某日、『ガンニバル』撮影で大子町。前夜祭の撮影。昨夜の芝居を各部署から褒められて、なんかくすぐったかった。まあ、本編では使われない気がしている。挟む所がなさそうだ。(実際に第1シーズンの本編では使用されなかった!あんなにやったのに!)撮影の待ち時間に、中村梅雀さんから脳血栓になってセリフが言えなくなった時の話を聞く。歌舞伎の本番中、急にセリフが出てこなくなって、舞台監督がプロンプするが、全くセリフが言えない。耳には入っているが意味がわからない状態だったそうだ。奥さんがプロンプした声だけ聞こえて、なんとかやった。2幕目が始まって舞台に出ると、最初から全くセリフが出てこなくなった。自分が何をやっているのかもわからず、(中村福助さんが相手だったらしい)奥さんが泣きながらプロンプして、言えないところは福助さんがアドリブして乗り切ったとのこと。楽屋で台本を開いてセリフを確認するが、「こんなセリフやってないや、この脚本じゃない」と思ってしまったと。病院に行くと血栓の跡があり、これが原因じゃないかと診断されたそうだ。いやー怖い話だった。それから梅雀さんは健康に気をつけ始めたとの事。「マツーラくんも気を付けなさいよ」と忠告をいただく。前夜祭の撮影もあっという間に終わる。あんだけ練習した太鼓も1回だけ叩いて終わり。「おいおい、あんだけ練習してこれだけかよ!」と拍子抜けした。まあ撮影なんてそんなもんなんだけどさあ。

 某日、『ガンニバル』撮影で大子町。川井監督回で宴会シーン。特にセリフがあったわけじゃないので、好き放題やった。芝居中、梅雀さんに無理やりソーメンを食わせたりして面白かったのだが、全く映っていなかった。残念。梅雀さんから『命の事件簿』と『八代将軍 吉宗』の話を聞く。『命の事件簿』は、梅雀さんが刺青姿で大暴れした写真を見せてくれて、俄然観たくなったのだが、共演者の中で逮捕者が出てしまったらしく、ソフト化もアーカイブもなかった。くそう!観てえなあ。『八代将軍 吉宗』はいまだに西田敏行さんと思い出話をするらしい。梅雀さんがやんちゃだった頃の芝居、観たいなあ。出演者に逮捕者が出ると、お蔵入りやソフト化されなくなるってのがよくわからない。観たくない人は観なきゃいい。作品自体が無かった事になるのは納得いかない!改善せよ、偉いヒト!東京まで半田車で帰る。終電に間に合ってよかった。

 某日、カミさんが気遣ってくれて、昼まで寝る。担当マネージャーさんの井上さんと今後のスケジュールの話。森達也組『福田村事件』、スケジュールの都合で合流が出番前日になるため、衣装合わせも現場でやるとの事。午後、倅の自転車を組み立てるが、全く嬉しくなさそう。なんでだ?欲しいって言ってたのに。久しぶりにリビングに行くと、やっすい自動掃除機じゃない、高そうな自動掃除機が家にあった。「どうしたんだこれ?」「買ったに決まってんでしょ」「高かったろ?」「はあ?値段じゃないでしょ!全く家事をやんない誰かさんの100倍助かってるし!家にいない奴がブツブツ言わないでくれる?私一人で家事も育児もやってんのに!」非常に危険だ。どこに地雷が埋まっているかわからん。夜、カミさんはコン・ユさんの出演ドラマに首ったけ。「なんでそんなにハマってるの?」と聞いたら、「汚くて臭いオッサンが横にいたり、生活費切り詰めてやり繰りしなきゃいけないこの現実を忘れて、キレイなものだけ観てたいんだけど、文句ある?」なるほどなあ。現実逃避のためにキレイに作られたドラマに救いを求めているワケね。そういえば今月は加藤組の出演料しか入金がない。内装仕事も行けてないし、生活費がやべえ。ああ、嫌なことに気付いてしまった。胃が痛い。

 某日、弟の伸也の誕生日。午前中、倅を連れて実家へ。伸也も来ていて、3人で「多摩六都科学館」へ。倅は保育園で何度か行っているらしいが、アタクシは初めて。見事なプラネタリウムドームがあって(世界一らしい)、プラネタリウムの上映も初めて観たが、ホント見事だった。映像を見ていて体がのけぞった体験は初めて。こんな見事なプラネタリウムを知らなかったとは不覚でござった。昼は誕生日なのに伸也に「スシロー」を奢ってもらう。金がねえ兄貴で申し訳ねえなあ。夜、柳町光男監督『十九歳の地図』をDVDで観る。蟹江敬三さんの芝居を次の映画の参考に。蟹江さん、素晴らしい。沖山秀子さんの「死ねなかったのよお」は何度観ても鳥肌が立つ。アタシもこういう傑作映画にたくさん関わりてえよお!

 某日、午前中、秋水園にベッドマットや倅の古い自転車を捨てに行く。めちゃ重いマットを担いでいたら、トンボ教室のおじさんが台車を貸してくれた。秋水園の計量係のおじさんも優しい方で、クソ重いマットと自転車で、処分費700円だった。サンキューベリマッチ。帰ってポケモンカードゲームのやり方を教わって、カミさんや倅と対戦。これが面白い。やり方を覚えたらアタクシがはまってしまった。倅はズルをしてまで勝とうとするので怒った。勝敗より、どう戦ったかの美学を学んでほしい。昼飯を食ったら寝ていた。井上さんから連絡があって、明日撮影予定だった山下組が台風の予報のため、明後日に延期とのこと。天候にはかなわねえ。午後、伸也が車で迎えに来てくれて、倅と3人で「ジブリ美術館」へ。あんま期待していなかったが、これも面白かった。内装もこだわり抜いていて職人技に驚く。特に上映作の短編『ちゅーずもう』がメチャ良かった。倅は『トトロ』と『ぽんぽこ』と『千と千尋』くらいしかジブリ作品を観ていなかったが、楽しんでいた。巨神兵の銅作品、凄かったなあ。退館後、水澤さんと水澤ジュニアが会いに来てくれて、一緒に「銚子丸」で寿司を食う。調子よく食べ始めたら、突然、水澤ジュニアが噴水のようにゲロを吐いてしまう。咄嗟に器で受け止めるが、食った量より大量に吐く。器が2個では足りず手で受けるも、大惨事。水澤さんと掃除して、這々の体で店を出る。やー、びっくりした。倅が「カオナシより吐いてたな」と呟いていた。夜、高橋伴明監督『夜明けまでバス停で』のコメントを書くために、ビメオで作品を観る。片山さんから電話。釜山映画祭で『岬の兄妹』が上映されることとなり、映画祭から招待されたそうだ。こちらも参加したいが、スケジュール次第か。

 某日、終日台風で在宅。昼は倅とポケモンカードゲームとスーファミで「ヨッシーアイランド」をやる。結構上手くなっている。好きこそものの上手なれとは正しいな。午後、いつの間にか寝ていた。週末の昼寝が楽しみなのだ。起きると、水澤さん、井上さん、マッチポイントの根岸さんから着信があった。皆様、同じ内容。「山下組でクラスターが起きて、明日の撮影は中止。次回の予定は未定。場合によっては撮影せず、アニメーションにアフレコの可能性あり」とのこと。まず、クラスターが起きてしまったのは仕方がない。自分が関わってないS組やH組でも中断した。この時期に撮影をするってそういうリスクが付いて回る。しかし、残念だなあ。久しぶりの山下組だったのになあ。夕方、森達也組『福田村事件』の製本台本が届く。森さんは初めての劇映画の監督をする。ドキュメンタリー作品や本は読んでいたが、まさか劇映画の現場で一緒になるとは。すごく楽しみ。夜、Aさんに手紙を書く。DVDで柳町光男監督『さらば愛しき大地』観る。今回の森組は、蟹江敬三さんや川谷拓三さんの芝居が参考になるかもしれん。ある種の「卑屈さ」が鍵な気がする。

 某日、山下組が中止になったので、休日。午前中、倅を連れて市民プールへ。海水パンツも購入して、倅と泳ぐ。倅は水に顔をつけるのも怖がって、泳ぎも下手だった。踏み台のないコースは怖がって入れなかった。最初にビート板を使って体を浮かべてバタ足の練習。次に自分がビート板を支えながら、バタ足で泳がせる。次は、ビート板を使わず、アタクシの手につかまらせて泳がせる。これが結構上手くいき、何回かやるうちに25メートルを泳ぎきる。すげえなあ。成長が早い。ゴーグルをつけさせると、顔を水につけるのも平気になって、自発的に息継ぎをしながら泳ぎ始める。2時間の練習で、ビート板を使って25メートルを泳ぐようになった。驚いた。倅も楽しかったらしく、自慢げだ。自信をつけたらすぐできるんだな。監視員の若いお姉ちゃんも驚いていた。その子がとても可愛かったので、アタシまで嬉しくなる。使用料2時間400円は微妙に高い気がするが、22時までやっているので、今回の減量もあるし活用しよう。そのまま実家に行って、倅が親父とお袋に報告。うちに帰ってカミさんにも自慢していた。夜、倅は風呂の中でもゴーグルをつけて潜っていた。よっぽど嬉しかったんだな。

 某日、工房で内装仕事。什器組み上げ。減量のため、昼抜き。久しぶりに工房に行く。周平さんがコロナになっていたらしい。2日間熱がひどく辛かったとのこと。明日から泊まりで館山の内装現場に飛ぶことになった。行きたくねえけど、金が全くないし仕方ねえ。館山、地獄現場なんだろうな。カミさんが買ってくれた空調服が快適。充電も朝からつけていて夕方まで持つし心配ない。風が常に体に当たるので、汗をかいている時は涼しいくらいだ。夜、淵の森を通って帰ると、セミがすごい勢いで鳴いていた。森の酸っぱい匂いが先日の台風で消えていた。外でタバコを吸っていると鈴虫が鳴いている。夏と秋がいっしょくた。