某日、川井組『ガンニバル』撮影で、兵庫は和田山へ。朝、昨夜の残り物のアイスケーキと冷汁を食って、品川へ。品川から新幹線で京都、京都から特急きのさきで和田山。秋津を9時に出て和田山着が3時過ぎだ。品川で水澤さんと電話。伸也がアズランドに入ることを伝える。新幹線は混んでいたが、喫煙所の近くの席でよかった。しばらくすると井上さんから入電。「マツーラさん、撮影が中止になりそうです」「はい?どういう事ですか?もう新幹線なんですけど」「ですよね、、、スタッフで発熱者が10人以上出たらしくて」うわー、クラスターじゃないか!参ったなあ。まあ、それじゃあ仕方ない。とりあえず名古屋過ぎたし、京都まで行って考えよう。せっかく京都に来たんだし、飯でも食って帰るべえかと街に出て気付いた。財布に360円しか入っていない!コンビニのATMでお金を下ろそうとしたら「残高が不足しています」と表示が出る。おや?と残高照会をすると、口座残金が75円だった。飯食えねえじゃねえか!と、ここでもっと重大な事に気付く。あれ?帰りってどうすりゃいいの?アタシ、カネないじゃない、、、。マネージャーの井上さんに電話。「井上さん、帰りの電車賃ってどうしましょう?」「あ、申し訳ないのですが立て替えてもらって、あとで清算させてください」「あのー、今、手持ちが400円しかないんですよ」「え!?」「あと口座にもお金がなくてー」「、、、」そりゃ絶句するよな。40越えたオッサンなのに、400円しか持ってないんだもん。「あ、確認します!」アタシ以上に慌てた井上さんが、何を確認するのかわからんけど電話を切った。こんな時は慌てたらいけない。喫煙所で一服して自販機でコーヒーを買う。残金240円。あ、カミさんに振り込んでもらえばいいんだ!今はネットで簡単にできるじゃない。早速カミさんに電話して事情を話す。「アンタ、なんでお金ないの?バカじゃないの?」と一通りお叱りを受けたのだが「振り込んでもいいけど、今日は日曜だから下ろせるの明日だよ」と非常に厳しいお言葉。ああ、日曜って下ろせないんだ。こりゃ参ったぞ。井上さんから電話。「マツーラさん、すみません。制作部の方々が発熱しているらしくて、京都まで動けるヒトがいないそうなんです。今、発熱者は病院に行ってるそうで、他のスタッフさんも陰性確認ができるまで動けないそうなんです」そりゃそうだよな。現場はそれどころじゃねえよ。コッチで何とかしなきゃだな。「マツーラさん、奥さんに振り込んでいただく、、」「今日、日曜日なんですよー」「あ!!」「井上さん、ありがとう。何とかします」「自分も何か方法を考えます」ご迷惑をおかけしてすみません。自分で解決方法を見つけねば。京都に知り合いいたら金を借りられるんだけど、、、あ、いた。古舘寛治さんが今、京都にいるじゃない!すぐに古舘さんに電話。「お、マツーラ。どうした?」「古舘さん、今、京都ですか?」「おー、今は撮影で高崎来てるよー」「なんだよ、つかえねえなあ!」先輩に暴言を吐き捨ててしまう。参ったなあ。電話帳の連絡帳を片っ端から確認する。元マネージャーさんの小池さんが、奈良に住んでいた。ダメ元で連絡してみると、偶然にも仕事が休みだったらしく、京都にお金を持って来てくれるという話になる。いや、助かった!これで東京に戻れる!やー、よかった。しかし小池さんと会うのも2年ぶりか。改札で落ち合い、積もる話もあるので、飲み屋に入って近状報告。お会計時に、再び気付いた。アタシ、現金が全く無かったのだ。41歳にもなって、カネがなくて年下の子に飲み代払ってもらって、更に帰りの電車賃まで借りるとは。みっともねえなあ。小池さん、申し訳ない!そしてありがとう!結局2軒目もご馳走になって、夜9時に京都を出る。ああ、アタクシは何しに京都まで来たんだ。楽しかったからまあいいか。 


 某日、『ガンニバル』の撮影日だったが、クラスターが起きて中止。内装業も休んでいたので、1日ダラダラと過ごす。朝、倅を保育園に送って行く。夏の富士山キャンプがコロナで中止になるとのこと。子供達にとってコロナ禍の3年の損失はでかい。かわいそうである。帰って、DVDで阪本順治監督『団地』を観る。生死感を揺るがす、いい映画で大好き。藤山直美さんはじめベテラン勢がたまらん芝居をしとるなあ。昼、岡部尚たんから電話。コロナ陽性になったらしい。大変だ。不思議なことだが、映画屋が大っ嫌いなカミさんも、岡部尚たんと山本たけちゃんとは電話で話すのだ。なんでかしら?不覚にも、働くカミさんの横で寝てしまった。夕方、井上さんから入電。森達也組の『福田村事件』の出演打診が来る。しかし、加賀組とのスケジュールが当たってしまっている。先に来たのは加賀組だし、シナリオも面白いのだが、まだスケジュールが出ない。出番は1シーン。仁義を通すため、Pのしんさんに現状を電話する。井上さんとも話したが、今後はこういう選択が多くなるんだろうな。夜、アマゾンで届いたディアオ・イーナン監督『薄氷の殺人』を観る。恐ろしいくらいの傑作で、現在アジアのトップ3に入る監督だと思う。 


 某日、内装解体で恵比寿。大工の山田さん、たくさん、まーさんと久しぶりに一緒。昨日の今日で、金がなくて、帰りの電車賃を山田さんに借りる。午前中、休憩なしで一気に解体して、作業を終わらせる。昼、タイ料理屋「タイターン」でパッタイを食う。美味かったのだが、量が恵比寿のオフィスレディサイズで足らなかった。もちろん山田さんのおごりなので文句はない。午後、山田さんと材料の搬入をして帰る。夕方、倅の保育園に迎えに行くと、年長のNちゃんに「ゴリさん、くさい」と言われる。「臭くないでしょー」と言うと「やめて、くさい」と嫌がられる。他人の言うことなんか全く気にしないアタシだが、5歳児の正直な言葉には傷ついた。倅に「ごり、臭いか?」と口臭を嗅がせると、「臭くないけど、サバの匂いがする」と言われる。全力で忖度した倅の言葉が「サバの匂い」で更に傷つく。夜、しんさんと電話。森組をやりたいこと事を伝える。どっちもスケジュールがハマるといいが。 


 某日、内装仕事で神田。豪一と一緒。エイジング塗装とコーキング作業。玄関部だったのでクソ暑い。昼飯は、タイ料理屋「東京カオマンガイ」でカオマンガイ(蒸し鶏飯)大盛り。昨日に続き、美味いのだが量が少なく思った。豪一も、店を出るなり「あれ、大盛りじゃなかったですよねえ、間違えたのかな?」と言う。「豪一よ、あれが世間の大盛りなのだよ」と昨日の経験から優しく諭した。夕方、市川で除草作業をしていた水澤さんと奥野くんから電話。飲みの誘いだったが、暑くて身体がしんどくて断る。暑さが堪えるなあ。 


 某日、内装仕事で神田。クリア塗装や補修左官。豪一と一緒。暑い。何しろ暑い。こんな暑さの中で解体作業を連日やっていた昔が信じられない。昼飯はうまくない目の前の中華屋。なぜ美味くもないのに行くか?それは作業中、美味くもない中華屋の女性店員さんが微笑んでくれるからなのだ。豪一は不満顔だが関係ない。あの微笑みにはなにかあるに違いないと思って、意気込んで店にいったものの、かの女性店員さんは気付きもしない。ムムム?注文時に存在をアピールするも相手にされず。美味くもないジャージャー麺を啜る。会計時、かの店員さんが「あ、近所で工事してる汚いおじさんだ」って分かったらしく、再び微笑んでくれるもアタクシの心は閉ざされていて、もう行かねえって決めたのだった。残業して帰る。映画を観たいが全く金がない。 


 某日、山下敦弘組の『あんずちゃん』衣装合わせのために四谷へ。井上さんと合流し、会場へ向かう。道中、中田組の衣装部さんとばったり。会場では前野朋哉くんと会う。今回は元助監督だった(山下組や『まんが島』で一緒だった)近藤くんが企画・プロデュースをした。なんだが感慨深い。近藤くんは恰幅が良くなっていて貫禄がついた。衣装合わせは警官の衣装だったのでサクッと終わる。喫茶店で井上さんとスケジュールの話をして、新宿まで向かっていると、しんさんとばったり。新宿は業界人が多いなあ。四谷から清瀬の「みゆき食堂」へ。古舘寛治さんと飲む。みゆき食堂は『コタキ兄弟』で使ったらしく、素晴らしい大衆居酒屋。最初は古舘さんに気付く人がいなくて「まあ、そんなもんだよ。気楽でいいや」なんて言っていたのだが、しばらくすると女将さんが古舘さんに気付いて、料理を大サービスしてくれた。モツや漬物の大皿。餃子やナスの煮浸し、出てくる料理が全て絶品。途中で古屋隆太さんも合流。清瀬で飲むメンツも珍しいが、古舘さんは上石神井、古屋さんは小手指なのでちょうどいい。古舘さんと古屋さんは20年の付き合いで、昔は古屋さんがやんちゃしていたらしい。いい関係だなあ。21時半まで飲んで嘘みたいな安い値段で驚く。おかみさんに「古舘さんは金あるから、値段フカシていいですよ!」と言ったのになあ。とてもいい時間でした。 


 某日、午前中、メダカの水換えやキュウリの手入れ。ナスは甲虫に食われて穴だらけになってしまった。内田組『探偵マリコ』のコメントに難儀する。まだ完成作を観てもいないのになあ、本当に困る。当たり障りないコトを書いて、送る。午後、倅と新所沢へ。レッツシネパークで山崎貴監督『ゴーストブック おばけずかん』を観る。予告を見て楽しみにしていたらしい。劇中、遠藤雄弥くんがパパ役をやっていて感慨深かった。倅も上映の2時間、ちゃんと観ていて驚いた。鑑賞後、下のゲーセンに行くのが恒例になった。が、なにも取れず。帰って、ウトウトしてしまう。夜、日記を書いたり請求書を起こしたりする。 


 某日、午後、『ガンニバル』の太鼓練習で砧スタジオ。祖師ヶ谷大蔵から歩くがなかなか遠い。今度は担ぎオケだけでなく全員振り付けを踊りながら、太鼓を叩けとのこと。いや、叩くだけでも難儀してるのに、激しい振り付けつけられて叩けるわけねえよ。しかもアタシなんか太鼓を抱えて動くんだぜ?無理だろー。担当の演出部に伝えるが、はっきりしない。じゃあ、監督に直接言うからいいわ!片山さんが来たのでそう言うと「あ、じゃあ動かなくていいんじゃないですか?」だって。こんな事自分で決めりゃあいいのになあ。練習見てればわかるでしょ。出来ねえ事は出来ねえんだから。練習後、片山さんと永田くん、振り付けの長谷川さんと焼肉に行く。久しぶりに片山さんと馬鹿話。美味い肉だった。片山さん、ご馳走様でした!