某日、3年ぶりに成城の東宝スタジオで撮影。ディズニー製作『すべて忘れてしまうから』というドラマで、メイン監督は岨手由貴子さん。2話だけ沖田修一さんが監督するのだが、その沖田回に呼ばれてラーメン屋のオヤジ役をやる。シナリオだとセリフもない役だったが、ワザワザ沖田さんが作ってくれたらしい。早めに成城へ行き、北口のハーブ屋さんへ。カミさんとお袋へ母の日のプレゼントを買う。ちょっと時間があったので、南口を出てすぐ右の地下にある喫茶店「ソレイユ」に寄る。ここは喫煙できるし、1人で切り盛りしてるネエサンの感じがいい。あんまり機会がねえけど、東宝に来た時はここを根城にするべえ。ちょっと早目に出て、散歩がてらフラフラしていたら完全に迷い、ギリギリに着く。しばらく東宝スタジオなんて行ってなかったからなあ。東宝は受付があるしかしこまってる感じがして、大泉の投げやりな撮影所の雰囲気の方が好きだ。俳優センターに入る前に、撮影所をフラフラするが、つくづくデケエな。近代的でやっぱ金があるんだろうなあ。衣装部屋に行って、沖田さんと話す。どうやら七尾旅人さんと似てるから、兄弟設定にしたかったらしいのだが、「七尾旅人さんの演奏の邪魔しちゃダメ」って言われたらしく、芝居自体がカットになったらしい。まあ、なんでも良いや。沖田さんが呼んでくれたらなんでもやる。耳の長い役らしく(沖田組によく現れる宇宙人みたいな役だ)特殊メイクする。撮影は四宮さんで、撮影チーフにタオちゃん(出産後復帰したとのこと!)録音はタカアキさんで、メイクは外丸さん。演出部もカトーくんやら知り合いばかり。お初の組とは思えない座組だ。16ミリフィルムでの撮影らしく、それも嬉しい。エキストラで茂木さんや西ケ谷さんも来ていて、キャッキャ話す。茂木さんはネットフリックスの企画開発をしているらしいので、『志ん生一代』を薦める。撮影自体は2カットであっという間に終わる。切り返して沖田さんから「号泣しましょうか」と笑いながら言われて、挑むが泣けなかった。ダメな役者だわ。プロデューサーの山本さんと茂木さんと飲みに行く。2人は映画学校の同級生らしい。自分とも同い年だし、嬉しい。 


 某日、朝、内装仕事に行くつもりだったのだが、起きれず。シノブさんに連絡して休ませてもらう。『ガンニバル』のシナリオを開くが、結局ダラダラしてしまう。気付いたら寝ていた。夕方、倅を迎えに行って、そのまま片山組『ガンニバル』の前乗りで、長野県の村井駅へ。3時間の電車移動で、結城昌治著『志ん生一代』読み終わる。茂木さん、これを企画してくれないかなあ。ホテルで大宮将司さんと中村祐太郎くんと久しぶりに会い、キャッキャとおしゃべり。明日から片山組『ガンニバル』の撮影が始まる。長い戦いが幕を開けるぞよ! 


 某日、片山組『ガンニバル』撮影。6時半ホテル出発。六角精児さんと一緒。車中、六角さんと競輪話、ギャンブル話で盛り上がる。撮影現場は、やっぱいい。主演の柳楽優弥くんや笠松将くんとも話す。二人とも共演があるし、久しぶりに会えて嬉しい。本日は特に芝居がない、パヤパヤシーン。六角さんと競輪の話や、中村梅雀さんのバンドの話を聞きながら気楽に過ごす。スタッフもみんな知り合いだし、アタシにとっちゃホームな組。照明の舘野さんが「『さまよう刃』がWOWOWの歴代視聴率ナンバー1だったんだって」と教えてくれる。すげえなあ。今回のスタッフ編成も大本編のようだし、片山さんやるなあ。昼に出番が終わって、ロケバスで新宿戻り。ディスクユニオンで中古DVDを漁って、シャマラン監督『スプリット』と『ヴィジット』、ガス・ヴァン・サント監督『ジェリー』を購入。ガス・ヴァン・サント作品って熱心に観ているわけじゃないのだが、『ジェリー』は大好きな映画なのだ。昔はDVDを持っていたが、今は持っていない。廃盤と書かれていたので思わず買ってしまった。御苑へ歩き、中華屋「福錦」(喫煙可能でナイス)へ。フランスから帰国した澁谷悠くん、遠藤雄弥くん、カトウシンスケさんと『オノダ』のメンツで会食。澁谷くんがカンヌ映画祭のお土産で、トートバックをくれた。みなでワイワイ飯を食っていると親父から着信。なんだか嫌な予感がして電話を取ると「爺さんがコロナ陽性で、多摩北病院に入院した」とのこと。「症状の発症日から逆算すると祐也も濃厚接触者だ」と言われる。実家に皆で集まって会食した日が怪しいらしい。楽しい時間を過ごしていたのに申し訳ないが訳を話してすぐに会を切り上げ、カミさんに電話。帰宅して、井上さんと事後のことを相談する。手元にあった抗原検査キットで調べるが、陰性。両親も陰性らしい。祖父も症状は軽く、熱も下がって命に関わる状態ではないそうだ。一安心。しかし、アタシが濃厚接触者になったら、今後の撮影にどう影響がでるかわからない。いやー、参ったなあ。 


 某日、朝、保健所に電話。何度かけても繋がらなかったが、昼ごろようやく繋がる。保健所も大変だな。担当者曰く「濃厚接触者に該当するが、接触4日目(昨日)と5日目(本日)に抗原検査をして両日陰性なら指定解除」との説明を受ける。本日も抗原検査キットで陰性だったので、自分は濃厚接触者の指定解除になった。倅もPCR検査を受けて陰性。あー、よかった!ホッとした。じいちゃんも投薬を受けて食事もできているし、経過は良好らしい。実家にDVDと澁谷くんからいただいたせんべいを持ってお見舞いに行く。両親は元気そうで安心した。倅がオタマジャクシから育てていたカエルが、成体に育ったので、淵の森に逃す。実家から借りたミニスーファミで、カミさんと倅はマリオをやっている。夜、DVDで『スプリット』と『ミスターガラス』観る。ジェームス・マカヴォイってすごい芝居していると思うのだが、なぜあまり注目されていないのだろう?そしてマカヴォイの力演に対して、飄々とした芝居で食ってしまうサミュエル・ジャクソンがさすがだ。 


 某日、片山組の移動日だったが急遽変更になる。雨で撮影がずれ込んだらしい。予備日もないからそのままスライドするようだ。午前中、倅と航空公園の映像ホールで『大恐竜時代』(倅が観たかったらしい)『アマゾン冒険』(ベイツの話で驚いた)の2本を観る。客は4人くらいで贅沢な上映だった。もちろん化石ガチャガチャをやって帰る。倅は貝の化石しか当たらず残念がっていた。広場でバッティングをやる。倅のバッティングが結構、ボールに当たるようになっていて驚く。昼飯はプロペ通りの脇にある中華屋へ行く。倅も一丁前に卵とエビ炒めを食って、胡麻団子まで食う。なかなかやるなあ。帰って、少しセリフをやって昼寝。夜、倅とカミさんが「スーパーマリオワールド」をやっているのを眺める。夜、DVDで『ジェリー』と『ヴィジット』観る。ガス・ヴァンサントの映画は、個人的に当たり外れが激しいが『ジェリー』は特別だ。本当に素晴らしい。。こんな映画やりたいわ。 


 某日、午前中、倅と本屋へ。コロコロコミックを買いに行く。いつもならお袋が届けてくれるが、いかんせん現在は自宅隔離中。(祖父との最終接触日から5日間は隔離しなきゃならんそうだ)倅は2、3日も待てないくらいコロコロコミックを楽しみにしている。よっぽどだなあ。午後、池袋のシネマロサへ。『マイスモールランド』と『チタン』を観る。『マイスモールランド』池脇千鶴さんの芝居に圧倒された。俳優として全てを晒す覚悟に心を撃たれた。俳優としての覚悟、矜持を見せられた。今の自分を受け入れてカメラ前に立つ決断をされたのはすごい事だと思う。池脇さんを俳優として尊敬した。『チタン』は悔しかった。自由に映画を作っていて、本来そうあるべきなのだ!と再三思わされてしまう。偶然一緒に観た松角洋平さんと喫茶店で語り合う。そのまま『ガンニバル』の前乗りで日立へ。監督の鈴木洋平くんと落ち合い、飯。城南町の焼肉屋「朝楽苑」へ行く。77歳のご夫婦がやられる地元の名店。カウンターだけのコジンマリした店だが、肉はうまいし、何しろお父さんとお母さんの人柄がよく、ファンになってしまった。好きなだけ食って1万。サービスしてくれたんだなあ!いやあ、いい店教えてもらった。日立に来たら必ず行こう! 


 某日、片山組『ガンニバル』撮影で大子町。朝から撮影現場の木工所に行ってパヤパヤする。今回は岡山弁の方言でなのでセリフが出しにくい。片山組の名物の即興芝居がやりにくい。どうしても言葉・方言に囚われてしまって、言いたいセリフを瞬間的に発せない。方言の迷いが出て、出す瞬間の間を外してしまう。このカセがキツイ。セリフ通りやる組ではないので、口伝えでセリフを足されてもすぐに出来ない。反応も返せない。やー大変だ。シナリオのト書きに囚われて、無理に楽しそうにしていたら、片山さんに見抜かれてしまう。普通の反応をして芝居したらオッケーが出た。さすがだな。午後は吉岡里帆さんと初めましてだったのだが、赤堀さんや良々さんの話で盛り上がってしまう。このシーンでも最後にアドリブ芝居を求められる。しかし全くアイデアが出ずに終わってしまった。相方の永田くんや梅雀さんともまだ息も合わず、グダグダだった。あー、ばかやろー。 


 某日、大子町からウチに戻って昼寝。夕方、目黒で嶺豪一組『黙黙』の衣装合わせ。用意されていた衣装が想像とは違った、意外なモノで驚く。豪一が久しぶりに監督する作品なので嬉しいし、気合も入る。しかし、内装仕事で毎日のように顔を合わせているから、監督と俳優という関係性になると不思議だな。衣装合わせ後、岩谷健司さん、二ノ宮隆太郎くん、飯田芳くん、足立理くん、主演のワトソンさん(「どついたるねん」のボーカルでもある)と、池袋の「豊田屋」で飲む。豪一と小林達夫監督も合流。岩谷さん、小林さんと話していたら、他のメンツで本読みをしていて驚く。自分とワトソンさんも店外で芝居をやらされる。監督がやりたいならいいが、場所も状況も撮影とは異なるし、意味ない気がするなあ。ただ、豪一の必死さを見て、こっちもやんなきゃってスイッチは入った。今日、決定稿が出たので、撮影まで明日1日しかないが、きっちりやってやる。小林さんが映画見識の深い人で、話していて楽しかった。