだけ話す。午後、後半戦の東出くんとの乱闘もワンカット長回しで一気に撮影。1発オッケー。(本番で東出くんが血玉を仕込んでいたのを知らず、当ててしまったと勘違いして凄く焦った。)なにしろアクション部はおらず、俳優の市川君とザックリ手を決めての本番。セリフ出しが遅くなったがアクションをこなしながらだったから仕方ねえか。東出君は自分と初めてやったのに息を合わせてくれた。本番中も冷静で、位置がずれたアタシを膝で修正してくれた。やるなあ。このシーンで森さんからはあまり演出がなかったが、好きにやらせてくれているのだろう。撮影終了後、森さんとタバコを吸っていたら「良いシーンが撮れました」と言ってもらえた。嬉しい。まあ、相手役の東出くんのサバキのお陰だ。帰りは佐藤五郎さんと、嵐電に乗って帰る。初嵐電だった。電車がギリギリの距離を攻めていくので、正直怖かった。夜、佐藤五郎さん、浦山桂樹くん、高橋雄祐くん、東出昌大くんと「もっさんのべた焼き」で飲む。途中で永山瑛太くんと、行商団の俳優部も合流。瑛太くんとは初対面だったが、「来たなー!変態俳優!俺が次に監督する時はマツーラさんに出てもらうから!」と言ってくれる。東出くんにしろ瑛太くんにしろ、アタシを認知していたことに驚く。皆、映画が好きなんだな。それだけで仲間意識が生まれる。ワイワイと飲んで、これからの撮影が楽しみになる時間を過ごす。

 某日、『福田村事件』で京都。本日、出番なし。今回の撮影ではスケジュールが流動的なため、基本的に俳優部は全員、インからオールアップまでは京都に滞在。予算がないから俳優の移動費を節約する目的が大きい気がするが、、、。朝起きてセリフを歩き念仏。鴨川を歩く。午前中、今月で閉館する「テアトル梅田」に向かう。高橋ヨシキ監督『激怒』の舞台挨拶の為、10時過ぎに四条大宮のホテルを出て、大宮駅から梅田へ。駅前の喫茶店で時間を潰していたら、『月夜釜合戦』の佐藤玲央監督とバッタリ。テアトル梅田で『激怒』主演の川瀬陽太さん、監督の高橋ヨシキさん、松嵜翔平くんと落ち合い、登壇。登壇の2回とも満席。テアトル梅田の支配人さんとも話せて良かった。今回の『福田村事件』の資金集めを手伝ってくれている越智さんとお会いする。井上淳一さんが出資者用に連載している『福田村事件』日記のコピーをいただく。皆と別れて、四条大宮に帰る。ホテルでセリフやりながら寝てしまったらしく、起きたら深夜だった。東出くんや五郎さんから着信があったが、飲みのお誘いかしら?脚本の字面で書かれた事と実際現場で出来る事はもちろん違う。そこをどうするか、考えていると興奮して眠れない。森監督の意向をきちんと理解して、初監督作品を豊かなものにしたいなあ。

 某日、『福田村事件』撮影で京都。本日も出番なし。午前中から午後3時くらいまで歩き念仏。四条大宮のホテルから三条の檀王法林寺へ。くそ暑くて汗がとまらない。法林寺にて、黒い招き猫を買う。黒い招き猫って珍しい。住職さんも優しい方で、カミさんの為に祈願してもらって、お守りも授かる。セリフをブツブツやりながら鴨川沿いを歩いて、セリフを深く入れる。今回は色々な芝居を試したいので、深く入れて自由な身体を持って現場に入らないといけない。ここ最近、やっとワンシーンじゃなく、芝居ができる出番のある役をやれるようになった。今回も芝居ができる役だ。それが嬉しいし、「やってやる!」って気になる。ホテルに戻り、佐藤五郎さんと「京都みなみ会館」へ。上映中の『激怒』登壇。川瀬陽太さんと高橋ヨシキ監督と3人。鑑賞したお客さんのほとんどがパンフを購入してくれた。ありがたい。3人でパンフレットにサイン会。劇場さんともたくさん話せてよかった。川瀬さんと別れ、撮影の桑原さん、撮影部の俵健太くんと高畑くん、森監督、演技事務の梅沢さん、佐藤五郎さん、東出くん、メイキング綿井さんらと「もっちゃんのべた焼き」に飲みに行く。森監督が飲みたがっていると聞いたのでお誘いしたら、本当に来てくれた。途中、陣中見舞いで漫画家の石坂啓さんも来た。初めてお会いしたが、キップのいい方で好きになった。森さんとタバコを吸いながら色々話す時間があり、凄く良かった。「まず、自由にやって欲しい」と言ってくれる。賜りました!自由にやらせていただいて、監督に判断していただきます!9時半にホテルに戻る。夜、東出くんから電話で飲みに誘われたが、明日早いので断る。明日は柄本さんとの芝居。なかなか眠れず。

 某日、森組『福田村事件』撮影で、京都太秦の松竹撮影所へ。ここもオープンセットがあって、めちゃ広い。大泉や角川や日活とは比べものにならんな。撮影所独自のルールがあり、朝から移動の動線の事で注意をされた。撮影所っぽいなあ!本日は朝イチから柄本明さんとバチバチのシーンを撮影。緊張はしなかったが、芝居を見透かされている気がしてシビれる。柄本さんを観察していると、常に一人でいて、たまにセリフをブツブツ言いながら歩いていた。あれだけキャリアのある柄本さんでも、常にセリフの出し方を探っているんだ。2シーン目はバチバチにやり合う芝居。段取りから全力でやるが、うまくかわされた。自分の芝居が結構パワープレイになっていたので、繊細にやるように気をつける。テストを2回やって本番。柄本さん、毎回芝居を変えてくれて、本当に楽しい。本番前に柄本さんに「ビンタ、当ててもらっていいですか?」とお願いする。「なんで?」「受けがヘタなんで」と言うと笑っていた。本番、柄本さんは一気にギアを上げてきて、芝居していて面白かったし、幸せだった。テストでは全て視線を伏せていたのに、本番ではガッツリ合わせて来た。もちろんその影響でこちらも芝居が変わった。ビンタもバッチバチのホン当て。1発オッケーが出る。2カット目も本番1発オッケーが出てしまう。そのシーンが終わった後、座っていたら森さんに「不満ですか?」と質問される。正直に「柄本さんとずっと芝居してたかったので、あと10回くらいやりたかったです」と言ったら笑われた。撮影後、ホテルに戻ってうとうとしてると東出くんから電話。「部屋でうどんを作るから食いませんか?」とお誘い。ありがたく受ける。東出くんが自分で撃った鹿肉と、うどんを振舞ってくれた。美味かったなあ。さいとうなりさんと3人で飲む。東出くんは今、山梨で鉄砲撃ちの猟師だそうだ。いや、驚いた。本格的に狩猟生活をしているらしい。狩猟や山のことを色々と聞く。楽しく話して、いい時間だった。

 某日、午前中から森組『福田村事件』撮影で、兵庫県はしゃくなげ学校へ。台風が近付いているため、入り時間が大幅に繰り上がる。「戒厳令がでたぞ!」と聞くシーンの撮影。ここのシーンがなかなか難しかった。まず、自分が台本を読み違えていたことが大きな原因。いや、ちゃんと監督に確認するべきだった。また、これも難しくて、監督に解釈を確認するのって、芝居の理由付けや答え合わせをしてるみたいで、やりたくないのよねえ。なかなかオッケーが出ずにテイクを重ねてしまった。このワンシーンのみで、ホテルに帰る。夜、反省して何度も脚本を読み返す。いや、悔しい。明日も出番が多いので、頑張らんとなあ。